「ったく……とんでもない目に遭ったな……。悠、ケガはないか?」
「俺は別に。ティファは?」
「私も……と言いたいけど、ちょっとキツいわね。」
悠は先程のロボとの戦いで、ティファが足を負傷したのが分かった。
しかし、ロボがティファの脚に攻撃を加えた素振りは見せなかった。
恐らく、相手がギリメカラのような物理反射のスキルを身に着けており、ティファはそのカウンターを食らったと、悠は結論付けた。
病院から抜け出し、3人は近くの空き家に避難していた。
悠のネコショウグンは脚を怪我したティファに、メディラマをかけ続けている。
「スゴイ術だな。一体どんな手品なんだ?」
ピカチュウは悠のペルソナ召喚と、その回復魔法を見て感心する。
「手品じゃない。ペルソナって言うんだ。」
「よく分からないけど、ポケモンとは違うみたいだな。」
それ以上悠は説明する気はなかった。
なにしろペルソナの力なんて、八十稲羽町に来るまでは、悠も信じてなかった。
「マテリアを媒体とした召喚とも、違うみたいね。」
「そのマテリアってのは知らないな。」
「私の手袋に付いているこれよ。」
ティファはパワー手袋の手の甲の部分に付いている紫色の宝玉を見せる。
「それで、ペルソナを出せるのか?」
「違うわ。これは自分のスピードが上がる能力があるのよ。
幻獣を召喚できるマテリアとは違うわ。」
どうやらマテリアもペルソナとどこか類似点があるようだ。
特定のスキルを持つペルソナは召喚するだけで召喚主、あるいはペルソナの強化につながる。
ネコショウグンの電撃ブースタなど、その一例だ。
「それくらいにして、そろそろ飯にするぞ。」
互いの世界の話し合いを、ピカチュウが一度制す。
「あんな惨劇を見たら食欲なんて失せるかもしれないけど、食べなきゃこの先持たないからな。」
そう言ったピカチュウはザックの中からサンドウィッチを出して、頬張り始める。
「ほーら、腹が減っただろ。沢山食べな。」
「ブーブー!!」
勿論、ポカブに食べさせることも忘れずに。
「おっ、カレーが入ってたな。」
ティファの支給食料も同じようにサンドウィッチだったが、悠の支給品は何故かレトルトカレーだった。
しかもご丁寧に、レトルトのご飯まで同封してある。
『ゴロンの香辛料をふんだんに使ったカレーとハイラル米100%のご飯。おいしいよ!!』
カレーのパックの裏側には、馬鹿にしたような説明が書いてあった。
(ここには電子レンジもガスもないぞ、ハズレ支給品か?)
そう思ったが、パックを開けるとは電子レンジで温められたかのように湯気を出している。
ご飯も同じようにホカホカだ。
「おっ、何か珍しいモノ食べてないか?」
「ああ。カレーを食べることが出来るなんて思わなかったな。」
幸いなことに空き家にはスプーンと皿は置いてあったため、少なくともここで食べるのに問題はなかった。
「うん。結構美味しいな。」
香辛料の辛さも適度ながら、米もレトルトとは思えない程良い味を出している。
具材も野菜だけだが、レトルト食品にありがちな貧相な味ではなく、香辛料の味が染みながらも野菜の甘みが残っている。
すぐに完食してしまった。
これを作ったのが主催側だとしたら、意外に良い腕があるのではないか、と悠は思った。
カレーを食べると、思い出してくる。
林間学校で千枝と雪子の作った、カレーとは思えない物体。
ダークマターと呼んでもおかしくなかった。
あまりにもひどい味で、本当にカレーの素材で作ったのか聞きたくなったくらいだった。
完食できた人は誰もいなくて、他の班の人に料理を分けてもらって事なきを得たのだが。
美味しいか不味いかで聞かれたら、あのカレーはどう考えても不味かった。
でも、今自分はその不味いカレーを求めているのも分かっていた。
『ごきげんよう、みんな。殺し合い楽しんでる?』
そして、悠は知ることになる。
二度と食べたくなかったカレーを、二度と食べることは出来なくなってしまったことを。
「悠。」
「悠!!」
ティファとピカチュウが、声をかけた。
「しっかりしろ、悠!!」
「ああ、すまない。」
悠はどこかで思っていた。
自分達の友情は、決して壊れることはないと。
そんなことはあり得ないし、雪子の名前を呼ばれる前に、完二の首が飛んだ時に壊れたはずだった。
きっと元の世界に帰れても、二人が死んでしまった事実はずっと付き纏うだろう。
だから、どうする?
