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テメえの都合じゃ生きちゃいねえよ

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匿名ユーザー

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テメえの都合じゃ生きちゃいねえよ ◆yMsVbZ1/Ak


「……しっかし、誰もいないわねー。人の一人や二人や一億人ぐらいいればいいのに」
そんなことをぶつぶつ言いながら剣を片手にうろつくネリー。
地図を見る限りそこまで広くも無いだろうと推測して適当に歩き回っていた。
しかし、もう数時間も歩いているというのに人っ子一人出てくる気配が無い。
次第に面倒になってきたネリーはとある支給品をバックから出した。
「……もうめんどくさいや、これ使っちゃおうっと」
一見、それは何の変哲も無いドアだった。
しかし、そのドアはこの会場内のどこにでも旅立つことの出来る魔法のドア。
一回きりの使い捨てではあるが、それでも便利なアイテムには違いない。
痺れを切らしてしまったネリーは一か八かドアを使ってどこか適当な場所へと出ることにしたのだ。
「これで誰も出てこなかったら、逆に誰にも会わないって言うのもアリかもね」
そんなことを呟きながら勢いよくドアノブを捻った。

幸運にも、そのあとすぐに人に会うことはできた。
念願の人間との遭遇、思わず口元に笑みが浮かぶ。

しかし、希望は絶望へと塗り替えられる。
「……次の相手はあなたかしら?」
扉を開けた先で真っ先に感じたの憎しみや狂気の類を一切感じさせることの無い純粋な殺気。
目の前のポニーテールの女性は殺し合いを楽しんでいるに違いない。そんな確信に近い何かがネリーの中で生まれる。

もう一つ生まれたのは武器を構えていないという違和感。
殺しにかかってくるにしても、それを為す武器が無い。

つまり、距離をとっても戦える「何か」があるということ。
何の考えもなく突っ込めば命は無いだろう。まずは、自分の態勢を作ることにした。
呼吸を整え、意識を集中して手に持っている剣を握り締める。
やがて微かな光がネリーを包み込み、その光は剣をも包んでいく。
「中々楽しめそうね……いいわ、どこからでもかかって来なさい」
目の前の女性の顔は笑っている。梃子でも動かない絶対的な自信を持っているかのように。
ネリーは全神経を使い、女性の自信の源を探る。

まず徒手空拳の可能性を考えたが、それならば先ほどの会話の時点で距離を詰めているはずだ。
では次に遠距離で何も持たずに攻撃できる手段は何か?
気弾の類だろうか? それにしては気を練りこむ動作が見られない。
魔術の類だったとしても女性の口元が動いている様子は無い。弓矢の類ならば真っ先に距離を取る筈だ。
……では、女性の自信はいったい「何」から来ているのか。
「かかって来ないなら、こちらから行くわよ?」
原因を探り終えないうちに女性がゆっくりと距離を詰めてくる。
徒手空拳を使うにしてはゆっくりすぎるし、かといってカウンターを狙うにしても無防備すぎる。
ネリーは全思考を巡らせて女性の自信の正体を探る。

結論としては「どれでもなかった」のである。
少し距離が縮まったところで女性の左手は空を切った。
傍から見れば何も無いところを勢いよく叩いたようにしか見えない。

いや、空を「斬った」というならば正解か。
大気を切り裂く「五本の糸」がネリーの目にはしっかりと映ったのだ。
糸の射程範囲に入っていたネリーは急いで身を翻すが、足の一部に数本の赤い線が走る。
「ふふっ、少しは楽しませてくれそうじゃない」
笑っている女性に対し悪態をつこうとするが、そんな隙すらも与えてくれない。
両手合わせて十本の糸が、それぞれ意識を持っているかのように縦横無尽にネリーの元へと襲い掛かる。ネリーの持つ破邪の剣一本では限界がある。
一瞬の隙を突くためにこのまま避け続けても自信に満ち溢れた彼女から隙が生まれるとは思えない。
自分の体力を搾り取られ、最後にはミンチになるのがいいところだろう。



