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φs――(φdelity&justiφ)

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φs――(φdelity&justiφ) ◆MUMEIngoJ6





 【0】




 僕らはどこへ行くのだろう。




 【1】




 沈みかけた太陽が、さざ波に揺れる海を照らす。
 オレンジ色に染まった水面に、奇妙な島が浮かんでいる。
 民家が三つも並んだらいっぱいになってしまいそうな、小さな小さな島。
 なんと、水上を滑るように動いているのだ。
 その島は、『浮島』。
 沼などに浮かぶ水草やコケの塊の総称、のことではない。
 島の上にいる者の意図通りに動かすことができる――船の代わりとなる、いわば乗り物だ。

「ふん」

 誰にともなく吐き捨てたのは、浮島の上に立つ男。
 上下揃えたスーツも、締めているネクタイも、かけているサングラスも、かぶっている帽子も。
 その全てが、黒色で統一されている。
 ほとんど黒ずくめであるため、スーツの下に纏ったワイシャツが余計に白く見える。
 そんなわざわざ着こなした衣服を、男はわざわざ崩す。
 まずネクタイを緩めてから、ワイシャツの第一ボタンを外した。
 さらに動いていた浮島を停止させて、指の関節を鳴らしていく。

「――やっと獲物が現れたか」

 サングラスに映る侵入者へと静かに告げる。
 先刻まで波を切っていた浮島が、ついに完全に静止した。
 着込んだスーツの裾を自ら払うと、異質な物体が露になった。
 男の腰に、赤いベルト『スマートバックル』が巻かれていたのである。
 正面にある黄金色のケースに手を当て、勢いよく倒す。

―― Complete ――

 男の動作に呼応するように電子音声が響き、ベルトから眩い光が溢れ出す。
 輝きはすぐに収まり、その時には男の衣服は変化していた。
 全身を包むのは、やはり黒いボディスーツ。胸部は、赤銅色のアーマーで覆われている。
 その量産型強化服の名は『ライオトルーパー』。
 左腰に携えている武器『アクセレイガン』を手に取り、ブレードを収納して銃口を出現させる。
 銃形態となったアクセレイガンを向けられ、進んでいた浮島に上陸した侵入者は地を蹴った。
 人のスペックを凌駕した跳躍力でもって、吐き出された弾丸は回避されてしまう。

「イーッ!!」

 こちらもまた黒いボディスーツを着込んだ侵入者は、悪の組織『ショッカー』に改造された戦闘員。
 しかしライオトルーパーの方は、そんなことを知らない。
 だから戦闘員のマスクから覗く目元や口元、そして人間でも着込める強化服の存在を知っていたことから、それを着込んだだけの人間であると判断する。
 ゆえに、銀色の仮面の下で呟く。

 気に入らない、と。

 一度死んだことによって、人類の進化系『オルフェノク』へと覚醒した彼は。
 親族にも、親しかった友にも、愛していた女にも、拒絶されてしまった彼は。
 新たなる種族として生きることを決意して、人間であった過去を捨てた彼は。
 人類を滅ぼさんとするオルフェノクの組織『スマートブレイン』に属す彼は。
 スマートブレインの新社長に選ばれて、スマートバックルを授けられた彼は。
 誕生するオルフェノクの王を護衛するべく、ライオトルーパーとなった彼は。

 外見はただの人間でありながら、人間の限界を超越した動きを見せた相手に対し――そんなことを、思ったのだ。

 ショッカー戦闘員は跳躍した先で枝を掴み、鉄棒じみた動きで身体を回転させる。
 追撃の弾丸が身体によりも早く、手を離して次の枝へと飛び移っていく。
 三度の移動で十分に回転速度をあげてから、ライオトルーパーへと飛び掛る。

