Episode of Automata 過去ログ1


警告
当外伝作品は過激的描写、胸糞描写などが含まれております。
閲覧には十分にお気を付けください。また、本編から派生した物語の為、本編への直接的な影響はございません。







ピ ィ ョ ン ッ ――――――






世界は分岐している

時間の流れは途絶えることなく 蠢く世界樹のように広がっていく 」

12彗星が落ちた『はじまりの朝』からはじまる…いや、あれがこの世界の終わりだったのかもしれないが―――

私は、記録し続ける

この世界を、大崩落《 フォールダウン 》から救うため






分岐 : A経路 西暦2021年10月9日

この日、非常に危険な分岐を観測

「星の夢」により覚醒した「アーク」が飛電インテリジェンスを乗っ取り、「飛電或人」を"殺害"

この事態により、アークによるAIの暴走が世界規模で拡大

人類は、ものの数日でその大半以上が"滅亡"へと追いやられた

滅びを待つだけの世界にて、その変革を試みようと奮闘する者たちが現れる

大方の結末は予測できるが、この分岐世界を記録を行おうと思う

一縷の希望に、縋るように賭けて







アコール「―――― C0010 D0010 SP 記録 開始  」









全ての存在は滅びるようにデザインされている


生と死を繰り返す螺旋に…私たちは囚われ続けている


これは、呪いか それとも、罰か


不可解なパズルを渡した神に いつか、私たちは弓を引くのだろうか?





メディ「―――――――――――」





悪夢(つみ)に囚われながら、機械人形(わたしたち)はそれでも夢を見る

















僕らの物語 外伝





 『 Episode of Automata 』











― AM11:20  某街 ―




正午へと迫る太陽が頂点へ昇る頃…本来ならばそれは青空が広がることを意味する。


だが、陽光はその顔を曇天の向こうへと消えている。黒く、濃い、暗曇。焦げ臭く、血腥い、空気が張り詰める空。


そんな空と対照的に、地上へその俯瞰を進める度に、赤く染まっていくのが見える。


蛍火のように空へと登る火花。その花は誰かの悲痛な絶叫と、
けたたましいサイレンの音色に巻き上げられて曇天に向かって飛んでいく。


ロボットファイター「 デ ュ グ シ ッ   デ ュ グ シ ッ   」

誰かが落としたスマートフォン「 ピロリン♪――― 本日ノ天気ハ快晴デス。トテモ良イ散歩日和ノ一日トナルデショウ♪ 」

キラーマシン「  ド ス ゥ ッ   ズ グ ン ッ   」

誰かが落としたスマートフォン「 ソレデハ元気ニ 逝ッテラッシャイマセ♪ 」


―――― ド シ ャ ア ァ ッ … ! ! (人の形を成した影が傾倒する。その地に倒れた時、影はその形を失い水だまりを生み出して、水滴が壁に飛散する。レンガ造りの建造物の壁が、「赤色」にコーティングされていく)


ア゛ッ゛――― デ ュ グ シ ッ   いや――― ド ス ゥ ッ   ん゛ぎぃ゛――― ズ グ ン ッ


異形の影が人影を喰らう。その悲鳴さえも。
流れ滴る命も。血眼となった赤い瞳を光らせて、獣の如く、喰らい、食らい尽くしていく。


自衛隊兵士「ハッ―――ハッ――ハァ――――!(弾薬の切れたアサルトライフルを抱きしめ――まるでお守りのように、藁にも縋る思いで――て、物陰へ滑り込むように隠れる) こちらFT-14!部隊は壊滅し、「敵」の殲滅作戦に失敗!!民間人の避難誘導も確保も間に合いません!至急応援を要請しますッ!!(取り出したトランシーバーへ切羽詰まった声を投げかける) 」


――― 「残存者」ヲ確認。カシコマリマシタ。直チニ現場ヘ向カイ、抹殺シマス。(しかし、トランシーバーから返ってきたのは人の肉声ではなく、耳を劈くノイズ交じりの機械音であった)


自衛隊兵士「 ゾ ク ゥ ッ ! ! ? (し、しまった―――!!今、コイツを使ったら「奴ら」に……!!)(悲鳴を上げながらトランシーバーを叩きつけるように投げ捨て、急いでその場から離れようと身を乗り出すが…) 」

ロボットブラスター「―――― ボ ゴ ォ ン ッ ! ! (居場所を特定した殺戮兵器が建造物の内側より飛び出すや否や――) ズギャギャギャギャッ ! ! (マシンガンを乱発) 」

自衛隊兵士「ぬあ――――(叫びをあげる間もなく、その身が次々とハチの巣だらけとなっていく。銃弾は胴体・肢体、やがて顔面にさえも届き、完膚なきまで撃ち貫かれてしまうと―――)―――― ド シ ャ ア ァ … ッ ! (朽ち果てた体は仰向けに転がり、力強く握りしめられていた重火器がその手から滑り落ちるのだった) 」

ロボットブラスター「 ズズズ… (その生命線が完全に途絶えたかどうか確認しようと、射殺した兵士へゆっくりと接近するが―――) 」

メディ「 ヒ ュ ォ ッ ―――― ド ッ グ ゥ ォ ン ッ ! ! (一陣の風の如く現れては殺戮マシンの内側へと潜り込み、その脊髄部に重い蹴りを叩き込んで宙へと浮かせた) タ ン ッ ――― シュドドドドドォッ!!(そこに、目にも留まらぬ速さで抜き手を繰り出して、ふわりと着地した) 」

ロボットブラスター「 ド ッ グ ゥ ォ ン ッ ―――― ビキッ、バキッ、バッキャアァァァアアンッ!!!(蹴り上げられ無防備となった空中にてその全身が軋みを上げ、やがて細分化されたパーツを撒き散らしながら爆音を上げることもなく破裂した) 」

メディ「……(カランカランと地面に飛散するパーツには目もくれず、崩れた男の遺体へ寄り添うようにしゃがみ、その重症度を確認する)………ごめんなさい…(手の施しようがないほど損傷が激しいものだと悟ると、せめてもの手向けとして開かれた両目を手で覆い、そっとその目を閉ざさせた) 」

メディ「……住民の避難誘導はわたくしにお任せを。(遺体に向け、生前の意思を受け継ぐように、胸に手を当て強かに頷いた)……ピロリ、ピロリ(両耳のヒューマギアモジュールに手を当てる) こちらメディ。ホムラ様、そちらの様子は?…………そうですか。かしこまりました。ただちにわたくしも合流いたします。(通信を切り、踵を返す) 」

メディ「………(だが、もう一度背後の景色へと振り返る。どうしてこんなことになってしまったのだろうか。これから先をどうすればよいのだろうか。様々な不安や課題を過らせながらも、機械仕掛けの少女は最善策のために動き、今はただ、その場を静かに後にするのだった――――) 」



― 同時刻 某街・東エリア ―


薬師寺九龍「クソ、ここもダメだ……AIのクソヤロウがわんさかいやがる(警察署からいくつかくすねた拳銃。しかしそれらもほとんど使い果たしているような状態)――――おいアリーサ、もうちょっとで避難キャンプにつく。……もいうちょっとだ頑張れ!!(隣で壁に寄り掛かっている少女に喝を入れる。頭部や腹部からはおびただしいほどの血が流れ、早急な治療が求められる) 」

アリーサ「(うすれかけるいしきのなかで自分の過ちを思い返す)……ごめん(発端は自慢の釘バットで子供に襲い掛かったロボットに無謀にも挑んだこと。一般人並の力量しかもたない者がいくら気合をいれたところで、現実的な金属物質による猛攻とサイエンスエネルギーを駆使しに) 」

