狂気の姫君

第一回目 〜深淵を畏れよ〜

第一回目プロローグ

かなりの資産家と謳われる依頼主、ルナリスの屋敷に招待されたオリキャラ一行。 おっとりとした優しそうなこの妙齢の夫人が彼らに依頼したいのは、所有する遺跡に住み着いた凶悪な魔物の討伐だった。 元々遺跡に眠っている古代の道具に興味がある彼女は、その財産を用いていくつかの遺跡を丸ごと買い取り所有していた。 ところがある日突然、そこに存在するはずの無い魔物達の存在が確認され、その討伐に何度も依頼を出していたのだが、ことごとく失敗(全滅)しているとの話。 あの魔物がいる限り探索ができないと困り果てた様子の彼女に、一行は依頼を快諾する。 彼女の話によると三箇所の遺跡にそれぞれ存在してはいないはずの魔物が確認されたらしい。 まずは一番近い場所にある遺跡への討伐を依頼される。

遺跡に住み着く魔物達

案内役として現れたのはセサリカだった。 相変わらず口数の少ない彼女の案内で到着したのは、辛うじて遺跡の原型が残っている、植物に支配された場所。 一見青々とした植物が辺りに絡みつき、時刻も昼と言うこともあり、散歩するには丁度良いと思われるほどの清々しい場所だった。 だが遺跡の中に入り込むと、貪欲な食人花空飛ぶ極彩色彷徨う大樹といった植物、虫系の魔物が一行の命を奪おうと襲い掛かってくる。 見た目に騙され一時大きな被害を被りそうになったものの、何とかこれを撃破する一行。 様々な物品を媒介としてその姿を保つメルディア大陸の魔物に関心している一行を、突如闇が包み込んだ。

這い寄る深淵

どのような光も意味を成さない、完全なる深淵に包み込まれた一行。 様々な手段を用いて闇の正体を掴もうとするが、それはできなかった。 数人が闇に恐怖し戸惑う中、石が擦れるような、腹に響く重い声がどこからとも無く聞こえてくる。 視界が完全に封じられた状態で、一体何匹居るかわからないほど現れた敵たちとの交戦を余儀なくされる一行。 だが、偶然にもセツナゼータの存在もあり、どうにか敵を凌ぐことができた。 更にセサリカが出鱈目に放っていたガトリングガンから立ち昇る硝煙の匂いを、闇を発生させたと思われる何かが嗅ぎ、突如深淵が薄れる。 敵の姿を目視できる程度まで晴れた闇。 目の前にいたのは巨大な蜘蛛這い寄る深淵。 更にその配下である恐怖の象徴深淵の暗殺者深淵を彷徨う獣暗黒の巨人暗黒剣士といった大勢の魔物だった。 何故かワインデイルまで紛れ込んでおり(恐らく這い寄る深淵に助太刀すれば一行を撃破できる=金目の物を手に入れられると企んでいたと思われる)一行にとって苦しい状況に。 蜘蛛の糸を駆使して動きを拘束、闇を操りじわじわ追い詰める這い寄る深淵。 更に大勢の魔物が其処へ襲い掛かり、一行危うし。 だが、闇の中と言う状況を得意とするセツナ。 二刀流を駆使し、力で押し返そうと暴れまわるゼータ。 炎を扱いサポートに徹するセサリカとユナ。 トリッキーでいてパワーのある戦いで互角に渡り合うルティカ。 傷を負いつつも後衛を守ろうと立ち回るディプス。 豪快な立ち回りで敵を撃破していくクロムシャドウ。 彼らの連携により徐々に徐々に戦局は好転していく。 最終的にルティカの攻撃で大ダメージを負った這い寄る深淵は怒り狂い、一気に全員の命を奪わんと無差別に、先ほどより強力な闇の刃を一斉召喚する。 だが、ここでも闇によってパワーアップするセツナがそれを利用。 わざと闇の中に紛れ込み、自らの武器を這い寄る深淵に投げつける。 見事にそれは這い寄る深淵の身体を潰し、更にセサリカが駄目押しに放った凍結弾によって完全に体が凍りつく。 生死確認をするためか、最後にセサリカが思い切り這い寄る深淵の身体を蹴り飛ばした。 それによって得られた反応は、完全に凍りついた物体が砕けるという現象。 辛い戦いではあったものの、死者が出ることも無く勝利ができたのだ。

深淵に打ち勝った者達

辛くも勝利を果たし、何時も通りのどたばたムードに戻る一行。 お互い傷だらけなのに軽い口を叩きあい、その様子はお互いの信頼・友情を更に強くしているかのように見えた。 ここでふと、這い寄る深淵の死体が塵となって消えないことに疑問を抱く数名。 セサリカが言うには、這い寄る深淵はメルディア大陸に生息する魔物ではないらしい。 とは言うものの詳細は彼女にもわからないらしく、その謎はここで考えることができなくなった。 その時丁度、依頼に遅刻した上道に迷って戦闘終了後に現れたオリアンや竜の飲酒運転(乗っているほうじゃなく乗せているほうの飲酒らしい)で遅刻したヴァールの登場に更に場が和む一行。 とりあえず遅刻したこの二人への報酬はともかく、この討伐に参加したオリキャラには成功報酬である二十万シィラが約束された。 依頼は、成功という形でまずは幕を下ろすことができたのだ。

