裏準決勝戦【特急列車】SSその3

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dangerousss3

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裏準決勝戦【特急列車】SSその3

野望・陰謀渦巻く大会。

戦士たちは戦いの果てに何を掴むのか。



「ふふ~ん、なかなかやるわねっ!それっ!それっ!」

「……ムダ」

どこから来てどこへ行くのかわからない特急列車の最後尾、二人の女が縦横無尽に飛び回る。

ゾルテリアのシルバーレイピアが空を裂き、聖槍院九鈴のトング『カラス』が切っ先を掴む。

返すトングがゾルテリアの胴を打つ!だが効果はない!

「そんなんじゃピクリとも感じないわよ~ん!やるならティクビでもつまみなさいな!」

「……」

当然、ゾルテリアの無駄に豊満な乳房は鎧に守られている!

構わずトングでラッシュをかける九鈴!

レイピアが開放されると同時にすかさず突きを入れるゾルテリア!

トングに捕まらないように素早く撹乱しながらの攻撃はさすがの元騎士か!

レイピア!トング!トング!

トング!レイピア!トング!

しかしこのままでは決定打を与えられない九鈴が徐々に不利!

少しづつレイピアによる刺突傷が刻まれていく。

「ほーっほほほ!ここでアナタを倒しちゃって、もう一人とヨロシクヤラせてもらうわ!」

「……くっ」

そこへ現れる噂の3人目。…内亜柄影法。

「……そいつァゴメンだな」

レイピアとトングで鍔迫り合いをしながら睨み合う二人に無造作に近づく内亜柄。

その手に武器はない。ゾルテリアと九鈴が注意を向けた瞬間、

「俺は男のほうが好きなんだ」






瞬間、凍りつく場。








内亜柄の掌に手榴弾のようなものが生成される。


――『爆弾発言』!


「そんなものじゃアタシの防御は……!」態勢を立て直し、構わず突っ込んでくるゾルテリア!
「……」窓から飛び出し、タフグリップで体を保持する九鈴!



「……ま、嘘だけどな」

内亜柄が後ろを向いた瞬間、車内が激しい光に包まれる!

『フェイク』の『手榴弾』……すなわち、『閃光手榴弾』!


「しまっ……!」

いくら鉄壁の防御を誇るゾルテリアのZTMといえ、視覚に対してのダメージは防げない!



「さーって……目が見えなくっちゃ抵抗もできねェな」

「……くっ!やるならやりなさい!アタシは絶対に屈したりなんか……!」

「ククク、その言葉……フラグ丸出しだぜ?いやらしい女だな……」

内亜柄の『攻め』の言葉に呼応して現れる武器は……鞭!

「『言葉攻め』ならうまくやれると思うぜ……!じゃあ、ヨロシクやろうか、豚野郎……!」

「ヒッ……!アタシにいやらしいことするつもり!?エロ漫画みたいに!エロ漫画みたいにィィィィィ!」

「いやらしいことってのァ……【自主規制】に【自主規制】したり【以下青少年のなんかに配慮して略】

内亜柄の手には『卑猥』な武器……つまり、バ○ブ!

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~……」




【自主】      ――しばらくお待ち下さい――      【規制】




醜く肥えた豚のような体を放り出し、ピクピクと小刻みに震える豚…ではなく、ゾルテリア。

「ハァ、ハァ……こ、この豚野郎……厄介な能力持ちやがって……っとォォォォ!?」

突如激しく揺れる車両!

窓を覗くと、そこには……

「……おいおい、マジかよ……ッ!」


最後尾の車両をトングで掴み上げる聖槍院九鈴!

「バッッッッッカじゃねーーーーーーーーーーーーのかッッッッ!」

急ぎ隣の車両に飛び移る内亜柄。

「ちょちょちょちょ、まってぇ~~~~~~!」

転げ落ちる肉塊!運良く車上に落下!

そして掴み上げられた車両は九鈴によって綺麗に前の車両へと積み重ねられる!
なんたるあらゆるゴミの投棄を許さぬ清掃員魂か!

「……”そして清掃婦は謎めいた掃除具で疫病を集め、ファラオの家畜をすべて殺した”……」

禍々しいチャントを唱える九鈴!
その足元は小型トングでガッチリと車両に固定されている!