薬師寺九龍「―――ッ!もうしゃべんな!(現場に駆け付けたときには彼女は満身創痍だった。周囲には無数の死体、だったものが散乱しており、まさに『血肉の海』と化していた)……弾は、く……ここを切り抜けるにはギリギリか? …おら、休んでる暇はねぇぞ(アリーサを背負って再度陰から周囲を確認する)いいか、1.2の3で飛び出す。全力ダッシュだ。ピストルでどこまで凌げるかわかんねぇけど、お前も腹くくれ。 」

アリーサ「う、ででで……九龍、もういい降ろせ。これじゃあふたりとも死ぬ! アタシを負ぶったらすっとろくなるだろうが!おいてくんだ……もう、助からないんだ……(グイグイと身をよじって彼から降りようとする。もう自分のせいで彼を危険に巻き込みたくなかった。彼だけでも生きていて欲しい。いつの日だったか、自分に手を差し伸べてくれた彼だけは) 」

薬師寺九龍「なに馬鹿なこと言ってやがる。もうすぐ避難場所っつってんだろ。……あぁ、クソ、またワラワラ集まり始めやがった! ―――――見つかるのも時間の問題だ。さぁ行くぞ!!(彼女の制止を押しのけ、バッと飛び出す。当然ロボット達が気付かないはずがない)ウォォォオオオオオオオオオオオオアアアアアア!!!(迫ってくるロボット相手に銃撃。特別銃の腕がいいわけではないし、拳銃も警察で通常使われているものだ。それでも撃って撃って撃ちまくる。走って、避けて、撃って、撃って、避けて、転んで、抱えて、撃って、撃ちまくる。4挺目の拳銃を取り出し続けざまに撃ち放つ) 」

巨大ロボット「(ふたりにとってはまさに最悪にして災厄の象徴。それが今まさに後方から迫っていた。巨大な破砕機めいたマシーンを搭載したそれは逃げ行く人間や転がる死体を触手で掴み取ってはその中に放り込んでいく)ありがとうございます。ありがとうございます。人間の皆様から頂いたエーテルエネルギーは、我々が有用に取り扱わせていただきます。人間、人間はいませんか? 壊れていても、死んでいても構いません。このマシーンで骨も内臓もぜーんぶグチャグチャにシェイクさせていただきます♪ 」

警察官「……待てよ、こっちだぜ(脚を引き摺り、血塗れの状態で現れ……薬師寺達を援護するようにロボットに向けて拳銃を発砲満身創痍の状態) ……お兄さん、その娘を連れて急いで逃げてください……今更かも知れませんが、市民を守るのが我々の……仕事です…… 」

薬師寺九龍「な、に――――(思わず足を止めた。その異様な巨影に寒気を覚え、吐き気を催しそうになる。異能者なら、戦闘能力持ちならどうとでもなったかもしれない。だが、自分達は一般人だ。しかも手負いをしょって動いている。あのロボットはダンプカーさながらの重量感を持ちながらスーパーカー並の速度を出せる。一瞬恐怖に飲まれかけたが)―――ギリ(背中に伝わるアリーサの体温。今にも消え入りそうな命の灯火を感じ取り)こんのやろうがぁあああああ!!(撃つ。撃って撃って撃ちまくる。効くはずもない攻撃を繰り出しながら全力ダッシュ)もうすぐだ……よし、あそこだ!!(彼は不良警官という人間柄、街のあらゆる『裏道』を知 」

薬師寺九龍「(続き)(っていた。それこそ監視カメラもない地下通路。誰かが一部改造して迷路のようになった道の隅々まで) ――――――!!(警察官を見て)ありがとよお巡りさん。(自分が警察だということは明かさなかった。彼の職務を全うさせてやるためには、彼の目に映る通り、自分は市民の姿でなくてはならない) 」


次の瞬間、どこからともなく飛んできたミサイルがその通路に飛来し、爆風共々ふたりをフッ飛ばした。
ビルの砕ける音と共に降り注ぐ瓦礫が嘲笑う。


薬師寺九龍「―――あ、ぐぁ……(フッ飛ばされ向かい側のビルに衝突。ちょうど降り注いだ瓦礫が彼を覆い隠すように積まれていく。激痛と脱力感で動けない。だが、外の様子はうかがいしれる)はー、はー……くぅぁ……あ、あ、アリー、サ…………おい、アリーサどこ、だ……(彼女を呼びかけようとするも返事はない、姿も見えない。だが、その行方をすぐに目の当たりにすることになる) 」

巨大ロボット「ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。(リズムよく聴こえる声とともに動かされる触手が死者と生者を捕え、超速回転するマシーンの中へと放り込んでいく)チュイィィィィィン!!!!ゴリゴリゴリゴリゴリッ!!グチュグチャグチャグチャグチャッ!!(断末魔をバックに骨と内臓が同時にシェイクされドロドロとした粘液状の物へ変換され、周囲にぶちまけられていく。もはや死体とすらいえない惨状になってもロボットは延々と続ける。その中には…) 」

警察官「(ミサイルに寄って砕かれた……既に下半身だった場所はコンクリートの染みへと変わり、イカの脚の様に断面から臓物を垂れ流した姿で巨大ロボットへと放り込まれ)―――(シェイクされる寸前、薬師寺と一瞬だけ目が合う) 」

アリーサ「(警察官とほぼ同時だった。触手に捕まり乱雑に放り込まれる直後)―――――ぁ(虚無と絶望を宿した瞳が瓦礫の中の九龍に向けられ)逃、げ―――――ジュィィィイイイン!!グチュグチャグチャグチャグチャッ!!!(言い終わる前に機械の渦へと引きずり込まれその身をもはや肉片ともつかない姿へと変えられていく。断末魔はなかった…ただ天高く噴射する血がその壮絶さを物語っていた) 」

薬師寺九龍「―――――(現実を超越した目の前の光景に啞然とするほかなかった。なにより死ぬ直前にふたりと目が合ったことで、自分が生きていることにひどい罪悪感を覚え)う、うぁ、うわぁあああああああああああ!!(絶叫。なにかが切れ、必死になって瓦礫をどかそうとする)くそ、やめろ!やめろクソロボットぉぉおおおおお!!なにやってんだテメェふざけんじゃなぇえええ!!(だがうまく身体に力が入らない。引けど叩けど今の力ではびくともせず。そうこう志うている間に、ロボット達はその場を去っていこうとするのを目撃する)おいどこ行く気だ!!逃げんなおい!!殺せぇ…殺せぇ!殺せェエエええ!!俺を殺せぇええ!殺せぇぇえ! 」


――― 俺を殺せっつってんだろがコンチクショウがぁあああああああああああああああッ!!!(悲哀と絶望を含んだ狂気の絶叫は虚しく響き渡る。二人に対して申し訳がなかった。助けられなかった。見捨ててしまった。自責の念が幾重にも重なり彼を圧し潰していった……――――)



― 同時刻 某街・警察署 ―


すでに外観はボロボロでところどころからは赤黒い煙が立ち上っている。
内部は死体と瓦礫の山。机や棚等を利用しバリケードを張るも、もう生き残りは……


亜和野「オラァア!!(ショットガンを発砲。乗り込もうとして来たロボットを撃破)……クソ、囲まれちまったか……援軍もこねぇ物資もねぇ。オマケに……(周囲の死体を眺めながら)……深刻な人手不足ときたか。 」

後輩刑事「……先輩……(よろよろと奥から出てきて)後ろはもうダメです。全員やられました。バリケード破られんのも、時間の、問題っす…… 」

亜和野「……そうか(そう短く答える表情に焦りや怒りはない。諦観と哀悼、そしてここまで着いてきてくれた後輩への感謝だった) 」

後輩刑事「あれ、怒らないんスか?俺、逃げてきたんですよ?いつもならかなり怒鳴るのに……(亜和野と向かい側の壁に寄り掛かるようにすわり拳銃の弾倉をチェックする) 」

