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『無名』

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『無名』 ◆MUMEIngoJ6


 闇の戦士の駆るサイクロンというバイクが、森林内を走り抜ける。
 アクセルをある一点で固定したままで、時には緩やかに時には勢いよくハンドルを操作する。
 バイク運転にはとうに慣れきったらしく、周囲の樹木を掠ることすらもない。
 それにしても、どうしてわざわざ障害物の多い場所を疾走しているのか――その疑問の答えは簡単だ。
 いち早く全参加者を見つけ出すには、会場中をバイクで駆け抜けねばならない。
 とはいえ会場は平原ばかりではないので、いつかは山や森林を走らねばならない。
 だからこそ闇の戦士は、あえてすぐさま森林へと飛び込んだのである。
 これといった負傷もないうちに、塗装されていない地でのバイク操縦をマスターしておくために。
「…………くっ」
 ある程度の慣れが生まれてしまったからであろう。
 運転しながらも何か別のことを意識してしまう余裕が、闇の戦士の中にできてしまった。
 当然、考えるのはこれからやろうとしていることについて。
 先ほど切り伏せた相手は、明らかに優勝を目指そうとしていた魔物であった。
 だが仮に罪なき人間の場合も、同じように冷酷に徹することができるのだろうか。
 やらねばならないとは自覚している。
 早急に帰還しなければ世界が終焉を迎えてしまうことだって、分かっている。
 けれども闇の戦士の胸中には、まだ決めかねている自分がいるのだ。
 闇のクリスタルの中で悠久の時を経た闇の戦士からは、かつての記憶は殆ど抜け落ちている。
 それでも、心の奥底には世界を守りたいという思いがある。
 ゆえに封印されながらも、彼と仲間たちは光の戦士の誕生を感じ取れた。
 だというのに、世界を救うために全員を殺害してでも戻る。
 そう考えた途端に、どこかで躊躇しかけている。
 そんな自分が不甲斐なくなった名もなき魔剣士は、もはや顔も思い出せない自身の仲間に胸中で詫びる。
「なっ!?」
 突如、思案を巡らしていた彼の視界が真紅に染まった。



「汚物は消毒だ~~~~っ!!!」

 炎に覆われたバイクを前に、頭髪を派手なモヒカンヘアーにしたガタイのいい男が声を張り上げる。
 その少し前に立つのは、口から炎を吐き出しているオレンジ色の巨大な蜥蜴。
 背中からは羽が生え、尾には文字通り火が灯っている。
「ふははは! この大蜥蜴しか武器がなかった時はハズレかと思ったが、なかなか当たりじゃねえかァ~~~!」
 高笑いするモヒカン男の手には、半赤半白の球体。
 その中に、リザードンという名の炎を吐き出す蜥蜴が捕獲されていたのだ。
 本来は飼い主の言うことしか聞かないらしいが、そこはノアが球体に手を加えたのだろう。
 都合のいいように解釈したモヒカン男の聴覚が、やけに落ち着いた声を捉えた。

「助かったよ、分かりやすいので」

 その音源が燃え盛るバイクの方でなかったことに驚愕し、モヒカン男は勢いよく首を回した。
「あんた、どうやって!?」
 熱を感じ取ったのと同時に、『ミニマム』という呪文を唱えて身体を縮めてサイクロン号から飛びのいた。
 と、真相はそんなところであるのだが、闇の戦士は返答せずにバスタードソードを握って地面を蹴る。
 わざわざ答える必要がないし、無駄に時間を消費する余地はない。
 モヒカン男は遠ざかるが、闇の戦士は深追いせずに残されたリザードンへと標的を変えた。
 直撃していなくとも、先の不意打ちでリザードンの吐き出す炎の威力は見極めている。
 闇の戦士がいた世界で言うところの『ファイガ』程度。
 ならばそこまで後に支障が出るようなダメージは追わないと判断し、直進を続けた。
(取った!)
 吐き出された炎を横に飛ぶことで危なげなく回避し、闇の戦士は標的の腹に突き刺さんとバスタードソードを伸ばす。
 しかし西洋剣の切っ先が触れる寸前、リザードンは力強く地面を踏みしめた。
(クエイク!?)
 リザードンを中心に大地が鳴動し、その衝撃で闇の戦士は体勢を崩してしまう。
 何とか倒れこむまでは行かなかったものの、体勢を立て直した闇の戦士の眼前には巨大な炎が迫っていた。
「しま――――っ」
 思わず零れた言葉を最後まで告げられずに、闇の戦士は大の字を象った業火に飲み込まれる。
 その火力は、闇の戦士の世界では『フレア』と呼ばれていた火炎魔法に匹敵するほどであった。


「すげえ~……!」
 リザードンの元へと歩み寄ってきた男が、眼前の惨状に思わず感嘆してしまう。
 大の字の炎は、木々を焼き尽くすどころか地形までも歪めていた。
 それを正面から受けた闇の戦士は、黒ずんだ土の上で横たわっている。
「わはははは! こいつさえいれば、優勝するのに苦労しねえぜ!」
 モヒカン男ははしゃぐように、リザードンの背中をバシバシと叩く。
 上機嫌そうな主人とは対照的に、リザードンの方は不愉快そうに目元をひくつかせている。
 ノアによる制限がなければ、モヒカン男は火炎の中で炭となっているだろう。
 忌々しい制限に牙を軋ませるリザードンの視界が、銀色の閃光を捉えた。