第一回目エピローグ

その夜、ルナリスの屋敷にて。 ルナリスと向かい合って座り談笑するのは、セサリカ。 何時もの服装ではなく、黒いドレスを身にまとい別人のようであった。 今日の戦闘の報告を受け、ルナリスは嬉しそうに笑う。 二人しかいないはずの部屋に、ルナリスがグレイスニル、と名前を呼ぶと気配がもう一つ増えた。 戦ってみた感想は、とルナリスに問われ、良い力を持っている、これならルナリス様のご期待通りに事が運ぶ、と現れたこの屋敷の執事グレイスニルは満足げに笑って見せた。 だがその後腰を痛めているのか顔をしかめて痛がって見せる。 それを見たセサリカは、最後に蹴ってごめんと謝った。 ……この執事が、オリキャラ達の戦った這い寄る深淵なのだろうか? 次の依頼も、頑張るのよというルナリスの言葉に素直に頷き、確かにルナリスに対して【母さん】と言ったセサリカの笑みは、他人に見せることのない柔らかなもの。 これから先が楽しみだ、待ち遠しいとルナリスは、夢を見る乙女のように瞳を輝かせた。 ただ違うのは、その瞳に確かな狂気の光が宿っていたことだった。

第二回目〜蒼穹と踊れ〜

第二回目プロローグ

二回目の討伐を引き受けたオリキャラ一行。 今回は魔術国イレンスの遺跡周辺に住み着いた、いるはずの無い魔物の討伐を依頼される。 今回も案内役のセサリカについていき、船に揺られ魔術国イレンスの大地を踏みしめる。 たどり着いた場所は、その殆どの部分が水分でできている透明な木々が生い茂る奇妙な大森林【ウォーターフォレスト】。 今度の討伐対象はここにいる。 不思議な木々に心奪われながらも、セサリカの指示に従い一行は奥へと進んでいく。

雷を嫌う故に水場に集まる魔物達

暫く進んでいくと、突然セサリカが歩みを止め、全員止まるよう指示を出す。 何事か、と思うまもなく、水の木々を押し分け魔物達が現れた。 血濡れの仕立て屋難攻不落の移動要塞流融ける悪魔深き水に住みし者水底の屍鬼朽ち果てた仕立て屋魂食む水塊と、水に関連した魔物ばかり。 雷で攻めればと一時は考えるが、この森は足元でさえ豊富な水が流れている。 雷を嫌うのに、こんな水の豊富な場所に住み着いている意味を理解するオ一行。 そんな戦場に珍客が現れ、容赦なく雷を放ち自滅。 自分だけ自滅なら良いものの、水を通してその場に居た全員(オリキャラ、魔物の区別無く)が感電し、一時戦局が乱されてしまう。 しかし最終的には、一匹、また一匹と確実にしとめ、勝利を勝ち取る一行。 しかし今回は、大量の離脱者を出すこととなった。 戦えない者はセサリカのパートナーであるバレッタに乗って帰還する。 後に残った者たちだけで、更に大森林の奥へと進む。

蒼穹を舞う者

奥へ進むにつれ、轟音が響くのを耳にする一行。 やがて開けた場所に出て、そこには巨大な穴の中に三百六十度の方向から水が流れ落ちる滝が存在していた。 非現実的な光景にしばし心を落ちつかせる。 がしかし、心を落ち着けすぎたのか煙草の吸殻をポイ捨てする不届き者も居たりしたのだが。 吸殻が滝に落ちた瞬間、大勢の空色の小鳥がそこから飛び出てきた。 更に、煙草を捨てた張本人に向かって鋭い羽が飛翔する。 アルムが咄嗟に羽を弾くが、同じように後から吸殻を纏めて捨てていたゼフィスの腕に羽が直撃。 ある意味、天罰であった。 小鳥の群れに続いて現れたのは、空色の体毛に覆われ同じ色の羽を持つハーピー蒼穹を舞う者。 水場が多く水を好むような魔物しか居ない場所に居るこの存在こそが、依頼にあった討伐対象の魔物だとセサリカは言う。 蒼穹を舞う者はここまで来れた人間は久しぶりだと喜ぶ様子を見せ、不敵な笑みを浮かべ一行に襲い掛かる。 空は私のお庭、その言葉に偽りは無く、当たるまで追いかけるゼータの武器、グングニルの攻撃も自由自在に飛翔し避ける蒼穹を舞う者。 更に取り巻きである空色の小鳥駆け抜ける蒼色が氷の竜巻となって襲い掛かり、このまま消耗戦になるかと思われた時だった。 周りに生い茂るウォーターフォレスト特有の水纏の木、それの持つ水分を利用しようというセサリカの意図を汲み取ったラウルやゼフィスが、持ち前の馬鹿力や銃器を利用して木々を殴り、大量の水を氷の竜巻に飛ばす。 狙い通り、どんどん水を凍らせ、自分たちで動かすことのできないほどまでに氷を作り上げてしまった駆け抜ける蒼色。 更に凍らせる前に捨て身の覚悟でわざと竜巻に巻き込まれ、上空に吹き飛ばされたケビンが台風の目となる弱点に銃弾を打ち込み次々撃破。 凍ってしまったことで逃げ場の無くなった駆け抜ける蒼色は更にゼフィスの攻撃も加わり壊滅状態に。 それでも余裕の笑みを崩さない蒼穹を舞う者は、撃ち落とそうと発砲を続けるセサリカから軽く逃げると、まだ台風に吹き飛ばされて上空に浮いていたケビンをしっかりと掴み、しつこく追いかけ続けていたグングニルの盾にしようとした。 完全にケビンに意識が向いたのを悟ったセサリカはもう一度ラウルに水を吹き飛ばすよう指示を出す。 快諾したラウルは勿論木を殴り飛ばし、蒼穹を舞う者に向けて水を飛ばす。 どれだけ回避が得意な人間でも広がる液体の回避は困難であった。しかも、ケビンに意識が向いていたタイミング。 ケビンの拘束を、足を掴んでずらしたフィラによりグングニルは回避され、水に電撃弾をありったけ撃ち込んだセサリカによって水は電気を帯び、回避にまで頭の回らなかった蒼穹を舞う者は見事にその水を浴び感電。地面に落ちた。 弓を引き絞り待っていたオリアンの一撃が、感電し身動きが取れなくなった蒼穹を舞う者の身体を貫く。 元々回避に全てを置いていたと思われる蒼穹を舞う者は、その一撃であっさり絶命してしまった。 道中も討伐依頼の魔物も辛い戦いではあったが、何とか今回も勝利することができたのだった。

