なんだよこれ。
どうなってんだよ。




グレイグのおっさんが呼ばれることは、もう分っていた。



でもさ、大切な仲間達がこの戦い呼ばれていたなんて。
そして、その何人かが既に死んでいたなんて。
オマケにそのうち一人が、結婚を申し込もうとした、最愛の人だなんてどういうことだよ。
何が「マールに似合う男になる」だ。俺。

彼女を助けに行くことすら出来なかった最低のヤツじゃないか。


そんなことも知らずに、のうのうとこの戦いを止めて、英雄になるんだなんて大見得切って。
そんなことをしてた結果が、仲間を死なせて、挙句ゲームに乗った人間を助けたなんてねえ。

マナの放った呪いの言霊が、再びクロノを苛む。



(この子が最期に言った言葉、知ってる? 死にたくない、だって! これから楽しい事が待ってるはずだったのに、こんな形で終わっちゃってかわいそう。)


そうだよな。
俺もアイツと結ばれるのを楽しみにしていたけど、アイツはもっと楽しみにしていたハズだったよな。
俺がマールを守るって約束したのに。
生き返らせてくれたんだから、今度こそ守るって。そう誓ったのに。
俺がグレイグやゼルダを無視して、マール一人を探し回っていれば会えたかもしれないのに。


(お仲間に殺されるなんて可哀想。この結果が騎士道っていうやつなの?)
なあ。カエル。一体アンタは誰に殺されたんだ?
頭が良くて機転が利いて、剣も魔法も使えるアンタが死ぬのだとしたら、仲間を庇ったか裏切られたかだと思う。


でも、仲間って、ルッカかロボのことじゃないよな?
この世界で新しく作った仲間なんだよな?


でも、冷静に考えてみたら、おかしいわけじゃない。
ルッカは時を移動してさえ出来なかった母親の脚を治してあげたいって言ってたし、
ロボはマザーブレインに操られたアトロポスを救うことが出来なかった。
かつての冒険で叶えることの出来なかった願いを、叶えるために戦いに乗ったのかもしれない。


(死ぬなら年の順だぜ。)

俺が生き返らせてもらった時に時の最果てでカエルが言ってきた言葉。
だからって、本当に死んでどうすんだよ。


あーあ。
もう知らねえよ。

ははは。



ふと足元を見ると、近くに宝箱があった。
さっきまで、こんなものはなかったハズなのに。


興味本位で開けてみると、そこには盾が入っていた。
丁寧な装飾を施された、立派な盾だ。
よく見ればこの城でよく見られる、三角形を連ねたマークが彫られていることから、国宝の一つなのかもしれない。
俺や俺の仲間で盾を使うヤツはいなかったけど、それでも凄い盾だと分かる。

でも、グレイグのおっさんと一緒にガーディアンを壊していた時は、確かにこんな宝箱はなかったはず。


宝箱の中に、盾と一緒に一枚の紙があった。
『怪物を討伐し、試練を乗り越えし英雄に、かつて勇者が使いし盾を捧げる。』


もしや、怪物ってのはあの骨の巨人のことか?
良く分からねえけど、まだオレのことを英雄だと認めてくれるヤツがいるらしい。
俺は盾の使い方はサッパリだけど、これはお守り替わりに持っていくことにするよ。



よし、ヘコむの終わり!!

グレイグのおっさん、カエル、そしてマール。
待っててくれよ。
すぐにこの戦いを開いたクソ共を、そっちに送ってやるから。


まだルッカも生きている。ロボも生きている。
それなのに自分だけ諦めるなんて、スジが通ってねえよな?


どっちかがゲームに乗ってるかもしれねえが、関係ない。
マナが俺を動揺させるためについたウソかもしれないし、もし本当なら殴って改心させてやる。


それに、俺はまだやらなきゃいけないことがある。
ゼルダが言っていた、『短い茶色の髪で、緑色の服の少女』
誰なのか分からねえが、ルッカやロボ以上に助けねえとマズい。


ゼルダが危険人物呼ばわりしていたが、恐らくそのゼルダの危険性をいち早く察知して、殺そうとして失敗したのだろう。
そして殺されることを恐れたゼルダが、俺達にソイツが危険人物だという情報を吹き込んだんだとすると、納得できる。


待ってろよ。皆。
随分無駄足踏んじまったけど、ここからだ。
ここから遅れた分取り返せばいい。

俺は何一つ出来なかった。
何一つ出来ないまま、仲間達を死なせてしまった。
けれど、それがどうした?