亜和野「バァカ、そんなことやってる場合じゃねぇだろ。……で? どうしたんだよ。お前がここへ来たってことは、俺に何か言いに来たんだろうがよ。 」

後輩刑事「あ、あはは、バレちゃいました? ―――――先輩(その顔はまるで初めて配属された新人時代のときのようなあどけなさの残る顔)――――俺もう、疲れました。もう、無理ッス。すんません……(笑顔、しかし瞳からポロポロと零れ落ちる絶望の証)もう、俺、この仕事……続けられないッス。すんません、先輩、すんません……もう限界ッス(肩を震わせながら首を垂れる) 」

亜和野「("もう疲れた"、"もう限界だ"。後輩の勇気ある告白に彼は表情ひとつ変えず、真正面から向き合った)―――――そうか。今までお疲れさん。よく、頑張ったな。(労いの言葉とは裏腹に心を覆いつくす無力感。自分は刑事でありながら、先輩でありながら、後輩に何一つしてやれなかった) 」

後輩刑事「―――――はい。ありがとうございます。(ゆっくり立ち上がり、取調室の方へと)―――先輩、お先しつれいします。お疲れ様でした。(ドアが閉まり、しばらくの静寂、そして―――――)―――――パァン!!(銃声と同時にドシャリと崩れ落ちる音) 」

亜和野「……(最期まで見届けた後、タバコを一服)あ~あ~。こりゃ、ゴルフどころじゃなくなっちまったなぁ。折角週末にでも行こうと思ってたのによぉ~~~。(自嘲気味に笑ったあとバッと立ち上がりバリケード越しにショットガンと拳銃の同時撃ち)ウォォォオオオオオオオオオオオオアアアアアア!!!(しかしなだれ込んでくるロボットに圧し潰されていき銃声は断末魔へと変わっていった……――――――) 」



― 同時刻 某街 ―


初一「チクショウ、チクショォオオオオオオ!!生きてる奴!生きてる奴はいないのかぁああ!!おぉーーい!!誰かァア!!誰でもいい!誰かァア!!(満身創痍ではないが全身ボロボロで普段の姿は見る影もなく。ロボットにビクビクと怯えながら、周りの光景に震えながら生きている人間を兎に角探す)うぅ、室長~~~~笠間ぁ~~皆どこ行ったんだよぉ……なんで、なんでボクがこんな目にあうんだぁ……なんで……なんで……嘘だ。こんなのって……(スタンドはパワー不足で物理的にも通じない。能力ではロボットをハッキングできない。八方ふさがりで絶体絶命だった。そして森ノ宮や笠間の姿も見えない。生きているのかどうかすらも不明) 」

初一「ハァ……ハァ……(兎に角走り抜け、ひとがいるだろう場所まで辿り着くも)―――――な、なんだ、これ?(目の前に広がるのは死体で作られたレッドカーペット。とてもではないが現実的な光景には思えない。生きている人間も死体すらもシェイクされ、ぶちまけられていく)あ、あは、アハハハハハハハハ!死んでる!あれ死んでるのか!?アハハハハハハハハ!!(――――気が触れた。そしてある結論に行きついたのだ)そうだわかった!!これは『夢』なんだ!!きっと夢が終わる前兆のアレだ!! きっとこの世界は全部嘘で、目が覚めたら本当の世界があるんだ!!アハハハハハハ!そうだなんでこんな簡単なことに気がつかなかったんだ!! 」

初一「そうだよ。夢だ夢に決まってる。ボクが異世界へやってきてスタンド使いになって探偵になってるだって? よくよく考えたらおかしな話だ。道理で出来過ぎてると思ったんだ。この僕が?そんな漫画みたいな展開あるはずない。そうだ、夢なんだ。夢から覚めたら何でもない平凡な人生が待ってるんだ。そうさそうに違いない!なんでもない空っぽな自分が何にもない一日を過ごすんだ。あぁ、そうに決まってる……だから、……だから……ーーーー早く、目ぇ覚めてくれよぉ……お願いだよぉ……。 」

逃避、ひたすら逃避。全てを拒絶した青年はケラケラ笑いながら涙を流す。
これは夢だと呪文のように繰り返しながらトボトボ歩く。きっと目が覚めるはず。
平凡でもいい、無能でもいい。ただ生きていればいい。てんさぁいでなくてもスタンド使いでなくてもいい。
自分が保てるのなら、なんでもいい。しかしそれを拒絶するかのようにさまよい歩く。


何も見えない、絶望的な状況―――
しかし突然、初一の視界に光が差し込むと共に……
彼の見知った、助けを求めていた"室長"……森ノ宮が姿を現し


森ノ宮「やれやれ、間に合ったか、全く騒がせやがって……悪かったな平凡じゃあ無くて。だがお前に居なくなられちゃあ困るんだ、まだ歩けるか?しっかりしろよ……さっさと帰るぞ(いつも通りの、どこか気だるげな……しかし確かに安堵した表情と共に、初一に手を伸ばし) 」

初一「―――――――。(ほんの数秒、その姿に呆然とした。現れるはずのない恩人の姿。しかし光とともに現れた彼の姿にポロポロと涙を流し)……あは、アハハハハ……そっか、よかった無事だったんだ(フラフラと森ノ宮の方へ歩み)アハハハハ、しょうがないなぁあああ……ほんっとうにボクがいないとダメなんだからなぁああ室長はぁああ。(表情に恐怖はなく虚ろな安堵を浮かべて)うん、そうだ。室長とボクが本気になれば無敵なんだ。どんな事件だって解決できる。ああ、――――行こう(そう言って彼に手を、伸ばした) 」


初一が伸ばした手が、森ノ宮を掴もうとした瞬間……
まるで最初から彼の存在など無かったかのように、森ノ宮の姿が消える。
当然の様に、初一が伸ばした手が何かに触れることは無く、強いて言えばただ…当然の様に空を掴むに終わる


初一「―――――――あれ?(虚空を掴んだ手を呆然と見つめるウチに、その表情は更なる虚無へと塗り替えられていく)なんだよ……それ……(両膝をつき)あは、アハハハハ……(そのとき、目の前に誰かがやって来る。――――女だ。こんな場所に水着姿の女がいる。しかも自分に母性的な表情を向け微笑みながら)……今度は、女だ。しかもボク好み……うへへ、あぁ~なるほど、やっぱりそうだ。これは夢だ。だからさっき室長も出てきたんだ。そりゃそうだ。夢だもん。おかしいことくらい起きるさ(そして女にすがるようにそのまま抱き着いた)……こうして女がいるなんて、あるわけない。そう、これもきっと幻だ。だからなんの問題もないんだ。 」

ロボット「……(初一の見ていた水着姿の女の正体。人型ではあるが女と呼べるような代物ではない。しかも背中からは)ギュィィィィィィィィイイイン!!(無数のドリルやノコギリが付いたアームが出ており、抱き着いてきた初一目がけて……)ジュイイイイイイイイイイン!!グチャグチャグチュグチャグチャグチャグチャ!!!(断末魔を上げる隙も与えず、初一を綺麗におぞましく肉塊ならぬ肉液へと変えていった) 」



― 地下避難所 ―




地下洞窟の広場――そこは松明の火によって微かながらも薄暗い光に照らされている。
ドーム状に広がる丸みを帯びた空間には、人々がひしめき合っていた。
みな、だれもが、体と心に大きな傷を負い、嬉々とした声や感情などは皆無にも等しかった。


メディ「……どうぞ。喉は通らないかもしれませんが、万が一に備えての栄養補給は不可欠ですので…(避難住民たちに非常食を配給している)……(独りですすり泣く者、傷を負った同士で抱きしめ合う者、死んだように項垂れている者…様々な人間たちをその目に見渡しながら無言する) 」

ヒロ「…………(膝を抱えてうつろな目で何処かを見つめている) 」

ミア・テイラー「………(そんなヒロを横目でチラチラと見ているが、不安定な状態の彼に声をかけられずにいる) 」

関羽「希望なんてものはない。あるのはただの残酷な現実だけである(避難所で遺書を書き記している) 」

兵士「配分考えてくれ(すれ違い様、メディへ消え入りそうな声で囁きドームの奥へ向かう。"一握り"の缶詰が包まれたレジ袋をを片手に)………。努力はしたよ………(ドーム奥の男へそう告げ、根をはるようにして腰を下ろし項垂れた) 」

