氷冬「(コツ…コツ…)ふぅ…(さて、と…次の試合まで時間があるからまずはフーナたちと合流して――――)(会場から出てくる)」
スカーフィ「―――――つーらーらー!!(がばぁーっ!)(会場から出てきた彼女を待ち構えていたかのように勢いよく抱きつく)」
氷冬「ひゃ…っ!?す、スカーフィ…っ?(突然の出来事に困惑)久しぶりだね。ふふっ。(彼女の頭を撫で)」
フーナ「もーっ、スカーフィったら。……氷冬、元気だった?(ふふんと明るい笑みを浮かべて迎える)」
スカーフィ「氷冬ー!会いたかったよ~!!(ぎゅー♪)ん~…♪ひんやりして気持ちい~♪(すりすり)」
氷冬「……!ええ、フーナも元気そうね。(懐かしの二人と再会し表情が和らぐ)うぅ…離れなさい…(汗)(ぐいぐい)」
フーナ「本当に見違えたね…とても綺麗になってる。それに強くもなってる…先の試合を見て何もかもびっくりしたよ!」
氷冬「ありがとう。八ヵ月…長い様でとても短かった気がするわ。まだ完璧とはいえないけれど、確かにあの時よりも強くなった実感がある…今度こそ、絶対に勝つよ。(凛とした目で向き合う)」
スカーフィ「かぅ~、その意気だよ!氷冬!(むぎゅー)」
フーナ「ふふっ、今の氷冬を見ているとなんだか頼もしくなるね。…まあ、とりあえず!話したいこともいっぱいあるから、まずはランチでも食べに行かない?」
スカーフィ「かぅ、さんせーっ♪(元気よく手を上げて)」
謎の一頭身「 ザ ッ ――――――(三人のもとへ颯爽と現れる)再会を喜んでいるところすまない。…君たちに大事な話がある。」
氷冬「ええ、いいわね。それじゃあ……?(突如として現れた謎の一頭身の方へ振り返る)私たちに何か用かしら。貴方は…?」
スカーフィ「かぅー?(聞き覚えのある声に小首を傾げる)…あっ!その声…もしかして…!」
フーナ「スカーフィ、知ってるの…?」
謎の一頭身→
メタナイト「ああ、スカーフィとだけは何度も面識があるからな。(全身を覆っていた黒いローブの一部を上げ、素顔を現す)――――――…私だ。」
氷冬「貴方は…かの有名な剣士の…!(
メタナイトを前に若干興奮している)」
フーナ「あっ、久しぶりだね…!(
新世界編を始め、様々な事件に友に挑んできた過去を振り返りながら
メタナイトに会釈する)」
メタナイト「ああ、君たちとこうして相見えるのも随分と久しいことだ。…とはいえ、今は少し急を要している…(辺りを右往左往と身私、ローブを再び被さる)ここだと人目につく。私に着いてきてほしい…君たちに、話したいことがある。昼食も用意している。…こっちだ。(そういい、三人を会場から離れた場所へと誘う)」
メタナイト「―――…ここだ。(着いた先は古い宿屋の一室。三人と共に室内へ入る)そこに昼食用の弁当がある。好きなだけ食べるといい。(三人の顔が見える位置へ移動する)…それぞれ、忙しいところ集まってもらってすまない。世間で言う『英雄』、あるいはそれに近しいと私自身が判断した者に集まってもらったわけだが、君たちがまさにそうだ。」
フーナ「『英雄』…噂にはよく聞いていたけれど、私たちってそうなのかな…?実感はないけど。(人差し指で頬を掻きながら)」
氷冬「んー、そうね。まあ私はそういう称号なんて気にしていないけれど。」
スカーフィ「はふぅー?『へーゆー』?ほれっへほほいいほー?(訳:かぅー?『英雄』?それって美味しいの?)(たくさんの食べ物を口いっぱいに頬張りながら喋る)」
メタナイト「君たちが本物の『英雄』であろうとなかろうと、それに値するに相応しいほどに不屈の精神を持っている。その精神を持っている君たちにこそ、聞いてもらいたい話があるのだ。…本大会、いや…――――― 十刀剣武祭の優勝賞品にもなっている『
クロリアー』のことは知っているな?」
フーナ「
クロリアー…私の上司(デイリン)から話は聞いたことがある。"罪剣"と謳われた、呪いの剣…その剣を握った者は剣に潜む魂に乗っ取られて、その者を血見まみれにするという恐ろしい伝説があるって聞いたよ…」
氷冬「物騒な話ね。剣士としての意見では、
ケイオスにおいて最強と言われている宝剣だと聞いているわ。大会に出るまでは、実物を目にしたことがなかったけどね。」
スカーフィ「かぅ…ボクは全く知らないよ。(はむはむっ)(サンドイッチを頬張る)」
メタナイト「そうか…(各々の意見を聞いて)…そうだな、まずは、
クロリアーのことから話すべきか…――――」
『
クロリアー』―――いつの時代から存在していたのか謎に包まれた剣。
クロリアーを最初に手にした人物は、その剣に潜む魂――混沌世界の負の感情――に取り込まれ、殺意でしか行動できなくなる。
不屈の精神があれば
クロリアーのその呪いを拭い去ることもできる。しかし、実際そのような精神を持つ者は少ない。
ある時、ある男が某国の外れで偶然にもその剣を発見した。剣を手にしたことで精神を蝕まれた彼は、その国の王女が持つ特別な力、『陽』と呼ばれる力により、
クロリアーの呪縛から逃れることが出来た。以来彼は、その剣を封印することにした。
後に
クロリアーはその国の王の手に渡った。その剣を手にした王はたった一人で紛争地帯の敵を駆逐した。それも、命を殺めることなく。
紛争を鎮圧できたが、
クロリアーに精神を奪われた王は、王女を殺害した。そう、
クロリアーは憤りを感じていたのだ…王女が持つ『陽』の力に。故に、王の身体を奪い殺害を図ったのだ。
しかし王女の、王への愛の力が
クロリアーの呪縛を打ち払い、彼女は自らの死と引き換えに王を罪剣から救い出したのだ。
そして王によって、
クロリアーは深い海の底へと沈められたのだった。
それ以来、偶然
クロリアーを拾った戦士たちもいるが…王女の『陽』の力を永続的に受け継いだ『ある若き男』によって、罪剣が人の精神を喰らうことはなくなったのだ。
フーナ「そんな凄惨な出来事があったんだね… ということは、今の
クロリアーには呪いの力が宿っていないということになるの?」
氷冬「それなら、罪剣ではなく…ただの宝剣になるわね。大会運営陣が、そんな危険な事例を持つ
クロリアーを手に入れられたのもその為なのかしら…」
メタナイト「いや、実際は違うのだ。…『レインド』を知っているな?君たちも共に戦ったことがあるだろう。彼は長期的に
クロリアーを所持していた。それは、例の王女の加護を受けたこともあり、唯一
クロリアーを使いこなせたからだ。」
メタナイト「しかしそれは、彼だからこそ使いこなせたものであり…それ以外の者は別だ。本来なら
クロリアーは王女の加護を受けた彼のもとにあるべきなのだが、ある輩に奪われてしまったのだ。それ以降は
クロリアーの行方は謎に包まれていたが、今となって、この大会に姿を現した…ということだ。」
氷冬「へぇ…そういうことが…ねぇ…(あらゆる人の手から手へ…
クロリアー、私が想像していたよりも大きな何かを抱えているかもしれないわね。)」
メタナイト「そして、ここからが本題だ。彼、レインドにしか扱えないその
クロリアーが今、大会の優勝賞品となっている。王女の『陽』の力、そしてその加護を受けていない他人の手に渡れば、再び
クロリアーは持ち主の精神を喰らい、過去の惨劇を繰り返すことになるだろう。私は
クロリアーが誰かの手に渡るのを是が非でも阻止したい。」
スカーフィ「ふぅん………!(何か既視感を覚えたのだろうか、あることを閃く)じゃあさ、その
クロリアーを奪っちゃえばいいじゃん♪(ぴこーん☆)」
フーナ「ちょっ、本気で言ってるのスカーフィ…!?(汗)」
メタナイト「確かに…惨劇を回避するには、運営陣から
クロリアーを直接奪うのが良いだろう。世界政府も関与していない非公式の大会だ、実行を移すにしても問題はあるまい。しかし、会場の表舞台に飾られているあの
クロリアーは、実はレプリカなのだ。本物の行方は分からないが、必ず会場内の何処かにあると踏んでいる。そこでだ。君たちに協力してほしいことがある。…なんでもいい、
クロリアーの在処、或いはその在処を指し示すような小さな情報でもいい…それを入手してほしいのだ。」
氷冬「なるほどね…確かに今の話を聞いていたら他人事じゃないわね。それに…
クロリアーのこと、興味が湧いてきたし。いいわよ、協力するわ。」
フーナ「私も…神界政府の一員として、罪剣は放っておけない。」
スカーフィ「そっか…だから、姿を隠して、出場者として潜入していたんだね…
メタナイト。(納得したようにコクリと頷き)…かぅ、誰かが傷つくのは嫌だ…ボク、その
クロリアーを探してみるよ!」
メタナイト「……!みんな…感謝する…!(深く頭を下げて)ああ、一刻も早く
クロリアーの在処を把握しなければ… なぜなら…仲間の情報によれば、我々とは別の理由で、
クロリアーを狙っている者がいるらしいからだ。」
メタナイト「確信的な根拠はない。だが、私の様に、
クロリアーの為だけに選手として会場内に潜入した者がいることを知っていてほしい。その者が何を企んでいるのかは未だ分からないが、なんにせよ、
クロリアーは我々が取り戻さなければ、必ず惨劇は起きる!試合を終えた合間でもいい、各自で探索を行ってほしい。何かあれば、私は常に控室で待機するようにしているから声をかけてくれ。それから、頼んでおいてこのような事を言うのは無粋だが、くれぐれも…無茶なことはしないでくれ。」
フーナ「わかった。何かあったらちゃんと報告するね。氷冬はなるべく試合の方に集中してて。私とスカーフィの二人でできるだけ多くのことを探ってみるから。」
氷冬「ええ、ありがとう。……(呪いの剣…そんなものを景品とする運営の意図とは一体…あるいは本当に何も知らないのかしら…)(天井の一角を見上げて考え耽る)」
スカーフィ「かぅー!なんだか張り切ってきたよー!絶対に見つけ出そうねー!(先程の緊張感などすぐに消し飛んだかのように、無邪気な子供の様に意気揚々と弾む)」