「イィーーーッ!」

 ミスリル製の短剣を空中で取り出し、戦闘員は逆手に構えた。
 鼓膜を刺激する奇声に、仮面に隠れたライオトルーパーの表情が崩れる。
 右手に持つアクセレイガンの銃口は、あらぬ方向を向いたままだ。
 一流のガンマンであるならば、凄まじい勢いで接近してくる相手にも動じず銃を向けられるだろう。
 だけど、彼は違うのだ。
 戦闘経験こそ積んでいるものの、実戦経験があまりにも足りない。
 仕方がない話である。
 何せオルフェノクに覚醒する前は、ただの――本当にただの人間に過ぎなかったのだから。
 オルフェノクとして人間を消す仕事はしてきたとはいえ、アクセレイガンのような武器の扱いにはさほど慣れていない。

「ナメる、なぁ!」

 軋むほどに歯を噛みしめながら、ライオトルーパーは首元を庇うように左腕をあげた。
 戦闘員の身体に乗った遠心力を受けたミスリルナイフが、二の腕に深々と突き刺さる。
 強化服を突き通し、オルフェノクの肉体にまで届く。
 けれど、そこでお終いだ。

「イーッ!?」

 攻撃を与えたはずのショッカー戦闘員が、首を捻って語尾を吊り上げた。
 持っていたはずのナイフは手元にはなく、ライオトルーパーに刺さったままだ。
 そのことに気づいた戦闘員は抜き取ろうとしたのだが、やはり首を捻ってしまう。
 遠心力が加えられているのならともかく、止まってしまっているのなら――刃物程度は受け止められる。
 それほどまでに、オルフェノクの筋肉は屈強なのだ。
 まごついている戦闘員を前に、ライオトルーパーはゆっくりと体勢を立て直す。
 左腕に力をこめてミスリルナイフを固定化しつつ、アクセレイガンをブレードモードに変換させる。

「あばよ、人間」

 言い終えるよりも先に、黄色に輝く刃先が戦闘員のわき腹に吸い込まれていた。
 刃から逃れようとする動きを察知し、ライオトルーパーは相手の背に左腕を回して押さえ込む。
 そのままアクセレイガンの柄を握る力を強くして、勢いよく小刻みに動かした。
 横に一閃したらば、戦闘員の身体が二つに分かれていただろう。
 あえて、ライオトルーパーはそれをしない。

 手に入れてしまった力のせいで、彼は人間でいられなかったというのに。
 スマートブレイン以外には、人類の敵以外には、進む道なんてなかったというのに。
 相手は、強化服を着込んだだけでオルフェノクじみた動きを発揮している。
 人を超越した能力を持ちながら、人であり続けている。
 オルフェノクの道を選ばざるを得なかった彼が、そんな輩を苦しませずに即死させるなどありえなかった。

「ふん」

 手首のスナップを利かせて、切っ先を上下させる。
 肘ごと思い切り動かして、思い切り刃を捻り回す。
 自らの手元を眺めながら、ライオトルーパーが嘲るように笑う。
 そんな彼を呼び止めるように、肩に軽く何かが触れた。

「――え」

 銀色の仮面から響いたのは、あまりにも日常じみた声だった。
 声の主は、日常にいることなんてできなかったというのに。

「なっ」

 彼の瞳に映ったのは、ショッカー戦闘員が自らの両肩に手を伸ばしている姿。
 続いて、こめられている力が少しずつ強くなっていくのを感じた。
 まずい――そんな三つの平仮名が、ライオトルーパーの脳内を埋め尽くしていく。
 しかしそんな思いに反して、身体の方は対応できていない。
 咄嗟に正しい反応できるほど、彼は修羅場を掻い潜っていないのだ。
 そのために一瞬の、だが殺し合いにおいては大きすぎる隙が生まれてしまう。

「イ゛…………ッ!」

 掴んだ肩を引き寄せるようにして、ショッカー戦闘員は右膝をライオトルーパーへとめり込ませた。

「ガ、あ」

 蹴りを受けて倒れこんだ男が、いち早く体勢を立て直す。
 腹を攻撃した相手を見下すように、白い歯を露にする。
 かなりの威力だったとはいえ、オルフェノクの内臓までは届かない。
 鳩尾や股間など人体の急所を蹴り上げていれば、こんなに早くは持ち直せなかったというのに。
 そんなことを胸中で呟いてから、ようやく彼は気がついた。