ならば……。

「何のつもり?」
突如背中を見せ走り出した少女にブシエは眉をひそめる。
武器の正体が糸だと瞬時に見抜いたときは強敵の予感がしたのだが、どうやら勘違いだったらしい。
それどころか敵に背中を見せて逃げる姿にブシエは憤慨していた。
「私を楽しませてくれると思ったのは、勘違いだったのかしら」
自分を失望させた罪を「死」で償わせるために、ブシエはゆっくりと距離を詰める。
逃げられないことを悟らせて、絶望に叩き落してから殺す。
それが少女の犯した罪に対するブシエなりの処罰だった。
ふと、少女がブシエの方へと振り返る。ブシエと少女の距離が最初よりも離れた時のことだ。
「あら? 観念したのかしら?」
少女は左手で剣を構え、怪しげな球体を右手に掲げて立っていた。
ブシエがもっと距離を詰めようと近づいたとき、少女は右手の球体を地面に思い切り叩きつけた。
「……やれやれ、何をやっても無駄よ?」
そこから出てきたのは紅白のこれまた丸い球体だった。
果たして少女はいったい何をするつもりなのか?
いや、何をするつもりだろうとどうでもいい。ただ「斬る」のみである。
少女は迫りくるブシエに対して、笑みを浮かべたのだ。
「本当に無駄かどうか、自分の目で見極めればいいじゃない」
そう言うと、少女は渾身の力で目の前の球体を弾き飛ばした。

ボウリングバッシュ。
一体の敵を勢いよく弾き飛ばし、その敵を弾丸として扱う技術。

そして今、ブシエの前には弾丸となった球体が目にも留まらぬ速度で迫ってきていた。
だが、ブシエは動じない。その弾丸を斬り裂く構えに入る。
ブシエから見た間合い、対する速度、物体の強度すべて十分。
そしてブシエの間合いへとついに球体が迫ってきた。
弾丸を一点に見据え、ブシエは渾身の「一閃」で斬り落としに行ったのだ。





さて、ここで問題だ。
ボウリングバッシュで弾き飛ばされた球体はなんだったのか?
1.これ! 地球儀!
2.おじさんのきんのたまだからだいじにするんだよ
3.みかん星人
4.――――



――――マルマイン。
少しの衝撃にも敏感に反応し、大爆発を引き起こすポケモン。
突き飛ばされた衝撃を感知し、大爆発の過程へと入っていく間にも自身の体は吹き飛んでいく途中だった。
ブシエの目の前に着いた頃、全てを塵に還すような大爆発を起こした。
まるで、自分の死期を悟ったかのように。



では、結果はどうなったのだろうか。
無論目前で大爆発など起これば並の人間では立っていることすらも出来ないだろう。
マルマインを弾き飛ばした瞬間にネリーは勝利を確信していた。
しかし、ネリーは信じられない光景を目の当たりにする。
立ち上がる炎が真っ二つに割れているのだ。
まるでそこに空気の壁が在るかのように。両断されていたのだ。



一体何が起こったのか?



ブシエの一閃はマルマインを断ち切った。
そのときすでに爆発は始まっていたのだがブシエにとってはどうでも良かった。
何が起ころうと「斬る」のみ。頭にあるのはそれだけだったからだ。
右手を手刀の形にし尋常ではない力で下から上へと薙いだ。
五本の糸が水平に並び、一本の刀となって空気をも切り裂いたのだ。
常人では有り得ない速度で振り抜かれた五本の糸は、摩擦熱で焼き切れるまでの間にマルマインと空気を見事に断ち切ったのだ。
残ったのは縦に割れたマルマインと、ブシエを囲うように立ち込めた爆炎のみ。
結果としてブシエは右手の糸を犠牲にして無傷でやり過ごしたのだ。

「やっぱりただの糸じゃ駄目ね……」
一体なんだというのだ。只の糸で大気すらも断ち切る異常な力の目の当たりにしたネリーはただ立ち尽くすしかなかった。
「さて、そろそろ死んでもらうわ。
私を失望させたあなたには塵すらも残さず葬ってあげましょう」
少し距離を詰め、糸がネリーへと届くようになった辺りでブシエは構えの姿勢へ入った。
左手を手刀の形に変え、先ほどとは違い一挙一動をしっかりとこなし、目にも留まらぬ速度で横に振りぬいた。
きれいに水平に並んだ五本の糸は、先ほどと同じように摩擦熱で焼け落ちていきながらも空気を引き裂いて行った。
しかし、段階を踏んで振り抜かれた糸達は先ほどとは違い横一文字の大きな刃となって、ネリーのボウリングバッシュに負けないほどの超速度で飛んでいく。
正確な構えを挟むだけで、空を斬る刃はその場に留まらず前に進む力を手に入れたのだ。

