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そもそもそんなものが存在する確率は?

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安全牌を見極めろ/そもそもそんなものが存在する確率は? ◆MUMEIngoJ6


「ぐあああああああああああ!?」

 耳をつんざくほどの悲鳴が、前触れもなく周囲の木々を震わした。
 やたらと声量だけはあるものの、その悲鳴には発声法のいろはもない。
 押し潰されたような濁声が、時折裏返って甲高くなっている。

「そうらよっと」

 叫び声がよほど不快であったのか、青年がのた打ち回る悲鳴の主へとドロップキックを叩き込む。
 全身を炎に覆われていては反応できる道理もなく、前のめりに倒れこんだ男は十数メートルほど地面に擦り付けられる。
 とはいえ、何とかそのおかげで悲鳴の主を覆う炎は払われた。
 額に刻み付けられていたクラブのマークは、煤によって見えなくなってしまっているが。
 依然として立ち上がらぬまま荒い呼吸を続ける男を見下ろして、青年は切り出す。
 勇者らしからぬほどに冷え切った眼差しの主は、しかしながら魔を統べる竜の王へと単身立ち向かう勇者。その名をジャガン。

「もう一度質問だ。お前は、あのノアに関して何か知っているか?」
「し、知らん! お、俺は何も」
「そうか、ならば用はない」

 鎧を纏う男が言い終えるより先に、ジャガンは携えていた細身の片手剣を構える。
 その様を目にした男が、どうにか時間を稼ぐべく咄嗟に問いかける。

「待て! いきなり襲い掛かったのは悪かった! しかし優勝したいのなら、ここで俺を殺さずに泳がせた方がだな」
「関係ないな。優勝して何になる」
「なっ!? ならアンタは何を……?」

 またしても言い終えるより先に結論を出され、男は今度は心の底から生まれた疑問を口にする。
 投げかけられた疑問に口角を吊り上げると、ジャガンは包み隠さずに目的を告げる。
 この殺し合いに興味などなく、欲しいのはノアが持つ技術であると。
 ジャガンがわざわざ答えたのは死に行く者への慈悲にあらず、己が目指すゴールの凄まじさを分からせるため。
 勇者でなければ目指せぬほどの途方もない目的を教えることで、生まれ持った血の差というものを心で理解させるため。
 だからこそ勢いよく立ち上がった男の言葉に、怪訝な声をあげることになる。

「わ、分かった! 俺もアンタの案に乗る!」
「あァ?」
「さっきまでは、あのノアとかいうヤツに勝てないと思ってた!
 だがアンタがいれば何とかなる気がするッ! 俺を部下にしてくれよ! これでもアンタほどじゃないが、腕には自信があって――!」

 ここにきて初めて男の言葉を最後まで聞くと、ジャガンは呆けたような表情となる。
 男にとってあまりにも長く感じられる一分が過ぎた頃、静かになった森林に喉を鳴らす音が響き渡る。
 低かった音はじょじょに大きくなっていき、ついにジャガンが大きく口を開く。

「クッ、はーッはッはッは! ははははは!! なーに言ってんだァ、お前は?」

 大きく歪んだ口元は、スライムのそれを思わせる。

「共闘なんざするのはな、自らの欠点を他人に埋めてもらわなきゃならねえ凡人だけなんだよ」

 立ち竦んでいる男を見つめる瞳は、さながら人間に相対した魔物のよう。

「ま、よーするに俺みたいな天才様には埋めなきゃいけない欠点なんてねーってワケ。
 情報なり財宝なり持っててそいつを交渉材料に使うんならともかく、戦力としてカウントして欲しいってお前、そりゃあアレだアレ。身の程知らずを通り越してさ」

 すう、と一息。
 ただそれだけの行為が、劫火を吐き出す寸前のドラゴンじみて見える。

「――――もういいから二度と口開くな、ってヤツ?」

 ジャガンが目を細めると、暗い闇を抱いた瞳がいっそう強調され――男の脳内に主君の姿が蘇る。
 関東一円を支配する組織の統率者にして『KING』、その姿が。

 ゆえにジャガンの言葉が耳朶を打つのと同時に、男は踵を返して全力で逃走を開始した。

 震える身体を奮い立たせて、縺れそうになる両脚に意識を集中させて。
 頭の中を駆け巡るは、ただただ後悔の念。
 見た目だけで相手の実力を知った気になって、KINGを連想させる相手に仕掛けたことへの。

「おお、背中見せて逃げるってか? いやいやいい判断だとは思うよ?
 焦りに駆られて俺に攻撃してくるようじゃあ、減点一万の即殺ルート一直線だ」

 遠ざかっていく背中を眺めつつ、軽口を叩くように笑みを浮かべる。
 その笑いは、もはや先刻のように暗くはなくなっていた。
 これから起こるであろうことを純粋に楽しみにしているかのような、そういう類の表情。
 デイパックから光り輝く丸い石を取り出し、ジャガンの頬がいっそう緩む。
 重量を意に介さずに片手で掴み、大きく振り被る。

「でも残念。悪いな、さっきのは嘘だった」

 言葉と同時に、オーバースローのフォームから石を手放す。
 放り投げられた石の名は、勇者ロトも使用したと伝承される『太陽の石』。
 されども、残り二つの神具がなければ意味を成さないただの輝く石。
 だが、ジャガンにはそれで十分なのだ。

