今更そんなもので悲鳴をあげるほど初心ではないし、おおらかな信玄は気にしないので、そのまま簡単に報告を済ませた。
「…まあ多分、北条あたりの忍びだと思いますね」
「おう。ご苦労だったな。して、佐助」
「はい?」
「何があった」
「…別に、なにも?」
「おう。ご苦労だったな。して、佐助」
「はい?」
「何があった」
「…別に、なにも?」
そう、いつも通りだ。
ただ、若い忍びに心を動かした己の未熟を再確認した、それだけ。
ただ、若い忍びに心を動かした己の未熟を再確認した、それだけ。
「…佐助。そんな表情をして何もない、とは儂を誘っておるのか?」
悪戯っぽく笑った信玄の大きな手が、佐助の細い顎を掴んだ。
「そんな表情…?」
「泣きそうな表情をしておるな」
「泣きそうな表情をしておるな」
そのまま顎を持ち上げられ、佐助は信玄と見つめ合う。
本人は気付いていないのだろうが、僅かに色素の薄い佐助の瞳は潤み、微かにくちびるがおののいている。
普段の飄々とした忍びの顔ではなく、佐助本来の、心優しい娘の顔だ。
そう、猿飛佐助は女。
別に隠しているわけではないが、中性的な顔立ちに加え丸みの欠けた体付きをしているので、周囲が勝手に男だと思っているのだ。
佐助本人は、忍びに性別は意味のないものだと思っているらしく、勘違いを正す気もないらしい。
本人は気付いていないのだろうが、僅かに色素の薄い佐助の瞳は潤み、微かにくちびるがおののいている。
普段の飄々とした忍びの顔ではなく、佐助本来の、心優しい娘の顔だ。
そう、猿飛佐助は女。
別に隠しているわけではないが、中性的な顔立ちに加え丸みの欠けた体付きをしているので、周囲が勝手に男だと思っているのだ。
佐助本人は、忍びに性別は意味のないものだと思っているらしく、勘違いを正す気もないらしい。