メタナイト「(スカーフィを見て呆れたように顔を振る)……そして、氷冬。」
氷冬「……?(「何?」と目を見開いて顔で応える)」
メタナイト「…強くなったな。共に戦ったあの時と比べ、随分と逞しくなったものだ。…いや、君たち三人、大きく成長している。かの『英雄』たちの姿が見られなくなったが、時代は進む……君たち新たなる戦士が、これからの時代を築き上げていくのだと思えば、私も安心するものだ。フフッ…」
氷冬「……伝説の剣士にそう言われると、恐縮だわ。(照れくさそうに)」
フーナ「そうだね…私たちはいつだって三人一緒だった。(二人の顔を交互に見つめながら)」
スカーフィ「これまでも、これからも、ずぅーっと!だよっ♪かぅー♪」
メタナイト「……(強く結ばれた絆か… ハルシオン、お前が目指していた輝かしい時代は、すぐそこまで来ているのかもしれないな…)(三人の少女を見つめて、心の中で喜々とした感情を覚える)……さて、そろそろ試合も動いてくる頃だろう。各自手分けして探索に当たってくれ。そして氷冬、武運を祈る。」
氷冬「ありがとう。(…
クロリアーは必ず、私がこの手で…―――――)」
その頃、試合会場では…
――― 第二十一試合 ――――
×××「クスクス…(貴族衣装の少年。腰元に携えた二刀の内の一振りを片手で構え、空いた片手を背後に回し、不敵な笑みを零し続けている)」
ストライク「ゼェ…ゼェ……(両腕の鋭い鎌を地面に突き立て、傷だらけの身体で跪いている)」
キリギリス「ここまで自慢の刃で猛威を振い続けてきたストライク!!しかしッ!相手の『フォウ』には傷一つ負わせられず、反撃を喰らうばかりだーーッ!!!これはどうしてしまったのかァッ!?」
剣士「また
ゴルドニアファミリーの一人か…しかし、あんな餓鬼は初めて見たぞ…(興味深そうに×××を客席から見つめている)」
大剣使いの男「二男の「フォウ・ゴルドニア」か…俺もこの目で確かめたのは初めてだ。四男(シグス)がいるということは、当然その上もいるはずなのだが…しかし、妙だな。(訝しんだ目つきで×××を見据え)
剣士「何がだ…?」
×××→フォウ「ククク…何が起こっているのか、理解できていないようですねえ。(目の前で跪くストライクを嘲笑いながら見下して)」
大剣使いの男「先程からの奴の立ち回りは大したことがない。踏み込みも刀を振う速度も、これまでの猛者たちと見比べれば至って普通だ。避けることもいなすことも容易いはず…それに相手(ストライク)もそれを完ぺきにこなしたはずだ。それなのに、何故奴の"攻撃が決まっている"のだ…?(鋭い眼光で)」
フォウ「腑に落ちないのでしょう?私の剣戟をかわし、弾いたにもかかわらず…何故傷を負っているのかを。そしてその謎も解明されないことに、焦燥感が表面に漏れていますねえ。(クククと込み上げてくる笑みに耐える様に、口元を拳で覆う)」
ストライク「ギリィ…!(悔しそうに歯を食いしばると、重い身体を起こすように勢いよく駆け出す)」
フォウ「懲りないですねぇ、これだから単細胞は…――――ブンッ ! (いたって勢いの無い斬撃で迎え撃つ)」
ストライク「ストライッ!!(ガキィィインッ ! ! )(鎌で斬撃をいなし、もう片方の鎌の刃先をフォウに向け、そのまま斬り上げようとするが…)――――― ブ シ ャ ァ ッ ! ! ! (その刃がフォウに届く前に全身に一閃が迸り、痙攣しながらうつ伏せに倒れ伏したのだった)」
フォウ「(刀を握った腕は依然弾かれたまま微動だにしておらず、追撃を仕掛けたような挙動が一切見られない。"自ら攻撃を与えた"相手が崩れ落ちていく様を静かに嘲笑った) そうですね、虫けらは地べたを這いずるのがお似合いですよ。クククッ…(刀を鞘に納め、両手を背後に回したままステージを去っていく)」
キリギリス「ききっ、決まったぞぉぉぉおおおおおーーーッ!!!勝者はフォウッ!!全く見えない素早い剣術で敵を圧倒したァーーーッ!!!」
大剣使いの男「……っ…!?(いや、そんなはずはない…そんなはずは… 今のが、高速剣術だと言うのか…?ならば、初手の攻撃は油断を誘うための囮だと言うのか…?それにしては……)(腑に落ちない表情で考え込んでいる)」
そうして試合は着々と進行していき、数多の剣士たちの中でも選ばれた強者のみが生き残ろうとしていた…
――― 第二十二試合 ―――
雛菊「ふぅ…(試合を終え、刀を静かに納める)……(私は"ここ"にいます…お師匠様…―――――)」
――― 第二十三試合 ―――
八頭身ギコ侍「ブ ン ッ … (刀で虚空を斬る)見事な太刀よ…だがしかし、某(それがし)には届かなかった。この身にも、この魂にも。」
――― 第二十四試合 ―――
開拓者「アハハ…!最強の刀を持つ私に敵う者などいない…!
クロリアーもこの私が手に入れて見せるわ…フフフ…!」
――― 第二十五試合 ―――
ユキ「シャッ―――チン!(鞘を勢い良くかぶせるようにして垂氷丸を納刀する) ここまで、ね。またバチバチしましょ?(いつも通りの微笑を浮かべ、ひらひらと手を振る)」
――― 第二十六試合 ―――
×××××「シュコー…(口元から蒸気の様な荒い吐息を噴き出す)…良し良しだ。良し良し、良し良し…(金属音の様な鈍い足音を鳴らしながら盤上から降り立った)」
キリギリス「――――― 第二十七試合!ワンス vs ペイルライダーだ!!これは見逃せない戦いになりそうだァ!!選手はステージへどうぞォ!!!」
貴族の青年→ワンス「――――――― カ ツ ン … (厳かな覇気を放ちながらステージへ足を進める)」
あれがそうか…ッ…!! ああ、間違いない…! そうか、あいつが…(ワンスの登場によって会場全体がざわつき始める)
大剣使いの男「……『ワンス・ゴルドニア』…ッ!癖者揃いの
ゴルドニアファミリーを束ねる長男にして、前・十刀剣武祭序列"3位"の実力を誇る最強の男…!」
――― "斬神の長男" ワンス・ゴルドニア ―――
ソードプリム「あ、あの序列1位の『柊木雪』と序列2位の『翡翠雛菊』と比肩する最強の剣士なのか…!う、うわぁ…なんという覇気だ…外見で判断してもその次元の違さがわかる…!」
ボトロン「聞けば懸賞金20億の特S級犯罪者でもあるらしいな…奴の怒りを買った瞬間、その命だけでなく故郷まで滅ぼすとんでもない男だ…!あいつだけは…あいつとだけは相手したくねえ!(怖れ慄く)」
ペイルライダー「……(エストックを片手にステージへ)」
アロアロス「だ、だがよ…!相手のペイルライダーも相当な強者なんだぜ!?ここまで無傷無敗を誇っているようだしな…」
ロックマンゼロ「……とにかく開戦と同時にすべてが分かる。静かに刮目しろ…ここからの戦いは、一瞬たりとも目は離せない。」
キリギリス「それでは試合―――――――開始ィェァッ!!!!」
ペイルライダー「 ダ ン ッ (試合開始の合図と同時に瞬発的速度でワンスとの間合いを詰める)」
ワンス「………(それに対し全く動じることなく仁王立ちしたまま悠然と街構える。腰元に携えた西洋剣を引き抜くこともなく…)」
ペイルライダー「―――――――― ビ ュ ォ ッ ! (そして懐で鋭く研ぎ澄まされたエストックによる高速の刺突を放った)」
モララー「(――――!)疾いッ!!!(瞬間移動とあの突き…相手が誰だろうと、あの速度の攻撃をかわすことは―――――)」
ワンス「………―――――――――― ふん。」
ペイルライダー「―――――――!?」
手応えはあった…故に決まったと思い込んでいた。しかし、それは誤りだった。ペイルライダーが予想していたよりも、その相手は彼を凌ぐ速度でその剣術を見抜いていたのだった。
ワンス「(腕を束ねたまま、上半身を仰向けに反って回避していた)……俺は低俗な輩に剣は振らない。理由は解るよな。(緩慢化した世界の中で、ペイルライダーに呟く)グルン――――――(彼の武器を掻い潜り、自らの身体を浮かせ蹴りの態勢に入る)」
ペイルライダー「(―――――!!) メ ゴ オ ォ ッ ! ! ! ! (稲妻に貫かれた様な想像を遥かに絶する激痛が顔面に走り、音もなく吹き飛んで闘技場の壁に強く激突した)パラパラ…ッ……(壁にめり込んだまま、気絶している)」
ワンス「 ト …――――(華麗に地に降り立つ) 脆弱の血で我が刃を汚したくないのだ。失せるがいい。(戦闘不能に陥った相手に一瞥を与えることもなく、マントを靡かせその場を後にする)」
キリギリス「…………!!?き…き、決まったああああぁぁぁぁーーーーッ!!!!しょ、勝者は…勝者はワンスだああああぁぁッ!!!流石は序列三位の
実力者!!たった一蹴で、あの無傷無敗のペイルライダーを瞬殺したァーーーッ!!!!!」
ブーメランプリム「なん…だと…ッ…!?(驚愕と戦慄による冷や汗を流す)…ペイルライダーがやられた…それも、たったの一度の蹴りで……!」
大剣使いの男「(試合結果に目を細める)…俺は前回の十刀剣武祭をこの目で見たことがある…無数の獣が睨み合うかの様な凄まじい激戦区だった… その中で…奴、ワンス・ゴルドニアは桁外れの
実力者だった。あれから一年以上経つが…奴の覇気は以前にも増してより濃く、強くなっている。…奴よりも上に立った例の二人に対する憎悪が、奴を更なる高みへと連れ出したのか…っ…」
シグス「流石は兄上だ…そうだ、無名の剣士風情が兄上を越えられるわけがない。(負傷した部位に包帯が巻かれている)」
スリーズ「ギュフ…フフ…ッ…お兄様…素敵、カッコいい…もういっそお兄様と結婚したい…(同様に包帯が巻かれた状態で涎を垂らしている)」
フォウ「お兄様とお姉様は我々の憧れですからね。お二人を差し置いて頂点を掴もうなど愚の骨頂というものです。」