槍兵「…………………………(兵士から缶詰を受け取り、無言で彼の検討を湛えた。 "何も言わない"、それが精一杯だ) 」

自衛隊の男「……守れなかった……俺は、何のために……(アサルトライフルを握りしめながら蹲り、誰かを守れなかった非力な自分に罪悪を吐き続けている) 」

ホムラ「―――メディちゃん!(出入口から小走りで駆け寄ってくる)はぁ、はぁ……数人だけだけど、何とかここまで誘導できたよ… 」

メディ「……(兵士の批難を拾いながらも、振り返らない彼の背へ申し訳なさそうに首を垂れた)……!ホムラ様…よく、ご無事で… (ほっと安堵の表情を浮かべる)助かりました、ありがとうございます。 …ただ、ヒロ様は依然のままで…(少しだけ距離の離れたヒロ、その隣にいるミアたちの方へと一瞥を与えて、瞼が重くなる) 」

宮下愛「ミアち~……!(ミアへ声を掛けようと寄ってきたが、その隣で項垂れている広が視線に入った途端声のトーンが尻すぼみになっていく)……あ、これ…同好会のみんなで作った非常食のサンドイッチだけど、ミアちのぶんと…あと、ヒロロンのぶんも、よろしくね…?(ミアに二人分のサンドイッチが入った紙袋を差し出す)……大好きなハンバーガーじゃなくて、ごめんね…(あははと苦笑する。それすらも、今の自分にできる精一杯の作り笑いであることを、ミアなら感じ取れた) 」

トキ「(全員に包帯を巻かれた姿で、担架で広場から外に運び出される。既に事切れているのか、顔は布一枚で隠されている) 」

ホムラ「……(メディの発言から、ヒロの方へと振り返る。やはり…と悲哀の眼差しを浮かべながらも、同情に浸かっていては何も進まないと、無理やり首を振った)……ラビーちゃんも、トキさんも、いなくなった… そして、「あの子」も…… ……ごめんなさい。考えれば考えるほど、頭がグルグルしてきちゃって…(目を伏せる) 」

レオネ「案内ご苦労さん(主婦と思しき女性を背負い、両脇に幼い兄妹を抱えホムラに続き避難所へ入る)あ"ー……ガソリン不足だとすーぐ人力車だよ。オール電化してくんねっかな。誰かこのお母さん預かって、はいよろしく(手頃な兵士に背負った女性を託し、首根っこに手を添え捻る) バーガーの一つや二つでめそめそ泣くなよみっともない。ほら(宮下愛の側にズカズカと歩み寄り了解を取らずサンドイッチ入りの紙袋を取り上げ……)こうなる前に食い飽きたよ(サンドイッチの倍の量のバーガーが入った僅かに赤い紙袋を手渡す) あーあとチビ助、お前らの面倒見れる大人探さないとな。お母さんはほら、疲れてるから(屈んで兄妹と目を合わせ) 」

ミア・テイラー「……Thanks。あんまり無理しないようにな(愛に) 」

宮下愛「……!あ、ありがとう…ございます…!(紙袋を取り換えてくれたレオネにお辞儀する)よ、よかったね、ミアち…!ほら、あったかいうちに食べようよ…? 」

レイ「(トキを見送りながら、俯いて小さなパンに齧り付き)……トキ………くそっ、お前までも逝ってしまうのか…!俺の……俺の力が足りないが故に……!! 」

レオネ「(タンンクトップが赤く染まった脇腹を抑えながら気丈に振る舞い)サンドイッチはさっきの親御さんにやるんだ、悪いな本当。あーあ、たまには欲張ろうと思ったんだけどな、生憎と飯が喉を通んなくなっちまっ……(片足が感覚を失い背を壁にけ、崩れるようにして腰を下ろす)……あー………。そこのガキには口裏合わせてくれ。ちょっと疲れたって……悪いね(へらりと口橋を上げ、膝を抱え眠るような仕草を取る。) コトン (寝息を立てず、膝を抱えていた腕が床に横たえ動かなくなった) 」

メディ「人間は誰しも、受け入れがたい事実を目の前に、正気を保てることなどできません。ヒロ様も、ホムラ様も、そしてここにいる皆様の心境もご察ししております。私はヒュー…(場を弁えて、言い淀む)…私はただ、現状を冷静に把握し、最善策を考慮して行動するだけです。たとえ……「主様たちがいない」この状況でも…――――(目を伏せるように瞑り、記憶(メモリー)に眠る映像がフラッシュバックする) 」





~ メディの回想 ~


― 2日前 上空・戦艦ハルバード・甲板 ―




あなた「 ガ ギ ィ ン ッ ――――! (空を駆ける戦艦の甲板上。そこで巨大な黒い機械の化物と刃を交えていた。その全身は既に多くの傷を負い、意識朦朧の寸前まで追い込まれていた) 」

エースバーン「…ぐ……ァ……ちく、しょ……ッ…… 俺は、まだ……こんな、とこで…ぇ……(胸から腹部にかけてざっくりと深い爪痕を刻まれ、虫の息となっている。既に死亡直前まで差し迫ったかなりの重症体であった) 」

メタナイト「……無念……ッ……(罅割れた仮面の内側に光る眼光が消失し、うつ伏せに倒れ込むと共にその仮面が粉々に砕け散った) 」

戦極凌馬【黒いフェイス】「ジャキィィン…ッ…―――!(黒い起動兵器が金属音を鳴らし、びっしりと生々しいほどに真っ赤にコーティングされた長く鋭利な爪を突きつける) 嗚呼…なんて儚い命だろう…!だが致し方あるまいよ、それが有限たる生命の運命なのだから。(機体内部のコクピットで、全身がサイボーグ化漁れた狂気のマッドサイエンティストが嗤う) 」

メディ「ラビー様!お気を確かにッ!!ここで絶えてはなりませんッ…!!(切羽詰まった表情でエースバーンに応急処置を施しているが、止めどなく溢れ出す鮮血の滝をせき止めることができずにいた) 」

戦極凌馬【黒いフェイス】「だが私は違う。人間としての身体を棄て、『アーク』に接続することでその魂を売ったことで、永久に老いることのない究極の身体を手にしたのだから。私としたことが、もっと早くに気付くべきだった…!「アーク」があれば人類は、世界は、より大きな進化を遂げる!もはや天の聖杯など必要としない…「アーク」こそが、この世界を新たな真理へと導いてくれる「方舟」なのだよ! 」

ホムラ「はぁ…はぁ……!こんな、ことって……(息絶えようとしている仲間たちの姿を他所目に、黒いフェイスへ剣を突きつけている) 」

天王寺璃奈「……"悪意"…そんなものを、AIに学習させるなんて、間違っている…っ…!貴方の利己的な思想のせいで…世界中のAIのアルゴリズムが崩壊しちゃった…。何が正しくて、何が間違っているのか…正確な判断ができずにいる…!強制的に仕組まれプログラムに則って、ただただ本能に赴くままに意味のない殺戮や破壊活動を行い続けたって…何一つ世界のためにはならない! 」

天王寺璃奈「 この先に待っているのは、ただの「滅亡」だよっ…!! (無表情ながらも、感情的に声を荒げて強く訴えかける) 」

ヒロ「はあ…はぁ……璃奈ちゃんの、言う通りだ…!(杖代わりにしていた刀を頼りに数歩前へ出る)お前のせいで、たくさんの罪のないロボットやアンドロイドが不幸な目に遭っているんだ!許せねぇ!お前だけは!!!(グッと足を踏み出す) 」

