「魔女の契約」
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cielenica
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「聖杯の守護竜よ、お前に聞きたいことがある!私の■を引き換えにして、この子は救われるのか!」
「――その通りだ。この世界において、貴女が■■■■■■代わりに、彼女は第二の生を謳歌できる。そして、彼女の傷を貴女が引き受けることで、あくまでも"事故に遭い、転生した"のだと確信させられる。
だが、それは……本来あるべき権利を手放せというようなものだ。それでも、選ぶのか」
「そうだ。……此度の異変は、私の罪でもある」
「先ほどは■■■■■■と形容したが、厳密に言うと機会がないわけじゃない。それでも、ほんの刹那に限られるだろう。どうであれ貴女は舞台に上がれない。脇役にも満たない。そんな存在になり下がる」
「構わない。それで賄えるのなら安いものだ。
私はとうに死んだ命。だが、彼女は違うはずなのだ。それを信じたい」
「……分かった。そうであれば此度の『契約』は以上となる。
彼女がそうであるように貴女にも……幸福があることを、俺は祈っているよ」
「感謝する」
「――その通りだ。この世界において、貴女が■■■■■■代わりに、彼女は第二の生を謳歌できる。そして、彼女の傷を貴女が引き受けることで、あくまでも"事故に遭い、転生した"のだと確信させられる。
だが、それは……本来あるべき権利を手放せというようなものだ。それでも、選ぶのか」
「そうだ。……此度の異変は、私の罪でもある」
「先ほどは■■■■■■と形容したが、厳密に言うと機会がないわけじゃない。それでも、ほんの刹那に限られるだろう。どうであれ貴女は舞台に上がれない。脇役にも満たない。そんな存在になり下がる」
「構わない。それで賄えるのなら安いものだ。
私はとうに死んだ命。だが、彼女は違うはずなのだ。それを信じたい」
「……分かった。そうであれば此度の『契約』は以上となる。
彼女がそうであるように貴女にも……幸福があることを、俺は祈っているよ」
「感謝する」
――認めたくなかった。信じたくもない。
彼女には居場所があると思っていた。彼女が心の支えとしているらしい男こそが、きっと第二の故郷になってくれることを願っていたのに。
たとえそうでなくとも、どうか強く、生きることを選んでほしかった――私のように、愛という目的に目を曇らせて死んだ女のようにはなるなと。
復讐という目的に囚われて、遂げられずとも私を追うために死ぬ。そんな選択を許したくなかった。彼女をその道に追いやったのが、たとえ私であり、私にそれを決める権利がなかったとしてもだ。
ダルクス人の掟に彼女が反しているからじゃない。
屍の山を編む彼女の行いが間違っていたから、手を緩めたわけでもない。
何から何までそれは私の、償いにもなれやしない我儘が引き寄せた答えだ。
彼女には居場所があると思っていた。彼女が心の支えとしているらしい男こそが、きっと第二の故郷になってくれることを願っていたのに。
たとえそうでなくとも、どうか強く、生きることを選んでほしかった――私のように、愛という目的に目を曇らせて死んだ女のようにはなるなと。
復讐という目的に囚われて、遂げられずとも私を追うために死ぬ。そんな選択を許したくなかった。彼女をその道に追いやったのが、たとえ私であり、私にそれを決める権利がなかったとしてもだ。
ダルクス人の掟に彼女が反しているからじゃない。
屍の山を編む彼女の行いが間違っていたから、手を緩めたわけでもない。
何から何までそれは私の、償いにもなれやしない我儘が引き寄せた答えだ。
理由は単純だ。私はもう、戻れない身であったから。
そう、どれほど一縷の望みに縋ったとしても、結局は心底より分かっていたのだ。――あの決戦で仮に生存したとしても、私に待っているのは愛のための死 のみ。それ以前に私がどれだけ真に忠義を誓い、無垢に愛を捧げたところであの方が応えることは断じてないのだ。
だけどもそれは私の弱さ、失態が招いたことであって、そこに未練こそあれ拒むことはしない。悔しいとは思うが、もとより見返りなど求められない立ち位置にいた。それは身分などの形式ばった話ではなくて、もっとずっと単純なことである。覚えているのだ。
