その他幕間その20

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dangerousss3

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とある人物のエピローグその1または、某能力に対する追加推察

彼の手元、一枚の報告書の草案のコピーがある。
それには【黄樺地セニオの能力『イエロゥ・シャロゥ』についての補足】と題されていた。


―トワイライト決勝戦―

かくて、その人知れず行われた、二人の立会人と対戦者のみが知る最後の戦いは幕を閉じた。

だが、本来しめやかに行われた『それ』の一部始終を高みの件物で見届けた存在がいた。
それは―

「いやー念のため、残っておいて正解だったね。最後に面白いものがみれた。」

パチパチパチ、まるで誠意の感じられない柏手を打ち、それは『鳥居』の上にいた。

山腹に位置する神社の鳥居の上に悠然と腰かけた若い男が、頬杖を突いたまま一人ごちる。
元々寂れた神社なのか、周囲に人の気配はない。
もしいればこの神の杜に対する不謹慎極まりない所業を咎めただろうか?
それとも余りに自然にそこに溶け込んでいるためオブジェか何かと勘ちがいして看過してしまい
結局見咎めずにそのまま過ぎ去ってしまうのだろうか?

実際、その姿はそういう奇妙さを持ち合わせていた。
長細い白い帽子に同じく白一色のスーツ、縫いとりの装飾以外を全身を白で固めたその姿は
無機質でまるで白い筒のような錯覚に陥らせ、酷く現実感を感じさせない。
いや必ず誰もが一度くらいは見ているはずの衣装なのだが、あまりに場違いで思い出せないというか…。

服装と見た目だけでなく彼本体の印象もどこかちぐはぐだ。年は若い少年、10代といっても通じそうだし、
逆に20代後半といっても通じそうな人物だった。なんだか軸が安定していないあやふやな幼さがある。
そんな奇妙さであった。

そして独りごとのはずの白帽子の男の台詞に反応がある。
キャラ設定で『割と無口』と記されてれていた例のアレだ。

「ココに来てまた世界改変だと。せっかく計画も予定通りに進んでたものを。影響力はどの程度だ」
多少のノイズと共にどこか呻くような掠れた声は彼の横に置かれた鉄製の箱から聞こえた。
壊れかけのレディオではない。
達筆な字で白蘭と書かれたその鉄製の箱はgagagaと音を立てつつもはっきりと音を立てた。彼は
とても人見知りで傍聴…もとい人に聞かれる可能性がある場合、決して声をあげることはないのだ。

その質問に少し間をおいてから男は哀しそうに被りを振って嘆息する。
その様子は傍から見ても態とらしくとても演技臭かった。

「たぶん影響は出ないだろうね。
存在自体が消えちゃって『概念』だけの存在になったのは2回戦でリソースされた「真野事実」と
同じケースだけど、使い手としてのセニオくんの『認識』がひじょーにビミョーなだけに難しい。
いくらセニオくんが”ソース”として強力でも世界改編まで及ぼせるかは疑問だネ。うむ、興味深い」

白帽子はひとり頷き言葉を続ける。

「『世界の敵の敵』は、元々自らがそうと認識した災厄をリソースを使って”恣意的に”弄る力な
わけなんだけど、そもそも論としてチャラ男という存在が非常にネックなんだ。なにせ
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
今ある困難を危機として上手く『認識できない』がために時代に適合できず絶滅した存在だからね。

故に奇跡的にこの時代を生き残ったカリスマ存在といえど、今ある『この世界の災厄』をきちんと認識して
取り除けるかといわれたら…ちょっと話に無理あるんじゃないかといわざるえない。
彼自身あんま根性に持続力あるタイプとも思えないし、今のままだと方向性なく拡散していって
中途半端に終わる可能性が高いね。」

そういうと白帽子はすいっと空中に手を走らせ、何かを掴む仕草をする。
何某の手ごたえを感じたのか、そのまま、ついと横に視線を走らせる。

「なるほど、では放置で問題ないな。」
視線の先、鉄製の箱からは予想通りざっくり切って捨てた『指令』が発せられた。
興味がないのだ。この世界に。

―相変わらず”手堅い”考え方をする連中だ。
心中の念はさておき、彼は掴んだ手をゆっくりと開ける。そこには、ちいさなちいさな”w”の文字が浮いていた
白帽子は変わらぬ笑顔のまま、少しだけ声を大きくして言葉を続ける。

「いや、不安定な状況のままではこの先の『任務』に危惧が残るYONE! 
どうするつもりか本人に”直接”聞いてみるとしよう。じゃ、レッツ」

白帽子が手を掲げる。次の瞬間


” ぶわッ ”