かつてラヴォスを倒した冒険だって、限りなく勝てる可能性の低い戦いだった。
それでも俺達は勝った。
何もかもが上手くいったわけじゃないけど。
とりあえず、やれることをやるしかねえよ。
後悔するのは、マナとウルノーガを倒して、殺し合いを潰してからでも遅くないだろ?


それに、マールもカエルも、自分のことは気にしないで、生きている人達を救ってっていうようなヤツだ。

まだ五体満足な俺が、勝手に諦めるには早すぎるよなあ?


「それじゃ……グレイグ、行ってくるぜ!!」





城を駆け下り、城門の所に出た所で、髭を生やしたいかつい風体の男がいた。
人間のようには思えないし、何より敵なのか味方なのか分からないが、訪ねてみることにする。

「なあ、ゼルダって金髪の……。」
「オマエだな。姫さんに危機を及ぼす赤髪ってのは。」


男の口から、自分が予想もしていない言葉が出た。
いや、実は俺が悪人扱いされることを恐れるあまり、考えているのを止めていたのかもしれない。



★       ★        ★




森を進み、さらに歩いた場所でゼルダは、かつての知り合いと再会を果たしていた。


「ダルケル。無事で何よりです。」
「姫さんこそ無事でいてくれてこの上ねえ。ウルボザのヤツが呼ばれた時どうしようかと思ったが、もう大丈夫だ。
オレが絶対に姫さんを守るぜ!!」


ウルボザの訃報を聞いた直後だからこそ、余計に再開を喜ぶ二人。
最も、ダルケルは純粋に仲間の死を、ゼルダは守ってくれる可能性の高い盾の死を悔やんでいるのだが。


「あ、その人、ダルケルの知り合い?なあ、モンスターボール持ってない?」
そんな状況に一人蚊帳の外のレッドが声をかける。

「そんなもん姫さんが持ってるワケねえだろ……。」
「これのことでしょうか?」


ゼルダはキリキザンの入ったモンスターボールを取り出す。
「それだ!!中にはポケモンはいるか?」
「ポケモンというのですね。いるのですが……。」
(仮にも姫さんに対して慣れ慣れし過ぎないか?)

モンスターボールのスイッチを押すと、中から瀕死のキリキザンが現れる。


「うわ……これはひどいな……。
見たことないポケモンだけど、生きているのが不思議なくらいだ。
治療しないととても戦えないよ。」

キリキザンの体を見回しただけで容態が分かるレッド。
この魔物に関して信頼できる知識を持っているようだと、ゼルダは推測する。


「私を守って、こんなことになってしまったのです。」

この二人はどうやらゲームに乗っているわけではないが、とりあえず自分の盾になってくれる可能性は高そうだ。

「ダルケル、薬持ってない?」
「薬なら、ないワケじゃないんだが……。キズぐすりじゃねえみてえだ。」
「じゃあ、ここへ行こう。マナが言ったことだから本当かどうか分からないけど、ポケモンが治療できるみたいだし。」

レッドは地図の「Nの城」を指す。
先程の放送によると、ここへ行けばポケモンを治療してくれるらしい。


「この魔物の知識はあなたの方がありそうなので、渡しておきます。
それより早くここから逃げましょう!!」

まだ殺してないクロノの報復を恐れたゼルダは、この場所から早々に離れることを提案する。

「姫さん、逃げるって……。」

ゼルダの警告で、二人の顔は強張る。
ダルケルもレッドも、殺し合いに乗った参加者に一度も会ったことはない。
だからこそ、殺し合いに乗る人物がいたという言葉はこの世界への認識を変えさせた。

