「お嬢!良かった…本当に良くご無事で……」
「俺らてっきり、オク…毛利の大将に、お嬢が二度と船に乗れなくなるよう
な目に遭わされてるとばかり……」
「お前ら…」
自分の姿を見て、安堵から涙に噎せている海賊達の様子に、元親は心がじん、
と温かくなっていくのを感じる。
「心配すんな。俺は、ちゃんとここにいるだろう?」
言いながら、元親は懐から出した布で、目の前にいた部下の泣き濡れた顔を
拭ってやると、彼の手を取って自分のそれと重ねてみせる。
「…な?」
「お嬢…お嬢ーっ!」
感極まった部下が、勢いで元親に抱き付こうとした時、
「俺らてっきり、オク…毛利の大将に、お嬢が二度と船に乗れなくなるよう
な目に遭わされてるとばかり……」
「お前ら…」
自分の姿を見て、安堵から涙に噎せている海賊達の様子に、元親は心がじん、
と温かくなっていくのを感じる。
「心配すんな。俺は、ちゃんとここにいるだろう?」
言いながら、元親は懐から出した布で、目の前にいた部下の泣き濡れた顔を
拭ってやると、彼の手を取って自分のそれと重ねてみせる。
「…な?」
「お嬢…お嬢ーっ!」
感極まった部下が、勢いで元親に抱き付こうとした時、
「──そこまでだ」
牽制にしては些かドスの利いた声と共に、片手に草履を下げた元就が、悠然
と近付いてきた。
「まったく…朝から落ち着きのない連中よ」
さり気なく彼らから元親を引き離した元就は、持っていた草履を、彼女の足元
に放る。
「昨日、敗将たる元親…もとい、長曾我部は我の要求を呑んだ。我には、必要
以上に捕虜を甚振(いたぶ)る趣味などない」
「それは絶対にウソだ」「テメェゆうべは一体ナニしてやがったんだ、このオ
クラ」というツッコミが、あらゆる方向から飛んできそうだが、元就は構わず
話を続ける。
「敵ながら、貴様らの兵器や航海術は使える要素がある。そこでだ。我が毛利
は、長曾我部と同盟を結ぶ事を提案しようと思う」
「え?」
渡された草履に足を通しながら、元親は毛利の言葉に声を上げた。
「毛利は、天下取りや他国への侵略などには興味がない。毛利の…この中国の
安泰と存続こそが、我の望みのすべてだ」
「もとな…毛利……」
「ただし、飽くまで貴様らは敗者だ。同盟とはいっても、毛利の為にそれなり
の働きはして貰う事になるぞ。…そして、」
一旦言葉を切った元就は、歩を進めると元親の前に立つ。
「幾ら長曾我部の頭領とはいえ、政(まつりごと)が絡めば、女である貴様だ
けの一存では決められまい?」
「…ああ。だから、そういった事は四国の弟達に任せてる」
元親の返答に頷くと、元就は懐から一通の書状を取り出すと、海賊達の中にい
た長曾我部の家臣のひとりに投げ渡した。
「その書状を、四国にいるこやつの身内に渡すが良い」
「は…?何故、元親様ではなく私めに?」
慌てて受け取りながら、長曾我部の家臣、谷忠澄は恐る恐る元就に質す。
「貴様らが四国に戻り、再び我の書状の返事を寄越しに来るまでの間、こやつ
の身柄は毛利が預かるからだ」
「な…!」
「じゃ、じゃあお嬢は…!」
どよめく周囲を余所に、元就はさも当然といった顔で答える。
「左様。今のこやつは人質だ。貴様らと共に、船に乗せる訳にはいかぬ」
元就の返答に、元親は表情を驚愕に歪めた。
と近付いてきた。
「まったく…朝から落ち着きのない連中よ」
さり気なく彼らから元親を引き離した元就は、持っていた草履を、彼女の足元
に放る。
「昨日、敗将たる元親…もとい、長曾我部は我の要求を呑んだ。我には、必要
以上に捕虜を甚振(いたぶ)る趣味などない」
「それは絶対にウソだ」「テメェゆうべは一体ナニしてやがったんだ、このオ
クラ」というツッコミが、あらゆる方向から飛んできそうだが、元就は構わず
話を続ける。
「敵ながら、貴様らの兵器や航海術は使える要素がある。そこでだ。我が毛利
は、長曾我部と同盟を結ぶ事を提案しようと思う」
「え?」
渡された草履に足を通しながら、元親は毛利の言葉に声を上げた。
「毛利は、天下取りや他国への侵略などには興味がない。毛利の…この中国の
安泰と存続こそが、我の望みのすべてだ」
「もとな…毛利……」
「ただし、飽くまで貴様らは敗者だ。同盟とはいっても、毛利の為にそれなり
の働きはして貰う事になるぞ。…そして、」
一旦言葉を切った元就は、歩を進めると元親の前に立つ。
「幾ら長曾我部の頭領とはいえ、政(まつりごと)が絡めば、女である貴様だ
けの一存では決められまい?」
「…ああ。だから、そういった事は四国の弟達に任せてる」
元親の返答に頷くと、元就は懐から一通の書状を取り出すと、海賊達の中にい
た長曾我部の家臣のひとりに投げ渡した。
「その書状を、四国にいるこやつの身内に渡すが良い」
「は…?何故、元親様ではなく私めに?」
慌てて受け取りながら、長曾我部の家臣、谷忠澄は恐る恐る元就に質す。
「貴様らが四国に戻り、再び我の書状の返事を寄越しに来るまでの間、こやつ
の身柄は毛利が預かるからだ」
「な…!」
「じゃ、じゃあお嬢は…!」
どよめく周囲を余所に、元就はさも当然といった顔で答える。
「左様。今のこやつは人質だ。貴様らと共に、船に乗せる訳にはいかぬ」
元就の返答に、元親は表情を驚愕に歪めた。