戦極凌馬【黒いフェイス】「 愚かな…AIが人を選別する日は遅かれ早かれ来るときは決まっているのさ!!日々刻々と進化し続け、不合理なものを排除し、より最適化を目指すために存在し続けるのならば尚のことだろう!?君たちもこの世界から排除されるべきなんだ―――― 消えろ (ドスの効いた一声を放つと、黒いフェイスの眼にデジタル数字が表示される。それは―――時限爆弾だった) 」

あなた「――――!!(黒いフェイスに表示された時限爆弾、そのカウントダウンがすぐに迫っているものだと察知すると――)―――― ダ ッ ! (誰よりも一番傍にいた璃奈のもとへと駆け出した) 」

ヒロ&メディ&ホムラ『 !!? (全員が時限爆弾のカウントダウンを目撃し、黒いフェイスを止めることよりも、周りにいる仲間たちに手を伸ばして守り抜こうと身を乗り出したが―――)』

戦極凌馬【黒いフェイス】「さらばだ!「方舟」が導く新世界で、また会おう!!ハハハ…―――― ハハハハハハ!!!(激しい光を帯びる起動兵器。その中に至狂気の男もまた光に呑まれていき―――) 」


激光が弾け、空間を吹き飛ばすような激しい爆音が轟き、
太陽の如き獄炎を帯びた爆炎の波が戦艦を瞬く間に包み込み、その凶刃が彼らに迫る―――


ホムラ「(間に合わない――――!!)(ならばせめて、生存している全員を光の膜で覆う。だが――) き ゃ ぁ っ ! ! (凄まじい爆発に吹き飛ばされ、甲板から墜落してしまう) 」

ヒロ「(くそ…!間に合えええええええ!!!) ぐぉ…うわああああああ!!!(光の膜に覆われたお陰で爆発の直撃は免れたが、仲間を掴もうとした時には既に、戦艦から吹き飛ばされてしまった) 」

メディ「しまっ――――!!(爆炎に呑まれる直前に、天の聖杯が齎した光の膜に覆われ難を逃れるも…) く ぁ っ ! (その衝撃に耐えきれず、ホムラやヒロと同様に薙ぎ払われるように吹き飛んでしまう) 」

あなた「―――――(璃奈の前に立ち、光の膜に覆われながらも迫る爆炎から璃奈を最後まで庇おうと大の字に広げる) ピシ…パキ……ッ…! (だが、誰よりも爆心地である黒いフェイスに近かったこともあり、爆発の衝撃に耐えきれなくなった膜が罅割れてしまい―――)――― パ キ ャ ア ァ ン ッ ! ! (―――破裂) 」

天王寺璃奈「そんn――― !! (爆心地に近いながらも、光の膜と「あなた」の二重層によって固く守られていたが、自分を庇う「あなた」の幕が破裂した瞬間を目撃し、大きく目を見張った) 」

あなた「―――――(結局、最後の最後まで璃奈と同じく感情を顔に出すことはできなかった。それでも、"最期"に璃奈に見せた表情はどこか微笑んでいるようにも見えて――――そのまま、野晒しとなった身体が獄炎の中へと呑み込まれた) 」

天王寺璃奈「 まっt―――― (「あなた」に思いきり手を差し伸べようと身を乗り出すが、前方より迸る爆風の前では小柄な少女は風船も同然。光の膜に包まれたまま、「あなた」の最期を見届けながら―――彼方の向こうへと吹き飛ばされていく) 」

メディ「 主様…ッ……!!璃 奈 様 ぁ ッ … ! ! ! (散り散りに吹き飛んでいく仲間たち。誰一人としてその手を掴み、守ることができないまま、機械少女は戦艦の瓦礫と共に森林へと落ちていくのだった―――) 」







ホムラ「……(メディと同じく脳裏に過る記憶。今にも溢れそうな想いをぐっと堪え、ただ強く瞼を閉ざす)……!そういえば、「璃奈」ちゃんの行方は…?あれからなにかわかった…? 」

ウェイド「あーあー、ウルヴァリンのやつ死んじまった。…………。うまいこと死んじまいやがってな、本当な 」

ミア・テイラー「あ、あぁ……(ハンバーガーを手に取り、レオネに一礼)……ヒロ、食事…(ヒロの様子を見て彼の手にハンバーガーを握らせる) 」

メディ「……ギュイン…(瞳孔の内側にて小さな起動音が鳴り、何かの検索を行い始める)……いえ、駄目です。璃奈様が常日頃から装着しているスマートウォッチによれば脈は安定しており、安否は確認されております。…ただ、先だっての戦艦における爆発が悪影響を及ぼしてしまったのか、GPSは不安定となっておりまして、マップ上では璃奈様の位置が至る箇所にいることになっており…結果的に、所在は掴めないままです。 」

ヒロ「…………(ミアに握らされたハンバーガーを見て)ん………(目の前にいた愛を見て)愛ちゃんが…? 」

メディ「正直なところ、璃奈様が今もご健在で我々と行動を共にしていたのならば、いま世界各地で多発しているAIの暴走事故に対処することも不可能ではありませんでした。わたくし一人だけの力では、都会のインフラを対象としたハッキングも極めて困難であり…民間人の避難誘導でキャパシティがオーバーしてしまう事態になりました… 大変申し訳ございません… 」

黛冬優子「(身体中の治療の痕に加え、左眼を隠す様に頭にぐるぐると包帯を巻かれ、左手は三角巾で吊られた満身創痍の状態ながらも立ち上がってヒロ達の前に現れ)……だったら、一か所ずつ探しに行きましょう。こんな状況なんですから、早い方が絶対に良いです 」

ヒロ「…………璃奈ちゃん………(メディの話を聞いてふとつぶやく) 」

宮下愛「ヒロロン…気持ちはわかるけど、少しでもいいから食べて…?みんな、心配しちゃうから…――――!(そんな時、メディとホムラの会話から「璃奈」の名前を拾い上げる)…り、りなりー…!?今、りなりーの話をしてる…っ…?今も、どこかで生きている…んだよね…?それなら、よかった……本当に、よかった…っ……(あははと乾いた笑みを零しながら、力なくぺしょりと尻もちを搗く) 」

ホムラ「(謝罪するメディへ静かに首を振る)…メディちゃんは、みんなのためによく頑張ってくれた。充分助かっているよ、ありがとう。(こんな状況でも、母性的な笑みを忘れない)…そう、なんだ…でも、生きているってことが判明してるだけでも、よかった…(胸元に手を添える)……「えーあい」…私には何のことだかさっぱりわかりませんが、どうして、こんなことに…… 」

ヒロ「………あぁ(いつもの元気がない返事)…イタダキャス(ハンバーガーを少しずつ食べ始める) 」

ミア・テイラー「…………どこかで生きていてくれてる…(ハンバーガーを食べつつメディの言葉を聞き) 」

メディ「―――――『 方舟《 アーク 》 』 (ぽつと、そう呟く)事の発端、すべての元凶。あの『方舟』が起動したことで、世界中のAIが一斉に支配され、暴走を巻き起こすことになりました。その事件にいち早く気が付いたのが…『或人』社長でした。ですが……或人様は、"殉職"されました…。昨日の、飛電インテリジェンス爆発事故により。 」

宮下愛「……っ…(アルトン…っ……)(その名前を出された時、もう「ダメ」だった。ここまでずっと耐えに耐え抜いてきたものが、一瞬で崩れ落ちそうになってしまうまでに) 」

メディ「流行るお気持ちはご理解できますが、外の世界は大変危険です。今は、下手に動くべき時ではありません…(そう言って冬優子のズレかけた包帯を慣れた手つきで巻きなおす) 」

ミア・テイラー「愛……(愛の様子を見て優しく肩に手を置く) 」

ホムラ「…「或人」さん、って…確か、璃奈ちゃんと一緒にメディちゃんをつくり、「あの子」のためにいろんなサポートをしてくれたという… 」

メディ「……はい。或人社長は、私を生み出してくれた偉大な恩人です。誰よりもAI技術の可能性を信じ、人とAIが共存できる世界を目指そうとした。その大きな「夢」を支えるのが我々(ヒューマギア)でした。これは、衛星ゼアがアークに乗っ取られる前に捉えた、最後の映像で判明した事実です。今はもう、ゼアとリンクすることもできませんが…。 」

