バトルのコンセプトはスピードと戦略性の融合
── 『XIII』の斬新なバトルシステムは、どういうコンセプトで生まれたのでしょうか?
鳥山求(以下、鳥山) コンセプトとしては、スピード感のあるアクション的な要素に、戦略性を融合させたいという考えがありました。それでまず、制作発表時に公開したイメージ映像で、ATBを使ったスピード感のあるバトルをお見せしたんです。そのスピード感の部分を表現するために、コマンドを連続入力するというシステムや、打ち上げや追い討ちなどの攻撃方法が定まりました。そのあと、さらにバトルを加速させるチェーンとブレイクのシステムが確立していったんです。 |
── なるほど。コンセプトは発表当初から現在まで、変わっていないわけですね。
鳥山 形は変わりましたが、当初のコンセプト自体は守れましたね。発表のときは影も形もなかったオプティマシステムを組み込み、戦略的な部分を強化できたという意味で、結果的には発表時に考えていたものより、いい形で仕上がったと思います。 |
スピードを活かすためのロールとオプティマ
── バトルの最大の特徴であるロールとオプティマは、どこから発想されたのですか?
北瀬佳範(以下、北瀬) いままでの『FF』では、戦局に応じて、各キャラクターがどんなコマンドを実行するかが大切でした。ですが今回、戦闘に参加する3人のパーティーメンバーのコマンドをひとりずつ選ぼうとすると、鳥山の言うスピードの部分で、どうしてもプレイヤーとして把握できる限界を超えてしまうんです。そこで、プレイヤーの操作するキャラクターをリーダーだけに限定して、AIキャラクターふたりとのフォーメーションや連繋を、戦況に応じて変えられる形にしようと考えました。それくらいが、ひとりのプレイヤーが制御できる限界だろうと。 |
── 確かに、このシステムで3人分のコマンドをすべて入力するのはきびしいですね。
北瀬 それからスピードと戦略性のバランスを取りつつ、バトルを楽しんでもらえるよう考えて加えたのが、ロールと呼ばれる“役割”とオプティマです。各キャラクターの役割を、攻撃役、回復役、楯役というように明確にして、それを瞬時に切り替えることで、戦局を切り抜ける仕組みにしたわけです。 |
── ロールの名前に、いままでのシリーズのジョブの名前を使わなかった理由は?
鳥山 シリーズ作品では、ジョブは度重なるバトルを通じて育てていくものでした。ですが、今回はバトル中に役割を切り替えるという性質がジョブとは異なるため、新たにロールと名づけています。各ロールも、ジョブより極端に性格づけられているため、そのまま既存のジョブを当てはめた名前にしようとは思いませんでしたね。 |
北瀬 いままでのジョブの区分とは、境界線が違うんです。“戦士”ではなく“アタッカー”なのは、剣も使うし魔法も使うから。よりプレイヤーが戦いかたをイメージしやすい名称にしています。シリーズ初心者の方でも、わかりやすいと思いますよ。 |
── ロールの種類は全部で6つということですが、なぜ6つになったのでしょうか。
鳥山 バトルでの役割を整理して考えると、この6種類に絞られるんですよ。一見すると少なく思えるかもしれませんが、バトルに参加する3人のメンバーそれぞれに6種類のロールがあるので、その組み合わせであるオプティマは膨大な量になります。ですので、『XIII』は戦いかたのバリエーションが、従来の『FF』よりたくさんあります。バトル中は、戦況に応じてオプティマをどんどん変えていくことになり、極めたいプレイヤーはリーダーの行動をオートではなく、手動で選ぶことで、より理想の戦略が取れるはずです。 |
アタッカー、ブラスター、ディフェンダーの役割
── 敵ごとに、最適なオプティマが決まっていたりするのでしょうか。
鳥山 そこはプレイヤーの性格がいちばん出るところですね。正解は敵によっても違うし、プレイヤーによっても違ってきます。同じ敵でも、プレイヤーによって倒しやすかったり、逆に倒しづらかったりということもあると思います。たとえば、アタッカーというロールは攻撃力が高く、自分の倒したい対象をバラバラに狙います。そのため、ザコを相手にするときはアタッカーをパーティーに複数入れると効率よく倒してくれますが、1体を集中攻撃したいときは、バラバラの相手に向かってしまうと効率が悪い。また、アタッカーひとりと、ブラスターがふたりの“ラッシュアサルト”というオプティマがあります。これに切り替えると、アタッカーが斬り込んだ相手を、ブラスターも攻撃してくれる。前者のオプティマを使い続けると苦戦するかもしれませんが、ラッシュアサルトに切り替えれば、楽に勝てるということもあるんです。 |
── ブラスターというロールは、ほかと比べて聞き慣れないものですね。
鳥山 ブラスターの説明をするには、まずもうひとつのバトルの基本システムである、チェーンとブレイクの話をする必要がありますね。まず攻撃を連鎖させて画面右上のチェーンゲージを最大まで溜めると、敵がブレイク状態になります。この時は大ダメージを与えられるので、基本的にバトルでは常にブレイクを狙っていくことになります。ですが、そのまえに攻撃が途切れるとチェーンゲージは次第に減っていく。つまりブレイクするためには、どうチェーンをつなげ続けるかが重要になってくるんです。 |
── ブラスターの性能は、そのチェーンゲージの溜まりかたに関係があるのですか?
