薄ぼんやりした感覚の中、謙信は目を覚ました。
まだ夜は明けていないが、珍しく目が覚めた。そのせいか、まだ頭の芯がはっきりしない。
再び目を閉じようとした謙信の鼻腔を、かすかに甘い香りが衝いた。おや、とその香りを確かめようとする。
「謙信様」
「かすが」
謙信が目を覚ましたからか、謙信の忠実な忍びが音もなく現れる。謙信は彼女に顔を向けようとして異変に気付いた。
素早く首を向けようとするのに、動作が恐ろしく緩慢になる。目が覚めていないにしても、こんなことは今まで無かった。先程から立ち込めていると思われる、甘い香り。吸い込むべきではなかったと舌打ちした。
「かすが、この香りは」
「忍びが使うものでございます。そんなに量はありませんから、心配は無いかと」
かすがは忍びであるためか、この香りを吸い込んでも平然としているように見えた。忍びには毒も効かないという。
謙信は思わずほっと息をついた。このかすががいれば、誰かが忍び込んでいるとしても心配しなくても良い。
けれどそれに全てを任せる訳にも行かない。
「これは、いずこの手の者が…」
「謙信様」
謙信の言葉を遮って、かすがが身を乗り出す。こんなことは初めて。
「これを撒いたのは、私です。謙信様、かすがは」
かすがが、ぐいと顔を近づけた。長い睫毛が見える。
意図がつかめずにゆっくりと動く手をかすがの頬に伸ばそうとした謙信を、また遮ってかすがが続けた。
「謙信様、かすがは、かすがは、どんな罰でも受けますから、かすがは、お添い臥しがしたいのです」
綺麗な瞳をかすかに潤ませて強く呟くかすがの姿。
さあっと血の気が引くのを謙信は感じていた。
かすが×謙信(女)2
まだ夜は明けていないが、珍しく目が覚めた。そのせいか、まだ頭の芯がはっきりしない。
再び目を閉じようとした謙信の鼻腔を、かすかに甘い香りが衝いた。おや、とその香りを確かめようとする。
「謙信様」
「かすが」
謙信が目を覚ましたからか、謙信の忠実な忍びが音もなく現れる。謙信は彼女に顔を向けようとして異変に気付いた。
素早く首を向けようとするのに、動作が恐ろしく緩慢になる。目が覚めていないにしても、こんなことは今まで無かった。先程から立ち込めていると思われる、甘い香り。吸い込むべきではなかったと舌打ちした。
「かすが、この香りは」
「忍びが使うものでございます。そんなに量はありませんから、心配は無いかと」
かすがは忍びであるためか、この香りを吸い込んでも平然としているように見えた。忍びには毒も効かないという。
謙信は思わずほっと息をついた。このかすががいれば、誰かが忍び込んでいるとしても心配しなくても良い。
けれどそれに全てを任せる訳にも行かない。
「これは、いずこの手の者が…」
「謙信様」
謙信の言葉を遮って、かすがが身を乗り出す。こんなことは初めて。
「これを撒いたのは、私です。謙信様、かすがは」
かすがが、ぐいと顔を近づけた。長い睫毛が見える。
意図がつかめずにゆっくりと動く手をかすがの頬に伸ばそうとした謙信を、また遮ってかすがが続けた。
「謙信様、かすがは、かすがは、どんな罰でも受けますから、かすがは、お添い臥しがしたいのです」
綺麗な瞳をかすかに潤ませて強く呟くかすがの姿。
さあっと血の気が引くのを謙信は感じていた。
かすが×謙信(女)2