世界に満ちる特殊な気体(といわれているが実際の正体は未だ謎)マナを自らの意思で集め、どのような発動を行うか術者自らがイメージを行い、そして発動するというのが魔術の基本である。 『無色透明のマナを集め、それを自分の色に染め上げてから始めて魔術の発動ができる』と過去の光の賢人は言葉を残している。 故に魔術発動の詠唱は一切無く、魔術の強さは扱う人間のセンスに左右される。 この技術を主に用いる人々を『魔術士』と呼ぶ。 魔術士でなくともメルディア大陸の人間の殆どは簡単な魔術を発動することができ、それを日常生活に役立てていることを記しておく。(何も無いところから水を生み出したり、魔術の炎で火をつけたりといったもの)
マナの正体は未だ完全に解明されていないが、月が出る時間、つまり夜にだけ大気中に発生することが判明している。 魔術士は夜に瞑想を行い自らの体内にマナを溜め込むのだ。 瞑想を行い続けることで徐々に自らの体内に溜め込めるマナの量が増える。そしてこのマナを溜め込む力を『魔力』と呼ぶ。 魔力が高い人間は一日に強力な魔術を数多く扱えるため、魔力が高い=高レベルの魔術士という式が成り立つのだ。
魔術の発動には使用者の生命力が必要であり、どの程度の量かははっきりわからないが、大規模な魔術になるほどその消耗が激しいことが解っている。 前述したとおり『無色透明のマナを自分の色に染め上げる』というのは、生命力を魔術発動のための触媒として使用しているという意味でもあるのだ。 生命力とは人間が誰しも持っている、例えば傷の再生、病気の自然治癒といった、生物として基本的かつ驚異的な機能を備えた文字通り生命の力である。 ちなみに触媒として使用された生命力は永久に失われたわけではない。 十分な休息(具体的には十分な睡眠である)を取ることで再び生命力は回復する。 当然ながら魔力だけ高くても自らの生命力が低ければ、自らの中に溜め込んだマナを全て使用することは到底できないが、この生命力も鍛える手段がちゃんと存在する。 それは、『歳を取ること』である。 長寿な種族であるエルフや悪魔、ドラゴンが人間より遥か上のレベルの魔術を扱えるのはこういった理由がある。 また人間、エルフ、悪魔、ドラゴン、魔物の全ての種族が生まれ持つ魔力の量には差がある。
人間を1とするならば エルフ・悪魔が30 魔物が70 ドラゴンが100
である。
生まれ持つ魔力の量の差、これも人間以外の種族が人間より遥かに高レベルの魔術を扱える理由である。
魔術には五つ種類があると言われる。
『破壊魔術』
敵に対して傷を負わせることを目的とした術。 身体異常を与えることを目的とする術でもある。
『補助魔術』
自ら、若しくは味方の身体能力、魔術的能力の増加を目的とした術。 属性付与(エンチャント)系、バリアなどの、護る術もこの種類に含まれる。 呪言魔術とは真逆の立場にある。
『呪言魔術』
敵の身体能力、魔術的能力の低下を目的とした術。 属性付与(エンチャント)、バリアの解除を目的とする解除(ディスペル)もこの種類に含まれる。 補助魔術とは真逆の立場にある。
『神聖魔術』
聖職者が用いる術を総じて神聖魔術と言う。 破壊や補助によく似た性質を持つのだが、この術の発動に魔術的な訓練は一切行わない。 その効果の高さは使用者自らの信仰心の深さで決定される。 この術のみは発動者のイメージは必要ない。 信仰の対象とするセレントの加護、奇跡を発動させるのだと、聖職者の間では常識となっている。
『回復魔術』
傷の治療、身体異常の回復を目的とした術。 五つある魔術の中で尤も習得が困難とされ、その発動も困難と言われる。 並みの魔術士は習得すらできないし、熟練した魔術士でも二桁回数の発動など夢のまた夢とまで言われる、まさに魔術の頂点に君臨するに相応しい難解な魔術。
メルディアで用いられる魔術には全部で十二の属性が存在する。 基本、上級、特殊と三種類に分かれ、それぞれの種類につき四つの属性が当てはめられている。