蒼穹を制した者達

今回はそう長い時間軽い口を叩けるほど余裕は無かったようで、依頼完了の言葉を受け取ると次々帰還の準備を始める一行。 そんな中、今回も討伐終了後に現れた人物が居た。ヴァーリである。 ものの見事に遅刻であり報酬無しと言い切るセサリカに駄々をこねるものの、結局諦めて帰ってしまう。 少しだけ気持ちがリラックスしながら一行は帰路へと付いた。 帰れば前回より少し多い、報酬二十五万シィラが待っている。 依頼は成功と言う形で幕を下ろしたのだった。

第二回目エピローグ

そしてその夜、ルナリスの屋敷にて。 前回と同じく、向き合って座り談笑するルナリスとセサリカ。 前と違うのは、テーブルの上に良い香りのする紅茶に上品なお菓子が少し置いてあること。 そして二人の傍には背筋を伸ばし、何時でも給仕ができるようにしている一人のメイドが居ることだった。 メイドの顔は、あの蒼穹を舞う者の顔そっくり。 そして彼女は確かに、セサリカを【お嬢様】と呼んでいた。 攻撃を避け続ける相手だとよくわからない、と困った風に首をかしげるルナリスにメイド、パティリッタは必死に反論する。 私なりに頑張ったし、かなりいいところまで行っていた。場所があそこで無ければもっともっと戦いを引き延ばすことができたと。 そんなあまり収穫のない(?)戦いであってもルナリスの興味の引く人材はいくらか居たようで、「良い材料」と満足そうな笑みを浮かべた。 パティリッタが、「次はあの人かー、張り切ってましたよ」、とふと思い出したように話す。 その言葉にセサリカは、「容赦ないもの、ね」と言葉を返した。 「あの子を倒してくれるような人じゃなければ、楽しくない」とルナリスは可愛らしく頬を膨らませる。 「今度はあたしがメインに動かなくても、十分情報が取れる」とセサリカ。 どうやら、今回セサリカがメインに動いて倒してしまったのは誤算だったようだ。 その言葉に再び「頑張った」と反論しパティリッタは涙目になる。 そんなパティリッタをルナリスは優しく抱きしめ、頭を撫でてやった。 ……まるで、ペットをあやすように。

第三回目〜全力を求めし首無し武人〜

第三回目プロローグ

最後の討伐を引き受けたオリキャラ一行。 自由国セイディラハにある遺跡【月光古都】へ住み着いた、居るはずのない魔物の討伐を行うため、三度目の顔合わせとなる案内人セサリカと共に船に揺られて自由国セイディラハの大地を踏む。 夜にしか出ない魔物らしく、今回は大きな三日月が空に浮かびあがる時刻。 雲ひとつ無くよく映える存在を眺める一行。 しかしそれ以上に目立っていたのが、遠くに見える、どうにも信じ難い光景であった。 【メルディアの傷痕】と呼ばれる地域である。 時刻が夜なのは間違いないのだが、遠目からもはっきりと、朝日が降り注ぐ地域があるのを見て驚きの声を上げる一行。 三十年ほど前の戦争でできたらしい、とメルディア大陸出身者のセサリカは、相変わらず淡々とした様子で一行に教える。 ともかく準備は整い、一行は遺跡の中へと入っていく。 ……一人密航者が居たことには誰も気づかなかったのだが、成り行き上彼女もついてくることに。

