気高き軍神の前で浅ましい姿はなんとか見せまいとしていたが、いよいよ本能に
逆らう事がかなわぬと悟った虎は素直に白状した。
「あぁ、もう抑えがきかん。おヌシに卑怯と言われても…襲ってしまうわ」
逆らう事がかなわぬと悟った虎は素直に白状した。
「あぁ、もう抑えがきかん。おヌシに卑怯と言われても…襲ってしまうわ」
華奢な腰を、正座に座りなおした腿の上に横座りで乗せ、顔を近づけて
切れ長の瞳をみつめる。
謙信もだんだんと胸が高鳴り、苦しいほどに締め付けられるのを
堪えきれない。己の、信玄への想い。
「…わたくしも」
それだけ照れたように言うと、信玄の腕に支えられる格好からわずかに起こあがり、
みずから身を預けるように男の胸に寄りかかった。
切れ長の瞳をみつめる。
謙信もだんだんと胸が高鳴り、苦しいほどに締め付けられるのを
堪えきれない。己の、信玄への想い。
「…わたくしも」
それだけ照れたように言うと、信玄の腕に支えられる格好からわずかに起こあがり、
みずから身を預けるように男の胸に寄りかかった。
一方、武田本陣から離れた川辺の岩陰にて
「う、うおぉ!さすがお館様はやりまする。これこそ誠の漢にござるな!!」
「あぁ…悔しいけど…幸せそうな謙信様…美しすぎる…!」
食い入るように主の様子を見守る部下一同。放っておくと空気も読まずに主の元に
駆けていったりしそうだ。色々な意味で危険なふたりを武田の忍がなだめる。
「ほらほらぁ、真田の旦那もかすがも、いいとこなんだから邪魔しにいっちゃ
だめでしょ。外野はかえったかえった!」
「あぁ…悔しいけど…幸せそうな謙信様…美しすぎる…!」
食い入るように主の様子を見守る部下一同。放っておくと空気も読まずに主の元に
駆けていったりしそうだ。色々な意味で危険なふたりを武田の忍がなだめる。
「ほらほらぁ、真田の旦那もかすがも、いいとこなんだから邪魔しにいっちゃ
だめでしょ。外野はかえったかえった!」
上杉と武田の戦は、作戦や兵の数に関わらず、結局は大将の決闘でなければ
ケリがつかない。
両軍を本気で戦わせては、どちらが勝つにせよ他の国から攻め入られるスキを
与えるだけだ。だから、互いの兵の消耗を抑えるべきだと佐助が提案し、幸村と、
上杉軍の直江、かすがとの間で協力しあうことにしていた。
川中島の戦いにおいては殺し合いは避けること。簡単に言うと、全員が命がけで
戦っている振りをしていただけである。
共倒れになり、第三の敵に漁夫の利を与えることだけは避けたかった。どちらの
大将が命を落とすことがあっても、勝利した方に恨みごとなく従うことは双方異論なく
承知していた。
ケリがつかない。
両軍を本気で戦わせては、どちらが勝つにせよ他の国から攻め入られるスキを
与えるだけだ。だから、互いの兵の消耗を抑えるべきだと佐助が提案し、幸村と、
上杉軍の直江、かすがとの間で協力しあうことにしていた。
川中島の戦いにおいては殺し合いは避けること。簡単に言うと、全員が命がけで
戦っている振りをしていただけである。
共倒れになり、第三の敵に漁夫の利を与えることだけは避けたかった。どちらの
大将が命を落とすことがあっても、勝利した方に恨みごとなく従うことは双方異論なく
承知していた。
「しっかしねぇ…なんで殺す直前になるまで素直になれないのかねぇ。
いい歳して、まったく不器用なおふたりさんだ」
そんなわけで、ふたりの戦いが終わったことを両軍に告げ、互いの兵を退かせるのは
容易にできるのだった。
いい歳して、まったく不器用なおふたりさんだ」
そんなわけで、ふたりの戦いが終わったことを両軍に告げ、互いの兵を退かせるのは
容易にできるのだった。
両軍の退却を無事に終えたのを確認すると、佐助は一応万が一の急襲に備えなくては、
と都合の良い言い訳をして、自軍の陣地に張り巡らされた幕からややはなれた所で見張り
(兼のぞき)に立つのであった。こっそりと、ふたりの大将に気取られぬように…
と都合の良い言い訳をして、自軍の陣地に張り巡らされた幕からややはなれた所で見張り
(兼のぞき)に立つのであった。こっそりと、ふたりの大将に気取られぬように…
「さぁーてと。へへっ、お楽しみはこれからっ…と!」
小型の望遠鏡を取り出して、ふたりの様子を窺うのだった。
小型の望遠鏡を取り出して、ふたりの様子を窺うのだった。