トゥエル「あら…可愛いことを言うのね、フォウ。流石は私の自慢の弟よ、うふふ…次の試合も華麗なる勝利を期待しているわよ。」
フォウ「お姉様に期待されるとは、誠に光栄なことです。それでは、行って参ります。(両手を背後に回した小柄な少年が、不気味に口角を上げて廊下の奥へと消えていく)」
キリギリス「さぁ!どんどん進めていこうではありませんか!!第二十八試合! 氷冬 vs フォウだ!!選手はステージへどうぞッ!!!」
氷冬「……(ひとまず
クロリアーのことはフーナたちに任せよう。今は、目の前の試合に集中するだけ…――――)(ステージへと登る)」
フォウ「コツ…コツ…―――― ザ …よろしくお願いします。(紳士的な笑みを浮かべて氷冬に会釈する)」
氷冬「……ええ。(張りぼての笑顔―――目の前の少年のその偽りの表情を見透かす様な鋭く冷たい目で挨拶に応える)」
キリギリス「それでは試合――――開始ィァアッ!!!」
氷冬「……(先の試合…彼自身の太刀筋は他愛もなかった。問題は、どうやって相手に攻撃を与えるのか…その術を見極められるかどうか、ね。)(ゆるりと一刀を抜き出してその切っ先をフォウに構える)」
フォウ「フフフ…(腰元に携えた二刀、その一振りを抜き出して同様に突きつける)さァ、デュエルスタートです。フンッ――――(前のめりに倒れる様な駆け出しから氷冬に斬りかかる)」
氷冬「 カ キ ィ ン ッ ! (一刀を振り上げて斬撃をいなす)………!(その時、何かを感じ取ったかのように反射的にフォウから距離を置いた)」
フォウ「……!(斬撃をいなされたあと、後退した彼女に対し僅かに目を細める)…ふん!(再び距離を詰めながら何度も斬りかかる)」
氷冬「(…今の感じ…もしかするとこいつは…)……カキャァンッ ! フンッ―――― カキィンッ ! フォンッ―――――(繰り出される斬撃を刀でいなす度に、相手の斬撃の"軌跡外"から逃れるように回避を繰り返す)」
騎兵「…んあ?なんだいあの娘…さっきから攻撃を防ぐ度に奇妙な動きをしやがるぜ。(面白おかしそうに氷冬の挙動を見る)」
大剣使いの男「……(あの娘…何かを感じ取ったようだな。俺ですら感じ取れなかった、『何か』を…)」
フォウ「なかなかいい動きで避けますね。(嘲笑うかのような不気味な笑みを浮かべると、突然彼女の周りを囲む様に疾走する)――――― ヒ ュ ン ッ ! (風の如く駆け出す最中、自らの残像を生み出し、本体と残像からなる二閃を繰り出す)」
氷冬「……!(フワッ―――――スタ…)(鋏討ちの斬撃を跳躍回避し、宙を華麗に舞いながら降り立つ)」
キリギリス「おおっ!これはすごい!!素早い動きによって生み出された分身攻撃!そしてそれに動じることなくかわした氷冬!!これは壮絶な戦いになりそうだァーッ!!」
フォウ「まさかこの技もかわされるとは…フフフ、流石はシグスを討ち破った実力はありますね。少々貴女を侮っていました。(依然不気味に口角を上げたまま氷冬と対峙する)ならばこれはどうです?(残像と息を合わせた絶妙な立ち回りで片手に握った刀を振う)」
剣士「残像を生み出すなんて…な、なんて速さなんだ…!」
氷冬「―――――!(迫りくる二人のフォウを交互に見比べる最中、あることに気付き始める) フ ォ ン ッ ! (回転斬りによる風圧を起こして吹き飛ばす)」
フォウ「……!(衝撃に圧倒され後方へと退く)フフフ…お見事…!(残像が消滅すると同時に再び斬りかかる)」
氷冬「ギ ャ キ ィ ィ ン ッ ! ! フォンッ―――― スタ…(フォウの斬撃をいなすと、またその軌跡外から身を退かせる)」
フォウ「私の攻撃を避けてばかりですか…それでは貴女に勝ち目はありませんよ?(何故か僅かな憤りを含んだ表情で)」
氷冬「……―――――― そうね。でも、それは貴方も同じじゃないかしら。それとも、私がその"術"に気づいていないとでも思っているのかしら?(眼光を鋭く輝かせ)」
フォウ「……!!(氷冬のその発言に微動する)……これは驚きましたね。まさか、気付いてしまったのですか。(興味深そうに口角を上げて)」
氷冬「…貴方の斬撃はいたって単調過ぎる。正直欠伸が出そうなくらいにね。だけど、その攻撃をかわす度に、一瞬だけど違和感を感じるの。まるで、"二つの刀を同時に振っているかのような"不思議な感じをね。」
フォウ「ホゥ…とても面白い、想像ですね。いやぁ、気付かれてしまったのなら仕方ありませんね。…私は"斬双"の名を冠するフォウ・ゴルドニア。ファミリーの中でも、お姉様に勝るとも劣らない高速剣術の使い手です。私が操る残像剣は、貴女の言うとおり一見は他愛もない太刀筋に見えますが…実際は目にも止まらぬ速度で刀を振うことで、相手の視界を翻弄しつつ攻撃するものでして――――――」
氷冬「―――――― " 違 う " ――――――」
フォウ「……へ…?」
氷冬「…そうじゃないでしょ。貴方の剣術はやはり単調なもの。貴方において一番警戒するべきなのは…貴方自身の剣術でも立ち回りでも、ましてや刀の力でもない。」
フォウ「…それでは、何だと言うのです?」
氷冬「…さっきの斬撃、貴方が残像を生み出す前に、たった一人で斬りかかって来た時…貴方の中に潜む気が二重(ふたえ)になって揺らいだのが“
アンビション”を通じて感じ取れた。貴方の中に、"貴方ではないもう一人の誰かが潜んでいる"。それは残像の正体であって、私が感じ取った「違和感」の正体でもあるわ。」
フォウ「………ククッ…ハハ…ハハハハハ!面白い…!実に面白い、妄想ですね…!(滑稽に耐えきれず片手で自らの顔面を覆う)…貴方も“
アンビション”の使い手でしたか。しかしそれで確信的な根拠となり得るのですかね?精神を覗いただけで、我が残像剣の正体を見破ろうなどと―――――」
氷冬「根拠なら、あるわよ。誰の目でも見える、確信的な根拠が。(そう言ってフォウ…ではなく、彼の腰元に携えた二刀の鞘を指差す)見たところ貴方は二刀流の使い手らしいけど…最初から一刀しか引き抜かなかった。にもかかわらず、何故"その鞘にはもう一刀が納まっていないのかしら"?」
フォウ「――――――ッ!!(図星を突かれた様に動揺する)」
氷冬「そう、貴方が一刀で攻撃を仕掛けた時、既にもう二本目は引き抜かれていた…貴方の中にいる「誰かさん」によってね。そして消えた二本目の刀は、残像剣によるコンビネーション攻撃によって姿を現した…本物の残像剣なら、本体と残像は全く同じ姿であるはず。にもかかわらず、本体と残像…それぞれが刀を握っていた手は"左右逆"だった。」
フォウ「…………」
氷冬「貴方の中にいるのは瓜二つの「双子の兄弟」かしらね。だから残像剣による演出によって、会場の観客たちからその"秘密"を逸らした。そして、貴方たちはもう一つ秘密を隠している…―――"その秘密を秘匿する為のもう一つの秘密"――― 貴方たちは、"互いの身体を合体・分離する能力"と、"触れたものの姿を不可視にする能力"を持っているということ…。…私はそう思ったのだけど、違うかしら?貴方の言う通り、妄想に過ぎないかもしれないわね。(自嘲気味に鼻で笑う)」
フォウ「………」
――― 「あぁーあぁー…バレてしまいましたねぇ、フォウ。」 ―――
フォウ「ええ、『 ファイ 』…やはり彼女は警戒すべき相手でした…。せっかくお兄様が我々の存在を世間から覆い隠してくれたにもかかわらず、何処の馬の骨とも分からぬ小娘如きに見破られてしまったのですからね…(腹の底から煮えたぎる感情に身を震わせ、紳士的と思われていた面影の一切が消失する)」
氷冬「……(ようやく本性を現したわね…悪魔…)チャキリ…(凛とした態度で刀を身構える)」
【フォウ】&〖ファイ〗:『ヴヴンッ――――(ファイの身体が幻影のように揺らめくと、彼と瓜二つの姿をした双子の弟「ファイ」が姿を現す)』【私はフォウ。】〖私はファイ。〗【貴女の言う通り、我々は双子の兄弟。故に"斬双"なのです。】〖そして貴女の考察は見事に的中いたしました。大変素晴らしいことでございます。〗(右手に刀を構えたフォウと、左手に刀を構えたファイが彼女と対峙する)
氷冬「思ったとおりね。長い間、戦いに身を投じてきたからわかる。私が知るのは何も刀剣者やその武器だけじゃない。世界に存在する能力者だって同じよ。」
【フォウ】&〖ファイ〗:【そう、我々はファミリーにおいて唯一の能力者。生まれ持った天賦の才というものです。】〖しかし我等にとって最大の武器は、一卵性双生児であるが故の抜群のコンビネーション。〗【我々は二人で一人…たとえ剣術が素人であろうと、二人で斬りかかればどんな剣豪も簡単に討ち沈められる。】〖勝利を得るためならば手段は選ばない。それが我ら、ファミリーの心得。〗
氷冬「そう…私が最も嫌いとするタイプの人間よ、貴方たちは。…だけど、分身でも分裂でもないと分かった以上、貴方たちがこうしてステージに立っているのは反則行為に繋がるんじゃないかしら?この大会…刀剣とは名ばかりに多少戦術は何でもありな緩いところがあるけれど…原則、一対一の真剣勝負が求められる。能力で正体を隠し、二人がかりで試合に勝ってきたことが全員に知れ渡れば、貴方たたちは強制失格になる。諦めて、降参しなさい。」
【フォウ】&〖ファイ〗:【……ハ、ハハハ…フハハハハ!!】〖ハハハハハ!!〗【聞いたかい、ファイ?】〖聞いたよ、フォウ。実に滑稽なことだよ。〗【…愚かだな、雪桜氷冬。確かに我々が双子で、二人同時に試合に出場したことが判明すれば我々は強制退場になるだろう。しかし―――】〖――その事実を知っているのは雪桜氷冬、貴女だけだ。つまりここで貴女を殺せば、我々の正体を知る者は誰もいなくなる!〗
氷冬「――――――!」