遺跡内部での接触

遺跡の中は思ったより暗くは無かった。何故か遺跡を覆っている岩肌が仄かに光、照らしていたのだ。 その光景に不思議な顔をしながらも進む一行。 遺跡は時の経過で朽ち果てているとはいえ、まだ都市としての面影は十分すぎるほど残っていた。 大通りと思われる場所を歩き続けていると、セサリカが前方に何者かの気配を感じ取り、歩みを止める。警戒態勢をとる一行。 暗がりにかけたセサリカの声に反応して出てきたのは、騎士の男性と魔術士の女性だった。 にこにこと笑いながら手まで振って、妙にフレンドリーに話し掛けてくる騎士。 騎士はルネット、魔術士はアノラと名乗る。 君たちも冒険者か? と言う問いに皆警戒のためか一行の殆どが答えない。 些か拍子抜けしたのか、騎士ルネットはとりあえずその話は置いて別の話題を切り出した。 何はともあれ【月光古都】へようこそ、と歓迎するルネットにようやく警戒を解き反応をする一行。(全員ではなかったが) 明るい内部が不思議かい、とルネットは笑い、警戒している一行を恐れていたのか、ルネットの後ろで身体を小さくして見ていたアノラの緊張を解してやり、何故遺跡内部が明るいのかを説明させてくれる。 アノラによれば、この遺跡を包み込むように存在している岩は月光の光に反応し、その光を内部にまで伝えるのだそうだ。 故に【月光古都】という名前がついたのだと語るルネットに、無駄話を良しとしないセサリカが単刀直入に質問をぶつける。 勿論、この遺跡で普段見ないような魔物が居たか、という質問であった。 暫く考えるルネットとアノラ。 直ぐに思い出して、この先にある【コロシアム】に十一人の騎兵が居た、と情報を提供してくれる。 そしてその中に一人だけ、明らかに他の騎兵と違う雰囲気の騎兵が混ざっていたことも。 強敵の予感に、緊張が高まる一行。 ここでルネットが、一行が羨ましいと妙なことを言い出す。 更に、ルーノディプスの質問にも少し的を射ていないような回答を返し始める。 僕達もそんな風な顔――緊張や、この先に待ち構える戦闘に対しての期待といった複雑な感情の混じった表情のことを指していたのだろう――をしていたことがあった。でも、今はもうできないんだと。 疑問に思う一行に、質問する暇は与えられなかった。 突然、この二人の冒険者から背筋が凍りつくかのような殺気が発せられたのだから。

志半ばに倒れ、憎しみに塗れた冒険者達

その瞬間、二人には先ほどのような穏やかな笑みは無かった。 ただひたすら憎悪に歪んだ醜い物へ変貌し、一行へ容赦なく襲い掛かる。 二人のその行動で一行は全てを悟った。 もうこの二人はこの世に生きている存在ではない、と。 たった二人で十人以上を相手にするほど、思考が憎しみによって無くなってしまったのか、ひたすらに剣を振るう騎士ルネットに、魔術を発動させる魔術士アノラ。 実体を持たぬ存在ゴーストだった彼らに、魔術的要素が含まれない物理的攻撃は一切通用しなかった。 折角の力も役立たないと何人かが舌打つ。 生前は相当な腕前だったようで、数の差があるというのに的確に攻撃を捌く二人の亡霊。 戦闘中何度もセツナが、二人のやっていることの虚しさを問うが、聞く耳を持たない。 彼らの口から紡がれるのは、生への執着、生きとし生ける者への恨み言ばかり。 一見ばらばらに見えた二人の攻撃だったが、実はそれは全て連携を考慮したうえでの攻撃だったことを一行は思い知らされる。 魔術士アノラが召喚した石槍が爆発すると同時に、騎士ルネットが強烈な鎌鼬を発生させ、大量の石の弾丸を作り出し無差別に攻撃を行い始めたからだ。 一行が全滅するか、二人が力尽きるか、どちらかにならない限り戦闘は終わりそうに無い。 しかし決定打が無いのも事実であり、消耗戦へ持ち込まれるかと一行が危惧し始めたその時だった。 正式な依頼を受けずに討伐についてきたワープの能力、物質加速に、ラウルが投擲するガム(人間離れした腕力の彼の場合そんな物品でも投擲すれば立派な凶器となりうるのだ)が合わさり、魔力的要素を帯びた弾丸へ変化、見事に詠唱中の魔術士アノラの身体を貫く。 攻撃の手が止まったその瞬間を逃すわけが無くクロムによる火炎を纏った斬撃により、魔術士アノラは止めを刺された。 魔術士アノラが倒れた瞬間、騎士ルネットの様子も可笑しくなる。 それまで鍔迫り合いを繰り返していたディプスとの戦闘をいきなり投げ出し、なりふり構わず魔術士アノラの元へ駆け出したのだ。 既に力尽きかけ、うっすらとしか見えなくなってしまった魔術士アノラを抱き上げる騎士ルネット。 力を振り絞り騎士ルネットの名を呼ぶと、魔術士アノラは折れた杖に古ぼけた指輪だけを残し消え去ってしまう。 彼女が消えて直ぐ、騎士ルネットも悲痛な叫び声を上げ、矢張り同じように錆び付いた両手剣と古ぼけた指輪を残し消え去ってしまった。 後味の悪い戦闘に黙りこくる一行。 元々そんな感情が無いのか、それとも、冒険者とはそういうリスクを背負って行うものだと悟っているかは知らないが、セサリカはここでも動揺する気配も無く指輪を拾い上げ、裏に掘り込まれた文字を何気なく読み取ろうとする。 うっすらと明るいだけの遺跡では完全に読み取ることは不可能であり、物品は持ち帰らずにここに埋めようと言う提案に従い、さっさと指輪を埋めてしまった。 まだ仕事は始まっても無い。 セサリカのその言葉に現実に引き戻される一行。 そう、まだ討伐は始まってすら居ないのだ。

