「生活者主導の政治」を掲げ、政権奪取を果たした民主党は、雇用、介護、障害など、社会保障でも新機軸を打ち出している。様々な懸案を抱える現場の声を拾った。(梅崎正直、小山孝、大津和夫)
雇用
雇用政策については、労働者保護政策を民主党は政権公約(マニフェスト)に掲げており、労働界などから期待感が強まっている。
注目されるのが派遣労働の規制強化。1985年に制定された労働者派遣法の対象業務は当初、一部に限られていた。しかし、企業の要請に沿って対象業務を徐々に拡大、99年に原則自由化された。同党は「安易な規制緩和が雇用不安を招いた」として、2か月以下の労働者派遣や製造業への派遣を、原則禁止する方針を政権公約に盛り込んでいる。
派遣ユニオンの関根秀一郎書記長は「自民党は『使い捨て労働力』を広げ、貧困問題を生んだ。民主党には公約を実現するだけでなく、契約社員や期間従業員など有期雇用全体の規制もしてほしい」と話す。
ただ、ニートら若者の支援を行うNPO法人「育て上げネット」の工藤啓理事長は「様々な事情で比較的簡単な仕事にしかつけない若者もいる。規制強化と併せて彼らの働く場も確保してほしい」とクギを刺す。
一方、同党は最低賃金の引き上げも掲げていることから、「ますます企業経営は苦しくなる」(経営者団体幹部)など、経済界からは懸念の声が上がっている。
介護
介護職の低賃金や人手不足が深刻な社会問題となったのを受け、民主党は「介護労働者の賃金の月額4万円引き上げ」を掲げた。ホームヘルパーなどが加盟する「日本介護クラフトユニオン」の河原四良会長は「多くの介護職が賃金アップを期待しており、約束を果たしてほしい」と期待する。
厚生労働省によると介護職の平均給与は月約21万円。4万円引き上げでも全産業平均(約33万円)には届かない。河原会長は「将来的には全産業平均まで賃金を上げたい。そのためには、専門性を高める支援も必要」と対策の上積みを求める。
介護する家族の関心も高い。「認知症の人と家族の会」の高見国生代表理事は、「賃金アップを介護サービスの質の向上につなげてほしい」と注文する。さらに、政権公約では触れられていない認知症対策について、「本人や家族の暮らしを成り立たせるためには、症状に応じた切れ目ないサービスが必要。どのような制度にするのか、全体像を示してほしい」と話している。
障害者
障害者政策は大きく転換しそうだ。現在、その根幹となっている「障害者自立支援法」について、民主党は廃止を打ち出し、新たに「障がい者総合福祉法(仮称)」制定を目指す。
自立支援法は、サービス費用の1割を利用者が負担する「応益負担」が原則だったが、多くの障害者団体から批判を浴びた。民主党は新法で、収入など負担能力に応じて利用料を払う「応能負担」を導入する方針だ。自立支援法に批判的だったDPI(障害者インターナショナル)日本会議の尾上浩二事務局長は、「応能負担への移行や、支援対象になる障害の範囲拡大などが新法に盛り込まれると思うが、これらは新法策定を待たず、早急に実現してほしい」と期待する。
一方、自立支援法の枠内で前進を目指してきた人たちからは、困惑の声も。日本発達障害ネットワークの山岡修副代表は「『障害者を施設から地域へ』という自立支援法の基本的な考え方は正しかったと思う。現行法の良い部分は残し、障害者施策を後退させるべきではない」と主張する。
(2009年9月1日 読売新聞)
(2009年9月1日 読売新聞)
ソース:YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/iryou/kyousei/saizensen/20090901-OYT8T00666.htm