需要なさそうですが書いてみました。
破廉恥なしです。
しかも今回、投下数1つのみですOTL。
この幸村、精進いたしまするぅぅぅぅぅぁ!!
破廉恥なしです。
しかも今回、投下数1つのみですOTL。
この幸村、精進いたしまするぅぅぅぅぅぁ!!
十子(とおこ)が小十郎景綱と呼ばれるようになってから、もう幾年も経つ。
神職の娘に生まれた十子は、迷うことなく巫女になった。
平時は百姓たちと野良仕事に精を出し、慶弔時は白い裃を着込んだ父の背に従い、
粛々と榊の枝を振る。
種違いの姉が当主・伊達晴宗の嫡男である梵天丸の乳母になっていたが、そのことが特に十子の生活に影響を及ぼすことはなかった。
そうやって、平坦ながら慎ましく平和な一生を送るのだと思っていた。
十子が大人の女として成熟しつつある時、変化は伊達本家からの使者の姿で現れた。
片倉家の狭い客間で、使者と父娘は対面した。十子に梵天丸の養育係を引き受けてほしいという。
「しかし――」
父は困りきった様子で、白髪交じりの頭を掻いた。
「女なれども武芸に秀でた者は戦場に赴く、という話は聞いたことがございますが」
十子は祝詞と野菜作りしかできない、と言おうとしたであろう父の言葉を、使者が遮った。
「剣も薙刀も必要ござらん。若君様はおとなしゅうて、和歌や物語を愛でられるお方。されば、古今和歌集などを諳んじられるような守り役を探しておる。ひらがなも読めぬような足軽の娘では困るゆえ」
正直に言えば、半農半神職では少々足が出ることもある。
また、当時は守り役など数年でお役御免になると踏んでいた。
ある程度の給金が望めるこの話に、父も十子も否やはなかった。
話はとんとん拍子に進み、とうとう梵天丸とのお目通りが叶う時がやって来た。
裕福でない暮らしながら、もっとも晴れがましい一張羅に身を包んで、十子は伊達本家の門をくぐった。
おそらく古強者の部類に入るであろう腰元に導かれる。
本家に仕える腰元たちの、艶やかで目映い装束に、ここでは普段着にすらならぬ着物を纏う己を恥じた。
梵天丸の居室の前で膝をついた。床に三つ指を立てて、深々と頭を下げる。
「片倉十子、面を上げい」
こちらも威厳たっぷりの腰元の声に、十子は顔を上げた。
部屋の最奥、一段高くしつらえられた床に、若君は坐っていた。
――暗闇の中に光がひとつ。
それは眼光の鋭さか、意志の強さか、知性の輝きか。
間違いない。
このお方こそ、奥州――ひいては日の本すらも征服するのにふさわしい。
竜のごとき背中に乗れば、地の果てまでも連れて行ってくださるだろう。
先ほど感じた恥ずかしさなどはどこかへ飛んでいってしまった。
ただ、気になる点も少々ある。
髪を段の入ったおかっぱにしているのはいいとして、前髪がいささか伸びており、
顔の右半分を隠している。
三十一文字を嗜むとのことだが、あれでは髪に視界を奪われ、稽古に集中できないのではあるまいか。
――ああ、そういえば聞いたことがある。
若君は二つか三つの時に疱瘡に罹り、右目の視力を失ってしまった。
もちろん本家はそのことを表沙汰にしていないが、人の口に戸は立てられない。
若君が引きこもって、庶民の前に姿を見せないことも、その噂をまことしやかなものにしていた。
神職の娘に生まれた十子は、迷うことなく巫女になった。
平時は百姓たちと野良仕事に精を出し、慶弔時は白い裃を着込んだ父の背に従い、
粛々と榊の枝を振る。
種違いの姉が当主・伊達晴宗の嫡男である梵天丸の乳母になっていたが、そのことが特に十子の生活に影響を及ぼすことはなかった。
そうやって、平坦ながら慎ましく平和な一生を送るのだと思っていた。
十子が大人の女として成熟しつつある時、変化は伊達本家からの使者の姿で現れた。
片倉家の狭い客間で、使者と父娘は対面した。十子に梵天丸の養育係を引き受けてほしいという。
「しかし――」
父は困りきった様子で、白髪交じりの頭を掻いた。
「女なれども武芸に秀でた者は戦場に赴く、という話は聞いたことがございますが」
十子は祝詞と野菜作りしかできない、と言おうとしたであろう父の言葉を、使者が遮った。
「剣も薙刀も必要ござらん。若君様はおとなしゅうて、和歌や物語を愛でられるお方。されば、古今和歌集などを諳んじられるような守り役を探しておる。ひらがなも読めぬような足軽の娘では困るゆえ」
正直に言えば、半農半神職では少々足が出ることもある。
また、当時は守り役など数年でお役御免になると踏んでいた。
ある程度の給金が望めるこの話に、父も十子も否やはなかった。
話はとんとん拍子に進み、とうとう梵天丸とのお目通りが叶う時がやって来た。
裕福でない暮らしながら、もっとも晴れがましい一張羅に身を包んで、十子は伊達本家の門をくぐった。
おそらく古強者の部類に入るであろう腰元に導かれる。
本家に仕える腰元たちの、艶やかで目映い装束に、ここでは普段着にすらならぬ着物を纏う己を恥じた。
梵天丸の居室の前で膝をついた。床に三つ指を立てて、深々と頭を下げる。
「片倉十子、面を上げい」
こちらも威厳たっぷりの腰元の声に、十子は顔を上げた。
部屋の最奥、一段高くしつらえられた床に、若君は坐っていた。
――暗闇の中に光がひとつ。
それは眼光の鋭さか、意志の強さか、知性の輝きか。
間違いない。
このお方こそ、奥州――ひいては日の本すらも征服するのにふさわしい。
竜のごとき背中に乗れば、地の果てまでも連れて行ってくださるだろう。
先ほど感じた恥ずかしさなどはどこかへ飛んでいってしまった。
ただ、気になる点も少々ある。
髪を段の入ったおかっぱにしているのはいいとして、前髪がいささか伸びており、
顔の右半分を隠している。
三十一文字を嗜むとのことだが、あれでは髪に視界を奪われ、稽古に集中できないのではあるまいか。
――ああ、そういえば聞いたことがある。
若君は二つか三つの時に疱瘡に罹り、右目の視力を失ってしまった。
もちろん本家はそのことを表沙汰にしていないが、人の口に戸は立てられない。
若君が引きこもって、庶民の前に姿を見せないことも、その噂をまことしやかなものにしていた。