首無し騎兵隊長

騎士ルネットの情報どおり、先ほどの戦闘の傷跡が生々しく残る大通りを突っ切ると、巨大な【コロシアム】が目の前に現れた。 ここに討伐対象が居る。確信に近い物を持って突入する一行。 そして其処には、一行の予想通り、魔物が待ち構えていた。 綺麗に整列した騎兵十人、十人の騎兵の前でどっしりと構えているひときわ巨大な騎兵。 皆、首が無い。 ようやく来たか、と最初から一行を待っていたかのような口ぶりの首無し騎兵隊長。 ここで一行の脳裏に至極当然な疑問が浮かび上がる。 【どうやって喋ってんだ?】 どうにも今回は【淡く光る岩肌をぶち壊して持って帰ろうとしたり】【初対面の男女ペアに恋心云々を聞きだそうとしたり】する緊張感の無い輩が居たことに実は疲れていたのか、この疑問を口に出した一行にセサリカはうんざりした様子で今疑問に思う必要があるのかと口に出す。 表情には出さないが意外と溜め込むタイプということがここで判明。 それはともかく、目の前にあることが現実だと何とか無難なところへ軟着陸させようというイサの助け舟もあり、とりあえず疑問は決着。 余裕な一行を見て、周辺の亡霊相手では遊び程度にしかならないか、首無し騎兵隊長はどこか満足そうだった。 しかし、その余裕が仇となり我等と同じ首無しにならないよう、と釘を刺され、そして騎兵達が槍を構えた。 【我等にその力を示せ】と叫び、首無し騎兵隊と共に突撃する首無し騎兵隊長。 今までは数で攻めてきた配下と違い、一匹一匹が相当な能力を持つ魔物達。 当然ながらそのリーダーである首無し騎兵隊長も恐るべき怪力、防御力を兼ね備えた存在であり、なんと魔術まで駆使してくる。 只のパワータイプと思っていた一行は不意を疲れる形で、何人かが魔術の直撃を受けてしまい危険な状況に。 だが、陣形を決して崩さず複数で襲い掛かってくる首無し騎兵隊に、一行も負けじと連携することで何とか対応していく。 一人、また一人と騎兵を確実に倒し、徐々に徐々に、戦局を好転させていったのだ。 最終的にワープが騎兵隊長の隙を作り、ラウルとセツナの連携で大きく首無し騎兵隊長を空高く飛ばし、その巨大な鎧の重さを利用して高所から叩き落す作戦が功を無し大ダメージを与えることに成功する。 これで終わりかと一瞬力を抜きかけた一行。 しかし、まだ終わっては居なかった。首なし騎兵隊長はゆっくりと起き上がり、笑いながら騎兵槍を両手に持ち構える。 最後の一撃にしよう、とラウルに一騎打ちを申し込む首なし騎兵隊長。 これをラウルが承諾し、お互いが全力でぶつかる。 突撃の勢いを全て乗せた首無し騎兵隊長の一撃を、死も賭して突っ込んだラウルが紙一重で回避、そして首無し騎兵隊長の分厚い鎧をラウルの渾身の一撃が貫いた。 満足げに笑い、首無し騎兵隊長は膝を付き、動かなくなる。 それと同時に首無し騎兵隊も動きを止めた。 勝利したのだ。それの意味するところはつまり。 ついに一行は、全ての依頼を完了することに成功したのだった。

全力をぶつけた証

ついに全ての討伐依頼を達成したオリキャラ達は、矢張りお決まりのように軽口を叩きあいはじめる。 あれだけの戦闘を行って余力が残っているのも驚きだが、もしかするとそれは、疲れている自分を励ますためにわざとそんな風に振舞っているのかもしれない。 そして今回もお決まりのように現れる遅刻者()+迷子。 流石に今回はセサリカもお怒りなのか、無表情のままキレるという非常に高度なテクニックを披露。(遅刻者3に大しては本気で発砲までしている上に言葉責めの大サービス) 当然ながら遅刻者三人と迷子一人は報酬無しと宣言されるが、今回ばかりは誰も反論できない。(したら銃弾が飛んでくると察したと思われる) とにかく仕事は終了。 これ以上何かされたら(主に発砲だが)困る一行はさっさと帰ってしまった。 最後に、セサリカは首無し騎兵隊長の死体を一瞥して、帰っていく。 死体が物品にもならず、消えていないということは、矢張りこの首無し騎兵隊長も、今まで討伐してきた魔物のように、メルディア大陸の魔物ではないのだろうか? ともかく、再び【月光古都】には静けさが戻った。 彼らが現れる前よりは、明らかに物悲しい、この世のものとは思えない啜り泣きがあることを除けば。