下手に屈めば首を刎ねられる、飛んだところで腰からちょっと上の場所で寸断されるだけ。
そのまま立っていてももちろん体が真っ二つに分かれてしまうだろう。
倒れこむにも途中で刃が肉を裂くだろう。
勿論、破邪の剣でどうにかすることもできない。
速度を逆算しても、どう考えても間に合わない。絶対に避けられない。そんな絶望がネリーへと襲い掛かる。

ああ、ここで死ぬんだと悟ったとき。
ゆっくりと目を閉ざし、迫り来る死を待った。
ネリーの頬から一筋の涙が零れ、地へと落ちた。

「誰……何故そこに立っていられるの?」
ネリーは狼狽えるブシエの声で目を開けた。
涙ですこし歪んだネリーの視界には一人の男の背中が大きく、とても大きく映っていた。

一方ブシエは、得物ではないとは言え渾身の力を込めた一閃を受けても無傷である人類がいると言うことが俄かには信じられなかった。
ブシエ自身にあった「自信」を砕く現実を目の当たりにして狼狽えるのも無理はない。

「目の前で泣いてる人がいたら、どんなことをしてでも笑わせてあげたい。
その為なら死期が早まってもいいし、呪われたって構わない。
……それが持論でね、じっとしてられない性分なんだよ」
「そんなことを聞いているのではないのだけれど」
手ぶらとなったブシエは一息ついた後にゆっくりと男性へ人差し指を突き付ける。
「……まあいいわ、あなたなら十分楽しめそうね。
そこの女の子みたいに私を失望させないでくれるといいんだけど」
その言葉に男は得意気に微笑む。
「おやおや、元気そうで何より」
ブシエを挑発するように突き立てた人差し指を左右に揺らす男。
「なあ、一つ賭けをしないか?」
「何をふざけたことを……」
「まあいいから聞きなよ」
今にも素手で襲い掛からんとするブシエを宥めながら男は賭けの内容を喋り始めた。
「見たところ、よっぽど自分に自信があるみたいだ。
だから、彼女を一度ここで逃がしてくれ。そして彼女が戦いを申し込んで来たときに一対一で戦うんだ」
そこまで言い終えたところで男は一本の剣を引き抜く。
「得意な武器みたいだしこの剣をあんたにやる、それがチップだ。挑戦してきた彼女をしっかりと負かすか、彼女が途中で死んでしまった場合はあんたの勝ちだ。好きにしたらいい」
そして男は地面に剣を突き刺し、畳みかけるように言葉を続ける。
「あんたが彼女に負けた場合。その時はこの殺し合いに抗う者達に力を貸してほしい。
それが賭けの条件だ。だから、あんたはいずれ向かってくる彼女と戦わなきゃいけない。
勿論そこまで生き残らなきゃいけないけど、そこまで自分に自信があるなら余裕だろう?」
男が条件を言い終わり、一息ついた後にブシエが一つ、男へ問いかける。
「もし挑戦してこなかったら?」
「あんたの最強が揺るがないだけだ、彼女はあんたに屈した。それだけの事さ」
更にブシエが問いかける。
「もし、彼女がやって来る前に私が戦いを挑んで彼女を殺したとしたら?
あなたの剣を貰ってあなたを殺した直後に彼女を殺しに行くかもしれないわよ?」
その問いかけを聞き、男は笑う。
「……そのときはアンタがビビってるんだろうな、自分より上の存在が現れることが怖いんだ」
「なんですって……?!」
男の態度と予想だにしない答えにブシエは再び憤慨する。
「だってそうだろう? 本当に自分が最強だと思ってるならどんなやつでも怖くない筈さ。
将来伸びるかもしれない種を斬るってことはさ、あんたは自分より上に行かれるのが怖くてたまらないんだよ。
――――違うかい?」
男の言葉に、ブシエは返す言葉を無くす。
歯軋りをするブシエを見て、男は再び得意気な笑みを浮かべる。
「どうだい、悪い賭けじゃないだろう?」
「そうね……いいわ、その賭けに乗ってあげようじゃない」
「グッド! じゃあ剣を……と言いたい所だけど少し時間をくれないか。
彼女に色々説明をしておきたいし……ね」
終始立ち尽くしていた少女を指差して時間を要求する男。
暫しの沈黙の後、ブシエが口を開く。
「早くしなさい……あまり待つことは出来ないわよ」
「……不意打ちしたりしないのか」
「そんな姑息な手段にでるのは弱者のやること、正々堂々勝負して打ち負かしてこそ……でしょう?」
「へへ……大した自信だぜ」
ブシエに一礼し、ネリーの方へと向き直る男。
呆然としていて何が起こったのか全く理解していないネリーの頬を軽く叩く。
「大丈夫かい? 早速だが君にお願いがある。
この本を「アバロンの皇帝」を知る人間に渡してほしいんだ。
きっとこの殺し合いを覆す大きな武器になる。
……それから、君がこの殺し合いに抗ううちに、いずれ彼女とは戦う事になると思う。
彼女と戦うかどうかは君の意志でいい。
ただ、君は強くなれる。今よりももっと、もっとだ。
その事を頭に残しておいてくれ」
そう言うと、男はネリーに一冊の本を手渡した。
やっと状況を飲み込んだネリーは、一回だけ強く頷いた。
「さあ、彼女がいつ痺れを切らすか分からない。早く行くんだ」
男に背中を叩かれたネリーは反射的に飛び出した。
一切、後ろを振り返らず。ただ、まっしぐに駆け抜けた。



