「まぁ、幸村様、お湯を召していらしたのですか」
水滴を含んだ幸村の髪をそっと撫でて、まつは笑った。
「あ…その、佐助が、そうしろと…」
しどろもどろに答える幸村の言葉に、まつはまた笑う。
幸村は今夜、まつの部屋に誘われたことを、
あの忠実な忍びには打ち明けたらしい。
「それは良うござりました。
実はまつも、さきほど行水を使わせて頂きました。
…汗臭いままで、幸村様をお迎えする訳には参りませぬゆえ」
そう言われて、幸村は改めてまつの姿を見やった。
障子越しに差す月明かりと、室内に灯った蜀台の明かりに照らされて
まつの白い肌と黒い髪がはっきりと浮かび上がっている。
その髪が、幸村と同じく水気を含んで艶やかに光っていた。
その輝きに見とれていた隙に、幸村の手はまつの手に導かれ
まつの寝巻きの懐へするりと引き込まれていた。
「…ッ!!!」
指先に突然触れた柔らかな感触に、幸村は息を呑んだ。
「まつめが、幸村様の為にもっともっとおいしいごはんを作るには」
呼吸も忘れて固まってしまっている幸村の耳に
まつの声が、甘い吐息と共に吹き込まれる。
「まつめが、幸村様のことを、愛するのでござります。…夫のように…」
「まつどのが、それがし、を…」
「はい。…そして、幸村様も、まつめを愛して下さりませ。さすれば」
「それがしが、まつどの、を…」
「さすれば、まつは、この世でいちばんおいしいごはんを
作って差し上げることができまする」
「………」
水滴を含んだ幸村の髪をそっと撫でて、まつは笑った。
「あ…その、佐助が、そうしろと…」
しどろもどろに答える幸村の言葉に、まつはまた笑う。
幸村は今夜、まつの部屋に誘われたことを、
あの忠実な忍びには打ち明けたらしい。
「それは良うござりました。
実はまつも、さきほど行水を使わせて頂きました。
…汗臭いままで、幸村様をお迎えする訳には参りませぬゆえ」
そう言われて、幸村は改めてまつの姿を見やった。
障子越しに差す月明かりと、室内に灯った蜀台の明かりに照らされて
まつの白い肌と黒い髪がはっきりと浮かび上がっている。
その髪が、幸村と同じく水気を含んで艶やかに光っていた。
その輝きに見とれていた隙に、幸村の手はまつの手に導かれ
まつの寝巻きの懐へするりと引き込まれていた。
「…ッ!!!」
指先に突然触れた柔らかな感触に、幸村は息を呑んだ。
「まつめが、幸村様の為にもっともっとおいしいごはんを作るには」
呼吸も忘れて固まってしまっている幸村の耳に
まつの声が、甘い吐息と共に吹き込まれる。
「まつめが、幸村様のことを、愛するのでござります。…夫のように…」
「まつどのが、それがし、を…」
「はい。…そして、幸村様も、まつめを愛して下さりませ。さすれば」
「それがしが、まつどの、を…」
「さすれば、まつは、この世でいちばんおいしいごはんを
作って差し上げることができまする」
「………」




