さり気なく投げられた言葉の爆弾は、元就の鉄面皮を破るには、充分すぎる効果
があったようだ。
陽光だけが原因ではなく顔色を変えた元就は、弾かれたように元親から顔を背け
る。
「…元就?」
暫くの沈黙の後、意を決したようにこちらを再び振り向いた元就の硬い表情に、
元親は目を丸くさせた。
「……ここは、我の気に入りの場所なのだ。他には誰も知らぬ。父も母も…兄
にすら教えなかった、我だけの秘密の場所だ」
「え?」
「他人に教えたのは、貴様が初めてだ。いや…」
一旦言葉を切ると、元就はずい、と元親に詰め寄る。
「連れて行きたい、一緒に見たいと思った相手は、貴様だけだ。今も、そして
この先も……」
言いよどむ元就の頬が、仄かに染まっている事に気付かないほど、元親の全身
は茹蛸のようになっていた。
上気した両の頬を己の手で挟みながら、左右異なる色の瞳で、元就を見つめ返
す。
何も言えずにいる元親の手を取った元就は、少しだけ強引に彼女の身体を抱き
寄せた。
「その沈黙は、肯定と受け取って良いのか…?」
髪を撫でながら問い掛けてくる元就に、元親は返事の代わりに小さく頷く。
すっかり海面から顔を出した太陽が、ふたりの姿を照らし始める。
そのまま抱き合っていた元就と元親だったが、やがて、お互い視線を交わすと、
どちらともなく唇を寄せていった。
元就の薄い唇と、元親の薄桃色の唇が、触れようとした瞬間。
があったようだ。
陽光だけが原因ではなく顔色を変えた元就は、弾かれたように元親から顔を背け
る。
「…元就?」
暫くの沈黙の後、意を決したようにこちらを再び振り向いた元就の硬い表情に、
元親は目を丸くさせた。
「……ここは、我の気に入りの場所なのだ。他には誰も知らぬ。父も母も…兄
にすら教えなかった、我だけの秘密の場所だ」
「え?」
「他人に教えたのは、貴様が初めてだ。いや…」
一旦言葉を切ると、元就はずい、と元親に詰め寄る。
「連れて行きたい、一緒に見たいと思った相手は、貴様だけだ。今も、そして
この先も……」
言いよどむ元就の頬が、仄かに染まっている事に気付かないほど、元親の全身
は茹蛸のようになっていた。
上気した両の頬を己の手で挟みながら、左右異なる色の瞳で、元就を見つめ返
す。
何も言えずにいる元親の手を取った元就は、少しだけ強引に彼女の身体を抱き
寄せた。
「その沈黙は、肯定と受け取って良いのか…?」
髪を撫でながら問い掛けてくる元就に、元親は返事の代わりに小さく頷く。
すっかり海面から顔を出した太陽が、ふたりの姿を照らし始める。
そのまま抱き合っていた元就と元親だったが、やがて、お互い視線を交わすと、
どちらともなく唇を寄せていった。
元就の薄い唇と、元親の薄桃色の唇が、触れようとした瞬間。
「お嬢──っ!」
「元就様あぁ!」
「元就様あぁ!」
自分達を呼ぶ大声に、元親は慌てて身体を離した。
屋根から外を見渡すと、毛利の兵士と連なってこちらに向かってくる、長曾我
部の海賊達の姿が目に映る。
「うおおぉぉっ!お嬢ー!生きてますかぁ!?」
「だから、そんなに慌てなくても、長曾我部様なら大丈夫ですってば!ちょ
っと、聞いてるんですか貴方達!?」
「んな悠長な事、言ってられっか!お嬢の身に何かあったら…!」
「申し訳ありません、元就様あぁ!最早我々では、彼らを止める事が出来ませ
んでしたーっ!」
「み、みんな!?」
「──チィッ!」
屋根から外を見渡すと、毛利の兵士と連なってこちらに向かってくる、長曾我
部の海賊達の姿が目に映る。
「うおおぉぉっ!お嬢ー!生きてますかぁ!?」
「だから、そんなに慌てなくても、長曾我部様なら大丈夫ですってば!ちょ
っと、聞いてるんですか貴方達!?」
「んな悠長な事、言ってられっか!お嬢の身に何かあったら…!」
「申し訳ありません、元就様あぁ!最早我々では、彼らを止める事が出来ませ
んでしたーっ!」
「み、みんな!?」
「──チィッ!」
必死な形相の部下達を見て、元親は、何処からか響いたかなり物騒な舌打ちに
は気付かないまま身を翻すと、屋根から地面へ飛び降りた。
そのまますとん、と見事な着地を決めた後で、一目散に彼らの元へと駆けて
行く。
「野郎ども!朝っぱらから人様ン家の庭先で、ギャアギャア騒いでんじゃ
ねぇ!」
「──お嬢!」
耳に心地良い怒号に、海賊達は一斉に破顔一笑した。
は気付かないまま身を翻すと、屋根から地面へ飛び降りた。
そのまますとん、と見事な着地を決めた後で、一目散に彼らの元へと駆けて
行く。
「野郎ども!朝っぱらから人様ン家の庭先で、ギャアギャア騒いでんじゃ
ねぇ!」
「──お嬢!」
耳に心地良い怒号に、海賊達は一斉に破顔一笑した。




