『無名』 ◆MUMEIngoJ6
闇の戦士の駆るサイクロンというバイクが、森林内を走り抜ける。
アクセルをある一点で固定したままで、時には緩やかに時には勢いよくハンドルを操作する。
バイク運転にはとうに慣れきったらしく、周囲の樹木を掠ることすらもない。
それにしても、どうしてわざわざ障害物の多い場所を疾走しているのか――その疑問の答えは簡単だ。
いち早く全参加者を見つけ出すには、会場中をバイクで駆け抜けねばならない。
とはいえ会場は平原ばかりではないので、いつかは山や森林を走らねばならない。
だからこそ闇の戦士は、あえてすぐさま森林へと飛び込んだのである。
これといった負傷もないうちに、塗装されていない地でのバイク操縦をマスターしておくために。
「…………くっ」
ある程度の慣れが生まれてしまったからであろう。
運転しながらも何か別のことを意識してしまう余裕が、闇の戦士の中にできてしまった。
当然、考えるのはこれからやろうとしていることについて。
先ほど切り伏せた相手は、明らかに優勝を目指そうとしていた魔物であった。
だが仮に罪なき人間の場合も、同じように冷酷に徹することができるのだろうか。
やらねばならないとは自覚している。
早急に帰還しなければ世界が終焉を迎えてしまうことだって、分かっている。
けれども闇の戦士の胸中には、まだ決めかねている自分がいるのだ。
闇のクリスタルの中で悠久の時を経た闇の戦士からは、かつての記憶は殆ど抜け落ちている。
それでも、心の奥底には世界を守りたいという思いがある。
ゆえに封印されながらも、彼と仲間たちは光の戦士の誕生を感じ取れた。
だというのに、世界を救うために全員を殺害してでも戻る。
そう考えた途端に、どこかで躊躇しかけている。
そんな自分が不甲斐なくなった名もなき魔剣士は、もはや顔も思い出せない自身の仲間に胸中で詫びる。
「なっ!?」
突如、思案を巡らしていた彼の視界が真紅に染まった。
アクセルをある一点で固定したままで、時には緩やかに時には勢いよくハンドルを操作する。
バイク運転にはとうに慣れきったらしく、周囲の樹木を掠ることすらもない。
それにしても、どうしてわざわざ障害物の多い場所を疾走しているのか――その疑問の答えは簡単だ。
いち早く全参加者を見つけ出すには、会場中をバイクで駆け抜けねばならない。
とはいえ会場は平原ばかりではないので、いつかは山や森林を走らねばならない。
だからこそ闇の戦士は、あえてすぐさま森林へと飛び込んだのである。
これといった負傷もないうちに、塗装されていない地でのバイク操縦をマスターしておくために。
「…………くっ」
ある程度の慣れが生まれてしまったからであろう。
運転しながらも何か別のことを意識してしまう余裕が、闇の戦士の中にできてしまった。
当然、考えるのはこれからやろうとしていることについて。
先ほど切り伏せた相手は、明らかに優勝を目指そうとしていた魔物であった。
だが仮に罪なき人間の場合も、同じように冷酷に徹することができるのだろうか。
やらねばならないとは自覚している。
早急に帰還しなければ世界が終焉を迎えてしまうことだって、分かっている。
けれども闇の戦士の胸中には、まだ決めかねている自分がいるのだ。
闇のクリスタルの中で悠久の時を経た闇の戦士からは、かつての記憶は殆ど抜け落ちている。
それでも、心の奥底には世界を守りたいという思いがある。
ゆえに封印されながらも、彼と仲間たちは光の戦士の誕生を感じ取れた。
だというのに、世界を救うために全員を殺害してでも戻る。
そう考えた途端に、どこかで躊躇しかけている。
そんな自分が不甲斐なくなった名もなき魔剣士は、もはや顔も思い出せない自身の仲間に胸中で詫びる。
「なっ!?」
突如、思案を巡らしていた彼の視界が真紅に染まった。
