「見事でござるな」
目を丸く見開く幸村には嫌味のかけらも見当たらず、政宗は居心地悪く目をそらした。
「世辞はいいから、書の代わりにこれを持っていきな。独眼竜の爪を預けてもいいが、女に刀は物騒だろ」
放った袖なしの羽織を慌てて受け取るのを認め、余った紅と握り飯を追加で乗せる。
「幸村、この馬にのっていけ」
急いでるんだろ、と言い添えると、幸村はいきなり槍を天に突き上げぬおおおぉぉと唸った。
暑苦しく感動しているようにも、どことなし照れているようにも見える。
よくよくしつけられたはずの馬が、怯えている。
「政宗殿…かたじけない!この幸村の眼に狂いなし!これよりは命をかけて政宗殿に尽くしまするぞ!」
本気ではあ?と聞き返す前に、幸村は怯えた馬を見事に御し、土埃のみを残して駆け去っていた。
「政宗様。…なんのお話だったので?」
小十郎はつりあがった眉をひそめ、ようやっと口を開いた。
「あいつの妹が嫁に来る、ってね。仮にも幸村の妹だ、下手な扱いは……ん?妹、だったか?姉か?」
詳しくは言ってなかったな、と思い返す。
「次女…だったか」
「次女、ですか。さて、あまり噂は聞きませんが」
可も不可もないってことか、と軽く頷いてやっと信玄からの書状を開いた。
信玄らしい、豪放な文字で書き綴られたそれを斜めに読みながら応える。
「もうOKしちまったからな。細かいことを調べたって意味ねえさ。名前は雪、と言っていた…あ?」
書状に書いてある文字は、雪ではなく、幸。
白雪姫ではなかったか、と政宗は喉奥でくつくつ笑った。
目を丸く見開く幸村には嫌味のかけらも見当たらず、政宗は居心地悪く目をそらした。
「世辞はいいから、書の代わりにこれを持っていきな。独眼竜の爪を預けてもいいが、女に刀は物騒だろ」
放った袖なしの羽織を慌てて受け取るのを認め、余った紅と握り飯を追加で乗せる。
「幸村、この馬にのっていけ」
急いでるんだろ、と言い添えると、幸村はいきなり槍を天に突き上げぬおおおぉぉと唸った。
暑苦しく感動しているようにも、どことなし照れているようにも見える。
よくよくしつけられたはずの馬が、怯えている。
「政宗殿…かたじけない!この幸村の眼に狂いなし!これよりは命をかけて政宗殿に尽くしまするぞ!」
本気ではあ?と聞き返す前に、幸村は怯えた馬を見事に御し、土埃のみを残して駆け去っていた。
「政宗様。…なんのお話だったので?」
小十郎はつりあがった眉をひそめ、ようやっと口を開いた。
「あいつの妹が嫁に来る、ってね。仮にも幸村の妹だ、下手な扱いは……ん?妹、だったか?姉か?」
詳しくは言ってなかったな、と思い返す。
「次女…だったか」
「次女、ですか。さて、あまり噂は聞きませんが」
可も不可もないってことか、と軽く頷いてやっと信玄からの書状を開いた。
信玄らしい、豪放な文字で書き綴られたそれを斜めに読みながら応える。
「もうOKしちまったからな。細かいことを調べたって意味ねえさ。名前は雪、と言っていた…あ?」
書状に書いてある文字は、雪ではなく、幸。
白雪姫ではなかったか、と政宗は喉奥でくつくつ笑った。
あの熱血の家族だ。Snowより、確かにHappinessってほうが似合いだぜ。