『基本属性』
炎、水、風、地の四つが当てはまる。
炎属性は文字通り炎を操る術であり、術者がどのような属性を宿していても(※1)比較的簡単に習得が可能な属性とも言われている。 相手に傷を負わせるような攻撃的な術が多い。
水属性は文字通り水を操る術であり、どちらかといえば攻撃より、相手の行動を妨害する術に長けている。といっても基本的にどの属性を学んでいたとしても、それを極限まで鍛え上げてしまえば脅威になるのだが。
風属性は文字通り風を操る術であり、攻撃も妨害もそれなりにこなせる属性である。風を操るため攻撃が目に見えない、小さな隙間にもぐりこませ、硬い皮膚を持つ生物相手でも問題なく攻撃が行えるといった利点がある。 しかし代わりに、全体的な威力が低いという欠点も。
地属性は文字通り大地を操る術であり、炎属性と同じく攻撃的な術が多い。大地に育まれる植物を操る術でもあり、妨害もある程度こなせる。
『上級属性』
氷、雷、太陽、月の四つが当てはまる。
氷属性は文字通り氷を操る術であり、攻撃的な術が非常に多い。また、水属性と密接な関係を持ち、水属性の魔術を氷属性の魔術に変化させてしまうことも可能。 属性同士の強弱関係(※2)を無視した特殊なこの二つの関係は【属性の転換】と言われる。 ただし水→氷はできるが逆は不可能。 そして水は氷に弱い属性である。水属性は凍らされて強制的に氷属性に変換されてしまうからだ。 魔術ならいいものの(※3)、自身の属性(※4)は属性の転換などできないため、痛手を負う結果となる。
雷属性は文字通り雷を操る術であり、矢張り攻撃的な術が多い。目に見えるのだが発動してしまえば恐ろしく早く、回避が非常に困難な術。 しかし一度術者が何処に発動するか決めてしまうと、その後の変更ができないため先読みが大事でもある属性。
太陽属性は太陽の力を借りて発動を行う特殊な属性。 当然ながら太陽が見える場所でないと発動すらできない。 (夜、光が差し込まない場所、曇りの日でもそれは同じである) しかしそれだけの制約がある分、威力はかなり強い。 焼き尽くすという点では炎属性と似ているが、こちらは熱を用いて焼き尽くすため、炎属性が通用しない相手でもこちらは通用する場合が多々ある。
月属性は月の力を借りて発動を行う特殊な属性。 当然ながら月が見える場所で無いと発動すらできない。 (昼、月光が差し込まない場所、曇りの日でもそれは同じである) 月属性は非常に太陽属性と似た性質を持つ属性だが、その術の効果はまるで違う。 相手の魔術を反射したり、吸収を行ったりといった一風変わった効果が目立つ。 唯一であり最大の欠点は、攻撃に使えない点である。(反射によって模擬的に攻撃手段とすることはできるが)
『特殊属性』
光、闇、毒、無の四つが当てはまる。
光属性は文字通り光を操る術であり、どちらかといえば補助的な属性である。攻撃にはあまり用いらない。 しかし他の属性には引けをとらない理由がある。 それは、ゴーストやアンデッドといった不浄な存在に対しての光属性は非常に高い効果を及ぼすからである。 熟練した魔術士の光属性魔術は、神聖魔術を用いる聖職者とほぼ同等の威力を持つ。
闇属性は文字通り闇を操る術であり、攻撃的な術が多い。 どんな属性相手でもそれなりに効果が期待できるのだが、唯一の欠点はゴーストやアンデッドといった不浄な存在に対しては全く効果が無いことである。 どころか、闇属性を用いた攻撃をそれらの種族に行うと凶暴化してしまうのだ。
毒属性は毒素を生み出す術に長けており、完全に攻撃だけに特化した術である。 相手の身体異常を狙うためにはこれ以上にうってつけの属性は無いといえる。
無属性は属性の無い属性、という特殊な属性である。 いわゆる普通の殴打や斬撃といった攻撃がこの無属性という扱いであり、魔術士が使う無属性は、手足を一切使わず魔力だけで、屈強な戦士の攻撃を行うという意味合いが強い。 故に実体の無い相手には攻撃が通じない。
炎は地に強く水と氷に弱い。