物心ついたころから呪わしい光 に囲まれ、苦痛にまみれて息をするだけで精いっぱいだった私の手を引いて、新たな生き方を与えてくれたこと。恐れ多くも、あの方の口からとても輝かしい名前を戴いたこと。あの方を守るために自らを貫き、ヴァルキュリアの炎を引きずり出したこと――忘れやしない、すべて覚えている。
戦場に立つ人々にとって、命の使い方というものがあったとして。私の命は、あの方のために使い切ると誓ったのだ。その命の、最後の役目が決まっている……だが、それがなんだという。
それであの方の望む結果を手繰り寄せられるのならば、私は喜んでこの命を捧げてみせよう。貴方の目指す勝利のために、殺戮を超えた破滅をもたらすものを、あまりにもみっともない祝福の花 を貴方の路にために手向けてみせる。だからこそ、最期まで私は一人の人間として在り続けよう。いかなる理由があり、障害があっても――私はあの日までに何としてでも生き延びるべきだった。
そう、どれほど一縷の望みに縋ったとしても、結局は心底より分かっていたのだ。――あの決戦で仮に生存したとしても、私に待っているのは
だけどもそれは私の弱さ、失態が招いたことであって、そこに未練こそあれ拒むことはしない。悔しいとは思うが、もとより見返りなど求められない立ち位置にいた。それは身分などの形式ばった話ではなくて、もっとずっと単純なことである。覚えているのだ。
物心ついたころから
戦場に立つ人々にとって、命の使い方というものがあったとして。私の命は、あの方のために使い切ると誓ったのだ。その命の、最後の役目が決まっている……だが、それがなんだという。
それであの方の望む結果を手繰り寄せられるのならば、私は喜んでこの命を捧げてみせよう。貴方の目指す勝利のために、殺戮を超えた破滅をもたらすものを、あまりにもみっともない
故に私は彼女の願いを折り、徹底的に砕いたのだ。尽きていく私のために。そして彼女から、復讐の完遂という甘い現実 を取り上げるために。
決意した道から立ち止まり、異なる道を選ぶ。もはや私には不可能なことだろう。だが、彼女がそうとは限らない。
戻るべきところがあるのなら、まだやり直せるはずだから。
それだけで希望は山積している。そう思ったから私は呪った。復讐を遂げられなかったという敗北を背負い、それでも生き続けてほしいという呪い を餞 として、その身柄を彼のもとに返し生かしたのだ。
そうして一抹の未練と、微かな郷愁を胸に抱きながら――それでも生きたことを恥じるものかと、祈るように私の命は花開いて、消えた。
私の死が世界に何をもたらしたのかは、ついぞ知らない。それでいいと思う。
叶うことなら、どうか彼女の道が、長く在るようにと願って――そう。確かに希っていたのだ。
決意した道から立ち止まり、異なる道を選ぶ。もはや私には不可能なことだろう。だが、彼女がそうとは限らない。
戻るべきところがあるのなら、まだやり直せるはずだから。
それだけで希望は山積している。そう思ったから私は呪った。復讐を遂げられなかったという敗北を背負い、それでも生き続けてほしいという
そうして一抹の未練と、微かな郷愁を胸に抱きながら――それでも生きたことを恥じるものかと、祈るように私の命は花開いて、消えた。
私の死が世界に何をもたらしたのかは、ついぞ知らない。それでいいと思う。
叶うことなら、どうか彼女の道が、長く在るようにと願って――そう。確かに希っていたのだ。
だというのに、なんだ?
「……今……なんと言った?」
これは、なんだ。こんな結末 を、私は望んでいなかったのに。――何故なのだ。
「これが。こんな小さなものが、あの子だと言うのか。……どうしてっ……!」
私は両手の中に収まるほどの、今にも消えそうな彼女"だった"ものと差し出された小さな光の欠片から読み取った、かすかに残る深い慟哭を前に崩れ落ちていた。
「……今……なんと言った?」
これは、なんだ。こんな
「これが。こんな小さなものが、あの子だと言うのか。……どうしてっ……!」
私は両手の中に収まるほどの、今にも消えそうな彼女"だった"ものと差し出された小さな光の欠片から読み取った、かすかに残る深い慟哭を前に崩れ落ちていた。