「そうです。ハイラル城で隠れていた所、クロノという赤髪の太刀を持った男に襲われました。
どうにか逃げましたが、まだ追ってくると思います。」

「靴が片方ないのも、逃げた時に?」
「はい。」



「オレに任せろ!!英傑の名にかけて、ソイツをとっちめてやるぜ!!」

ダルケルが敵の討伐に名乗りを上げた。
「ですが、ダルケルさん……。」
「心配いらねえ!!姫さんとレッドは逃げろ!!」

今は全員で逃げたいというゼルダの希望を押し切り、ダルケルは追手の討伐を優先する。
確かに、自分のことを知っている相手として、クロノは厄介な存在である。
出来るなら倒すか、無力化しておくに越したことはない。

「大丈夫だよ。オレとピカが守る。」
「ピィカ!!」

レッドは元気に答える。
見た目は少年のようだが、隣の魔物を使って戦うのだろうか。

「オレの心配はいらねえ!!Nの城で落ち合おうぜ!!」
「ご武運を。ダルケル。それとお守り替わりと言えばなんですが……。」

ゼルダはグレイグが持っていた盾を、ダルケルに渡す。
自分が持っていても重くてまともに使えないし、誰かに渡してしまうのがてっとり早い。


ダルケルという信頼できる盾を手放すのは気が引けるが、クロノの存在も気になる。
もし3人で戦えば、優先して自分を殺しに来る可能性が高い。
だから、第三者に任せて自分は姿をくらますのがベターだろう。


「スゲエ!!ロベリー博士の発明品じゃねえか!!
ちょっと小さいが、百人力だぜ!!」

ダルケルは二人を後にして、ハイラル城へ向かう。
「それと、ヒメサン……だっけ?靴が片方ないみたいだけど、俺の古い奴でよかったら……。」
「オイ、ちょっと待てよ!!仮にも姫さんにそんなボロい靴……。」
「いいえ、ありがとうございます。」

ゼルダはレッドがランニングシューズに履き替える前の靴を履く。
このような状況で物の貴賤に拘るなど、愚の骨頂だろう。


「レッド!!姫さんをしっかり守ってくれよ!!」
「おう。任せろ!!」


レッド達とダルケルは別れ、別々の方向に向かう。


レッドとしても、ダルケルと協力して戦いたいし、どうにかしてゼルダを襲った相手を改心させたい。
だが、ゼルダも守らないといけないし、どうにしかしてキリキザンの治療を行いたい。
そこでポケモンの治療も本当に出来るのか知らないが、行ってみる価値はあるだろう。

そして、もう一つ気になったのはゼルダのこと。
彼女の眼は、ただ逃げ惑う人のものではない。


目的の為なら何でもする、
例えばサカキのような何かに徹する眼をしている。
でも、ダルケルは元の世界で彼女の護衛をしていたようだし、殺し合いに乗ってはいないと思う。
殺し合いに乗っていないと思いたい。

★       ★        ★



「待ってくれ!!俺は……。」
「姫さんを守る英傑として、オマエは許さねえ!!」

やられた、とクロノは痛感する。
ゼルダが、この大男に自分が危険人物だと吹き込んだたことに、ようやく気付く。

「くそ……やめろ!!サンダー!!」

ダルケルが振った鉄塊を躱し、雷魔法を撃つ。
クロノが無力化させようと打った雷は、ダルケルの持っていた盾によって無効化される。
(あの盾は……。)
左手にある盾がグレイグが持っていた盾だった。
大方、ゼルダが渡したのだろう。


自分の行いをまたも後悔する。
グレイグの死を気にせず、すぐにゼルダを追いかけるべきだった。
なぜ別の人物がゼルダによって危険人物にされているのに、自分はされないと思っていたのか?

どうにかすればこの大男を倒すことは恐らく可能だ。
しかし、本当にこの男を殺すべきなのか?



夜は開け、夢見る時間は終わりを告げる。
それでも、皆どこかで信じているのだ。

自分の夢が、目的が、願望が思い通りになってくれることを。
その気持ちは、それまで上手くいかなかった者ほど強くなる。



【A-4/ハイラル城 入口一日目 朝】
【クロノ@クロノ・トリガー】
[状態]:健康、焦り
[装備]:白の約定@NieR:Automata
[道具]:基本支給品、ハイリアの盾(@ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド)、ランダム支給品(1個)
[思考・状況]
基本行動方針: 英雄として、殺し合いの世界の打破……?
1.この大男(ダルケル)をどうする?
2. ゼルダを止める
3. ルッカ、ロボ、里中千枝(名前は知らない)を助ける。