「俺は、『超』天才なのさ」

 ジャガンの手元から離れた太陽の石は、動き回る的を正確に射抜いた。
 男は黒地に金色をあつらえた鎧を着込んでいたものの、後頭部を狙われれば関係ない。
 太陽の石は男の首を刈り取っても減速しただけで、一本の樹木に激突してやっと静止した。
 かなり深いところまでめり込んでしまったが、ジャガンは呼気を整えると片手で太陽の石を抜き取った。


 ◇ ◇ ◇


「なかなかってとこか。ま、ご先祖さんの鎧と比べんのは可哀想だしな」

 死体から引き剥がした鎧を着込むと、ジャガンは身体を擦るようにして強度を確認する。
 幾ら自分が唱えたとはいえ、『ギラ』程度の呪文では内部まで熱が届くとは思えない。
 死体となった男は、おそらく顔面や下半身への熱で悶えていたのだろう。
 結論付けると、これまた死体から奪ったデイパックの中身を確認する。

「ちッ、剣はねーか。コイツはそこまでの代物じゃなさそうなんで、別のが欲しいんだがな」

 ジャガンは携えたレイピアに視線を投げて溜息を吐くと、拾ったデイパックの中身を元から所持していた方に纏める作業に移す。

「さて、と」

 ――――ゆっくりと首を後ろに回し、森林の一点を見据える。

「ずっと見てたよなァ。ククッ、いやはや逃げ出そうとか考えなくて助かったぜ」

 暫し静寂が辺りを支配するも、ジャガンは視線を流そうとはしない。
 いい加減やり過ごすのは不可能と判断したのだろう。
 ジャガンの視線の先にある木の陰から、民族衣装のようなものを纏った男が姿を現した。

「こちらに気付いていない確率は七パーセントだった。しかし動けばその確率は、その一割程度までに下がってしまうからな」
「カカッ、面白いこと言うじゃねえか。答えを言えば最初っからバレてたけどな」
「あくまで確率の話だ。それに見て取った実力からの計算である以上、そちらが全力を出していなければ確率というのはまた変わる」
「あー、ワケわかんねえからもういいや。面白くねえし、戦いにも関係なさそうだし」
「一概にそうは言えないものだ。この私、マクスウェルのように計算により魔法を導き出す者もいるのだからな」
「はいはい、もういいって。ンな下らねーことよりも質問がある。お前はノアのことを知っているのか?」

 ジャガンはマクスウェルの言葉を切り上げて、本題に取り掛かる。
 自身のジョブでもある算術士の情報をあえて漏らしたマクスウェルは、胸中で下を打つ。
 ノアの情報を持っていないので、別のことに注意を引かせようとしていたのだ。
 目的は同じといえど、共闘しようなどといえばどうなるかは証明済み。
 気まぐれを起こすかもしれないが、それを確率とするのはあまりに馬鹿げている。
 算術士として、そんな曖昧な物を計算に含めるワケにはいかないのだから。
 マクスウェルはゆったりとした服にデリンジャーを隠し持っているが、それを使っての不意打ちなど試みない。
 拳銃の心得はあるが、ジャガンの方も回避行動をとってくるだろう。
 急所に命中しない限り、デリンジャー程度ではジャガンが死ぬ確率が低すぎる。
 いや、そもそも急所に当たれば倒れるのであろうか――そんな考えまでもがマクスウェルの中に浮かぶ。
 また計算による魔法を放てば、致命の一撃となる。
 そのように自分の実力を信じつつも、マクスウェルはそれもまた行わない。
 しかしそうするにしても計算中に、太陽の石を放たれるのがオチだろうから。

「私、は――――」

 内心の苦悩などおくびにも出さず、マクスウェルは静かに口を開く。
 平静そのままといった様子ながら、脳味噌は高速で回転し続けている。
 もしもここで返答を誤った場合、先ほど命を落とした男のようになる確率などわざわざ計算するまでもないから。
 殺し合い開始早々にして、現在がマクスウェルにとってのいわゆる正念場。


【KING構成員@北斗の拳 死亡確認】


【一日目・午後/D-2 森】

【ジャガン(主人公)@ドラゴンクエスト1】
【状態】健康
【装備】レイピア(50/50)@魔界塔士SaGa、源氏の鎧@FF5
【道具】支給品一式×2、太陽の石@ドラゴンクエスト、不明支給品1~3(確認済み、剣はない)
【思考】
基本:如何なる手段を持ってしてもノアを殺し、世界を支配する。
1:ノアのことを知っているヤツを探す。
2:レイピアに代わる剣が欲しい。


【マクスウェル(算術士)@ファイナルファンタジータクティクス】
【状態】健康
【サポートアビリティ】銃装備可能
【装備】デリンジャー(30/30)@魔界塔士SaGa
【道具】支給品一式、不明支給品0~2(確認済み)
【思考】
基本:仲間を集めてノアを打倒する。
1:ジャガンへの対応。


【参加可能者 残り15人+α】


017:怒りの錬金術士 投下順 019:LIFE A LIFE
060:*うみのなかにいる* 時系列順 031:『無名』
009:竜王計画ジェノサイダー ジャガン 049:Leap the precipice
初登場! マクスウェル



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