第三回目エピローグ

そして討伐後、ルナリスの屋敷にて。 同じソファーに座り、首無し騎兵隊長が倒されたことをセサリカが報告すると、ルナリスは嬉しそうにセサリカに抱きついた。 その様子を、ルナリスとセサリカの正面に座る大柄な男性が眺めている。 本当に、本当に倒されたのかと問うルナリスに、セサリカは確認を取るかのような口ぶりで男性に聞く。 満足げに頷いた、この屋敷の警備隊長を務める男性シュトロア。 討伐を達成した一行の力量を高く評価しているようだった。 感極まった様子で、ルナリスは子供のようにはしゃぎ、セサリカに労いの言葉を掛ける。 ルナリスが喜ぶ様を見てセサリカも微笑み、そして可愛らしい欠伸を一つした。 今日はなんだか眠い、と部屋に戻ろうとするセサリカを引きとめ、ルナリスは自分の膝枕で寝るように命じる。 素直に頷いたセサリカは横になり、あっという間に寝入ってしまった。 その様子を見て、お嬢様にも容赦なく攻撃を加えろと部下に命じていたのだから無理もないとシュトロアは言う。 あの場に居る以上、この子も試される立場、とルナリスは涼しい顔で言ってみせ、そしてシュトロアやその部下に何かご褒美をあげなければと笑った。 それをあっさり辞退するシュトロア。 何故なら、一行のような猛者と戦えたこと自体が既に褒美である、というのだ。 それを聞いてもう一度ルナリスは上品に笑い、眠っているセサリカの髪を弄り目を細めた。 いよいよ、この妙齢の夫人が動き出す時がやってきたのだった。

最終回〜狂気の姫君〜

最終回プロローグ

全ての討伐を完了した一行に待っていたのは、盛大なパーティーだった。 巨大なホール、幾つも並ぶ大きな丸テーブル。 数え切れないほどの美味な料理、酒、優雅な音楽。 貴族の贅沢を全てこのホールに集めた、そう表してもいいほどの規模のパーティーに一行はご満悦。 殆どが礼服などで出席している中、案内人であるセサリカは何時もの服装、装備のまま出席していた。 余り楽しんでいる様子も無く、誰とも会話することなく、隅のほうでちびちびと飲み物を飲んでいる。 そんな彼女の様子を一向は不思議に思いながらも、何事も無くパーティは進む。 一段落しかけたその時、セサリカに近づく一人のメイド。 何かを耳打ちし、丁寧にお辞儀をして去っていく彼女を見送った後、セサリカはホールの中央に静かに進み出て、大騒ぎする一行に声をかけた。 曰く、依頼主であるルナリスが一行に会いたがっている、案内するからついてこい、とのこと。 依頼主を直接見ていない人間も大勢居り、あっという間に付いていく事に決定。セサリカと共に一行はホールを出て行った。