水は炎に強く雷と氷に弱い。
風は毒に強く地に弱い。
地は雷と風に強く炎に弱い。
氷は炎と水に強く雷と太陽に弱い。
雷は水と氷に強く地に弱い。
太陽は氷に強く闇に弱い。
月は光に弱い。
光は月と闇に強く闇に弱い。
闇は太陽と光に強く光に弱い。
毒は炎と地に強く風に弱い。
無はどの属性にも強くもなく、弱くもない属性である。
強弱関係の魔術同士がぶつかった場合弱い関係の属性が掻き消される。 強くも弱くも無い関係だと純粋な魔術士の能力およびその属性の特徴(例えば風属性はそのような勝負に負けて掻き消される場合が多い。威力が全体的に低いため)が勝敗を決める。
大規模な魔術を使用して、周りの環境や自分の味方に被害が及ばないだろうかと疑問を抱いた事は無いだろうか。 勿論メルディアの魔術はそれへの対策をしっかりと行っている。 魔術の基本である『マナを集める』という行為は、それだけでは発動した瞬間ばらけてしまう(丁度小石を手に一握り持って投げるように) そのままでは、例えば森の中で炎を発生させようものなら森林火災間違い無しである。 それを防ぐため、自分の狙い済ました場所だけに効果が及ぶように『マナを固める』という行為を行う。これをマナコントロールと呼ぶ。 (前述の石ころを、今度は袋に詰めて投げれば何処にも飛び散らず一箇所に落ちてしまうようにしてしまうのだ) マナコントロールを完璧に行うことで、例え森林の中でも炎の渦を巻き起こすことも可能になる。(自分の狙いたい対象以外に効果が及びそうになった瞬間、その部分だけ効果を消滅させる、といったことが可能になるのだ) これをまずマスターしなければ補助魔術の習得は絶望的と言っても良い。 破壊魔術は一瞬の効果だけあればいいが、補助魔術はそうは行かないからだ。 (マナがばらけてしまっている状態でバリアを張っても大した効果は得られないし、武器に炎を宿しても直ぐ消える上持ち主の手を焼く場合がある)
メルディア大陸に生を受けた全ての生物は、必ず自身に属性を宿している。 (草木や道端の石ころもそうであり、この二つは地属性……見た目にあった属性を宿しているのだ) 人間も勿論例外ではなく、全十二属性のうちどれか一つ(或いは二つ)を宿して生まれてくる。 基本的に殆どは基本属性(炎、水、風、地)を宿した人間が多いのだが、稀に上級属性(氷、雷、太陽、月)や特殊属性(光、闇、毒、無)を宿した人間、属性二つ宿した人間も存在する。 このような人間は何か一芸に秀でている場合が多い。 また、魔術の習得は自身に宿っている属性が一番習得しやすいといわれる。(炎属性のように誰でもほぼ習得できる属性もあるが) 勿論人間の属性も魔術の強弱関係がそのまま適用されるため、炎属性を宿した人間は水と氷属性の攻撃を受けると普通の人よりダメージを受けてしまう。
独学を行い、師に教えを仰ぎ、ひたすら研究に明け暮れ新しい魔術を編み出していた時代は当に過ぎている。 今では教育機関であるアカデミーがメルディア大陸に数多く存在し、魔術の存在をより親しいものとしている。 八歳から入学が可能となり(勿論その後から入学もできる)六年間、魔術能力の向上を図る。 勿論一般的な知識も学ばなければならないため、アカデミーに入学する子供たちはかなりの負担がのしかかることになる。 当然ながら魔術をメインに教えない、一般的な知識を重点的に教えるアカデミーがあることも記しておく。
※1=自身に宿っている属性が一番習得しやすいのだが、炎はあまり左右されないと言われる。 ※2=属性の強弱関係を参照。魔術での場合、水は氷に弱いのだが相殺はされずにただ凍りつくだけである。 ※3=ただし水属性しか扱えない魔術士が氷属性を操れる魔術士と対峙した時は別。凍らされるとそれはもう水ではなく氷属性のため自分で操れなくなるため。 ※4=生物と属性を参照
当然ながら他の作者様との魔術の定義は違います。 あと、ちまちまと付け足したり設定が変わる可能性があることを記しておきます。