ネリーは考える。
果たしてあの怪物に勝てるのかどうか。
今の自分には一体何が足りないのか?
「……なんだっていいや」
足りない物があるなら埋める。
そのついでにある物は伸ばす。
そんながむしゃらな努力でナイト時代を過ごしてきた。
「この超天才が本気出せばどうなるか、思い知らせてあげるんだから」
どうやらもう一度、がむしゃらになる必要がありそうだ。

天才が努力すればどうなるか、あの女性に思い知らせてやろう。

【B-2とB-3の境/森林/一日目/午後】
【ネリー(ロードナイト)@ラグナロクオンライン】
[状態]:美幼女、疲労(大)
[装備]:破邪の剣
[道具]:基本支給品、古代魔術書@Romancing Sa・Ga2、ドア(あと二つ)@魔界塔士Sa・Ga
[思考]:
基本:もっと、もっと強くなる。
1:とりあえず頼まれたとおり「アバロンの皇帝」に反応する人を探し、古代魔術書を渡す。
2:サラシの女性(ブシエ)ともう一度戦う。



――――
アバロン皇帝にはある伝承法で受け継がれている能力がある。
人を一目見るだけでその人間能力を見抜く力だ。
その力を使い、状況に応じて能力のある人間を選んで戦ってきた。
彼は瞬時に両者の力を見抜き、この殺し合いを覆すに相応しい人物に全てを託したのだ。
それが、今回はネリーだった。
では、何故純粋に戦力の高いブシエを選ばなかったのか?
……簡単な話だ。ネリーは伸びるがブシエは伸びない。彼はそう判断したからだ。
――――