【フォウ】&〖ファイ〗:【フフフ…何も知らない小娘の貴女に教えてさしあげましょう。】〖"真実"なんてものは勝者によって塗り替えられる。〗【正義を豪語する大きな組織ですら、自らが犯した過ち、その"真実"を覆い隠し続けてきたように――――】〖世界において"真実"とは常に書き換えられ、変質していくものなのです。〗【全ては「力」ある者によって変えられる!】〖「力」なき者は"真実"と共に消えていく運命にある!そして貴女も――――〗【〖 我 々 が 消 し 去 っ て 差 し 上 げ ま し ょ う! ! 〗】
氷冬「…… ギ リ ィ …(込み上げてくる怒りに歯を食いしばる)やれるものならやってみなさい、ただしその頃には―――――― 貴方たたちは八つ裂きになっているわよ。(もう一刀を振り抜き、二刀の態勢に入る)」
【フォウ】&〖ファイ〗:【斬首刑だ、ファイ!】〖斬首刑です、フォウ!〗(それぞれに構えた刀に“
アンビション”を纏う)【〖――― “ 波 動 シ ズ ァ ー ゼ ル ” ―――〗】( ド ギ ュ ア ア ア ァ ァ ァ ッ ! ! ! ! )(双方向から鋏討つように放たれた凄まじい斬撃波が、氷冬の首を狩らんと解き放たれた)
氷冬「――――――――― “ 隼 ” ――――――――――」
ザ キ イ イ ィ ィ ――――――――――――――― ン … ッ … ! ! (彗星の如く駆け抜けた蒼く疾い一閃が、二重の斬撃波を討ち滅ぼし、双子を斬り抜けた―――)
【フォウ】&〖ファイ〗:【〖―――――――ッッ!!??〗】【…馬鹿、な……ッ…――――ドサァ…ッ… ! 】〖我々が…そん……――――ドサァ…ッ… ! 〗(刹那の内に斬り裂かれた二人は共倒れになる)
キリギリス「き…決まったあああああああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーッ!!!!勝者は氷冬だァーッ!!!!」
氷冬「スチャン…(二刀を鞘に納める)…貴方たちは多くの剣士を侮辱した…恥を知りなさい。(倒れ伏した二人の姿に一瞥もくれず、颯爽とステージを降りていく)」
大剣使いの男「……!!(あのフォウまでもを討ち破ったか……あの四刀使いの娘、第一回の大会の時より、著しい成長を帯びている…一体、何処で何をしていたというのだ…っ……)」
キリギリス「第三十九試合は、雛菊 vs トゥエルだ!!前・刀剣武祭、序列二位と四位の
実力者が激突!これまた熾烈な激闘が繰り広げられる予感ッ!!!選手はステージへどうぞォ!!!」
雛菊「……(殺戮一家の長女…こうして相見えるのは、あの大会以来でしょうか。因縁の対決…ということですか。気を引き締めなければ。)(凛と澄ました表情でステージに立つ)」
ロックマンゼロ「出たな、あれが…前・刀剣武祭序列四位の…神速剣術使い…」
大剣使いの男「その圧倒的なスピードの前に、敵は成す術もなく散っていく…ファミリーを束ねる長男ワンスと比肩するとも言われている長女、トゥエル…!」
トゥエル「フフフ…(全ての下々の民が私を見ている…そう、私は注目を得ている。誰もが私の虜になる……それを邪魔する者は――――)(目の前の雛菊に明らかな敵意と殺意を込めた眼で睨みつける)――――斬り捨てるのみかしら。」
キリギリス「それでは試合――――――」
雛菊「チャキ…(愛刀「蕨」を鞘に納めたまま身構える)」
トゥエル「ス…(白銀色のレイピアを平行に構える)」
キリギリス「――――――――開始ィッ!!!!」
トゥエル「―――――― シ ュ ン ッ ―――――」
雛菊「―――――― フ ォ ン ッ ―――――」
ガ キ ャ ア ア ア ァ ァ ァ ――――――― ン … ッ … ! ! ! ! (互いに離れていた二人が、瞬く間に衝突し合った)
大剣使いの男「……―――――――!!?(二人の速度についていけなかったのか、衝突による鈍い金属音ではっと気付かざされた)」
槍兵「なっなんだ…!?……!?(両者とも離れたいたにもかかわらず、開始宣告から一秒も経たぬうちに刃をぶつけ合った二人に仰天する)」
モララー「……なんちゅー速さだ…俺の能力に勝るとも劣らねえ…(風や重力の抵抗を無視した様な鋭い移動術…こいつら…剣術だけに限った話じゃねえ、すべてにおいて高いステータスを持っていやがる…)(細めた眼でステージ上の二人を観察する)」
トゥエル「(ギチギチ…ィッ… ! !)ウフフ…流石は"華蝶風月"。やはり美しき私を止められるのは、美しき強者のみということかしら。(皮肉を込めて雛菊を見下している)」
雛菊「(ガキキィ…ッ… ! !) お誉めにあずかり光栄です、トゥエルさん。( ガ キ ィ ン ッ ! ! )(鍔迫り合いの中で薙ぎ払い、互いに距離を置く)」
トゥエル「以前の大会(前・刀剣武祭)では、惜しくも私は儚く散った…それでも、私は貴女に美しさの領域において負けたとは微塵も思っていなくてよ。」
雛菊「はい、魅せる剣術においては貴女の右に出る者はいないでしょう。ですが、『左に出る者』なら私は知っていますよ。そしてあなたは、『その方』に追いつけなかった。」
トゥエル「――――!……『柊木雪』のことかしら?…あんな…あんな品も欠片もない小娘に、私が後れを取ると、貴女はそう言うのかしらぁ?(やや憤りを含んだ表情でレイピアを突きたてる)」
雛菊「柊木さんは私の憧れの人です。彼女の剣術に惹かれたから、分かるんです。取り繕った美しさと、純粋な美しさは違いますよ、トゥエルさん。」
トゥエル「……どうやらこの私は、『貴女たち』が目障りに思えるわ。いいわぁ、そこまで言うのであれば…貴女を殺し、あの女もすぐに貴女のもとへ送ってあげるわよ。ありがたく思いなさい。」
雛菊「申し訳ありませんがご遠慮願います。…もう御託はこの辺でよろしいでしょうか。これ以上の対話は野暮かと思われますので。(納刀する)」
トゥエル「フン、生まれた時から下々の分際で、よくもまあ私にそんな口応えが出来るわね。跪かせてあげるわよ!!!(血相を変えて鋭く尖ったレイピアで急襲する)」
雛菊「 タ ン ッ ―――――― ス タ … (地を蹴って蝶の様に飛翔し、宙で大きく弧を描くようにして舞い、空中で一回転して彼女の背後へ降り立つ)」
トゥエル「チイィッ…!小賢しいわねぇッ!!(金切り声を上げながら背後へレイピアを振り抜く)」
雛菊「 ス ン ッ ――――(バク転後退による回避で距離を置く)」
トゥエル「私をこけにした罪は万死に値するわよ。グルンッ――――― ズ ア ア ア ァ ァ ァ ッ ! ! ! (一回転すると同時に深い突きの態勢に入る。“
アンビション”を纏った細い刀身が黒く変色し、全身から凄まじい覇気が放出される)」
大剣使いの男「あの構えは…ッ…!(不味い…来るぞ、"誰も見切れぬ史上最速の剣術"が…ッ…!!!)(トゥエルの突きの態勢に表情が険しくなる)」
雛菊「(トゥエルの覇気に動じる素振りもなく、納刀したままの刀を腰元に構える)…叢蘭茂らんと欲し、秋風之を敗る…参刀流―――――」
トゥエル「―――――“ 波 動 ツ ェ ペ ッ シ ュ ”!!!( ズ ギ ュ ア ァ ッ ! ! ! )(大気を貫く"神槍"が轟音と共に解き放たれる――――――)」
雛菊「――― “ 脆巧三昧 ”(ぜいたくざんまい) ――――」
―――――― ド グ ゥ ア ア ア ア ア ア ア ァ ァ ァ ァ ァ ッ ! ! ! ! (盤上一帯に白い煙が舞い荒れる)
プリム「ぐあああぁぁ~~!!な、な、何が起こったんだあああぁぁ~~~ッ!!??(会場を揺るがす衝撃に耐えながら)」
大剣使いの男「くぅ…ッ…!(腕を交差して迫る衝撃に耐える)」
八頭身ギコ侍「むっ…!(仁王立ちの状態で衝撃に耐える)……!(なんという衝撃…!勝負の行方は如何に…―――)」
ワンス「……(控室で腕を組みながら、厳かな表情で観戦している)」
ォ ォ ォ ォ ォ … ッ … ! ! (真っ白に包まれた会場一帯に沈黙が走る―――)
トゥエル「………(どう足掻いても無駄よ。私の最高剣術“波動ツェペッシュ”を見切った者はワンスの一人を除いて、今まで誰一人いなかった。それに前回の試合でも、彼女(雛菊)はこの技で重傷を負った…今度はあの時の様に油断せず、もう一度波動を放てば…確実に私の勝利となる――――)(勝利を確信した、その時だった…)
雛菊「―――――― ボ フ ン ッ … ! (煙を斬り払い姿を現したのは、全くの無傷の雛菊だった)」
トゥエル「なッ――――――!!??(掠り傷一つ付いていない彼女に驚愕する)…そん、な…どうして…なの…?わ、私の神速剣術をどうやって…!?」
雛菊「はい、"かわしました"。(依然変わらぬ表情で応える)」
トゥエル「はぁ…ッ…!?そんなこと…!?だ、だって前の貴女は…!私のこの技で重傷を負った…!かわしきれなかったくせに…ッ!!何故…どうして…どうやって…ッ!!??(焦燥混じりの怒号を飛ばして詰め寄る)」
雛菊「…人は傷つき成長していくもの…相手から受けた攻撃を自分の糧としたまでですよ。“脆巧三昧”―――これは貴女が得意とする高速剣術をいなす為に、前回の戦いから編み出した特有の剣術です。」
トゥエル「なんですって…ッ…!?…生意気なことを…高々一度攻撃を防いだ程度で、図に乗るんじゃないわよ!小娘ェッ!!!!( シ ュ ド ド ド ド ド ド ド ッ ! ! ! ! ! )(幾重の“波動ツェペッシュ”を解き放った)」
シグス「…ッ…!姉上がご立腹だ…!(怒り狂うトゥエルをモニター越しに戦慄する)」
ファイ「お姉様の逆鱗に触れた罪は重い…あの娘も、もう終わりですね。」
雛菊「―――――――(迫る神槍の雨を目の前にしてゆっくりと瞳を瞑る)――――― フ ォ ン ッ ! (篠突く雨がその身体に触れようとした時、忽然と姿を消した)」
シ ュ ド ド ド ド ド ド ァ ァ ア ア ッ ! ! ! ! (トゥエルの放った無数の突きが、雛菊のいた個所を何度も何度も抉る様に突き刺した)
