ちらりと忠勝の顔を窺うと、いつもと同じ能面のような表情のはずなのに熱っぽい目をしているように見える。
否、そもそも能面というものは光の加減や見る角度次第でいかようにも表情を変えるものだ。
自分がそのように思っているだけなのか、それとも相手の心が浮かび上がっているのか。
盗み見ていたはずなのに何時の間にかじっと見つめているのに気がついて、慌てて視線を泳がせたが、
胸元をそろりと撫でられて息を呑んだ。そのまま着物の中に指が差し入れられる。
手甲がはめられたままの黒い手が滑り落ちるに従って、さらしを巻いた胸が露わになった。
もう片方の袖も果物の皮を剥くように、慎重に丁寧に脱がされていく。
否、そもそも能面というものは光の加減や見る角度次第でいかようにも表情を変えるものだ。
自分がそのように思っているだけなのか、それとも相手の心が浮かび上がっているのか。
盗み見ていたはずなのに何時の間にかじっと見つめているのに気がついて、慌てて視線を泳がせたが、
胸元をそろりと撫でられて息を呑んだ。そのまま着物の中に指が差し入れられる。
手甲がはめられたままの黒い手が滑り落ちるに従って、さらしを巻いた胸が露わになった。
もう片方の袖も果物の皮を剥くように、慎重に丁寧に脱がされていく。
「別に怪我などしておらんぞ」
腕を取られて返す返す何かを探すように眺めている忠勝にそう告げた。
馬を射んと欲すれば、ではないが、忠勝の主にして一国の主君という身の上のためか、
何処でもそれなりに扱われた。多少の拘束や見張りがついたとはいえ、三食きちんと食べることが出来て、
狭くとも誰にも見られず着替えが出来るような一人きりの空間が確保できたのはやはり嬉しい。
幼少の頃から苦労をした故か、はたまた単なる貧乏性なのか、日頃から慎ましい暮らしをしている家康である。
与えられた小袖の端が擦り切れて糸が飛び出しているだとか、多少の問題があってもあまり気にしなかった。
それにされた拷問といえば精々腹をくすぐられるくらいで、幸運にも暴力に晒されること無く済んだ。
これも、果たして人徳の成せる業だったのだろうか。
それとも、子供特有のあどけなさがどこかに残っていて、周囲の人間の毒気を抜いたのか。
何処でもそれなりに扱われた。多少の拘束や見張りがついたとはいえ、三食きちんと食べることが出来て、
狭くとも誰にも見られず着替えが出来るような一人きりの空間が確保できたのはやはり嬉しい。
幼少の頃から苦労をした故か、はたまた単なる貧乏性なのか、日頃から慎ましい暮らしをしている家康である。
与えられた小袖の端が擦り切れて糸が飛び出しているだとか、多少の問題があってもあまり気にしなかった。
それにされた拷問といえば精々腹をくすぐられるくらいで、幸運にも暴力に晒されること無く済んだ。
これも、果たして人徳の成せる業だったのだろうか。
それとも、子供特有のあどけなさがどこかに残っていて、周囲の人間の毒気を抜いたのか。
「わしを信用しておらんのか? それとも、そんなに心配ならもっと・・・」
家康は笑って忠勝の手を取ると、自身の胸に導いた。
鋼鉄の手が、潰されてはいるが本来はふっくらとした丸みにぺたりと沈む。
鋼鉄の手が、潰されてはいるが本来はふっくらとした丸みにぺたりと沈む。
「もっと、見てみると良い」
冬の夜長5
冬の夜長5




