まとめwiki ~ 「♀29匹のボックスに♂1匹を入れてみた」

03話 - ブスにはブスのラブソング

最終更新:

f29m1

- view
管理者のみ編集可
 日が暮れた。つってもボックスん中じゃあ背景まではわからねえか。
 晩メシの時間を待たずに、ゴロ美は交換に出されちまうだろう。昼間の出来事のあと、あいつは部屋にこもったままだ。
 過去にビッパと何があったのか、ゴリ子もスリッチも話しやがらねえ。
 オレは晩メシを食う気がおきずにミックスオレだけ飲んでいると、クラゲがゴロ美を連れてやってきた。いよいよ行くんだな。やっと腹くくりやがったか。

ゴローン
「箱長、ちょっと待って」
ドククラゲ
「はい?」
ゴローン
「話があるんだ……、ひでよしに」
ドククラゲ
「……時間がありませんよ、手短かになさい」

 ゴロ美がオレに向かって来る。決着つけようってか、臨むところだコンチクショウ。
 ゴロ美の腕が勢いよく振り下ろされる! なにっ、速い!?

ゴウカザル
「ッ……」

 平手打ちでも飛んでくるのかと思ったが、そうじゃなかった。ゴロ美の手の中に、茶褐色の物体がある。なんか腐った臭いがしますけど。

ゴローン
「これ……、あんたは覚えてないかもしれないけど、昔、あんたがあたしにくれたんだよ」
ゴウカザル
「……ハァ?」
ゴローン
「いいんだ。でも、別れる前に伝えておこうと思ってさ。あたし、あんたのこと……、ずっと前から好きだった。このボックスであんたを見たとき、本当はすごくビックリしたんだ」
ゴウカザル
「……;゚Д゚)ポカーン」

 落ち着けオレ。なんなんだこの状況は。まさか、この岩女に告られてんのかオレ。どーすんのどーすんのオレ?

ゴローン
「あんたがまだヒコザルだった頃、あたしもイシツブテだった。あたしはトレーナーに捕まったまま回復してもらえなくてさ……。あんた、自分の持ってたオレンの実をあたしにくれたんだ。嬉しかった」
ゴウカザル
「あー……」

 いやいや、記憶にございません。つーか、そんな昔の木の実を持ってるってどんだけだよ、腐っちまってるだろうが。

ゴローン
「あんたはいつだって先頭で、あたしは岩を砕くだけの最後尾。しまいにはビッパのほうが秘伝4つ使えるから便利だって、あたしは箱流し。で、今度は見ず知らずのビッパと交換なんてね」

 ゴロ美の話は、自爆寸前かと思うほどにヒートアップしていた。面倒だが、クールダウンさせるしかねえ。

ゴウカザル
「わりいが、まるで覚えてねえや。オレだってヒコザルから2度も進化してるワケだしな。もっとも、覚えてた所でオレは岩タイプは好みじゃねえんだ。さっさと忘れて新しいトレーナーんとこに行っちまいな」
ゴローン
「……あんたは、やっぱり乙女心がわかってないよ」
ゴウカザル
「ああ、よく言われるぜ。ついでに言っといてやる。
『姿が変わろうが、トレーナーが変わろうが、お前ってポケモンが消えるわけじゃあねえ。オレたちはいつまでも仲間だ』
 そいつをしっかり覚えとけ」

 伊達に殿堂入りまで色んなポケモンを見送ってきたわけじゃねえオレが出した、ひとつの答えだ。そしてそれは真実だと、今でも思ってる。

ゴローン
「ひでよし……。あんたは男としては最低だけど、仲間としては……最高だったよ。あんたが来てからムカつくこともあったけど、楽しかった。ありがとう」
ゴウカザル
「ああ、オレもだ。……元気でな、あばよ(柳沢風味)」
ドククラゲ
「時間です、ゴロ美さん。行きましょう」
ゴローン
「はい、さんだゆうさん」

 こうしてゴロ美は交換されていった。ゴリ子とスリッチには、あえて挨拶はしなかったみてえだ。
 そしてオレは、なにげにクラゲの名前が『さんだゆう』だったことに衝撃を受けた。三太夫はドクマムシだろ。

 すぐにスリッチとゴリ子が後を追ってきたが、出迎えたのは、レベル2のビッパだった。

 ~第2部、完
ウィキ募集バナー