身の丈六尺三寸を超える元親にとっては、大抵の人間は小さく感じるものなのだが、
視線の先の人物・毛利元就はそれでもやはり随分と小柄に見える。
背丈だけみれば、確かに男性としては低いが、
(女だったら、まあ普通か…ちょっと大きい方か)
痩せすぎだよな、と元親は毛利軍への応対もそこそこに思う。
問題の毛利は、重機の説明を整備係から受けている。
本来なら、こういった兵器は隠し玉として他国の軍には見せぬようにしておくべきなのだろうが、
大きさが大きさなので隠しておくのは無理があった。
もちろん、目立ちたがりの元親は見せびらかしたくもあったのだが。
「アニキ、あれ、やっぱし…」
手下の一人が耳打ちしてくる。
「ああ、わぁってる。…あいつ、」
女だよなぁ。元親と、周囲の兵士何人かで、無言で頷き合う。
なよなよしい男とは明らかに違う、本人は多分自覚していないであろう優雅な立ち居振る舞い。
女性が戦場に出るのはそうも珍しくはない昨今だが、
それでも総大将、その上大国の、というのは稀有な存在だ。
(顔隠してんのは不細工だからか。それとも)
美人だったらいいな、と軽く考え毛利に近づく。美形がわざわざそれを隠す理由などは、この際気にしない。
「どうだい、うちの滅騎は」
元親の呼びかけに、毛利が無言で応える。元親の顔の位置に合わせて首を伸ばす動作は、
彼の勝手な願望ゆえかもしれないが少しだけ小動物めいていた。
「…今、燃料などの説明を受けた。」
相変わらずぽそぽそとした声だが、会話をする気はあるようだ。いい傾向だ。が、
「維持費だけで馬鹿にならぬそうだな。愚かな事だ」
続く言葉は辛辣だった。
ふい、と顎を引いて、視線を重機に戻される。
額の血管が浮き出るのを感じながらも、元親は怒りを堪えて「はは、まいったな」と笑う。
「ほら、でもよ、これも男のロマン、っつー訳で、」と悪友から覚えた異国語を交え、
何気なく身を屈めて下方から毛利の兜を覗き込めば、
視線の先の人物・毛利元就はそれでもやはり随分と小柄に見える。
背丈だけみれば、確かに男性としては低いが、
(女だったら、まあ普通か…ちょっと大きい方か)
痩せすぎだよな、と元親は毛利軍への応対もそこそこに思う。
問題の毛利は、重機の説明を整備係から受けている。
本来なら、こういった兵器は隠し玉として他国の軍には見せぬようにしておくべきなのだろうが、
大きさが大きさなので隠しておくのは無理があった。
もちろん、目立ちたがりの元親は見せびらかしたくもあったのだが。
「アニキ、あれ、やっぱし…」
手下の一人が耳打ちしてくる。
「ああ、わぁってる。…あいつ、」
女だよなぁ。元親と、周囲の兵士何人かで、無言で頷き合う。
なよなよしい男とは明らかに違う、本人は多分自覚していないであろう優雅な立ち居振る舞い。
女性が戦場に出るのはそうも珍しくはない昨今だが、
それでも総大将、その上大国の、というのは稀有な存在だ。
(顔隠してんのは不細工だからか。それとも)
美人だったらいいな、と軽く考え毛利に近づく。美形がわざわざそれを隠す理由などは、この際気にしない。
「どうだい、うちの滅騎は」
元親の呼びかけに、毛利が無言で応える。元親の顔の位置に合わせて首を伸ばす動作は、
彼の勝手な願望ゆえかもしれないが少しだけ小動物めいていた。
「…今、燃料などの説明を受けた。」
相変わらずぽそぽそとした声だが、会話をする気はあるようだ。いい傾向だ。が、
「維持費だけで馬鹿にならぬそうだな。愚かな事だ」
続く言葉は辛辣だった。
ふい、と顎を引いて、視線を重機に戻される。
額の血管が浮き出るのを感じながらも、元親は怒りを堪えて「はは、まいったな」と笑う。
「ほら、でもよ、これも男のロマン、っつー訳で、」と悪友から覚えた異国語を交え、
何気なく身を屈めて下方から毛利の兜を覗き込めば、
驚いた。
美人なんて、そんな軽いもんじゃない。
美人なんて、そんな軽いもんじゃない。
さすがの元親も苦しい体勢のまましばし固まった。
「…毛利の大将が、こんな綺麗な姫さんだったとはな…」
思ったまま口に出すが、毛利は眉どころか口角すら動かさず無表情のまま。
手にした長い采配を口元に当て、ひらりと身をかえして別の重機の方へ向かった。
「…毛利の大将が、こんな綺麗な姫さんだったとはな…」
思ったまま口に出すが、毛利は眉どころか口角すら動かさず無表情のまま。
手にした長い采配を口元に当て、ひらりと身をかえして別の重機の方へ向かった。
「どうでしたアニキ!美人?美人?!」
わらわら寄ってきた手下達に囲まれる。
「ああ、うん…相当な上玉だ。あんなん見た事ねえ」
やったー、と大はしゃぎする手下達を尻目に、元親は素直に喜べない。
確かに美しかったが、可愛げがまるでない。
きつい物言いにぴくりとも動かぬその表情。不愉快そうに眉でもしかめればまだ良かったものを。
(…好みじゃねえなぁ…)
整っているだけに、血の通った人間ではなく冷たい人形に見える。
(やっぱ女は、多少崩れてても表情のよく動く、明るい奴がいいな。)
すっかり毛利が政の相手だとは忘れて、元親は顔を渋くする。
わらわら寄ってきた手下達に囲まれる。
「ああ、うん…相当な上玉だ。あんなん見た事ねえ」
やったー、と大はしゃぎする手下達を尻目に、元親は素直に喜べない。
確かに美しかったが、可愛げがまるでない。
きつい物言いにぴくりとも動かぬその表情。不愉快そうに眉でもしかめればまだ良かったものを。
(…好みじゃねえなぁ…)
整っているだけに、血の通った人間ではなく冷たい人形に見える。
(やっぱ女は、多少崩れてても表情のよく動く、明るい奴がいいな。)
すっかり毛利が政の相手だとは忘れて、元親は顔を渋くする。
仕事だし仕方ないか、とそれでも毛利の後を追う元親だったが、自身のあからさまに落胆した背中に、
憤怒の眼差しをぶつける一人の毛利兵がいた事には気付かずにいた。
憤怒の眼差しをぶつける一人の毛利兵がいた事には気付かずにいた。