鳥山 そうです。ブラスターだけでなく、ロールごとに特徴があります。たとえば、アタッカーの攻撃ではチェーンゲージを溜めにくいのですが、減少スピードは遅くなります。 |
北瀬 一方、ブラスターはチェーンゲージの溜まるスピードが速いのですが、減るスピードも速いので、攻撃が続かないと意味がない。アタッカーでチェーンゲージの減少スピードをコントロールしておいて、ブラスターであと追いするのが常套手段になりますね。 |
── それでさきほどのラッシュアサルトというオプティマを使うんですね。
鳥山 ところが、アタッカーにブラスターを補助としてつけると効率よくチェーンゲージは溜まりますが、回復が手薄になりますよね。HPが減り、画面が赤くなったときに、そのまま耐えつつブレイクを狙うか、バトルを長引かせてでもヒーラーを投入するか。その判断もプレイヤーによって違ってきます。 |
── もうひとつの前衛系のロールであるディフェンダーは、従来のジョブで言うとナイトでしょうか。攻撃能力はあるのですか?
鳥山 ほとんどありませんが、カウンターで発動する攻撃を持っていますね。 |
北瀬 何より体力があるので、ピンチのときは役立ちます。態勢を立て直すあいだに、敵の攻撃を受けて立つという役割です。 |
鳥山 “挑発”で攻撃を引きつけるので、サンドバッグみたいになりますよ(笑)。 |
ヒーラー、エンハンサー、ジャマーの役割
── ヒーラーは文字どおり、回復役ですね。ケアルが中心になるのでしょうか?
鳥山 いままでのシリーズだと、ケアル、ケアルラ、ケアルガと順に回復量が多くなっていきましたが、今回は量というより性能や効果範囲が異なります。そのため、回復量はヒーラーを何人入れるかで調整することになるんです。一気に回復したいときはヒーラーを3人にする、というような。さらにピンチのときは、ディフェンダーを入れるのも手ですね。そこでもプレイヤーの性格が出ますね。 |
── 確かに。そうした膨大な数のオプティマから、どれを選ぶか悩みそうです。
北瀬 オプティマはたくさんありますが、あらかじめプレイヤーがセッティングしておけるのは6種類です。その6種類の中に何を入れるかという部分でも、プレイヤーの好みが分かれます。僕はヒーラーふたりにエンハンサーを入れて、回復し合っているあいだに、プロテスをかけ直したりする組み合わせを守りの要にしていますね。 |
── 『XIII』は敵をあえて手強くしてあるということで、味方を強化するエンハンサーや敵を弱体化するジャマーなど、補助的なロールが重要になってきそうですね。
北瀬 これまでのシリーズをプレイしているとき、個人的にターンを消費してまで補助系のコマンドを選ぶということがあまりなかったのですが、今回は強化や弱体の魔法をかなり使っています。 |
鳥山 おそらく補助系の魔法を使わないと、ボスや強めの敵の撃破は無理ですね。そこまでは進めても、瞬時にやられると思います。 |
※ 週刊ファミ通 「No. 1097」2009年12月24日号 より一部抜粋。