□
「汚物は消毒だ~~~~っ!!!」
炎に覆われたバイクを前に、頭髪を派手なモヒカンヘアーにしたガタイのいい男が声を張り上げる。
その少し前に立つのは、口から炎を吐き出しているオレンジ色の巨大な蜥蜴。
背中からは羽が生え、尾には文字通り火が灯っている。
「ふははは! この大蜥蜴しか武器がなかった時はハズレかと思ったが、なかなか当たりじゃねえかァ~~~!」
高笑いするモヒカン男の手には、半赤半白の球体。
その中に、リザードンという名の炎を吐き出す蜥蜴が捕獲されていたのだ。
本来は飼い主の言うことしか聞かないらしいが、そこはノアが球体に手を加えたのだろう。
都合のいいように解釈したモヒカン男の聴覚が、やけに落ち着いた声を捉えた。
その少し前に立つのは、口から炎を吐き出しているオレンジ色の巨大な蜥蜴。
背中からは羽が生え、尾には文字通り火が灯っている。
「ふははは! この大蜥蜴しか武器がなかった時はハズレかと思ったが、なかなか当たりじゃねえかァ~~~!」
高笑いするモヒカン男の手には、半赤半白の球体。
その中に、リザードンという名の炎を吐き出す蜥蜴が捕獲されていたのだ。
本来は飼い主の言うことしか聞かないらしいが、そこはノアが球体に手を加えたのだろう。
都合のいいように解釈したモヒカン男の聴覚が、やけに落ち着いた声を捉えた。
「助かったよ、分かりやすいので」
その音源が燃え盛るバイクの方でなかったことに驚愕し、モヒカン男は勢いよく首を回した。
「あんた、どうやって!?」
熱を感じ取ったのと同時に、『ミニマム』という呪文を唱えて身体を縮めてサイクロン号から飛びのいた。
と、真相はそんなところであるのだが、闇の戦士は返答せずにバスタードソードを握って地面を蹴る。
わざわざ答える必要がないし、無駄に時間を消費する余地はない。
モヒカン男は遠ざかるが、闇の戦士は深追いせずに残されたリザードンへと標的を変えた。
直撃していなくとも、先の不意打ちでリザードンの吐き出す炎の威力は見極めている。
闇の戦士がいた世界で言うところの『ファイガ』程度。
ならばそこまで後に支障が出るようなダメージは追わないと判断し、直進を続けた。
(取った!)
吐き出された炎を横に飛ぶことで危なげなく回避し、闇の戦士は標的の腹に突き刺さんとバスタードソードを伸ばす。
しかし西洋剣の切っ先が触れる寸前、リザードンは力強く地面を踏みしめた。
(クエイク!?)
リザードンを中心に大地が鳴動し、その衝撃で闇の戦士は体勢を崩してしまう。
何とか倒れこむまでは行かなかったものの、体勢を立て直した闇の戦士の眼前には巨大な炎が迫っていた。
「しま――――っ」
思わず零れた言葉を最後まで告げられずに、闇の戦士は大の字を象った業火に飲み込まれる。
その火力は、闇の戦士の世界では『フレア』と呼ばれていた火炎魔法に匹敵するほどであった。
「あんた、どうやって!?」
熱を感じ取ったのと同時に、『ミニマム』という呪文を唱えて身体を縮めてサイクロン号から飛びのいた。
と、真相はそんなところであるのだが、闇の戦士は返答せずにバスタードソードを握って地面を蹴る。
わざわざ答える必要がないし、無駄に時間を消費する余地はない。
モヒカン男は遠ざかるが、闇の戦士は深追いせずに残されたリザードンへと標的を変えた。
直撃していなくとも、先の不意打ちでリザードンの吐き出す炎の威力は見極めている。
闇の戦士がいた世界で言うところの『ファイガ』程度。
ならばそこまで後に支障が出るようなダメージは追わないと判断し、直進を続けた。
(取った!)
吐き出された炎を横に飛ぶことで危なげなく回避し、闇の戦士は標的の腹に突き刺さんとバスタードソードを伸ばす。
しかし西洋剣の切っ先が触れる寸前、リザードンは力強く地面を踏みしめた。
(クエイク!?)