トゥエル「――――――!!?(消えた――――私が繰り出した後にもかかわらず…!?)」
雛菊「 フ ォ ン ッ ―――――“三味閃”(しゃみせん)。( ズ ギ ャ ア ア ア ァ ァ ン ッ ! ! ! )(自ら激しい斬撃の雨の中へ突撃し、雨を斬り払うかのように強烈な回転斬りをし、攻撃を相殺する) タ ン ッ … 一刀居合―――――――」
トゥエル「ッ゛―――――!!!」
雛菊「―――――――― “ 三 千 世 界 ” ――――――――」
―――――――――― ズ バ ァ ン ッ ! ! ! ――――――――(「*」状の強烈な斬撃が、トゥエルの身体に刻まれる)
トゥエル「ヒギャアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!!!…………ドサァ…ッ… ! (魔女の様な断末魔を上げた後、白目を向いて倒れ伏した)」
雛菊「クルンクルンクルン…――― ス チ ャ ン (刀を鮮やかに振り回して納刀する)"逆上した獣ほど狩られやすい"…昔相手をした大剣豪の言葉を、今思い出しました。(そのままステージを降りていく)」
キリギリス「……き、決まったあああああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーッ!!!!勝利を果たしたのは雛菊だああああぁぁぁぁーーーーッ!!!!元序列二位の剣技!鮮やかなものだったァーーーーッ!!!!」
ヒロ「………やっぱ凄いな…(観客席で戦いを見ながらビールを飲んでいる) 」
氷冬「(控室でその試合の一部始終を観戦していた)……やはり強いわね。(かつて対峙した雛菊を見つめ、いつか再戦できることを心の中で期待しながら、ふっと笑みを零した)」
キリギリス「それでは始めようッ!!第四十試合はユキ vs ワンスだあああああぁぁぁぁぁーーーーッ!!!!前・刀剣武祭、序列一位と三位の大激突だッ!!!!今回の百刀剣武祭始まって最も頂点を極めた者同士の激突だああああぁぁぁーーーーーッ!!!!選手はッ、ステージへッ、どうぞッ!!! 」
ワンス「コツ…コツ…コツ…―――――――― カ ツ ン … ! (厳かな気を放ちながら悠々たる足取りでステージへと君臨する)……(どいつもこいつも…"使えない"弟妹どもめ。もはや今の奴らにかつての栄光はない…だが、この俺は違う。神の領域に立つに相応しい者として生まれた俺に与えられたこの"才能"がある限り、俺は何者よりも遥か頂点に立つのだからな。) 」
ソードプリム「わ…わわっ…先の二位vs四位の戦いといい、緊迫感が凄すぎる…!あれが、刀剣武祭において上位を占める者たち…!すごい覇気だ…ッ…!!(怖れ慄きながらステージ上に立つ二人を見る) 」
モララー「おっ、強そうな奴らが来やがったな…!(感じるぜ…この気のでかさはよ…!)(二人から感じる強大な気に興奮しながら、屋台で買った焼きそば(マヨネーズ増し増し)を頬張っている) 」
×××××「…………良し、良し良し…(観客席の何処か、その陰に潜む様にステージ上の二人を閲覧している) 」
ユキ「―――――(目元が全く笑っていない作り笑いを浮かべ、ステージへと君臨したワンスを認める)アナタとはどこかでぶつかると思っていたわ(納刀された刀を腰に添える) 」
ワンス「………ッ…ッ…ッ…ッ…!(ユキの姿を視界に捉えるや否や、腹の底から込み上げてくる嗤いに耐えようと項垂れる)…これは運命だとは思わないか、柊木雪。かつて頂点で対峙した者同士が、こうして再び相反して盤上の上に立つことが。…俺は貴様のその首を斬り下ろすために、この瞬間を待ち侘びてきたのだ!ズラァ…ッ… ! !(そういい、自らが認めた相手にしか振るわなかった西洋剣を、天高く引き抜いた)―――――― さて、始めようか…処刑の時間だ。(厳粛な面構えで対峙する) 」
大剣使いの男「柊木雪、そしてワンス・ゴルドニア…奴らは前回の十刀剣武祭で熾烈な激戦を繰り広げた二人だ。"観戦客が気絶するほどの圧倒的な覇気を放つ二人"に、会場は騒然としたものだ…(臨場感ある歪な空気に僅かな悪寒が走る) 」
キリギリス「それでは試合―――――――――― 開始ィィイイイイイッ!!!! 」
ユキ「チンッ! ヴ ォ ン ッ ―――――(勢い良く鯉口を切ると同時に、風音と共に姿を消す)――――フッ ヴンッ!!!(刹那、ワンスの眼前に現れバカ正直な横一文字の一閃を繰り出す) 」
ワンス「 ス ン ッ ――――――――(ペイルライダー戦の時同様、上半身のみを仰向けに反り、その獰猛な騎馬の如き鋭い一閃を受け流した) 」
ズ バ ア ア ァ ァ ァ ――――――― ン ッ … ! ! ! (ワンスに受け流されたユキの一閃が、闘技場の壁に深い爪後を残した)
ドンキー「うぉっうぉっうおぁっ…!?(その壁の真上に設けられた観客席にいたため、受け流された斬撃にびっくり仰天する) 」
剣士「…っ…こんな話を聞いたことがある…
新世界で猛威を振う殺戮一家…その長男は、"大国をたった一人で亡国へと陥れた"という…! 」
弓兵「おいおい、なんかの冗談だろ…?いくらあの男が強いからって、そんな話… 」
剣士「それだけじゃあない…奴を仕留める為に派遣された政府の軍隊…そしてその加勢に現れた「大将率いる精鋭部隊」をも退けたと聞いたことがある… もしもそれが本当なら…あのワンスという男、大物とか、化け物とかっていうレベルじゃねえ…!(声を震わせながら) 」
ユキ「――――――――。(振り抜いた腕がしなり、塵が宙を揺蕩う。瞳孔が開き切って一瞬も揺らがない猛禽類のような瞳でワンスを射抜く)――――出し惜しみなんかしないから―――― ゴ ォ ォ オ ッ!!(刀を振り上げ、同時に体表が青白く輝いて光蝶が周囲を舞い始める) 」
ロックマンゼロ「…だが、あの女はかつてその男をも上回った剣士だ。とはいえ、今回ばかりはどうなるか…俺にも分からないがな。 」
ワンス「…ほゥ。(蒼白の神々しい光を見に纏う彼女に対し感心したように口角を上げ)ならばこうだ――――――ン゛ン゛ッ゛!!( ゴ ォ ゥ ア ァ ッ ! ! ! ! )(片手で剣を振るっただけで覇気を纏った凄まじい衝撃波が空間を振動させ、ユキを吹き飛ばそうとする) 」
シグス「かつて兄上と対峙したあの女剣士…認めたくはないが、流石兄上と肩を並べるだけのことはある… 」
【フォウ】&〖ファイ〗:【だけどお兄様は、前回の大会であの女に敗れたことで――――】〖その激しい憎悪によって、更なる力へと覚醒した。〗
スリーズ「ギュフ、ギュフフ…ッ…!愛しのお兄様ぁ…次は負けないわよぉ…ゥフフフフ…なんたって、お兄様は、私たちのお兄様なのだから…ジュル… 」
トゥエル「フン……(自分よりも目立つワンスに対して嫌気が差しているのか、腕を組んでしかめっ面をしている) 」
雛菊「……柊木さん…(ただ静かに、彼女の行く末を見守っている) 」
ユキ「はっ―――ダンッ!!(振り上げた刀を彼の頭部へ見舞おうとしたその時――ワンスが剣を握る腕の筋肉が動くのを察知した瞬間に、全身が緊張しその場から大きく飛び退く)――――ぐ、ゥッ!!? メ゛ ッ ゴ ゴ ゴ ゴ オ ッ!!!! (衝撃波を刃で受け、踏ん張った両足がコンクリートの地面を抉り、衝撃に圧され一筋のラインを造っていく)(重すぎ…ッ…!? なんなのよコイツ、去年の実力なんかとは全然比べ物にならない―――)(――――『霜晶ノ夢』――『序』――『破』―――――――)(衝撃波を受けるさなかで、青白い光は更に輝きを増して背中に美しい蝶翼を宿し―――)ブ ヮ サ ッ 」
ワンス「……!思い通りにはさせん。( ダ ン ッ ! ! )(跳躍後、縦回転しながら上空から急降下、彼女の頭部を切断する勢いで剣を振り下ろす) 」
大剣使いの男「くッ…(始まって数分も経たぬ内にこのざわつき… なんという覇気だ…!)(二人の接戦に息を呑む)」
ユキ「(くそ…! ここは捨てるしかない―――!)ガギッ―――(全身の筋肉ひとつでも緩ませる事が許されない中で、強引に体を捻って衝撃波との鍔迫り合いから逃れた事により、決定的な隙が生まれる)――――ズ ッ バンッ!!(動きながらワンスを目視し、急所だけは避けようと肩部を"斬らせる") 」
ワンス「…… ニ タ ァ (ユキの鮮血に脈動が高鳴り、不敵な笑みを浮かべる)…よもやこの俺が"それ"を許すわけがないだろう。貴様の"それ"を喰らっては、流石の俺も堪えるからなあ。(歪に口角を上げながら、悠然とした足取りでユキに少しずつ迫る) 」
ルドゥラ「…… ……――――フゥゥゥウ……。(控室の大画面の真ん前のベンチに座り、祈るように頭を垂れ瞑想をしている。聞こえるのは二人の剣士の喧騒と鋼の音。) 」
ユキ「フゥ……フゥ……!(大股数歩の距離を置き、刀を正眼に構え少しずつ迫るワンスと対峙する)…フシュウゥゥ……(形成しかかっていた蝶翼が光鱗をなって散っていく)ふふっ、さすがに学習したのね…惜しいわ、もう少しだったんだけど(おちゃらけてみせる態度とは裏腹に、思わぬ負傷や悪状況に玉のような汗を浮かべ、表情が緊迫していく) 」
ワンス「俺を誰だと思っている。気高きゴルドニアの長、「ワンス・ゴルドニア」だ。"一度"この俺を地に伏したことは褒めてやろう…だが―――――図に乗るなよ娘。(ここでようやく、厳かな表情に憤怒の色が僅かに滲み出す)無様に散るがいい――――― ヒ ュ ォ ァ ッ ! ! ! (大気を貫き走る稲妻の様な鋭い高速蹴りを繰り出す) 」
マルス「あれは…!!(ワンスの挙動から、ペイルライダーを葬ったあの一蹴を想起する) 」
