史実の弟、及び妹が出ます。捏造設定です。
弟・四郎=相合元綱で、松寿=元就の幼名です。
――――――――――
弟・四郎=相合元綱で、松寿=元就の幼名です。
――――――――――
元就は、強く逞しい子を跡取りに、と望んでいた。
体躯が良ければ戦にも有利であるし、部下の士気も、
見た目で判りやすく頼りがいのある人物の方が上がりやすいものだろう。
子は親の特徴を受け継ぎ、似るものだ。
元就は父母を愛していた。彼女の痩せて、なよやかな体つきはそれぞれ両親から受け継いだもので、
それ自体は喜ばしい事でもあるのだが…
残念なのは、それらは戦場では全く役に立たないどころか、かえって不利になる特徴だった。
体躯が良ければ戦にも有利であるし、部下の士気も、
見た目で判りやすく頼りがいのある人物の方が上がりやすいものだろう。
子は親の特徴を受け継ぎ、似るものだ。
元就は父母を愛していた。彼女の痩せて、なよやかな体つきはそれぞれ両親から受け継いだもので、
それ自体は喜ばしい事でもあるのだが…
残念なのは、それらは戦場では全く役に立たないどころか、かえって不利になる特徴だった。
なので、跡取りの父になる男は、背が高く筋に優れ、頑健に頑健を重ねた者がよい。
今すぐ後継者が必要、ということもないが、子は若いうちに産んでおいた方が後々楽であるそうだ。
中国を統治したとはいえまだまだ不安定な情勢の中、身重になるのは良くはないが、
ただ、相手はいくら選んで吟味しても足りないことはない。
元就は、密かに各地の、自分と同じ程の年齢で条件に合う者がいないかと草などに探らせていた。
そして浮かび上がってきた者の中に、長曾我部がいたのだ。
元就は、実は以前から…それもまだ少女だった頃から、長曾我部に思う処があった。
主に、悪い印象ばかりであったが。
海向こうの一国に、姫と呼ばれるほど大人しい若子がいると聞いた。
せっかく背丈に恵まれた男子に生まれくる事ができたというのに、何と勿体無い事よ。
面識もない相手に、幼い元就は嫌悪を覚えていた。
我の貧弱な体に対する当てつけか。憎らしい。
今すぐ後継者が必要、ということもないが、子は若いうちに産んでおいた方が後々楽であるそうだ。
中国を統治したとはいえまだまだ不安定な情勢の中、身重になるのは良くはないが、
ただ、相手はいくら選んで吟味しても足りないことはない。
元就は、密かに各地の、自分と同じ程の年齢で条件に合う者がいないかと草などに探らせていた。
そして浮かび上がってきた者の中に、長曾我部がいたのだ。
元就は、実は以前から…それもまだ少女だった頃から、長曾我部に思う処があった。
主に、悪い印象ばかりであったが。
海向こうの一国に、姫と呼ばれるほど大人しい若子がいると聞いた。
せっかく背丈に恵まれた男子に生まれくる事ができたというのに、何と勿体無い事よ。
面識もない相手に、幼い元就は嫌悪を覚えていた。
我の貧弱な体に対する当てつけか。憎らしい。
そうして、少女時代の元就は家臣の息子らや弟たちと共に遊んだり、
武術の稽古をするなどして過ごしていたのだが、ある頃から仲間達は、元就を避けるようになる。
特に仲違いをしたという訳でもなく、避けられる理由が全く思い至らなかった元就は、
しばらくして弟・四郎の行動でそれを悟る。
「姉者…これを」
そう言って四郎が手渡した物は、さらしであった。
何の為の物かすぐさま理解出来なかった元就だったが、う、と低く呻いてその意味を知る。
膨らんできた乳房。元就にとっては何もせずとも痛むしこりが二つも出来、
その上剣にも弓にも邪魔なだけのものだったが、周囲の男子にとっては困惑の意味合いが違ってくる。
何も言えずに受け取ったさらしを握り締めて、元就は弟の言い分を聞いていた。
言い辛そうにもごもごと四郎が話す事には、自分が木登りをすれば下から見あげる足が、
汗をかいたとはだける襟元から覗く胸が、途方もなく眩しくて見ていられないのだと。
「あ、いや、俺はもちろん、姉者にそんな目をむけてはいないが」
慌てて首と手を振る四郎は首まで赤く染まっていた。
だからすまんが妹たちと一緒に遊んでやってくれないか、そう言う弟に反論して、
「これを着けても、か」とわずかに鼻を詰まらせて問えば、またも弟は呟いて答える。
「姉者を、嫁にしたいという奴もいる。……嫌だろう?」
それが誰であるかは、恐ろしくて聞けなかった。
皆、仲の良い稽古仲間で、ゆくゆくは頼れる毛利家家臣になってくれると信頼する者ばかりだったから。
それ以上は言葉もなく、幼い、けれど確実に『女』として成長していく元就は、小さく頷くしか出来なかった。
武術の稽古をするなどして過ごしていたのだが、ある頃から仲間達は、元就を避けるようになる。
特に仲違いをしたという訳でもなく、避けられる理由が全く思い至らなかった元就は、
しばらくして弟・四郎の行動でそれを悟る。
「姉者…これを」
そう言って四郎が手渡した物は、さらしであった。
何の為の物かすぐさま理解出来なかった元就だったが、う、と低く呻いてその意味を知る。
膨らんできた乳房。元就にとっては何もせずとも痛むしこりが二つも出来、
その上剣にも弓にも邪魔なだけのものだったが、周囲の男子にとっては困惑の意味合いが違ってくる。
何も言えずに受け取ったさらしを握り締めて、元就は弟の言い分を聞いていた。
言い辛そうにもごもごと四郎が話す事には、自分が木登りをすれば下から見あげる足が、
汗をかいたとはだける襟元から覗く胸が、途方もなく眩しくて見ていられないのだと。
「あ、いや、俺はもちろん、姉者にそんな目をむけてはいないが」
慌てて首と手を振る四郎は首まで赤く染まっていた。
だからすまんが妹たちと一緒に遊んでやってくれないか、そう言う弟に反論して、
「これを着けても、か」とわずかに鼻を詰まらせて問えば、またも弟は呟いて答える。
「姉者を、嫁にしたいという奴もいる。……嫌だろう?」
それが誰であるかは、恐ろしくて聞けなかった。
皆、仲の良い稽古仲間で、ゆくゆくは頼れる毛利家家臣になってくれると信頼する者ばかりだったから。
それ以上は言葉もなく、幼い、けれど確実に『女』として成長していく元就は、小さく頷くしか出来なかった。