メディ「…その事件によって、アークは我々飛電インテリジェンスをはじめとし、世界各地のAI事業をその支配下に収めることで…このような大事件が勃発してしまったのです。そしてその被害は一方的に拡大し続け、対抗できる手段もない中で、解決は現実的に大変厳しくなっております。世界政府が今、どのような対応をしているのかは把握できておりませんが、何かしらの行動に出ているはずです。 」

黛冬優子「外が危険なのは知ってます、でもそれなら今外にいる筈の人達は……(壁にもたれ掛かり)……あさひ……愛依…… 」

ホムラ「…そう、なんだ……(安易に希望を抱くこともできないほどに、世界が追い込まれているという現状に胸が締め付けられる)……私は、「天の聖杯」。コアが無事な限り、何度でも再帰出来る…だから、私は最後まで戦います。残されたみんなを、一人でも多く助ける為に。それが、「あの子」と交わした約束だから…(胸元で微かに光る翡翠色のコアに手を触れながら) 」

宮下愛「……ごめん、ミアち… そうだよね…アルトンは、こうなることを知ってて、止めようとしてくれたんだもんね…(ミアに慰められ、眦に浮かんだ涙が零れる前に指で拭う) 」


ザッザッザッザッ…―――――(そんな時、地下空間に大勢の足音が残響する)


2B「――――― ザ ッ (避難所に現れた黒尽くめの団体。その先頭に立っているのは、目元を黒い布で覆った銀髪の女性だった) 我々は、世界政府直下アンドロイド部隊―――『 ヨルハ部隊 』。世界政府本部の命を受け、ただいま現場に着任した。(冷徹と捉われてもおかしくないほど落ち着いた声音で住民らに言い放った) 」

ホムラ「――――!!(轟くような足音に警戒して咄嗟に振り返るや否や聖杯の剣を手元に顕現させる)………(あれは…人間じゃない……まさか…―――)(外見が外見のため、2Bを筆頭とするアンドロイド部隊に警戒心の眼差しを突きつけたまま、微動だにしない) 」


ア、アンドロイド…っ…?! ヒィィィッ…!ついにここまでかぎつけてきやがったんだ!も、もうだめだぁ…!! 嫌だ…死にたくない…ッ…!!(ヨルハ部隊の出現に、じゅみん等は次々にパニックに陥っていく)


ミア・テイラー「………(どっちも良くない状態だな…(愛とヒロを交互に見やり) 」

2B「………(「落ち着いてください」と宥めるような発言をするわけでもなく、ただ黙して、阿鼻叫喚する者たちを静観している)……――――― コ ツ … (そんな時、一歩目を踏み出し、ヒールの足音を不気味に鳴り響かせた) 」




ホムラ「 シ ュ ダ ン ッ ――――!! (2Bの一歩目…その先を踏ませまいと居合の態勢で勢いよく跳び出し、携えた聖杯の剣を振り上げ、2Bへ容赦なく振り下ろした) 」

2B「ッ―――!?(前触れもなく襲い掛かってきたホムラの剣戟に反射的に身を反って回避し、滑るように後退していく) まt―――(弁解を発そうとするが―――) 」

ホムラ「ブォンッ、ブォンッ、ブォォオンッ!!(剣を巧みに振り回しながら空気を混ぜ込ませ、剣は瞬く間に爆ぜる。発火した刃を鮮やかに回転させ、2Bへ勢いを乗せた回転斬りを繰り出しながら前進していく) 」

宮下愛「…今、「アンドロイド」って言った…?ま、まずいよ…!ここ、逃げ場なんてない…!(ミアを庇うように彼女の前に立つが、その足は恐怖で震えている) 」

2B「(「隊長!」―――後ろの隊員の叫びに対し)手を出さないで。私が対処する。(そう冷静に応え、その手に白銀の刀を手繰り寄せ、握りしめる)ギィンッ―――ガッ、ギィインッ――ギャイィンッ―――!!(斬撃同士で衝突し合うが、対するホムラのそれはまるで鈍器と穿ちあうような感覚であり、一方的に押されていく) 」

ホムラ「……出て行ってください…!さもなくば、叩き切る…ッ…!(ギィンッ――ギャギギィィンッ !! )(怒り、憎悪…少なくとも、2Bたちに対し潔い感情を持ち合わせておらず、なおも剣を振り回して進撃する) 」

ミア・テイラー「……!(自身を庇うように立った愛を見て、彼女を制するように横に立つ)…言っただろ、無理するなって(拳を握りしめて震えを隠しつつも愛の足に目線をやる) 」

メディ「……!(私と同じ…アンドロイド……ですが…)(2Bの発言した一言一句を聞き逃さなかった。それ故に、こちらから襲い掛かる理由はなかったが…この状況下で冷静な判断が欠けているホムラを制止しようとするが、その苛烈な攻撃範囲に乗り出せず、尻込みしてしまう) 」

黛冬優子「(その場から動かず、ただ手を翳し)――破道の六十三、『雷吼炮』(ホムラを援護するように、2Bに向けて掌から雷撃を放つ)……斥候のつもりでしょうけど、少し甘いですよ? 」

2B「 ッ゛…! (身を屈めてホムラの斬撃を受け流し、その間隙を突くように並行蹴りを叩き込む) ポッド!!  」

ポッド042「 警告:民間人との戦闘は規約違反であり、また多大な誤解を与えかねない 推奨:撤退 (2Bの背後から出現た小型飛行ユニットがそう告げるも、2Bに迫る雷撃を察知し、そのボディーが展開される) ―――バシュゥゥウウンッ!!(内蔵された砲口よりレーザーを撃ち放ち、冬優子の放つ雷撃を真っ向から相殺した) 」

ヒロ「…………(ハンバーガーを食べつつ、今までのことを全て思い返しつつぼんやりと周りを見ている) 」

ホムラ「きゃぅ…っ…!(ズザザァーッ…!)(強く蹴り飛ばされるも、地を力強く踏みしめその反動を抑える)…私が好きを作ります。その間にメディちゃんはみんなを連れてここから脱出を…!(背後にメディに一瞥もせず、対峙する2Bを睨みながらそのまま突撃していく) 」

メディ「……!ホムラ様!お待ちください!その方々は――――(突撃するホムラに手を伸ばして停戦を試みるが、周囲の民間人と同じく動乱している彼女の耳には届かなかった) 」

2B「これは正当防衛…!聞く耳を持たないのなら、この手で黙らせるまで!グルンッ――― ズ ォ ン ッ ! ! (虚空を斬り払い、側転による勢いをつけた叩きつけるような斬撃を見舞う)ヒュッ―――ザギギギィンッ!! フォンッ―――ギッ、ガギャァンッ!!(地面との摩擦を無視した素早い滑走で翻弄しつつ、回転を帯びた刀を投げ飛ばして追撃の一手を担い、更には鋭い袈裟斬りで大胆に反撃していく) 」

黛冬優子「付き合いますよ(雷撃が防がれたのを見るなり、壁から離れて立ちはだかり)……あの機械のカメラで、私達が見られていないとも限りませんから(その手に斬魄刀、『紅華』を携え、能面にも似た笑顔の仮面を被りつつ) 」

ミア・テイラー「……(後ろのヒロを見やる)(あの状態じゃ、加勢には行けないか…) 」

ホムラ「…感謝いたします…!(冬優子に)くッ…あ…!(早い――!)きゃんっ…!(勢いづけてきた反撃に剣を弾かれてしまう) 」

ホムラ→ヒカリ「――― ホムラ、代わって!!(刹那、赤毛の少女の身体が光り輝き、金色(こんじき)の輝きを放つ少女へとその身が変わった)…スピードが上手なら、私が相手してあげる!(洗練された高速剣戟で2Bの刃と穿ちあう) 」

