それを、あの男は。
ただ国主だからと、それだけの理由で元就様に近づくのを許されて。
手を握り、それだけならばまだ政の挨拶で済むが、必要以上に体を寄せ、
顔と顔を近づけ、卑猥な視線を向け――――
ああああ許せぬ。許されるものではない。
しかし、しかしだ、一介の名も無き兵に何が出来る?
ここであの憎き長曾我部に飛び掛って討ち取る事もあるいは出来ようが、
それでは主の立場が不利になる。
穏やかに同盟の交渉をしに来たというのに、部下が乱心して相手国主を殺したとあっては、
どう転んでも毛利が一方的に悪である。
力のない自分が情けない。不甲斐ない。口惜しい。
この胸の業火であの男を焼き尽くすことができたのなら。
ただ国主だからと、それだけの理由で元就様に近づくのを許されて。
手を握り、それだけならばまだ政の挨拶で済むが、必要以上に体を寄せ、
顔と顔を近づけ、卑猥な視線を向け――――
ああああ許せぬ。許されるものではない。
しかし、しかしだ、一介の名も無き兵に何が出来る?
ここであの憎き長曾我部に飛び掛って討ち取る事もあるいは出来ようが、
それでは主の立場が不利になる。
穏やかに同盟の交渉をしに来たというのに、部下が乱心して相手国主を殺したとあっては、
どう転んでも毛利が一方的に悪である。
力のない自分が情けない。不甲斐ない。口惜しい。
この胸の業火であの男を焼き尽くすことができたのなら。
ぎりぎりと歯を噛み締めて憎悪の目を長曾我部に向ける隊長の姿は、
彼の部隊兵から見ても異常であった。
この隊は特に、元就にただの主として以上の、つまりは女性として恋慕している者が
自然と集まって出来たものなので、当然今回の長曾我部の態度は十分嫉妬に値するのだが。
「それにしてもちょっとなぁ」
「悪い癖だよ、隊長の」
彼の部隊兵から見ても異常であった。
この隊は特に、元就にただの主として以上の、つまりは女性として恋慕している者が
自然と集まって出来たものなので、当然今回の長曾我部の態度は十分嫉妬に値するのだが。
「それにしてもちょっとなぁ」
「悪い癖だよ、隊長の」