「さて……そういや名乗ってなかったな。戦う前には名乗っとかないとな。
アバロン帝国250代目皇帝、ガラシェだ」
「ブシエよ、ブシド・ザ・ブシエ」
ネリーを見送った後にブシエの方へと向き直り、自己紹介を済ませるガラシェ。
ブシエもそれに応えて名乗りをあげる。
「なあブシエ、俺と戦う前に一つ聞きたいことがある」
「何かしら?」
剣を引き抜く寸前で男がブシエへと問いかける。
「あんたは、自分が最強だと思っているのかい?」
「ええ、このブシエに斬れない物などあるわけがないわ」
ブシエのその答えを聞いて、笑みを浮かべるガラシェ。
その反応を見てブシエの表情が曇る。
「……何がおかしいの?」
「ああ、傑作だよ。あんたは頂上にいるんじゃない、上を見てないだけなんだ」
「何をッ!!」
その言葉に思わず一歩踏み出すブシエ。
ガラシェは一切動じずに言葉を続ける。
「怖いんだよ。アンタより上に立つ人が現れるのが。
 だから下を見続けて伸びそうな種を狩る。自分が最強で居続けたいから!
 落ちていく自分を見たくないから! 頂上であり続けたいと思っているから!
 向かってくる人間が怖いんだ! 違うか?!」
「戯言を!!」
「じゃあ俺で試してみるかい最強さんよ?!」
ついに痺れを切らしたブシエに対し、剣を投げつけるガラシェ。
それが、始まりの合図の代わり。
「あんたが「自分を超えられること」に恐怖心を持っている限りあんたは最強にはなれない!
 自分自身を超える意識を捨てたあんたが何時までも最強でいられるわけがないんだ!」
その言葉を無視してブシエが切りかかると同時に、ガラシェの手元に盾が現れる。
超速の斬撃に反応するその盾の正体は、金剛の守りによって術者が構えずとも攻撃を弾き飛ばす土の最高位術法「金剛盾」だ。
全ての攻撃を守ってくれるほど金剛の守りも堅くはない。
最初の一撃を防いだのを見てからガラシェは己の両手に爪を生やし、更に炎を纏わせる。
空間をも切り裂く一撃を再度放たれる前に、ガラシェは両手から炎の竜を放つ。
しかし、その炎の渦がブシエに届くことはない。
光速の一振りにより空気中の水分が凝固し、刀から滲み出るように見える雪たちが炎を打ち消す。
その間に流れるように術を唱え、自らの闇の分身を生み出し終えたガラシェは次のステップへと移る。
大地に手をあててその意識を呼び覚まし隆起現象を起こし、岩石の雨を降らせる術法「ストーンシャワー」
ブシエはその降り注ぐ岩石をも一つ一つ粉砕し、確実にガラシェへと肉薄する。

何時までも金剛盾で防げるほどブシエの攻撃は甘くない、持久戦になれば不利なのは自分に決まっている。
ならば……体術で一気にケリをつけるだけだ。

迫り来るブシエに対し、呼吸を整えて意識を集中する。
そして、自らの目に観音の像を映し出し、それをブシエへと重ねる。
ブシエが眼前へと迫り、剣が自分の頭上へと振り下ろされる。
金剛は守ってくれない、しかしガラシェは避けない。
確実にガラシェの頭を剣が真っ二つに割った。ブシエにはその確信があった。
しかし、現実は違った。彼女の攻撃は「闇の分身」に飲まれたのだ。
先ほどの一閃を飲み込んだのも、この闇の分身である。
ブシエはそれを理解した、しかしそれはあまりにも遅すぎた。
既にガラシェはブシエを観音の中に捕らえ、拳を振り上げているのだ。
ガラシェの腕が千本あるように見えるほどの光速の拳の連続。
まともに防御の姿勢を取ることすら出来ずに、ブシエはその全てを体に叩き込まれて吹き飛んだ。

決着が……ついた。





最後の一撃を叩き込んだ後、突如足を崩し倒れこむガラシェ。
巨大な血塊を吐き、あたり一面を血の海へと変えていく。
ブシエにはその光景が信じられなかった。
「くっそ……ここで時間切れか……」

原因は彼の操る冥術にあった。
先代皇帝から受け継がれてきた本来「人間が扱うことが出来なかった」冥術。
彼の先代は古代魔術書をとある魔道士から強奪し、その失われた術の研究を進めた。
結果、冥術は現代に蘇ったのだ。

しかし、冥術を操るということは冥府の力を借りるということである。
力の代償、それは勿論己の命。
禁断の古代魔術は自身の身を削る危険な術法だった。

では、何故その冥術を使い続けたのか?
七英雄との戦いを簡潔に終わらせるには強力な力が必要だった。
民の笑顔を早急に取り戻すために、彼は一切妥協しなかった。
そして、先代から受け継がれた冥術を使い続けることを選んだ。