大剣使いの男「高水準の剣術と武術を兼ね備え、敗北する度に"憎悪"によって強化する男…あれが、ワンス・ゴルドニアが最も脅威と言われる由縁にある。…しかし……(その一方で、ユキに視線を向ける)……そんな男でさえも警戒する剣術を持つというあの女も…―――」
ユキ「…ギリ…ッ…!!(そう…彼を下したのはたったの"一度"。何年も何年も十刀剣武祭の頂点で"不動"と慄れられた男…今年もそう簡単に同じように行くとは限らない…でも、私は――――)っ !? ぐッ―――――― ズ ガ ァ ァ ア ア ア ア ア ァ ァ ン ッ ッ ッ ! !(まるで玩具のように吹き飛ばされ、ステージ端の壁へと轟音を立てて激突する。しかし、ワンスの蹴りの手応えに、僅かな違和感を感じさせる) 」
ワンス「フン――――――?(人形のように軽々と付近で行く彼女の様に愉悦そうに表情が綻ぶも、蹴りを入れた際に感じたその僅かな違和感を思い出し、自らの脚部を細い目で見つめる) 」
プリム「あわわ…っ…!あ、あの女ももう駄目なんじゃ…(蹴り飛ばされたユキを心配そうに見つめて) 」
雛菊「………!(いえ…"ここから"です。)(土煙に包まれ、姿を目視できないユキの方角を見据えて) 」
ベジータ「もうダメだ…おしまいだぁ…! 」
ブロリー「うるさいッ…!(ベジータを客席に叩きつける)ユキちゃんは…ハァハァ…俺の嫁だァ!!!(気が高まる溢れる) 」
パラガス「やめろブロリー!それ以上気を高めるなあ…!ヤメローーーッ!! 」
ルドゥラ「…… ……(瞳を開くも画面は観ずに立ち上がり踵を返す)――――"蝶"が、翔んだ。……か(一言呟いて控室から観客席のほうへと移動していく) 」
―――――ワンス・ゴルドニア。(土煙に包まれた方面から、未だ闘志を宿らせた凛とした声が通る)
ワンス「……!(自らの名を呼ぶその声に微動し、静かにその先を見据える) 」
ユキ「 ダ ン ッ ! ! (土煙の中から跳躍し、上空にて納刀した刀を構える。まともに食らったかと思われた高速蹴りを"刀の柄で受け止めていた"。)―――――ワンス・ゴルドニアッ!! 私を――私たちを侮辱しないでッ! 私達は剣士。剣に生き、剣に死ぬ者ッ!(宙で居合の構えを取る) 」
ユキ「そんな舐めたマネしないで剣を取りなさい―――その上でアンタを超えてみせるわ!!!! チンッ――― 【 雪 華 晶 閃 ・ 双 牙 】 ッ ! ! ! (上空より、強烈な冷気を伴った二振りの斬撃波がワンスに襲いかかる!!) 」
ワンス「―――――!!( ズ ガ ア ァ ン ッ ! ! ! )(上空より放たれしその斬撃を咄嗟に構えた剣で防ぐが、反応に遅れたためか受け止める中で吹き飛ばされる)ッ…!(ズガガガガガ…ッ… ! ! !)(吹き飛ばされる最中に回転して態勢を整え、片手の爪先を地面に食いこませ反動を解消する)……この俺に物言うだけのことはある。(服に付着したホコリをうざったく振り払い)だが、勘違いするなよ柊木雪。我々ファミリーは、勝つ為ならば手段は選ばん。 」
ワンス「客を巻き込み―――(スリーズの像が) 不意打ちをし―――(シグズの像が) イカサマを行い―――(フォウ&ファイの像が) 相手を侮辱し―――(そして、トゥエルの像が過る)我々はそうして勝利を得続けてきた。同じ剣を振る者同士とは言えど、その価値観、目的、信条は異なる。貴様等の様な"下らん飯事"に付き合ってやる程、俺たちは甘くはない。ブワァ…ッ… ! ! (マントを靡かせ、空いた片手を高らかに突きつける)来い…格の違いを見せてやろう。真の強者たる実力の、な…! 」
大剣使いの男「……ッ…!(間違いない…ここからだ……ここから『あの時』と同じ衝突が始まる…ッ…)」
ヒロ「…………負けるなっっ、ユキっっっっっ!!!!!!!(突然叫ぶ) 」
ズ ズ ズ ズ ン … ッ … (二人の覇気によって、大地が脈打つように、小刻みに揺れ始める…)
ザビーダ「……どっちもおアツイもんだ……(観客席)(声-津田健次郎) 」
ユキ「ストン――――…………はっ。(思わず噴き出し、刀を握る手、腕に筋が浮かび上がる)……ここまで"負けたくない"って思ったのはアイツ以来よ。 これ以上、剣士の聖域を穢させるわけにはいかない――――(再び蒼白の光が体を包み込み、蝶翼が形成され始める)(『霜晶ノ夢』―――『序』―――『破』―――――――) 」
ワンス「思い通りにはさせんと――――(稲妻の如き疾駆でユキに迫る)―――――言っただろう!!ェ゛エ゛イ゛ッ゛!!( ズ ギ ュ ア ア ア ア ァ ァ ッ ! ! ! )(剣を左右に素早く振い、双方向から相手を圧砕する勢いで襲いかかる二重の斬撃波“波動シズァーゼル”を解き放つ。その威力は本人たちのものよりも遥かに凌ぐほどで、地面を抉りながら彼女に襲いかかる) 」
ユキ「――――意地でも押し通るまでッ!!(精神統一を妨げられ、途中で意識を自らの力からワンスへと移す。結果、蝶翼は形成され『霜晶ノ夢・序』の形態に成る)ゼァァア゛アァッ!!!(バ シ ュ ウ ゥ ゥ ウ ッ !!)(一方の斬撃波へ狙いを絞り、持てる力の全てを以て一つの波動シズァーゼルを打ち破り退避口を作り上げる)――――あ゛ぁぁぁあああッ!!ザッザンッ!!(もう一方の斬撃波をワンスの側方へ飛び込むように側転で回避し、空中でのすれ違い様に二度の斬撃を仕掛ける) 」
ワンス「チッ…(自らが放った斬撃を崩されたことに苛立ちを浮かべる)ッ゛シェ゛エ゛イ゛ッ゛!!(回転斬りと同時に放つ螺旋斬撃波“波動ウォルテクス”を放ち、ユキの刀と激突し合う) 」
ボ ゴ ォ ン ッ … ! ! ! (激しい激突によって、二人を中心にステージの一部が瓦解していく)
トゥエル「……まるで以前の大会の試合でも見ているようね…あそこまで奇声を放つワンスは、滅多に見られないわ…(鋭く目を細めて) 」
ルドゥラ「――――……カッ、カッ、カッ。(通路を渡り、熱気と闘気で湿潤する観客席へと足を運ぶ。)…… ……。(瓦解するステージを見ながら目を細める。ぶつかり合う鋼の音と軋み合う互いの信念に一種の心地よさを感じていた) 」
剣士「うわぁっ!!くそッ…!なんてでたらめな激突だ…!(二人の刀剣のぶつかり合いから生じる衝撃に圧倒される) 」
キリギリス「こっ、これは激しい衝突ッッッ!!!!前・十刀剣武祭の上位
実力者の大激突!!もはや、彼らの勢いを止められる者はいないッ!!!!凄まじい迫力だああああああああぁぁぁぁぁーーーーーーッ!!!!! 」
ユキ「 バ サ ァ ア ッ … ! ! (ワンスと刀がかち合い、交差点を通して衝撃が衣服をはためかせて体を吹き抜けていく)――――(まだ翔べる…!ワンスの頂(ところ)まで、まだまだ翔べるッ!!) タンッ ハァァァアッ!!(柊木流伍ノ型・枝垂翅《シダレバネ》―――ッ!!!)(再び体を捻りながらわずかに地面から跳び、地面に対して平行になる。そして捻った体から急速な錐揉み回転になり、まるでノコギリになったような縦回転斬りを繰り出す) 」
ワンス「グゥ…ッ…!(苛烈な回転斬りを平行に構えた剣身で受け止めるが、その強烈な勢いに圧倒される)ン゛ン゛ッ゛!!(防御する最中に無防備な横側に回し蹴りを炸裂させ、ユキを引き剥がす)――――(俺は
ゴルドニアファミリーを束ねる長男――――弟妹共の異名も剣技も、全てはこの俺が与えたものに過ぎない。全てを兼ね備えた俺こそが、真の"強者"なのだ…―――)――――やはり貴様は俺が始末しなければならないようだ……なァ!!( ズ ギ ュ ア ァ ッ ! ! ! )(そして、遠距離から大気を貫く"神槍"、高速刺斬“波動ツェペッシュ”を放つ) 」
ユキ「ッ!!! ドガッ――――バサァッ!(回し蹴りが顔面に炸裂して吹き飛ばされるも、なんとか蝶翼の羽ばたきで体勢を立て直して着地する)ポタ、ポタ……どんな脚力よ…!(額から血が滴り、思わず悪態をついて朦朧とするまま顔を上げる―――)―――――――。(眼前に迫る強大な力に竦んだか、また意識が朦朧としたからか、咄嗟の一歩を動き出すことができなかった。波動ツェペッシュはユキの胴体を穿ち―――) ズ シ ュ ア ァ ッ ! !(体を貫く衝撃に揺らぎ、鮮血が宙を舞う)………か……ッ…!!(目を見開き、遠のきそうになる意識を必死に繋ぎ止めようして汗が頬から喉元へと伝い落ちていく) 」
シグス「兄上の蹴りは、稲妻を纏った様に高速で放たれるが為に、恐竜をも討ち沈めると言わしめるほどに凄まじく強烈だ。(…手合わせを願い出た際に、何どあの蹴りで死に目を見たことか…思い出すだけでも痛々しい…)…だが、そんな一撃を二度も喰らったあの女…しぶといな。何処にそんな生命力が…」
ワンス「フン…もはやここまでだ、柊木雪。理解しただろう、俺と貴様の実力を。「剣に生き、剣に死ぬ」だと?フン、愚劣な雑種の戯言だ。全ての結果は勝者が決めること… 結果を得る為ならば、過程など、何でもいい。勝者こそ正義であり、絶対なのだからッ!!フハハハハハ!!!(ユキを前にして高らかに嘲笑う)フハハ…ハァ…………終いだ――――― ガ オ ン ッ ! ! ! (満足の末に元の厳かな表情となり、鉄の唸る音とと共に剣を素早く振い、強烈な黒閃“波動ガレイリオン”を解き放った) 」
ヒロ「……踏ん張れ!!!!あきらめるなぁぁっ!!!!(ユキに向けて叫ぶ) 」
雛菊「…っ……(柊木さん…――――私は、信じています。)(祈る様に両手を合わせ、ただ行く末を見守り続ける) 」
ユキ「ハーッ…! ハーッ…!!(息遣いを荒くし、何度も霞む視界でワンスを睨み続ける)(――終い?――いいや――まだ――私はここに立っている――負けない――負けたくない――剣士たちを侮辱した――あなただけには――絶対――)――――(ワンスへ完全に焦点が合い、落としかけていた刀を握りしめる)――――(圧倒的な"死"そのものとして迫る黒閃から退かず、刀を正眼に構える)―――(普通に精神を統一したんじゃ遅すぎる。なら、形振り構っていられない。全力で命を削って、死力を振り絞って――――この一瞬に掛ける!!!)(一気に光が溢れ出し蝶翼が巨大に形成されていく)(『霜晶ノ夢・序』――『破』―――) 」