 それが短刀であると理解した頃には、リザードンの右目には鋭い痛みが走っていた。
 深々と突き刺さった短刀に、たまらず絶叫。
 本来の主人であるレッドがいたのなら、もっと早く攻撃に気付いて正確に指示を出していただろう。
 あまりにも天才じみた主人に仕えていたからこそ、リザードンからは野生の注意深さが消えていたのである。
 大蜥蜴の咆哮が大気を震わせ、葉っぱが辺りを舞う。
 状況を理解できないモヒカン男をよそに、ミスリルナイフを投擲した闇の戦士が駆ける。
 負った火傷は無視できるようなものではない。
 それを承知でバスタードソードを握りながら、闇の戦士は身体を疾風とする。
 ダメージが大きすぎるゆえに、ただ剣を振るっても望むような一撃は放てない。
 そのことを分かっているからこそ、闇の戦士は上半身を限界まで捻った。
「ふッ!」
 鋭く息を吐いて、闇の戦士は伸ばしていた身体を一気に戻す。
 遠心力が上乗せされたバスタードソードは、右目の痛みに身悶えしていたリザードンの首を鮮やかに切り落とした。
「えっ、わっ! そ、そんな、あんた!?」
 噴水のように飛び散った赤黒い液体を浴びて、モヒカン男はやっと闇の戦士の生存に気付いたらしい。
 虚を付かれながらも、氷塊のような冷たい視線を浴びて我に返って後退しようとするも、思いに反して倒れこんでしまう。
 胸元を深く切り付けられたからだと気付いたのは、地面に打ち据えられてからだった。
 必死でデイパックに手を伸ばそうとするが、それに気付いた闇の戦士に拾い上げられてしまう。
「どう、して生き、て……?」
「ただの修練の賜物だ」
 万に一つもない生の可能性を奪い取るため、闇の戦士はバスタードソードを倒れ伏す男にあてがう。
「アン、タ、何、者……」
 首元に冷たさを感じつつ、モヒカン男は弱弱しく問いかける。

「…………もう、名前なんて忘れたよ」

 苦々しく言い切った闇の戦士の頬に、数滴の血が付着した。



 闇の戦士がモヒカン男のデイパックを確認してみると、見覚えのある青い液体が飛び出してきた。
 エリクサーというの名の、負傷を癒して疲労と魔力を完全に回復させる薬品だ。
 なるほど、モヒカン男が必死でデイパックに手を伸ばしていたのを頷ける。
 などと一人納得しつつ、闇の戦士は暫し二本のエリクサーを眺めるも、服用することなく自身のデイパックに仕舞い込んだ。
 まだ二人殺しただけの状況では、切札となりうるエリクサーを消費するには早いと考えたのだ。
 ケアルラという名の中位回復呪文を何度か唱えることで、闇の戦士は負ったダメージを回復させた。
「妙に効きが悪い……封印中に身体が錆び付いたワケではあるまい。
……殺し合わせるというのに、平然と治癒を行われては不都合ということか?」
 だとすれば上位白魔法をマスターした仲間がいない現状で、あまり無茶な戦いはできない。
 エリクサーこそ入手したが、服用できる回数は限られている。
 けれども闇の戦士は休憩を取ろうともせずに、サイクロン号に跨る。
 世界が闇に覆われるまであと僅かの猶予しか残されていないし、何より――――

「この程度の障害、かつて光の力が氾濫した際と比べたら何ということはないはずだ……ッ!」

 その記憶はかなりおぼろげながら心がそう告げている。
 やはりどうしても戻らねばならないと再認識し、闇の戦士はアクセルを捻った。
 全身にぶつかる空気の塊に髪を靡かせながら、次の参加者を見つけ出すべく目を光らせる。
 襲撃してきた相手に対して意図せず『助かった』などと言及してしまったことに、彼はおそらく気付いていない。


【汚物を消毒するヤツ@北斗の拳  死亡】
【レッドのリザードン(支給品)@ポケットモンスター金銀  死亡確認】

【一日目・午後/B-5 森林】
【■■■(闇の四戦士の一人)@FF3】
[参戦時期]:封印中、光の戦士を待っている頃
[状態]:クリスタルメイルを除く衣服に損傷、疲労中、魔力消費小、新サイクロン号を運転中
[装備]:新サイクロン号(一号)@仮面ライダー、クリスタルメイル@FF5、バスタードソード@DQ3
[道具]:支給品一式×3、ミスリルナイフ@FF3、エリクサー×2@FFT
[思考]
基本:いち早く帰還
1:全参加者の殺害
2:サイクロン号で会場中を徘徊して、標的を探し出す。
[備考]
※ジョブは魔剣士。
※名前は忘れてしまっています。

030:魔人転生 投下順 032:赤の怪物、黒の超人
018:安全牌を見極めろ/そもそもそんなものが存在する確率は? 時系列順 032:赤の怪物、黒の超人
013:各自で名前を付ける企画です    ※しかし名乗れるかは限らない ■■■(闇の四戦士の一人) 044:Tarot No.XX



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