「まさ、か!?」

 両腕から胸を経由して両足まで、自らの身体を素早く眺めていく。
 纏っていたはずの強化服は消えていて、瞳に映ったのは黒いスーツと赤いベルトだけ。
 そしてそのベルトは、バックル部が完膚なきまでに破壊されていた。
 男は自嘲気味にため息をこぼして、納得したように深く頷く。
 相手が攻撃してきたのは、腹であって腹ではなかった。
 腰に巻いたスマートバックルこそが、本命だった。
 ライオトルーパーへと変身する姿を見ていたのだ。
 ベルトが鍵となっていることくらい、推測できるに決まっている。

 彼が再び視線を向けた先で、ショッカー戦闘員はアクセレイガンを構えていた。
 突き刺さっていたのを、無理やりに引き抜いたのだろう。
 わき腹の傷痕からは赤い液体が溢れている。どう見ても致命傷だ。
 だというのに、しっかりと地面を踏み締めている。
 そんな姿を見て――――スーツの男は笑った。

「人間のクセしやがって、よ……!」

 彼は、ずっと流されていた。
 少なくとも、オルフェノクとなってからはずっと。
 行く場所もなかったので、青い女性に連れられてスマートブレイン社に加わった。
 人間の心臓を破壊してオルフェノクを増やそうとし、オルフェノクとして生きようとしないオルフェノクを粛清するだけの日々。
 やがてスマートブレインの新社長に声をかけられ、王を護衛するべくスマートバックルを手渡された。
 オルフェノクの王なんて、はっきり言ってどうでもよかったというのに。
 居場所が、スマートブレイン以外になかったにすぎない。
 求めてくれる相手が、同じオルフェノク以外にいなかっただけだ。
 生きる意味も理由も見失っているのに、自ら命を絶つことなどできないから。
 だから唯一の住処に尽くしていた。
 ゆえに、この殺し合いでも同じように人類の敵として動くつもりでいた。
 現実に流され、周囲に流され、状況に流されて――

 だというのに、目の前の人間は立っている。
 致命の一撃を受けているのだ。何かしら確固たる信念がなければ、そんなことは出来まい。

 男は、ようやく理解できた気がした。
 スマートバックル以前に作られたベルトの一つ『ファイズ』。
 その持ち主は、オルフェノクでありながら人間を守るために戦っているという。
 いままではその意味が分からなかったが、つまりそういうことだったのだろう。
 彼は――ファイズは、肉体がオルフェノクでありながら、精神は人間のままであり続けることができたのだろう。
 事態に流されてしまうことなく、人間を捨てることなく。
 そして、ライオトルーパーとなってしまった男の方は――――

「もっと早く、気付けりゃよかったんだがな」

 サングラスと帽子を後ろに投げ捨て、全身に力を漲らせる。
 スーツの下の肉体が一瞬だけ歪んで、オルフェノクとしての肉体へと変化していく。
 刺々しいウロコを持った灰色の異形となって、声を張り上げる。

「もうッ! スマートブレインが正しいと言い張るしか、ねえのさッ!!」

 左腕に食い込んだミスリルナイフを抜き取って、全力で地面を蹴る。
 戦闘員はガンモードに切り替える方法が分からないらしく、ブレードモードのアクセレイガンを手にしたまま首を捻っていた。
 かといって、オルフェノクの方にも飛び道具はない。どちらも、接近戦以外に手段はないのだ。

 そして、勝負はすぐに決まるだろう。
 アクセレイガンはオルフェノクの肉体をやすやすと貫くことができるし、オルフェノクのパワーは戦闘員の肉体を両断することができる。