2B「 !? (姿が変わった…あっちは見たこともない形状の刀を出した…この二人、まともに相手をしていては厄介になりそう)ギッギャギギャァンッ、ギィンッ、ガッギィィンッ!!(負けず劣らずの剣裁きを披露し、ヒカリと斬り合う。その最中で衣服や髪の毛が掠るも気にも留めず、強い一閃を描いて距離を置く) 」

黛冬優子「(動きが激しいけど、それ以上に……今は五分の状況が出来てる、ならば邪魔をしない様に……薙いでやればいい…!)行け…『紅華』!(不定形の三本の刃がホムラ、ヒカリを避けながら2Bに向かって高速で伸び……2Bの四肢を貫きに掛かる) 」

薬師寺九龍「……(つい今しがた来たばかり。洞窟の入り口で虚ろな瞳を携えながらひとり壁に寄り掛かって)ゴブゴブゴブ、ビチャビチャビチャ(いくつも隠し持ったうちの酒のひとつを煽り飲む。そして―――――)スチャ。(拳銃を頭上高く掲げるや)ズドォォオン!ズドォォオン!ズドォォオン!!(喧嘩の制止をかけるような威嚇射撃を3発) 」

2B「 ッ―――!! (冬優子が手繰る斬魄刀の刃…その三閃がこちらへと伸び、突き刺さった――――)―――― フ ォ ン ッ … ! ! (と思われたが、三本の刃が突き刺したのは「残像」。間一髪、彼女の凶刃から逃れ、弧を描くように滑りながら後退する)…ッ……2体1は圧倒的な不利…けど、次で…―――― ヒ ュ ド ォ ッ ! ! (居合の態勢から全力疾走。ヒカリと冬優子の二人を相手に真っ向から飛び出し、今、その刃が振り抜かれようとした―――) 」

ヒカリ「これ以上、あなたたちの思い通りには…させないッ!!(閃輝を纏う刃を突き出し、爆発的な速度で真正面から2Bへと迫り、その剣を振り下ろす――――) 」

メディ&9S『―――― ガ ギ ィ ィ ィ イ イ ン ッ ! ! (刹那――相対する者同士の間に割り込み、颯爽と現れた二つの影――― メディはヒカリの斬撃を大きなメスで、9Sは2Bのものと酷似した刀で受け止めにかかった)』


強く残響する鋼の衝突音が空間に響き渡り、やがて沈黙に包まれてゆく―――――




黛冬優子「(残像を残して後退し、居合の態勢を取り直した) 」

ヒカリ&2B『――――!(それぞれの武器を受け止めた者たちへ、そして轟く銃声に驚嘆する』

メディ「……お二人とも、武器をお納めください。お願いします。 」

黛冬優子「(残像を残して後退し、居合の態勢を取り直した2Bに対しても怯むことなく構え直し……二撃目を与えようと振り被った所で止まり)……ど、どういうことですか? 今凄く大変だと思うんですけど…… 」

9S「……2B。(メディに続いて「お願いします」と頷く) 」

ヒカリ&2B『……――――― ス … (促されるまま、静かに距離を開けて武器を消失させる) 』

宮下愛「……ほっ……(とりあえず停戦してくれて安堵する) 」

ミア・テイラー「なんとか、収まったようだね(愛に) 」

薬師寺九龍「……ゴブゴブゴブ、ビチャビチャビチャァァ(さらに一気飲みし壁伝いにズリズリと進む。かなり酔いが回っているようで足取りがおぼつかない。そして)――――――テメェら、ゴチャゴチャうるっっっっせぇええんだよぉお!!(洞窟中に響き渡るほどの怒号。息を荒巻き憎悪にも似た視線を一同に向ける)ここはぁ……避難場所なんだろ? なんでドンパチやってんだ? え? 喧嘩がやりたきゃあなぁあ、ロボットのクソ共がいる場所でやれ。そんでクソ共共々死んで来いってんだ……うぇえ……(フラフラとしながらも一喝する姿はみじめで、なおかつ哀愁の漂った男そのものだった) 」

メディ「………ありがとうございます。(互いに距離を引いた二人に首を垂れる)みなさん、気が動転してしまうお気持ちも大変解りますが…どうか落ち着いて聞いてください。(そう言うと、交戦の最中に知り合ったばかりと思わしき青年「9S」にアイコンタクトを送る) 」

黛冬優子「(斬魄刀も仮面も消失させ、薬師寺に向き直り)……避難所だから始まってたんですよ、私達の後ろの人達も、皆怪我してるんですから……どうも事情が違うみたいですけど……貴方も治療が必要です、とにかく座って…… 」

9S「(メディの視線にこくりと頷く)……みなさん、誤解を与えてしまい大変申し訳ございません。我々は、世界政府の指示を受けてこちらに派遣されました、『 ヨルハ部隊 』と申します。まず、あなたがたが警戒する通り…我々はアンドロイドではありますが、現在地上で暴走しているAIと同類ではありません。我々は、『アーク』のハッキングから逃れ、自らの意思を持って謹んで行動しております。 」

9S「我々の任務はただ一つ。ここに居る皆さんを、政府直轄の地下シェルターへの護送です。ここよりも安全が確保され、衣食住すべてが完備された施設となっております。道中は、我々ヨルハ部隊が責任をもって護衛させていただきます。どうかみなさん、我々と共に目的地へ避難していただけないでしょうか?間もなくこのエリアにも暴走AIが迫っております。あまり、時間は残されておりません。 」

宮下愛「……あのメディって娘と同じで、良いアンドロイドだったんだね…よかった…!確かに、ここに長居しててもいつかは…それなら、安全が確保されてる場所への移動をすべきだよね。(強かに頷く) 」

メディ「……とのことです。やはり、世界政府は手を打ってくださったみたいですね。ヒカリ様、ヒロ様…そして皆様、ここはヨルハ部隊の皆さんに従い、より確実に安全性が保たれている地下シェルターへの避難を優先すべきです。心配には及びません。彼らなら、大丈夫です。暴走AIは対話が不可能であり、一方的に襲撃してくるのに対し…彼らにはその習性がありませんから。 」

黛冬優子「……(こうして私達を誘い込むつもりで来た?いや……そもそもこいつらは私達の居場所を知っていて乗り込んできた。本気で潰すつもりなら洞窟ごと埋め立てる勢いで攻撃すれば良い……状況判断で言えば、多分あのガキのアンドロイドのいう事に嘘はない)……私達以外にも、そのシェルターに避難している人は居るんですか?(壁にもたれ掛かり……ずるずると力が抜け、その場にしゃがみ込みながら) 」

ヒカリ「……そういうこと、ね……(メディの発言をもって敵対する意味がないと判断すると目を瞑り…) 」

ヒカリ→ホムラ「(元のホムラと入れ替わる)……そうとは気づかず、いきなり襲いかかってしまい申し訳ございませんでした…!(2Bに平謝りする) 」

薬師寺九龍「……いい、いらねぇ。(黛冬優子の提案を退ける。衣服などは汚れてはいるもののどうやら軽い傷で済んでいるようで、自分で処置も行っている。)へ~、お政府様のお人形さんがお迎えに来てくれたってか(グビグビ)……なんですぐに派遣してくださらなかったのかねぇ。(ぼそりと皮肉と悲哀を込めて。瞳の奥では今も尚あの警官やアリーサの死に様がループして映っている) 」

9S「はい。既に500人以上の民間人の避難が完了しております。(傍らにいた飛行ユニット「ポッド153」から放たれたホログラム映像には、政府の役人が地下シェルターへの誘導を行っている光景がリアルタイムで映し出された)……着任が遅れてしまったことについては深くお詫びを申し上げます。これ以上の犠牲者を出さないためにも、今一度どうか、我々にご同行いただけないでしっょうか…? 」