※マールの死亡により、武器が強化されています。
※名簿にいる「魔王」は中世で戦った魔王だとは思ってません。


※ED No.01 "時の向こうへ"後からの参戦です。
※グレイグからドラクエ世界の話を聞きました。



【ダルケル@ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド】
[状態]:HP1/2+α  ダルケルの護り消費(あと2回)
[装備]:鉄塊 @ドラッグオンドラグーン 古代兵装・盾@ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド
[道具]:基本支給品 ミメットの野菜@FF7 エルフの飲み薬
[思考・状況] クロノを危険人物だと認識。
基本行動方針:
1.クロノの撃破、あるいは無力化
2.その後ゼルダ、レッドとNの城で合流。
3.他の英傑やリンクも探す。
4.殺し合いには消極的だが、襲われれば戦う。


【A-4/ハイラル城外 森/一日目 朝】
【ゼルダ@ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(大)、決意、右の靴が脱げている
[装備]:アンティークダガー@Grand Theft Auto V レッドの靴@ポケットモンスター ハートゴールド ソウルシルバー
[道具]:基本支給品×2、オオワシの弓@ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド、雷の矢@ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド、グレートアックス@ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて、グレイグのランダム支給品(1個)
[思考・状況]
基本行動方針: 殺し合いに優勝し、リンクを100年前の状態に戻す。
1.誰かに守ってもらい、不意打ちを狙う。
2.私は、私……。
3.今のリンクは、騎士として認めたくない。
4.レッドと共に、Nの城に避難する。
5.ダルケルと合流。来なかった場合は見捨てる。
6.レッドはどうするか?


※ガノン討伐後からの参戦です。
※グレイグとクロノからそれぞれドラクエ、クロノ・トリガーの世界の情報を得ました。


【レッド@ポケットモンスター ハートゴールド・ソウルシルバー】
[状態]:疲労(中)、無数の切り傷 (応急処置済み)  
[装備]:モンスターボール(ピカチュウ)@ポケットモンスター ハートゴールド・ソウルシルバー、ランニングシューズ@ポケットモンスター ハートゴールド・ソウルシルバー、モンスターボール(キリキザン)@ポケットモンスター ブラック・ホワイト
[道具]:基本支給品
[思考・状況]   ゼルダに対する疑念
基本行動方針:こんな殺し合い止める。
1.キリキザンを治すために、ゼルダと共にNの城へ避難する。
2.どうにかしてキリキザンを治療する
3.カラのモンスターボールを手に入れ、野生のポケモンを捕まえる。
[備考] 支給品以外のモンスターボールは没収されてますが、ポケモン図鑑は没収されてません。


※シロガネやまで待ち受けている時期からの参戦です。



【モンスター状態表】


【ピカ(ピカチュウ)@ポケットモンスター ハートゴールド・ソウルシルバー】
[状態]:健康
[特性]:せいでんき
[持ち物]:なし
[わざ]:ボルテッカ、10まんボルト、でんじは、かげぶんしん。
[思考・状況]
基本行動方針:レッドと共に殺し合いの打破
1.ゼルダに若干の疑い

【キリキザン ♂】
[状態]:ひんし
[特性]:まけんき
[持ち物]:なし
[わざ]:つじぎり、シザークロス、ストーンエッジ、メタルバースト
[思考・状況]
基本行動方針:主人に従う。
1.???


支給品紹介
【ハイリアの盾@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
勇者が手にしたという伝説と共に古よりハイラル王家に受け継がれてきた盾 他を寄せ付けない 圧倒的な防御力と耐久性を誇る。
原作同様、スタルヒノックスを倒したことで手に入った。
炎や雷、ビームといった大半の属性を打ち返し、強力な攻撃を何度も受けない限り決して壊れない。



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068:黒の引き金 時系列順 070:新たなる好敵手
投下順
050:時に囚われし者たち(前編) クロノ 090:亡き王女の為の英雄裁判
ゼルダ 082:虚空に描いた百年の恋(前編)
051:ゴローン? ダルケル 090:亡き王女の為の英雄裁判
レッド 082:虚空に描いた百年の恋(前編)

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最終更新:2021年01月03日 22:07