リザードンを中心に大地が鳴動し、その衝撃で闇の戦士は体勢を崩してしまう。
何とか倒れこむまでは行かなかったものの、体勢を立て直した闇の戦士の眼前には巨大な炎が迫っていた。
「しま――――っ」
思わず零れた言葉を最後まで告げられずに、闇の戦士は大の字を象った業火に飲み込まれる。
その火力は、闇の戦士の世界では『フレア』と呼ばれていた火炎魔法に匹敵するほどであった。
「すげえ~……!」
リザードンの元へと歩み寄ってきた男が、眼前の惨状に思わず感嘆してしまう。
大の字の炎は、木々を焼き尽くすどころか地形までも歪めていた。
それを正面から受けた闇の戦士は、黒ずんだ土の上で横たわっている。
「わはははは! こいつさえいれば、優勝するのに苦労しねえぜ!」
モヒカン男ははしゃぐように、リザードンの背中をバシバシと叩く。
上機嫌そうな主人とは対照的に、リザードンの方は不愉快そうに目元をひくつかせている。
ノアによる制限がなければ、モヒカン男は火炎の中で炭となっているだろう。
忌々しい制限に牙を軋ませるリザードンの視界が、銀色の閃光を捉えた。
リザードンの元へと歩み寄ってきた男が、眼前の惨状に思わず感嘆してしまう。
大の字の炎は、木々を焼き尽くすどころか地形までも歪めていた。
それを正面から受けた闇の戦士は、黒ずんだ土の上で横たわっている。
「わはははは! こいつさえいれば、優勝するのに苦労しねえぜ!」
モヒカン男ははしゃぐように、リザードンの背中をバシバシと叩く。
上機嫌そうな主人とは対照的に、リザードンの方は不愉快そうに目元をひくつかせている。
ノアによる制限がなければ、モヒカン男は火炎の中で炭となっているだろう。
忌々しい制限に牙を軋ませるリザードンの視界が、銀色の閃光を捉えた。
それが短刀であると理解した頃には、リザードンの右目には鋭い痛みが走っていた。
深々と突き刺さった短刀に、たまらず絶叫。
本来の主人であるレッドがいたのなら、もっと早く攻撃に気付いて正確に指示を出していただろう。
あまりにも天才じみた主人に仕えていたからこそ、リザードンからは野生の注意深さが消えていたのである。
大蜥蜴の咆哮が大気を震わせ、葉っぱが辺りを舞う。
状況を理解できないモヒカン男をよそに、ミスリルナイフを投擲した闇の戦士が駆ける。
負った火傷は無視できるようなものではない。
それを承知でバスタードソードを握りながら、闇の戦士は身体を疾風とする。
ダメージが大きすぎるゆえに、ただ剣を振るっても望むような一撃は放てない。
そのことを分かっているからこそ、闇の戦士は上半身を限界まで捻った。
「ふッ!」
鋭く息を吐いて、闇の戦士は伸ばしていた身体を一気に戻す。
遠心力が上乗せされたバスタードソードは、右目の痛みに身悶えしていたリザードンの首を鮮やかに切り落とした。
「えっ、わっ! そ、そんな、あんた!?」
噴水のように飛び散った赤黒い液体を浴びて、モヒカン男はやっと闇の戦士の生存に気付いたらしい。
虚を付かれながらも、氷塊のような冷たい視線を浴びて我に返って後退しようとするも、思いに反して倒れこんでしまう。
胸元を深く切り付けられたからだと気付いたのは、地面に打ち据えられてからだった。
必死でデイパックに手を伸ばそうとするが、それに気付いた闇の戦士に拾い上げられてしまう。
「どう、して生き、て……?」
「ただの修練の賜物だ」
万に一つもない生の可能性を奪い取るため、闇の戦士はバスタードソードを倒れ伏す男にあてがう。
「アン、タ、何、者……」
首元に冷たさを感じつつ、モヒカン男は弱弱しく問いかける。
深々と突き刺さった短刀に、たまらず絶叫。
本来の主人であるレッドがいたのなら、もっと早く攻撃に気付いて正確に指示を出していただろう。
あまりにも天才じみた主人に仕えていたからこそ、リザードンからは野生の注意深さが消えていたのである。
大蜥蜴の咆哮が大気を震わせ、葉っぱが辺りを舞う。
状況を理解できないモヒカン男をよそに、ミスリルナイフを投擲した闇の戦士が駆ける。
負った火傷は無視できるようなものではない。
それを承知でバスタードソードを握りながら、闇の戦士は身体を疾風とする。
ダメージが大きすぎるゆえに、ただ剣を振るっても望むような一撃は放てない。
そのことを分かっているからこそ、闇の戦士は上半身を限界まで捻った。
「ふッ!」
鋭く息を吐いて、闇の戦士は伸ばしていた身体を一気に戻す。
遠心力が上乗せされたバスタードソードは、右目の痛みに身悶えしていたリザードンの首を鮮やかに切り落とした。
「えっ、わっ! そ、そんな、あんた!?」
噴水のように飛び散った赤黒い液体を浴びて、モヒカン男はやっと闇の戦士の生存に気付いたらしい。
虚を付かれながらも、氷塊のような冷たい視線を浴びて我に返って後退しようとするも、思いに反して倒れこんでしまう。
胸元を深く切り付けられたからだと気付いたのは、地面に打ち据えられてからだった。
必死でデイパックに手を伸ばそうとするが、それに気付いた闇の戦士に拾い上げられてしまう。
「どう、して生き、て……?」
「ただの修練の賜物だ」
