概要

1972年にロシアで出版された、ストガルツキー兄弟によるSF小説。原題はロシア語で「Пикник на обочине」、英訳では「Roadside Picnic」。
1979年にタルコフスキー監督により「ストーカー」のタイトルで映画化、1982年に早川書房より出版された邦訳版ではこちらのタイトルに倣っている。

地球を訪れた外宇宙知性体は地球人とコンタクトすることなく去り、後には「人類の科学力では理解できない」現象を引き起こす謎の空間〈ゾーン〉が残された。
当局はこの空間を厳重に封鎖したが、ゾーン内で発見されるオーバーテクノロジーの遺物は人々を魅了し、やがて特異現象による身体変容の危険を冒してゾーンに忍び込み遺物を持ち帰る「ストーカー」が暗躍するようになる……


裏世界ピクニックは本作のオマージュとして書かれており、「人類の科学では理解できない謎の空間」「肉体の変容を引き起こす危険な現象」「オーバーテクノロジーの遺物」といった要素はそのまま、裏世界に当てはまる。
またファイル2 八尺様サバイバルに登場した肋戸は裏世界を〈ゾーン〉と呼び、危険な現象を発生させる不可視のスポットを〈グリッチ〉と呼んでボルトなどを投げることで確認を行なっていたが、これは本作のオマージュとして制作されたオープンワールドFPS「S.T.A.L.K.E.R.」に由来する。

ピクニックについて

裏世界ピクニックというタイトルが本作の原題直訳に由来していることは言うまでもないが、「ピクニックと言いながらどこにもピクニック要素がない」のも本作と同様である。
そもそも、本作に置ける「ピクニック」とは登場人物らが行なうものではなく、「地球を訪れた知性体が行なった」地球にゾーンを作り出し遺物を撒き散らした行為を喩えたものである。

「しかし、来訪はどうなんですか?来訪のことはどう考えているんですか?」
「ひとつピクニックのことを考えてみたまえ 」
ヌーナンは身震いをした。
「なにが言いたいんですか?」
「ピクニックだよ。こんなふうに想像してみたまえ──森、 田舎道、草っ原。車が田舎道から草っ原へ走り下りる。車から若い男女が降りてきて、酒瓶や食料の入った籠、トランジスターラジオ、カメラを車からおろす……テントが張られ、キャンプファイヤーが赤々と燃え、音楽が流れる。
だが朝がくると去っていく。一晩中まんじりともせず恐怖で戦きながら目の前で起こっていることを眺めていた獣や鳥や昆虫たちが隠れ家から這いだしてくる。で、そこで何を見るだろう?
草の上にオイルが溜り、ガソリンがこぼれている。役にたたなくなった点火プラグやオイルフィルターがほうり投げてはある。切れた電球やぼろ布、だれかが失したモンキーレンチが転がっている。タイヤの跡には、どことも知れない沼でくっつけてきた泥が残っている……そう、きみにも覚えがあるだろう、りんごの芯、キャンデーの包み紙、罐詰の空罐、空の瓶、だれかのハンカチ、ペンナイフ、引き裂いた古新聞、小銭、別の原っぱから摘んできた、しおれた花……」
「わかりますよ。道端のキャンプですね」
「まさにそのとおりだ。どこか宇宙の道端でやるキャンプ、路傍のピクニックというわけだ 。きみは、連中が戻ってくるかどうか知りたがっている」
(ストルガツキー『ストーカー』早川書房、1990年)

このように、「登場人物らがピクニックをする」作品ではなく、人類は「人智を越えた何者かが行なったピクニックの痕跡を見る虫たち」の立場にあるのだ。

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最終更新:2023年04月02日 16:22