ユキ「――――――【糾】―――――― 」
ワンス「―――――――――!!! 」
大剣使いの男「あれは…ッ……!?(ユキの背に現れた大きな蝶翼に驚愕する)」
ヒロ「……あ、あれは!(ユキの背後に現れた蝶翼を見て) 」
ユキ「うぉぉおおおぉぉおおッッ!!!! バリィンッ―――――(雄叫びをあげ、背に宿した蝶翼、光蝶が砕け散って光の鱗片となり、ユキの体・垂氷丸へと吸収されていく) ザ ッ (黒閃に飲み込まれる瞬間、自ら一歩踏み込んでいって刀を振るい)―――― ギ ィ イ イ ン ッ ! (凛とした佇まいで、黒閃を後方へ受け流した) 」
ズ ッ ガ ァ ァ ――――― …… …… ン ッ ! ! ! (開戦直後にユキがそうしたように、受け流されたワンスの一撃はステージの壁に深々とその爪痕を刻む)
ワンス「ッ―――――!!?(馬鹿な…俺が放つ“波動”を…受け流しただと…ッ…!?)(絶句する余り、全身が硬直したかのように静止する) 」
ユキ「 ―――オ――――オ――ォ―オ―――オ――ォ―――オ―――― (淡く光を発する呪印が体中に刻み込まれていき、紫紺の瞳が蒼の輝きを宿す) ―――この姿を見せたのは二度目かしら。覚悟して。(ス、と何気ない足運びをした瞬間にワンスの眼前に姿を現す) 」
ワンス「―――――!(速い――――)(瞬きと共に目前に現れたユキに、咄嗟的に剣を振ろうとするが…) 」
ユキ「(ワンスが動き始めたとほぼ同時に両の足へ力を込る。靴音を立てて刀を振りかぶりステージ全体に響き渡る風音を鳴らしてワンスとすれ違った) 」
【 氷 翼 刃 ・ 絶 凍 】
ユキ「―――――――――――……… ……… ……… ススス……… チ ン ッ (鯉口を鳴らし、垂氷丸を納刀する) 」
ズ ッ バ ァ ア ン ッッッ !!!!! (鯉口が鳴ると同時に、破裂音にも似た爆音を轟かせてワンスの胴体に一閃が刻み込まれた)
ワンス「ヅッ゛――――― ( ザ キ ィ ィ ィ ィ ―――――――――― ン … ッ … ! ! ! )(全身に強烈な蒼白の一閃が迸り、全身が瞬く間に凍結していく)パキ…ッ…パキィキャ…ッ… ! ! (オ…のれ…ッ……この、俺が…よもや二度も同じ娘に…―――――)―――――― 柊 木 雪 イ イ イ イ イ ィ ィ ィ ィ ィ ッ ! ! ! ! ! ( パ キ ャ ア ァ ン ッ ! ! ! )(激しい憤怒を狩り立てた形相でユキに掴みかかろうとするが、その手は彼女に届く寸前で氷像と化したのだった…) 」
キリギリス「き…きき…ッ…!決まったああああああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーッ!!!!!激戦の末に勝利を果たしのはユキだあああああああああぁぁぁぁぁ!!!! 」
うわああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああーーーーーーッ!!!!!!(鳴りやまぬ大歓声が、ユキを祝福する)
雛菊「……!…本当に良かった。(流石です、雪さん…)(胸を撫で下ろし、安堵の表情を浮かべる) 」
モララー「っは!やるじゃねえか…久々にびっくり仰天って奴を目にしたぜ…(にししと満足そうに笑う) 」
ユキ「ハーッ……ハーッ…………っ………ッ……! ――――――グッ!!!(自らの血にまみれた拳を、高らかに突き上げる) 」
八頭身ギコ侍「なんと…!(試合結果に仰天する)…異国の剣技、見事でござった…!これは某も胸躍るでござるよ。 」
ヒロ「…うぉっしゃあ!!!ナイスだ!!(ユキに拍手を送る) 」
ルドゥラ「(観客の熱気の中で、ただ一人無表情で此度の勝者を見下ろしていた。蒼いコートに揺らめく剣気が彼の中で何かを感じとらせた) 」
×××××「……良し。(試合の一部始終を観戦し終え、颯爽と廊下の闇の中へと消えていった) 」
キリギリス「第四十三試合は、
開拓者 vs 氷冬だァーーーッ!!!選手はステージへどうぞッ!!!」
氷冬「 ス タ … パキパキ…ィ…(ステージ上に立つや否や、足元の地面が僅かに凍結していく)………(何故かしら…何処か、懐かしい記憶が蘇ってくるような…)(青く晴れ渡る空を仰ぎ、冷え切った白い吐息を吐く)」
開拓者「クキキキ…ッ…♪(ステージへと登りローブを靡かせる)会いたかったわよ、四刀流の雪女。(左耳しか存在しない顔面ではあるが、怪しい笑みを含んだような歪んだ声音を放つ)」
氷冬「……(対峙する得体の知れない存在に目を細める)」
開拓者「そうさ、お礼を言いたかったのよ。アンタのお陰で、私は「長年欲しかったもの」が手に入ったのだからねえ。今からたっぷりと、お礼の"刃"をお返しするわ。(そう言って、前回の試合で入手した絶刀「鉋」を懐より抜き出す)」
氷冬「そう…(何を言っているのかしら… それにあの刀、第一回の大会にいた「まにわに」の人が持っていた…油断はならないわね。)(するりと一刀を抜き出す)」
スカーフィ「かぅ、どきどきだね…!(客席で緊張しながらたい焼きを手にしている) 」
フーナ「…大丈夫、今の氷冬なら。 」
キリギリス「それでは試合―――――開始ィァアアッ!!!」
開拓者「フフフ…さァ、行くわよ!(突きの態勢で鉋を構えたまま突撃する)――――――“報復絶刀”!!(そして、真庭蝙蝠が繰り出したように鋭い刺突を繰り出す)」
氷冬「フ ッ ――――(右へ倒れ込む様に刺突を優雅に避ける)ブ ン ッ ! (そのまま逆袈裟斬りを行う)」
開拓者「ッ!(ガキィインッ ! !)(すぐさま鉋を振り回して斬撃を受け止める)フンッ!!(回し蹴りで氷冬を追い払う)」
氷冬「 ス ン ッ ――――― ト ン …(回し蹴りを潜り抜けながら後退する)」
開拓者「せいッ、せいッ、せいッ!!(何度も横薙ぎを繰り出し圧倒する)」
氷冬「ガキャァンッ、カキャンッ、カァンッ ! ! !(繰り出されてくる斬撃を一つ一つ刀で受け流していく)」
雛菊「……!(あれは…"柔"の太刀。氷冬さん、もう完全に使いこなしているようですね。)(氷冬の立ち回りに感心したように表情が綻ぶ)」
開拓者「やるじゃない。それなら、これはどうかしら!?ザグンッ――――グルングルングルン…ッ… ! !(鉋を地面に突き刺し軸にして回転する。そして遠心力を加えた両足蹴りで攻撃する) 」
氷冬「ガッ――――ズザザァー…ッ…(水平に構えた刀身で蹴りを受け止め、その衝撃によって僅かに吹き飛ぶが両足を踏みこんで耐える)」
開拓者「(隙あり――――)(即座に態勢を整え、鉋を懐に構える)――――“万里開拓”(レクレイメイション)!!!( ズ バ ア ァ ン ッ ! ! ! )(広範囲にも及ぶ強烈な斬撃を解き放つ)」
氷冬「ハァー…(白い吐息を零し、全身にその冷気を纏う)――― ギ ュ ア ン ッ ! (斬撃を受けた直後に全身が幻影のように揺らめき、その場から消滅する)」
開拓者「……ッ!!(消えた…!一体何処に…!?)(消えた彼女を探すように周囲を見渡す)」
氷冬「――― ここよ。(あえて自らの居場所を明かす様に、
開拓者の背後に現れる)」
開拓者「ッ―――――!(後ろか…!)(振り返るや否や鉋による“報復絶刀”を繰り出そうとする)」
氷冬「ハァァァ…――――― ガ キ ン ッ ! ! (右腕に冷気を纏い、真っ白に凍結した腕でその一撃を受け止めた)」
開拓者「なぁ…ッ…!!?(驚愕したように痙攣する)…そ、そんなことが…!この絶刀「鉋」の“報復絶刀”を、素手で受け止めた…ですって…!?(驚く余り、じりじりと距離を置く)」
氷冬「…“雪走”、“雪景色”、“雪達磨”…これらは新たに編み出した"柔"の術(すべ)…ただ本能に身を任せ、破壊力と殺傷力に力を入れてきた"剛"の術では成し得なかったものよ。(「柔なき剣に強さなどない」―――以前の試合に敗れた後に聞かされた雛菊の発言が脳裏に過る)」
開拓者「ふ、ふん…!随分余裕ぶってるわね…だけど…(鉋をしまい、もう一本の刀と入れ替える)――――これを見てそんな余裕が保てるかしらね?(鉋と入れ替えられた刀、それは――――『斬刀「鈍」』だった)」
氷冬「―――――!!(
開拓者が手にしている刀に目を見開く)……貴女、それを何処で…(鋭く輝く眼光で突き刺すように、彼女に一歩迫る)」
開拓者「ふんっ、流石に驚いたようね。ええ、そうよ…これは紛れもなく、本物の斬刀「鈍」!あの『宇錬銀閣』が、長年肌身離さず所有していた
完成系変体刀十二本の一本よ!(鈍を突きつける)…私は世界のあらゆる刀剣をコレクションしている。その中でも、この斬刀「鈍」は私が長年追い求めていたもの!喉から手が出るほど欲しかったのがこの刀よ!」
氷冬「………」
開拓者「だけどその所有者が、あの居合の達人として名高い剣豪、宇錬銀閣だったことを知った私は、あらゆる手を使ってでも手に入れようとしたが…失敗し、やがて断念したわ。でもしかし!!その忌々しい銀閣がある剣士との決闘で敗れ、死亡したという風の噂を聞いて狂気乱舞したわ。誰が彼の首を討ち取ったのかはその時は知らなかったけど、彼の墓場へ赴いた時に把握したわ。それこそが、「雪桜氷冬」、貴女だってことをねぇ!(両腕を広げて高らかと言い放つ)」
氷冬「………」
――――"ただ俺も…何かを守りたかっただけだよ。何かを守りたかっただけなのに、守るべきもんが、俺にはこれ《 刀 》くらいしかなかったんだ。"―――――
氷冬「――――――――(………銀閣………) 」