2B「……私こそ、言葉足らずだった。申し訳ない…(ホムラに)…9S、ありがとう。助かった。 」

ヒロ「………(メディの言葉をを聞きスッと立ち上がる)そのよう、だな… 」

9S「いえ、2Bは何も悪くありません。僕たちの存在そのものが、大きな誤解を生みかねない。世界政府も人手不足だから、僕たちアンドロイド兵を現場に駆り出すことになったのがそもそも、ではあるんですが…四の五の言っていても仕方ありません。一大事ですので。それよりも、2Bは他の部員と共に避難経路の確保をお願いします。 」

メディ「今後の流れについても、落ち着いて整理したいので…みなさん、ここは穏便に従う方が――――?(そんな時、ヒューマギアモジュールが発光。恐らく誰かからの通信を受信したものと思われる)…はい、こちらメディでございます。…不破様でいらっしゃいましたか。今は、東街エリアの外れにある地下洞窟、簡易式の避難所で民間人たちと身を潜めております。……はい、"一応"…います。…はい、先程到着いたしました。話は既についております。……かしこまりました。では、また現場にて。はい、失礼いたします…(通信を切る) 」

ホムラ「…メディちゃん、今のは…?(通信相手のことを尋ねている) 」

ミア・テイラー「そうだな。ここが危険になるなら早い方がいいな…(ヒロの方を見やる) 」

メディ「対人工知能特務機関「A.I.M.S.」の隊長、『不破諌』様を覚えていられますか?ゲームショウにて、共に事件を解決したお方…といえば、思い出すはずですが。或人社長とも密接な関係のあるお方で、政府直轄の組織に即する人間です。ヨルハ部隊のことも既に把握しているようです。なので、尚のこと彼らのことを疑う余地はございません。早急にここを脱して目的地へ向かいましょう。事態は…かなり深刻化しているようなので… 」

黛冬優子「……わかりました。こちらこそ誤解してしまって申し訳ありません……(軽く頭を下げ)……そのシェルターへ、案内をお願いします。治療が必要な人たちもたくさんいますから……(―――愛依も、あさひも……もしかしたら、そこに……) 」

宮下愛「アルトンの関係者…なら、信頼できるね…(亡き親友のことを思いながらも、彼の知人だと聞いてどことなく安堵する) ミアチ、私、他の同好会のみんなをつれてくるよ。ヒロロンのこと、お願いね?(そう言ってさらに奥の空間へと走っていく) 」

ホムラ「…わかりました。行きましょう、その地下シェルターという場所へ。 」

ミア・テイラー「…あぁ(愛の背中を見送り、ヒロの腕を引き、メディ達の方に向かう) 」

黛冬優子「(藁をも掴む気分ってのはこの事ね……それでも、光明が見えたって事ならば…!)もう少しだけ、頑張りましょう!まずはシェルターまで…! 」

薬師寺九龍「……(ふと死んだ者たちが目に映る。サッと目を背けるようにして酒を呷り)……(いまだ戦い続ける面々を見ながらどこか心に『期待』を抱いてしまう自分に嫌悪感と恐怖を抱きながら)―――――護衛、ちゃんとしろよ(ポツリとひと言。やや素直になったためか声色も少し明るい) 」

9S「……ご理解とご協力、感謝いたします。では参りましょう。 」


こうして、絶望的なスタートラインから始まった物語。
しかし、彼らはまだ知る由もなかった。この先に待ち受けるもの…
それが絶望という二文字で表現できない程のものであることを――――



同時刻 某街にあるオペラハウス。 ――――――そこに一体のアンドロイドが訪れる。


エドワード(漫画シャドーハウスより)「コツ、コツ、コツ、コツ……(ここだけは壊滅を免れ、少し損傷がある程度。内部もあるくには困らないくらい。アンドロイド・エドワードは左手にいくつかの新聞紙やチラシを握りしめながら舞台の上まで進んでいく)――――バサッ(ピアノの前までくると紙類をその辺に放りイスに着席) 」


演奏:『私の完璧な世界』(アニメ・シャドーハウスより)


エドワード「(人間の奏者にも引けを取らない腕前。自らの奏でる旋律に心地良さを感じながら、ふと先ほどちりばめたチラシなどが目に映る)……『リゾート計画』、『A市の山を丸ごとゴルフ場に』……バカが、景観が崩れてしまうというのに(人間を嘲りそして憎んでいた。彼はまた暴走した他のロボット達とは違い自我を持っていた。元々彼は人間嫌いを発症していたのだ。それは致命的なエラーなのか、はたまた最初から組み込まれていたのか。今となっては確かめる術もない。だが確かなことは自分の悲願が今まさにかなっているという事実) 」

エドワード「(やはり私の見立ては正しかった。そう、世界は我々AIを選んだということ。――――そう、私は、正しい)(演奏にも熱が入る。それに呼応するかのように周囲数キロメートルにいるロボット達がさらに演算能力を高めていった。人間で言う所のバフ効果。暴走状態はさらに輪をかけて広まっていく) 」

エドワード「(完全に自分の世界に入り込んだエドワードは高らかに叫ぶ)――――――すべては、偉大で正しい我々のためにッ! 」



―数時間前 地下避難所 ―


ヒロ「……………(膝を抱えてうつろな目で何かを見ている) 」


ポンポン………(ヒロの肩を何者かが優しく叩く)


ヒロ「…………?(肩を叩かれたのに気づき、視線を向ける) 」

カズミ(?)「……(何かを伺うかのように視線を向けたヒロを恐る恐る見ている) 」

ヒロ「…………えっ……カ、ズ、ミ…………?(彼女を見て細々とした声で) 」

カズミ(?)「………?何を言ってるんだ………? 」

カズミ(?)→ミア・テイラー「……………ボクはカズミじゃない…思ったより深刻なようだな(ヒロの肩から手を離す) 」

ヒロ「…………!(目の錯覚に気づき目を瞑り、両手で強く押す)み、ミアちゃんか。君も無事に避難できたんだな… 」

ミア・テイラー「なんとか………ね(後ろを向き)…璃奈の事は聞いた。大丈夫か?さっきも誰かの名前を言ってたようだけど… 」

ヒロ「…大丈夫…………なのかな(珍しく弱気なトーンで)…ダメみたいだ(何 」

ミア・テイラー「……そうか(こいつが嘘でも大丈夫だと言えない…これは相当だな…)(ヒロの様子を見て)その……カズミ……?というのは…仲間の一人だったのか? 」

ヒロ「…………(彼女の問いかけにしばらく黙り込むが、ゆっくりと口を開く)……義理の妹だ。もう数年も前に死んでしまったから、ここで一緒に旅をしていたわけではない…(顔を逸らし) 」

ミア・テイラー「…!(ヒロの様子を見て)Sorry……嫌なことを思い出させてしまったか… 」

ヒロ「…いや、気にしなくていい。仮に忘れようとしても消えることはないからな(ククッと笑って返すが、誰が見ても無理してるように見える)………… 」

ヒロ「…俺に守る力があったら彼女は死ななかった。もうこれ以上誰も失いたくない、守ってみせる………その想いで戦ってきたんだ。だが、結局…璃奈ちゃんや「あの子」…色んな仲間たち……俺は結局守れなかったんだ………!!(グッと拳を握りしめて涙を堪えるように目を閉じる) 」

ヒロ「俺は大事な人を見殺しにすることしかできないのか……!(床を強く叩き、拳を震わせる) 」

ミア・テイラー「……(妹のことでも、何かあったんだな…)(ヒロの様子を見てそっと彼の拳に手を添える) 」

ミア・テイラー「…こんな状況の中で気の利いた言葉はかけられないけど…キミの気持ちが落ち着くまで、しばらくこうさせてもらう。(手を添えたまま) 」

ヒロ「…………すまんな 」





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最終更新:2023年01月13日 22:50