彼自身先が長くないことは悟っていた所で、そこでこの殺し合いに呼ばれた。
生き残れるかどうかも怪しいなら、自分のできる全てを託すまで。
そして少女ネリーに自分の支給品の古代魔術書と未来を託し、目の前の女性を笑顔にさせるために全力で戦った。
「中途半端に……なっちまったな……これじゃあ喜んでくれないか」
血を吐きながらもガラシェはブシエの方へと向こうとする。
ブシエはそのガラシェの姿を見て、ゆっくりとガラシェを起こす。
「……なあブシエ、あんたは……強い。「自分」に打ち……勝てたら、本当に、最強になれるぜ。
 俺が……約束する、今より……もっと高みへいける」
今にも死にそうなガラシェを抱きかかえたブシエは彼に対し不満の言葉をぶつける。
「冗談じゃないわよ……勝負はまだ途中よ?! 私はまだ戦える、なのに貴方は勝手に死のうって言うの?!」
「……悪い、決着がつくと思ってたんだ……」
何度もガラシェに呼びかけるが、彼の体温が急激に下がっていくのがわかる。
もう、助からないことは分かっているのに。何故こんなにも呼びかけてしまうんだろう。
初めて見た自分より上の存在が、こんなにもあっけなく居なくなるのが嫌だったのかもしれない。
「まだよ、早く起き上がって戦いなさい! 私が、私が最強なのよ?!」
だんだんとガラシェの目が空ろになっていく。
そして、彼は最後の力を振り絞ってブシエの耳元で呟いた。




「地獄で、また戦ろうぜ」





一本の糸が、ブツリと切れた。

初めて出くわした強敵。
刀を振るっても届かない存在。
自分の人生の中で始めて経験した人類。
もっと戦いたかった、彼を倒して自分が最強なのだという証明が欲しかった。
それなのに、自分が倒すよりも先に彼は逝ってしまった。まだ自分の中では決着はついていないのに。

「……いいわ、貴方が言ったとおり私は「私」を超えてみせる。
 一つ目標が出来たことを、素直に感謝することにするわ。
 ……さよなら、皇帝さん」
ゆっくりとガラシェの体を地面に寝かせ、立ち上がるブシエ。
殴られた全身が悲鳴を上げる、だがそんなことに屈している場合ではない。
この場所には自分よりも上の存在が居る。それが分かった以上は「斬る」のみだ。
彼女は行く、己の信ずる最強の道を行くために。



ふと、ブシエはある一点を見据える。
「……さて、そこで見ている人形さん。出てきたらどう?」
その言葉に反応するように一体の土人形が木の陰から現れる。
戦闘の状況を影からずっと見ていたケイ=アイは、場をしっかりと分析していた。
自分を呼び止めた女性、ブシエは今の戦闘を見るだけでも強い。
彼女が「最強」になると宣言している以上、主へと襲い掛からないとは言い切れない。
しかし、今の自分で勝てるかどうかは分からない。むしろ勝てない確率の方が高いだろう。
「かかってらっしゃい、私が「最強」よ」



さぁ、どうする?



【ガラシェ(最終皇帝男)@Romancing Sa・Ga2 死亡】
【マルマイン(支給品)@ポケットモンスター金銀 死亡】

【B-3/森林/一日目/午後】
【ブシド・ザ・ブシエ(ブシドー♀)@世界樹の迷宮Ⅱ-諸王の聖杯-】
[状態]:極度の疲労、全身に打痕
[装備]:ブーメランスパナ@METAL MAX RETURNS
[道具]:基本支給品、幻魔@サガフロンティア
[思考]
基本:強敵と戦って勝ち残り、「最強」になる。
1:ケイ=アイと戦闘……?
2:ガラシェの言う「己」を乗り越えてみせる
3:妹(ブシド・ザ・ブシコ)を見つけたらたくさんいじめる
4:ネリーの挑戦を「待つ」

【ケイ=アイ(ゴーレム)@聖剣伝説LOM】
【状態】背部に僅かなダメージあり(行動に支障は全く無し)
【装備】チェーンソー@現実
【道具】支給品一式、不明支給品0~2、
【思考】
基本:主を探す、主の敵は容赦しない。
1:ブシエと戦闘……?

※ガラシェの支給品は死体すぐ傍に放置してあります。





ヒトの意志は受け継がれる。





何年先においても……それは変わらない。






「な? そうだろ?」


039:地獄少女 投下順に読む 041:消せる痛み、消せない痛み
039:地獄少女 時系列順に読む 041:消せる痛み、消せない痛み
023:幼女って大切だよね、馬鹿ならなおさら ネリー 053:キックOFF
026:GO!GO!GO! ブシド・ザ・ブシエ 042:才にあふれる――(愛にあぶれる)
021:ずっとずっと、主と一緒。ずっとずっと、壊れるまで。 ケイ=アイ


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