万に一つもない生の可能性を奪い取るため、闇の戦士はバスタードソードを倒れ伏す男にあてがう。
「アン、タ、何、者……」
首元に冷たさを感じつつ、モヒカン男は弱弱しく問いかける。
「…………もう、名前なんて忘れたよ」
苦々しく言い切った闇の戦士の頬に、数滴の血が付着した。
□
闇の戦士がモヒカン男のデイパックを確認してみると、見覚えのある青い液体が飛び出してきた。
エリクサーというの名の、負傷を癒して疲労と魔力を完全に回復させる薬品だ。
なるほど、モヒカン男が必死でデイパックに手を伸ばしていたのを頷ける。
などと一人納得しつつ、闇の戦士は暫し二本のエリクサーを眺めるも、服用することなく自身のデイパックに仕舞い込んだ。
まだ二人殺しただけの状況では、切札となりうるエリクサーを消費するには早いと考えたのだ。
ケアルラという名の中位回復呪文を何度か唱えることで、闇の戦士は負ったダメージを回復させた。
「妙に効きが悪い……封印中に身体が錆び付いたワケではあるまい。
……殺し合わせるというのに、平然と治癒を行われては不都合ということか?」
だとすれば上位白魔法をマスターした仲間がいない現状で、あまり無茶な戦いはできない。
エリクサーこそ入手したが、服用できる回数は限られている。
けれども闇の戦士は休憩を取ろうともせずに、サイクロン号に跨る。
世界が闇に覆われるまであと僅かの猶予しか残されていないし、何より――――
エリクサーというの名の、負傷を癒して疲労と魔力を完全に回復させる薬品だ。
なるほど、モヒカン男が必死でデイパックに手を伸ばしていたのを頷ける。
などと一人納得しつつ、闇の戦士は暫し二本のエリクサーを眺めるも、服用することなく自身のデイパックに仕舞い込んだ。
まだ二人殺しただけの状況では、切札となりうるエリクサーを消費するには早いと考えたのだ。
ケアルラという名の中位回復呪文を何度か唱えることで、闇の戦士は負ったダメージを回復させた。
「妙に効きが悪い……封印中に身体が錆び付いたワケではあるまい。
……殺し合わせるというのに、平然と治癒を行われては不都合ということか?」
だとすれば上位白魔法をマスターした仲間がいない現状で、あまり無茶な戦いはできない。
エリクサーこそ入手したが、服用できる回数は限られている。
けれども闇の戦士は休憩を取ろうともせずに、サイクロン号に跨る。
世界が闇に覆われるまであと僅かの猶予しか残されていないし、何より――――
「この程度の障害、かつて光の力が氾濫した際と比べたら何ということはないはずだ……ッ!」
その記憶はかなりおぼろげながら心がそう告げている。
やはりどうしても戻らねばならないと再認識し、闇の戦士はアクセルを捻った。
全身にぶつかる空気の塊に髪を靡かせながら、次の参加者を見つけ出すべく目を光らせる。
襲撃してきた相手に対して意図せず『助かった』などと言及してしまったことに、彼はおそらく気付いていない。
やはりどうしても戻らねばならないと再認識し、闇の戦士はアクセルを捻った。
全身にぶつかる空気の塊に髪を靡かせながら、次の参加者を見つけ出すべく目を光らせる。
襲撃してきた相手に対して意図せず『助かった』などと言及してしまったことに、彼はおそらく気付いていない。
【汚物を消毒するヤツ@北斗の拳 死亡】
【レッドのリザードン(支給品)@ポケットモンスター金銀 死亡確認】
【レッドのリザードン(支給品)@ポケットモンスター金銀 死亡確認】
【一日目・午後/B-5 森林】
【■■■(闇の四戦士の一人)@FF3】
[参戦時期]:封印中、光の戦士を待っている頃
[状態]:クリスタルメイルを除く衣服に損傷、疲労中、魔力消費小、新サイクロン号を運転中
[装備]:新サイクロン号(一号)@仮面ライダー、クリスタルメイル@FF5、バスタードソード@DQ3
[道具]:支給品一式×3、ミスリルナイフ@FF3、エリクサー×2@FFT
[思考]
基本:いち早く帰還
1:全参加者の殺害
2:サイクロン号で会場中を徘徊して、標的を探し出す。
[備考]
※ジョブは魔剣士。
※名前は忘れてしまっています。
【■■■(闇の四戦士の一人)@FF3】
[参戦時期]:封印中、光の戦士を待っている頃
[状態]:クリスタルメイルを除く衣服に損傷、疲労中、魔力消費小、新サイクロン号を運転中
[装備]:新サイクロン号(一号)@仮面ライダー、クリスタルメイル@FF5、バスタードソード@DQ3
[道具]:支給品一式×3、ミスリルナイフ@FF3、エリクサー×2@FFT
[思考]
基本:いち早く帰還
1:全参加者の殺害
2:サイクロン号で会場中を徘徊して、標的を探し出す。
[備考]
※ジョブは魔剣士。
※名前は忘れてしまっています。
030:魔人転生 | 投下順 | 032:赤の怪物、黒の超人 |
018:安全牌を見極めろ/そもそもそんなものが存在する確率は? | 時系列順 | 032:赤の怪物、黒の超人 |
013:各自で名前を付ける企画です ※しかし名乗れるかは限らない | ■■■(闇の四戦士の一人) | 044:Tarot No.XX |