開拓者「だからこそ、私は貴女にとても感謝しているのよ!貴女が銀閣を討ってくれたお陰で、私は念願の斬刀「鈍」を手にすることが出来たのだから!ウフフフ…ッ…!この刀はねぇ、四季崎記紀が作り上げた最速の変体刀で、この刀から繰り出される斬撃は音速を越えるという――――――」
氷冬「……そんなこと…」
氷冬「そんなこと…言われなくても分かっている。直接この目でその刀の斬撃を見て、そして受けたことがあるんだから。だけどそれは…「鈍」は…所有者が『彼』だったからこそ真価を発揮できた刀…―――――私の"朋"《宇錬銀閣》だからこそ使いこなせたものだ!( ド ゥ ッ ! ! )(背後より、覇気と吹雪が入り混じった凄まじい衝撃が吹き付ける)」
開拓者「ッ……!?(衝撃に耐えようと刀を身構える)」
氷冬「その刀は…貴女にとっては所詮ただの名高い刀かもしれない。人を斬りつけ、殺め、強さを誇る武器に過ぎないかもしれない。そうだよね、それが刀だものね…だけど私は、そうじゃないと思っているわ。」
氷冬「"刀"――――それは人の心が形となって生まれたもの。使い方を誤れば人を傷つけ、壊し、殺める恐ろしいものよ。だけど互いの刀を合わせることで、互いの心を分かち合うことができる。所謂諸刃の剣よ。人の心は繊細で、だからこそ傷つきやすく、ちょっとしたことで血という涙が流れる。でも刀は、そんな脆い心を守ることだってできる。自分を、他人(ひと)を、守りたいもののために自らの心を刃にしたもの…それが"刀"よ。」
氷冬「…「刀は持ち主を選ぶ」という言葉を聞いたことがある、私はそれにとても頷ける。十人十色の心がある様に、刀もまた千差万別存在する。己の心を映し出した刀と巡り合った時、ようやく自分も"刀"を振い、他人と心を分かち合える。そうやって、いろんな人間、いろんな刀との出会いから、本当に守りたいものが見つかるのよ。」
氷冬「貴女が手にしているその刀には、"宇錬銀閣という人間の心"が潜んでいる。その刀は、生前の彼にとって「本当に守りたいもの」だった。本来の持ち主の心も理解しないままに刀を振っても、貴女には絶対に使いこなすことなんかできやしないわ。その刀は…本来あるべきところに還らなければいけない。貴女が奪った斬刀「鈍」…彼に代わって返してもらうわよ。(全面的に剥き出された覇気と吹雪を纏い、刀を強く握りしめる)」
開拓者「は、はん…っ!詩人みたいなことを言うわね…まるで意味が分からないわ。心?守りたいもの?馬鹿馬鹿しい…刀は所詮人を斬り殺す為の武器に過ぎないわ!!そんなに私が気に食わないのなら…この斬刀「鈍」が誇る限定奥義“斬刀狩り”で、あの男のもとへ送ってあげるわよ!!( チ ャ キ リ … ! )(親指で鍔を押し鯉口を切る)」
氷冬「スゥ…ハァ……――――――――(深呼吸した後、脳裏にかつての光景が、ある男の像が、走馬灯のように過る―――)」
開拓者「斬り刻んであげるわああぁッ!!!( ズ パ パ パ パ パ パ パ ッ ! ! ! ! )(“斬刀狩り”を発動し、目にも止まらぬ速さで幾重の斬撃が解き放たれ、氷冬に襲いかかった)あっははははは!!!死ねッ、死ねええぇッ!!!あははははは!!!!」
氷冬「 フ ワ ――――――――(目を瞑り、鮮やかな軌道を描きながら流れるようにその斬撃の奔流を潜り抜けていく)…一刀居合―――――――」
開拓者「あっはははははは――――――――― へ … … ? ?」
氷冬「――――――― “ 舜 銀 ” ―――――――」
ザ キ イ ィ ィ ィ ィ ―――――――――――――― ン … ッ … ! ! (白銀の一閃が、音を、光を越えた――――)
―――― "これでやっと、ぐっすり寝られる" ―――――
開拓者「――――――― ズ パ ァ ァ ッ … ! ! ! ! (――――――!!!?)(無音の世界で、何も理解できないまま宙へと舞い、真っ赤なアーチを描いた)…な……な、ぜぇ…… ド シ ャ ァ ァ … ッ ! ! !(そして、地に堕ちる)」
氷冬「貴女の斬撃は、止まっているように見えて退屈だわ。(納刀する)…刀の価値だけを重視する貴女には、その刀に潜む持ち主の心なんか分かるわけがない。だからその刀を活かすことが出来なかったのよ…――――― この、"鈍(ナマクラ)"。(倒れ伏した
開拓者に皮肉を吐き捨て、斬刀「鈍」を拾い上げる)」
キリギリス「決まったあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーッ!!!!勝者は氷冬だああああぁぁぁッ!!!怒涛の快進撃を見せるこの少女!全く止まる気配が見られないいいいいいぃぃぃーーーー!!!!」
スカーフィ「やった、やったよ♪かぅーっ♪♪(嬉しさの余り隣のフーナに抱きつく)」
フーナ「あはは…うんっ、良かった。(スカーフィの頭をなでながら氷冬の勝利を喜ぶように微笑んだ)」
全力者「か、かかかか!!
開拓者ァァァァアアアアアア!!!うおおおおお!(全力号泣) 」
雛菊「……十刀剣武祭でまたお会いできることを願っています、氷冬さん。(試合結果に満足したように微笑み、控室を後にした) 」
氷冬「……(銀閣…)(斬刀「鈍」を見つめ、そっと胸に抱く)……ちゃんと貴方のもとに届けないとね。(踵を返し、ステージを降りていこうとするが…)……あ、そうだ。ついでにこれも…(
開拓者から絶刀「鉋」も回収し、その場を後にした)
ルドゥラ「――――シャッ、シャッ、シャッ……(大会後、付近のホテルの一室のソファで包丁を研ぐ。刀剣に扱いなれた手は瞬く間に、包丁に煌めきを取り戻していく)――――シャッ、シャッ、シャッ……――――コトッ。(研ぎ終えた包丁をテーブルに置き、包丁を包むように布を巻き始める) 」
ルドゥラ「…… ……(さて、やるべきことはやった。どうする、まだ時間はあるな……) 」
とりあえず一室を出、廊下を歩きながら合間合間に見える窓からの風景を眺めわたる。
新世界で、刀剣祭も開催されていることから、街の活気は今だ消えずに点々とした灯りで夜空を薄っすら照らしていた。まさに、眠らない街、というべきであろうか。
ルドゥラ「…… ……(フロントを抜け、ホテル入り口前へと足を運ぶ。街の人々の熱気や笑い声はこちらにまで届くように、街は屋台や色とりどりのネオン、そして人ごみであふれかえっていた。)夜の闘技場、か。(ゆっくりと人ごみの中へ身を委ね道のりを進む。民間人だけでなく、剣士や異能者、異種人、さらには娼婦までもが道を行き交い、熱気と活気の一つとして溶け込んでいた) 」
ルドゥラ「(物干し竿にも等しい刀を左手に携え、人ごみに紛れながら闘技場まで歩く。闘技場まで近くなるにつれ、人々の熱気は更に大きくなっていく。) …… ……(そんな中、彼は一切表情を変えることなく、虚ろな雰囲気を漂わせながらユラユラと足取りを進める) 」
――― 夜の闘技場 ―――
すでに会場入り口は閉じられ、内部からあの喧騒とぶつかりあう鋼の音は聞こえない。だが、闘技場の外は違った。屋台にどこぞの者ともわからない無名の剣士の一騎打ち、それをみて賭けを始める市民たち。大会で鎬を削りあった達人たちの剣気にあてられた者達の熱気が周囲を包んでいた。 」
ルドゥラ「……(会場はすでに閉じられている、だがこれなら飛び越えていけそうだ。)(闘技場へと近づいていく) 」
会場への扉は閉じられてはいるが、
ルドゥラがその気になればジャンプで飛び越えられる程の高さであったため、行動にそう迷いはなかった。
ルドゥラ「(扉を超え、暗黒に満ちた会場内へと入っていく。奥へ進むにつれ靴音が不気味に反響し、先程の熱気が嘘のように周囲の音が静まり返っていく) 」
ルドゥラ「…闘技場、か。(見えてきたのは暗闇の中に佇む広々としたステージ。)…… ……カツン、カツン、カツン……(ステージまで歩み寄る最中、ここで戦った数々の剣士たちの喧騒と血潮を思い出す) 」
ルドゥラ「(勝利を手にし歓喜する者、敗北にまみれ崩れ落ちる者、あらゆる喧騒が脳内で渦巻いていく。)……次は、十刀剣祭か。……誰もが、高位序列を目指し剣を振るう。(目を細めながら) 」
火愚病「ドーモ、( ゜▽゜)/コンバンハ(暗闇の中からヌラリと現れる)こぉんな夜更けに、しかも、ここでなにしてんの? 」
ルドゥラ「…… ……。(
火愚病が現れるもじっとその場に立ち尽くしたまま。だが、あきらかにその背に剣気を纏っている) 」
火愚病「……無視か。まぁいい、アンタの目的は会場の空気に浸っていたいってところか? それとも、剣を振るうかっこいい~自分自身を、妄想しちゃうためか? んっん~、中々乙な趣味じゃないか。 」
ルドゥラ「……貴様に用はない、失せろ(つらつらと駄弁る火愚病とは対照的に
ルドゥラは冷たく言い放つ) 」
火愚病「(イラァ…)……じゃあ、こうかな? 遥か昔、一人の女が……ヤヤコを孕み、わずか数年でその絆に終止符をうった、哀れな一族の物語…… 」
シ ュ カ ゙ ァ ァ ア … !
ルドゥラ「(抜き際の一閃、切っ先を
火愚病の喉元につきたて)……失せろ、三度は言わん(ドスの聞いた氷点下の言葉を殺気を孕みながら放つ) 」
火愚病「(一瞬怪訝な表情をするが、右の掌で切っ先に触れ、そのまま親指を刃部分に沿わせながら近づいてくる)……やはりな。アンタの目的、そして、アンタの剣術の謎が解けた……気がする。(刃を伝う事により親指と掌からボタボタと血が零れ落ちる)アンタ俺より悪霊やってんじゃない? いや、むしろアンタの方が大先輩、か。 」
ルドゥラ「(
火愚病の手を振り払うように血ぶりをし、ゆっくりと納刀する)……貴様のことなどどうでもいい。ここへ来たのもたまたまだ。……。(そのまま去っていく) 」
火愚病「…… ……クヒヒヒヒ♪(フワリと黒い霧と化し消える) 」
最終更新:2019年05月12日 23:58