全ては彼女の掌の上で

セサリカの後を付いて、屋敷の中を歩き回る一行。 外見どおりの巨大な屋敷で、地下にも相当道が続いているらしく、合計で七つもの階段を降りていく。 道行く途中出会う従者達は皆丁寧にお辞儀をするが、どこか違和感が残る。 薄暗い廊下の先で一行に立ちはだかったのは、大きな黒い壁。 壁と思われたそれは、セサリカが触れると同時に真ん中に亀裂が走り、扉だという事を初めて一行に知らしめる。 扉の先は、上も下も満点の星空が描かれた巨大なホールだった。 ホールの中央に佇む四つの人影。 一人は、礼服に身を包んだ老紳士。 一人は、水色の髪の毛が薄暗いホールに映える、若いメイドの女性。 一人は、鎧に身を固めた大柄な兵士の男。 そして最後の一人は、アイスブルーのドレスに身を包んだ妙齢の女性、ルナリス。 ようこそいらっしゃいました、とルナリスは笑顔で一行を迎える。 討伐のお礼があれぐらいしか用意できなくて、と、あれだけのもてなしでまだ不十分と思っているのか不足を詫びる。 そんなことは無い、と次々にお礼をいう一行に、ルナリスは顔を赤らめさせ、もう一度頭を下げた。 そして、彼女は突然妙な事を言い出す。 魔物とは、素晴らしい存在だと思わないだろうか、と。 返答に困る一行。 だが、彼女は返答など待っては居なかった。ただ好きなように語りたいだけ、最初から返事など期待はしていない。 そんな魔物の力を自分のものに出来たら素敵じゃないかと、悦に入ったように、興奮で顔を赤らめさせ、不気味なまでに瞳を輝かせ、話し続ける。 そして彼女の口から次々と、異常な話が飛び出始めた。 実際に彼女は魔物の力を手に入れる実験を試すため、そのためにメルディア以外の地域に生息する、メルディアとは違う魔物を取り寄せた。 そしてそれを材料に自らに実験を続け、一行が撃破した三匹の魔物、正確には、今この場に居る三人の従者達のような存在を作れるようになった、と云うのだ。 他にもありとあらゆる魔物を作成できるようになり、自分はこれほどまでに幸せと思ったことは無い、とまで言い切る。 既に、一行が入ってきた入り口は封鎖され、びくともしない。 皆この婦人が仕組んだ計画に踊らされていただけに過ぎなかったのだ。 そして最終的に、罠に掛けられた。 彼女が何故そんな真似をしたのか、それは彼女の次の言葉で次第にわかり始めてくる。 彼女は次々と、知るはずの無い、一行で特に目立った能力を持つ人間達の能力を言い当てて、そして自分なりの感想を伝え始める。 それはとても素晴らしいものだ、と最後に付け加え。 それを、自分の中に入れたらどうなるのだろう、と一行に答えられるはずの無い質問をする。 もし答えられたとしても答える必要はなかった。 もう次の瞬間、あの優しげな、おっとりとした笑みを浮かべる婦人は消えていたのだから。 其処に居たのは、獲物を【狩る】ために行動を起こした一人の化物であり、そしてその化物は冷たい微笑を張り付かせ一行に向かってゆっくりと近づいてきたのだから。 咄嗟にルーノが弓を取り出し、ルナリスではなく、セサリカに照準を合わせた。 依頼主と一番密接な関係を築いていたのは彼女であり、彼女がこの件に一切絡んでいないはずが無いと睨んでの行動だった。 冷ややかにルーノを見るセサリカ。 ルナリスはそれを見て歩みを止め、残念だと肩を落とす。 だが次の瞬間にはにやりと笑みを浮かべ、目の前にこんなにいい材料があるのに見逃すのはもったいないと思わないだろうかと、セサリカに問う。 セサリカがそうね、と短く返事を返した瞬間、ルーノの身体に漆黒の蜘蛛の糸が絡みつく。 行動を封じられたルーノの目の前から悠々と逃げ出し、セサリカはその銃口を一行へと向けた。 彼女もルナリスの操り人形であり、討伐の案内役も良質な【材料】を見つけ出しルナリスに報告するだけのために行っていたのだった。 今までの親切も嘘だったのか、というディプスの問いに命令だから、と冷ややかに答えるセサリカ。 三人の従者はルナリスに命じられ、その場から消え去る。 代わりに一行の目の前に二人の女性(救済者処刑者)が現れ、一行に剣の切っ先を向ける。 目の前に居る強大な存在を倒さなければ脱出は不可能だという事を一行は悟る。 天使のような羽を生やし、大きく羽ばたいたルナリス。 屋敷の地下にて、今までの討伐で戦ってきた魔物とは比べ物にならない存在との戦闘が始まった。

死闘

強力な近接攻撃を駆使して戦場を撹乱する救済者に処刑者。更に彼らによって生み出された隙を付けねらい容赦の無い一撃を繰り返すセサリカ。 そして、今まで戦ってきた魔物の能力に加え、自身オリジナルの強力な魔術を駆使し広範囲に攻撃を加え続けるルナリス。 辛うじてセサリカだけは実力で勝っている人間も多く、仕留めそうなところにまでは持っていける。 だが、必ずルナリスの強力な妨害と反撃が入り、誰一人として倒れることが無い。 捨て身で突進する処刑者は一撃が致命傷であり、盾を持つ救済者は殆どを受け流し、そして回避し、素早い剣技で翻弄する。 ルナリスにいたってはほぼ完璧ともいえる防御能力に、攻撃能力があり、人間離れした能力を持つゼータまでもがまるで赤ん坊のようにあしらわれていた。 何とか攻撃を耐え続け、まず始めにに捨て身での攻撃を行っていた処刑者をなんとか倒す一行。 続いて集中攻撃を加え回避すら出来ない状況に追い込み、救済者も撃破しようとしたそのときだった。 まばゆい光が一行を包んだかと思えば、強烈な衝撃が襲い掛かる。 ゼータの持つ品、ミスティルティンによりすぐさま光をかき消す(それまでも何度かルナリスの魔術はミスティルティンによりかき消されていたが、それでも致命傷の威力を持つ魔術が何度も発動している)が、何と光はすぐさま復活、間髪入れずに第二波となって一行に襲い掛かる。 辛うじてそれを防ぎ、安堵した一行。 だがそれは、次の瞬間再び訪れた、一番強烈な衝撃によって無残にも打ち砕かれた。 第三波が待ち構えており、今度こそ殆どの人間が防御することが出来ずに光の津波に押し流されてしまう。 壊滅状態となり、絶体絶命の一行。 だが、勝利を確信し笑みを浮かべたルナリスの前に、突然セツナが現れ、獲物である巨大棍棒を振るった。 光の津波が発生する直前にディプスと連携した行動を取り奇襲を狙ったセツナ。見事にそれが当たり、一撃を何とかルナリスに振るうことが出来たのだ。 咄嗟に身を引き、防御行動を取るルナリスだが、追い討ちで更にルーノの攻撃を受け、直撃ではないものの右足に傷を負う。 しかしその最中救済者の能力により倒されたはずの処刑者が復活。ルナリスの攻撃で虫の息となったラウルに再び襲い掛かっていく。 不意打ちもたいしたダメージが与えられず、もはやこれまでか、と思った一行の目の前で。 ルナリスは何故か傷口を見て、酷く動揺していた。 完全にルナリスの攻撃の手が止む。 今がチャンスと、一行はまず取り巻きである三人の撃破を行い始める。 復活した処刑者をもはや気力だけでねじ伏せたラウル。 処刑者が倒され再び集中攻撃の的に晒された救済者。 二人の女性は一行の最後の猛攻撃の前についに倒れた。 更に、攻撃手段を使い果たしたセサリカの身体をワープの渾身の一撃が捕らえる。 一気に形勢は逆転し、ルナリスもこの勢いで倒そうとゼータがグングニルを投げつける。 真直ぐ、間違いなくルナリスの急所目掛けてグングニルは進み。 満身創痍となりながらもその攻撃の軌道上に立ちはだかった、セサリカの身体をグングニルは貫いた。