彼の手より無限の”w”が湧きいでた。


「"La amen"」


†††

彼の手より湧きでた”w”は
まるで古の予言者が岩を杖でうちつけ清水を湧き出させたかのように沸騰し
その手より溢れ出る。そして水上に浮かぶ蓮に積み重なるごとく、天より落ちることなく彼の足元にたまっていった。

1cm…2cm…踝を超える。

超高速純度の物質のコピー&ペースト。
それは全てのラーメン屋達の基礎にして奥義、だがその始まりは、なお深い。

伝説によれば、彼らの『開祖』は、彼に救いを求めた五千に及ぶ「客」たちを前に
たった一つかみの小麦を材料とし、粉を練り、麺をうち料理をふるまったという。
その奇跡の業前に人々は驚嘆し、彼を讃えた。
だが彼は、人々に神への感謝の言葉をのみ促し、それを戒めた。今より2000年前以上のことである。


「"La amen"」

開祖の死後、十二人から成る弟子たちは上手いこと時代の流れにのり、やがて世界を席巻する。

十二の流派は様々に分かれ、融合と衝突を繰り返し、最終的には
物質的充足と欠乏の危機に矢面に立つことを己が職(食)任とする『東』、
人々の精神的庇護と人類の十全なる結束とを是とする『西』、
その西と東の二つの思想形態へと判れ、激しく対立を繰り返すことになる。

そして、その歴史上には何度か原点回帰ともいうべき、両者の特性をもった特異点が存在した。
そして、それはその能力が故に例外なく『開祖』と同じ道を歩むことになる。
即ち『業界』から追放される苦難の道を。

男はいつの間にか手にした赤い本を開く。
足元に溜まっていたwの文字が、横手に持ち下に開いた本に下から上へとまるで
撒き戻し映像のように流れ込んでいく。

その表紙には「ラーメン戦士烈伝」vol3」と書かれていた。

「モード『"CHA=La=men”黄樺地セニオ』IN」


†††

次の瞬間
”彼”は既に金髪を靡かせ、軽薄な笑みを浮かべていた。
着装とは装いを着ること、着想とは何か?思想か思考だろうか。だがそれだけではない。

彼はそれを身に纏う。
彼はその人の『物語』をそのまま纏う。ヒトそれを模倣芸術(パスティーシュ)と呼ぶ。

「ヴェヴェ、ラーメンに遊び人枠キタコレwwww。
マジッスカ、キツイバイトとかマジ勘弁ってカンジナンッスッガ。さっさとゴッドとチャラリングしてアドゥーって感じwww」


(あーまた暴走し始めたよ…このセルフ・ダーマ神殿め…)

鉄製の箱、オカモチさんの嘆息がマイク越しから聞こえるようだった。
その心持(いつう)を知ってか知らずか、青き空に向け手を広げ、元祖セニオにチャラリングを試みるダーマ神殿(現職:遊び人)。
この世に唯一あるチャラ男属性を持つ者として今や”GOD”とともいえる存在となった”彼”と同調しようとしているのだ。

いきなりガチでマジモードだった。たぶん3分持たない。

集中。

その指の先まで大きく広げられた手は、神に祈りを捧げる聖職者のようであった。
それは神々しくも雄大に
煌々と祝詞をアゲアゲで奉りたてまつった。

「CHA―RAN~~ 

KON―PEIデーーーースーーー(「おお神よザフトーンを恵みたまえ」という意味の英語)」

と。


(ーーーーーチャラ男ちゃうーーー。確かにチャラいしウザいけど、ーーー断じてチャラ男ちゃうーーー」
オカモチさんが遠距離通信でツッコミを入れる。なんでコンなののシリモチさせられてるんだという疑問を抱えながら。

そして  ペカー

『ヒャヒャヒャ、マジ受けるwwwドーモ、創世記チャラ男のヤマダです。
ザフートンお持ちしました。
エ、ナニナニ?オレのそっくりさんイル。ヤベ、シュウロクシュウロクチュウ?ご本人サン降臨来ちゃった。』

ペカーという威厳を感じない効果音を共になんかお空に神々しい光と、軽薄な声があたりに響いた…。

(ヤマダってチャラ男だったのかよ!って、概念的存在がそんな軽くでてくんなよ。)