「フー……さて、問題はアンタだ」

高速走行する特急列車の上でバランスを取りながら、九鈴に向き直る内亜柄。

「実際こいつは賭けなんだ……結局よ、どうなるかはわかりゃしねェんだ」

「……ごめん、本当にごめん。わたしが、ちゃんと、そうじできなかったから」

         ・・・・・
「結局よォ、俺達は繋がってるんだぜ。おれもおまえも、そしてあいつも」

内亜柄の手に、『掴みどころのない』刃……ビームサーベルのようなものが生成される。

              ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・   
「そうだろ、俺達はみんな、『紅蓮寺工藤の関係者』になっちまってるんだぜ!この大会に参加した時から!」

迸る雷鳴!

――『紅蓮寺工藤の関係者』だと認識した瞬間!『創作の祭典(フィクション・ファンクション)』が発動する!


隙を突いてビームサーベルで斬りかかる内亜柄!

『掴みどころのない』剣はトングの防御を貫通する!







……はずだった。





「……ちがう」

「……ちがうよ」

『掴めない』はずのものをガッチリと掴む九鈴のトング『カラス』!

「……わたしが」

「……まもれなかったから」

熱によって塗装が剥げ、銀色に輝くトングが現れる!


――『シルバーカラス』!


内亜柄の剣を『シルバーカラス』で弾く!

おお、見よ!そのマスクには威圧的な『清』『掃』の二文字!


「……だから」

「……すべてのけがれを、そうじします」


高速走行する特急列車から数メートル浮遊し、威圧的に内亜柄とゾルテリアを睨む九鈴。

――そう、『掴めない』物を『掴んでしまった』ことにより、『転校生化』した清掃婦の姿であった。



転校生化したことでパワーアップした能力――

『タフグリップEX』により、概念さえも掴むことが可能になった九鈴は、

『列車との相対座標』を掴んで浮遊していた。

その姿はまさに、トングを超えたトングそのもの、「エクストング」と呼ばれる姿であった。


「……まずは、ここから」

「ぐっ……!」「キャアアアア!」

心臓をトングで一掴みにされるような威圧感。

今の彼女に掴めぬものは――ない。


「ま、待ちやがれ……!」

立ち上がる内亜柄。

――そう、ここまでは『計画通り』だ。


「紅蓮寺の能力のお陰でよ……わかっちまうんだよな……」

「アンタがその能力で本当に『掴みたかったモノ』はよ……」

「そんなもんじゃァ、ねえだろう……!」


「なにが、いいたい」

プレッシャーが跳ね上がる。心臓が痛む。

落ち着け。言葉を間違えるな。

罪を認めた被告人を諭すように……いつものようにやるだけだ。


「だからよ、アンタが守れなかったものも……」

「今なら守れるはずだぜ……!こんな世界になった原因から!」

「『掴んで』みろよ……!『運命』をッ!その『トング』でッ!」


「……わたしが」

「……まもる?……」

「九郎を。父さんを。母さんを。しずくを。みんなを。せかいを。みんな。みんな。みんな――――」



「わたしが、『掴む』。みんなの、『未来』を――ッ!」


九鈴の論理トングが閃く!

『掴む』のは――『時間の流れ』!


「掃除する!忌まわしい過去をッ!」


『シルバーカラス』が輝きを放つ!

そしてトングを超えたものは――光を放ち、消えていった。



時空を超えたとある『転校生』の活躍は、また別の機会で語られるであろう。
別の時間軸では、トングを操る姉弟の物語も語られるかもしれない。

……それはまた、別のお話。



「…………っぷはァ~~~~~~~、死ぬかと思ったぜ……」

『転校生』から開放された内亜柄は、流れ出る汗を拭いながら大きく息を吐く。

(あいつなら、あそこでああしてくれると思えたのも紅蓮寺のおかげってのが癪に障るが)

(俺もいつか、真実を『掴む』ことができるだろうか)

『運命』を掴んだ転校生に思いを馳せ、タバコをふかす(もちろん携帯灰皿持参だ)。



「ぶっふふ~、検事さんったら、なかなか熱いところもあるじゃない?惚れ直しちゃったわ」

しぶとくも生き残っていた元エルフが顔を赤らめながら這い寄る。


「ほほーう、そうかそうか、そりゃァありがたいねェ。
 ……ところで、『熱く』なっちまったついでにこんなものがあるんだが」

そう言って内亜柄が能力を発動すると、その手に現れたのは……『熱い』ロウソク!

「あ、アンタって本物のドSじゃないのォォォォォォォォ~~~~~~~~~~…………」


(ギャフン)



◆試合結果◆

聖槍院九鈴:『転校生』エクストングとなり時空を旅する。場外負け。
エルフの元女騎士ゾルテリア:さんざんM調教された結果、電車から蹴り落とされる。
              分厚い脂肪により奇跡的に無傷。場外負け。

内亜柄影法:若干Sに目覚める。勝利。








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