狂気の代償、許されぬ所業

グングニルに貫かれ、更に追い討ちでヴァールの槍に貫かれても、その場を一歩も退こうとしないセサリカ。 常人では立っているのも、ましてや未だに目的であるルナリスに向かって突き進もうとするグングニルを掴み止めるだけの力は無いが、彼女は大量の血を吐き出しながらもそれを成し遂げていた。 自分を庇ったセサリカを見てルナリスに更に動揺が走る。 もはや彼女は戦えなかった。 かといって、彼女を倒せるほどの余力も残っていない一行。 耐え続けるセサリカに、酷く動揺し話の通じないルナリスの代わりにここから脱出させろと命じる。 その要求を呑めば、ルナリスを、母をこれ以上傷つけないか、と息も絶え絶えに問うセサリカ。 約束するような立場でもないが、そうすれば命だけは見逃す、と一行。 それを聞いたセサリカはグングニルを引き止めつつという過酷な状況の中で、扉を開けるように手配を行った。 バレッタを呼び出すときに使うシグナルボールで、外に居る従者達に知らせたのだ。 だが、はらわたが煮えくり返っているゼータにとってはその行動がいちいち遅く見えたらしく、容赦の無い追撃をその身体に刻み込まれる。 数秒の経過の後、閉鎖された扉が開く。 其処からなだれ込んでくる従者達。 先ほど消えた三人の従者達もその中に居た。 目の前の光景が信じられない様子で、従者達に動揺が広がっていく。 怪我人を運び出す何人かの人間に道を譲る従者達。妨害も何も無い。 この婦人が戦闘不能になった、というだけで、もはや従者が一行に立ち向かう理由が無いのだ。 漸く満足したのか、グングニルをセサリカの身体から抜き出すゼータ。 グングニルは、ルナリスを狙っては居なかった。 正確にはルナリスの後方にある壁、誘導されては厄介だからと初めからそのつもりでいたのだ。 槍が抜き取られ、セサリカは力尽き、自ら作り出した血の池の中に倒れ伏す。 それを見たルナリスは泣きながら、セサリカの身体に追いすがる。 一行など眼中に無いという様子で、あの余裕のある態度は消えうせていた。 そんなルナリスの姿を背中に、屋敷を一人、また一人と去っていく。

最終回エピローグ

後に残されたのは、身動きすら出来ぬ従者達に、二人の女性の死骸、虫の息のセサリカ、泣き続けるルナリス。 狂気が引き起こした代償は、酷く重い物だった。 そんな中、従者達に驚きの声が上がる。 先ほど一行が出て行った扉から現れたのはラウルバーフ。 彼のことを【旦那様】と呼ぶ従者たち。 彼はそんな従者達には目もくれず、未だにセサリカの身体にすがりつき泣き続けるルナリスの元へ足早に近づいた。 ラウルバーフの登場に驚くルナリス。 どうして、と呟きかけたルナリスの頬を、ラウルバーフは容赦なく叩いた。 赤く染まる頬を思わず片手で押さえ、涙のにじんだ顔で見るルナリスの両肩をラウルバーフは掴み、彼女が行ってきたことに対して厳しく叱咤する。 罪無き人々を巻き込んでまで行う実験に意味は無い、君はそんな馬鹿げた事で娘であるセサリカも巻き込むのか、と怒鳴り散らすラウルバーフ。 泣き続け、言い訳をしようとするルナリスを彼は無視し、何時命のともし火が消えても可笑しくないセサリカを抱き上げ足早にホールを出て行ってしまう。 最愛の人に嫌われたと思いんだルナリスにもはや正常な思考は残っておらず、ぶつぶつと何かを呟く廃人のようになってしまう。 そんな彼女を従者達は、丁寧にホールから連れ出していった。

EXシナリオ〜償い〜

EXシナリオプロローグ

ここ最近遺跡内部にて、如何見ても丸腰の一般人がうろちょろしている、との報告が冒険者達から寄せられている。

魔物も当然のように出現する危険な場所でその一般人は何をしているのか、問題を引き起こされては厄介だという事で冒険者ギルドは調査の依頼を発動する。 一行はその依頼を引き受け、目撃の証言のあった遺跡【月光古都】へと再び向かう。

ご注意

開催時期未定!

最終更新:2012年03月27日 20:01