 両者の距離はみるみる縮まっていき、ついに重なった。

「ぐ、ぁ……ッ」

 握っていたナイフが地面に落下し、オルフェノクは地に膝をつけてしまう。
 その首には、イエローの刀身を持つ短刀が突き刺さっていた。
 接触の寸前に、戦闘員はアクセレイガンを投擲したのだ。
 相手がガンモードに変更する方法を知らないと見抜き、オルフェノクは飛び道具を使われるる可能性を脳内から消去していた。
 圧倒的な力で蹂躙したことこそあれど、戦闘経験がある相手と戦った経験がほぼなかった。
 だからこそ、戦闘員の狙い通りに虚を突かれてしまったのである。

「イ゛ッ!?」

 アクセレイガンを回収しようとした戦闘員が、悲鳴じみた声を漏らす。
 すでに息絶えたと判断していたオルフェノクが、飛びかかってきたからだ。
 人間の進化系である以上、その生命力は人間のそれを超越しているのだ。
 僅かに反応が遅れ、戦闘員は首筋に手をかけられてしまう。
 とはいえ、もはや相手の首を捻るような力はない。
 ただ、オルフェノクに立ち向かった人間の顔が見たい。
 それだけを思って、額に鷲のエンブレムをあつらえたマスクをもぎ取った。
 夕日に照らされる戦闘員の素顔を見て、オルフェノクは息を呑んだ。

「は――何だよ、ふざけやがって。そういうオチかよ」

 しばし目を丸くしてから、オルフェノクは自嘲気味に笑った。
 首に刺さったアクセレイガンを掴む戦闘員に対し、毒付くように吐き捨てる。

「お前もかよ」

 オルフェノクの首が切り落とされ、その場にはショッカー戦闘員だけが残った。
 その顔には、派手な手術跡が幾つも刻まれている。
 毛髪は全て頭皮ごと引き剥がされてしまっている。
 神経が浮き出てしまっており、両目は虚ろなまま焦点が合わさっていない。

 専門的な知識などないオルフェノクでも、理解できてしまった。
 目の前の相手は、信念など持ちえていない人形にすぎない――と。
 理解、できてしまった。


【ライオトルーパー@仮面ライダー555 死亡確認】




 【2】




「イーッ!!」

 ようやく目的地に上陸したショッカー戦闘員は、自分の存在を主張するように叫んだ。
 しばらくいじっているうちにアクセレイガンをモード変更する方法は理解できたが、浮島の操作方法はまったく分からなかった。
 そのために再び海へと飛び込んで、水を蹴ってきたのである。
 刃物で抉られた脇腹から血液が流れ続けているが、脳改造を施されている戦闘員に後退はない。
 たとえ息絶える寸前であろうとも、ショッカーのために行動するだけだ。
 戦闘経験も無理矢理脳内に刻み込まれているし、余計なことで悩むこともない。

 オルフェノクとは異なり、人間であったころ――ショッカーの被害者となる前のことなど考えることすらない。


【一日目 夕方(放送直前)/A-3 海付近の陸】

【ショッカー戦闘員@仮面ライダー】
[状態]:全身打撲、体力少し消耗、脇腹に傷(人間なら致命傷になるくらい+そのまま海に入った)
[装備]:ミスリルナイフ@FINAL FANTASY、ショッカー戦闘員スーツ@仮面ライダー、アクセレイガン@仮面ライダー555
[道具]:支給品一式×2、不明支給品0~1(強力なものは無い?)
[思考]
基本:イーッ!(ショッカーへ帰還する)
1:イーッ!(ポケモンマスター・レッドを仮の指揮官と仰ぐ)
2:イーッ!(参加者を殺す)
3:イーッ!(武器を探す)


[支給品とかの備考]
※浮島@魔界塔士Sa・Gaは、A-3海に放置されています。流れていってしまうかとかは、後続の書き手に任せます。
※スマートバックル@仮面ライダー555は、大破した状態で浮島上に放置されています。
※ライオトルーパーの支給品は、スマートバックル@555、アクセレイガン@555、浮島@魔界塔士の三つでした。


062:ジャガンは月輪に飛ぶ 投下順に読む 064:『無名』2
062:ジャガンは月輪に飛ぶ 時系列順に読む 064:『無名』2
054:戦闘員が仲魔にしてほしそうにみている ショッカー戦闘員  : 



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