絶望的な呟きがオカモチより再び発せられた。



――
―――

なんか。今までの感動を。ごめんなさい。


そして神社に特大の蚊柱(w群)がたった。


†††

「なるほどね。これは盲点だった。」

ゴッドとの対話を終えた白帽子(元の姿に戻った)は境内の石畳から身を起こすと
ついっと指を手繰る。その一動作で鳥居の上にあったオカモチが手繰り寄せられ、
彼の手にすっぽり収まった。

「結局黄樺地セニオにとっての所謂『世界の危機』はたった一つのことでしかなかったと。
流石ゴッド。なかなか趣深い対話だった。」

(いやお前らの話さっぱり意味不明で判らなかったんだが)

げっそりしたようにいうオカモチ。
かわされた会話は正に空中セッポウ、極めて高次元かつ軽薄なものだったのだ。
ほとんどブッタ、故にアンブッタ。

「えっとね」
白帽子は身体にまとわりついているwたちに指を向けると続きのスペルを指でなぞる。

"when"
"where"
"who"
”what”
”why"

「これらのボクの投げかけに関して彼は全て”all”と答えた。
予想通りチャラ神は、凡百の脅威なんか全然、把握してなかったんだ。
だからこそ世界は救われたといえる。
彼に掛けられた”呪い”が結局、世界を救ったという形になるね」

???。やはりさっぱり判らない。
白帽子が指をくるくる回すと文字はどこかに消えて行く。

「黄樺地セニオにとってのこの世界の脅威というのは『時代がシリアスすぎてた』という
一点だけだったんだ。
この時代、シリアスを理解できない彼の目の前に現れる人間人間がことごとく
深刻な顔と心境で現れる。
まさに果てしなく続く『アヴェー』(敵地)っという感じだった。
なので彼が自身を使って変えたのはその空気だけ、変えたかったのは最初からその一点だけだったんだ」

―セカァー、ウィー、ヘェイー、ワー! ヒュゥー! オレマジ天才ウェーイ!―
―逆っしょwwwアンタが真面目すぎウケるwww―

「そして」
人差し指と親指の間にちょっとだけ間
「この世界、準決勝戦直後からチャラ因子の拡散で全人類が、徐々にチャラくなってる。
まあ、ほんの5mmばかしなんだけど」

オカモチが蒼くなった。
(…駄目だろそんな世界、滅びる)
「いや脅威に対する『認識』が変わったという意味では悪くない。
皆が皆が深層意識レベルで『脅威』を上手く認識できなくなり、それに対しソートー
楽天的になってる状態だ。深刻すぎたこの世界には”今のバランス”で丁度いい。丁度いい『認識』なんだ」
(そういうことか…)
頷く白帽子。
「人類の脅威は確かにある、だが『世界の敵』なんてものは元々この世界には存在しない。
そのことを我々は十分知っている。
結局『世界の敵』を『世界の敵』たらせているのはそういった存在がある”はず”という
人間の『認識』ということをね。」

「シリアスが認識できないというチャラ男の呪いが薄く広く拡散することによって世界は
「世界の敵」という幻想から解放された。
以降はチャラ因子をもつ楽天的な人々の認識と手によって世界は救われていくはずだ。
空気を読まず『脅威』をアヴェーにして駆逐していく形でね。
自分に上手く認識できないなら上手くできる”ツレ”にやらせればいい。
実にチャラ男らしい発想。上手くいけばいずれ近い将来、彼らの中からチャラ男が生まれてくるだろう。」

うぇーい。

うん、今のは幻聴と言うことにしておこう、白帽子が首を振る。
個の力と犠牲を持って世界を救おうとした少年のことがちょっと頭をよぎったのかもしれない。

「皆の意識がちょっとだけ変わるだけ。それが完成版『世界の敵の敵』。
いやはや、これは世界改編などとはとても呼ばない代物だ。まあ強いていうなら…

皆でつくる『明るい未来』。

黄樺地セニオは『救世主』のくせして世界の救済全部人任せ、全人類にぶんなげていきやがったわけだ。」

男はそれ以上声を上げることなく静かに笑った。
ひとしきり笑い終わった後、白帽子は境内の階段のほうを見やる。誰かが上がってくる気配がある。

「かくてこの世界もことはなし。今日もボク達はかくも無力なりけり。
さて、あとは彼らに任せ、異邦人たる我々は音もなく立ち去るとしようか。」

彼は舞台を降りるため、静かに境の一線を超える。
そしてそれは上がってくる者と交わることはなかった。

(あーなんだかな。しかし、何か忘れてるような…)
(ぎくっ まーいーじゃん。)


                          (黄樺地セニオ「"La amen"」ラーニング終了)