主催者が死んだ仲間を生き返らせてくれるという、針の先ほどもない可能性にかけて殺し合いに乗るのか?
しかし、それを行う気にはならなかった。
全てのペルソナを出せる状況ならまだしも、イザナギとネコショウグンのみで捌ける相手ばかりという可能性は低い。
それ以上に、人殺しの果てに再会した仲間の顔を、どうやって見ればいいか分からない。
「どういうこと……?」
転送されたとマナが言っていた、名簿をめくっていたティファが声を出した。
「誰か、知り合いがいたのか?」
知っている人も何人かいたが、それ以上にティファが気になったのは、かつての世界で死んだ人が3人もいたことだ。
「この名簿、私の世界で死んだ人がいるの。」
「「!?」」
一人目のティファが知っている死者、セフィロスがいたのはカエルの情報で既に知っていた。
だが、彼の生存報告は、初めてのことではなかったのでさほど驚きはしなかった。
セフィロスは5年前、ニブル魔晄炉でクラウドに刺されて死んだはずだった。
だが、ライフストリームの深淵の中で、再び星を手中に収めることを夢見ていた。
その後、自分やクラウド、他の仲間達と今度こそ討伐を果たした。
だがもし、何らかのはずみでまた生きていて、この戦いに参加していても、特に不思議はなかった。
それ以上にティファが驚いたのは、後の二人の死者のこと。
エアリス・ゲインズブール。
星の未来を守るために、白マテリアを操り、それが原因でセフィロスに殺害されたかつての仲間。
ザックス・フェア。
5年前のニブルヘイムに任務でやって来た青年。
そして、クラウドの幻想だった男。
任務中豹変したセフィロスとの戦いに巻き込まれ、その後死亡したらしいが、この戦いの名簿に載っている。
「俺はそもそも知り合いが呼ばれていなかった。
悠の仲間が見せしめに殺されたと聞いたから、ティムも参加しているのかと思ったけどな。」
「死んだ人はいなかったな。けど知り合いが完二以外にも3人……。
あと、以前同じ高校で、逮捕された人もいた。」
その3人の内、1人が呼ばれたのだということは、悠以外の二人にも分かった。
死者を蘇らせたということは、この戦いの主催者は予想以上に恐ろしい存在と言うことになる。
「悪いけど、もう私は行くわ。」
ティファは名簿を読み終わると、すぐに玄関から出ようとする。
「どういうことだよ。一人で行くつもりか?」
慌ててピカチュウは止めに入る。
「そうよ。奴との戦いに、あなた達を巻き込めない。」
そもそもカエルからセフィロスの話を聞いた直後、真っ先に向かうつもりだった。
しかし、ピカチュウが助けを求めにやってきたため、その計画を一時的に破棄することになった。
そして、病院での戦いで、脚が負傷してしまったため、今こうしている。
幸いなことに、悠のメディラマと休息によって、脚はある程度は回復した。
流石にカエルを助ける時のような動きはまだ出来ないが。
「待てよ!!そいつ、とんでもなく強い奴なんだろ!?」
ピカチュウは止めようとする。
「だからこそよ。早くセフィロスを殺さないと、死者が出るわ。
いや、もう出ているかもしれない。」
どんなカラクリで復活したのかティファも分からないが、彼が復活したのだとしたら、自分達への報復を目論んでいるはずだ。
幸いなことに、彼女の知り合いに犠牲になった者はいなかった。
今のうちに、刺し違えてもセフィロスを止めねばと、焦る気持ちがあった。
「一人だけじゃ無茶です!」
それに、この世界ではどうにも回復力が低い。
いくら中級魔法のメディラマとはいえ、回復量が少なすぎる。
まだ完治も出来ていないのに、一人で強敵に立ち向かうのは無謀としか思えなかった。
「じゃあ、奴が何処にいるのか分かるのか?」
再びピカチュウが問いかける。
「分からないわね……。」
ティファはそう答える。
セフィロスについての情報は、既に死んだカエルからのみ。
しかもカエルがセフィロスからの襲撃を受けてから、大分時間は経っているはずだ。
ティファがいる場所とは離れて行ってしまった可能性だって低くはない。
それは、ティファにも分かっていた。
「俺は仲間……陽介と千枝を探したい。」
「分かった。私の仲間探しも兼ねて、協力するわ。」
「それと、俺はもう一人探したい人物がいるんだ。
悠、前に持っていたって言っていた工具箱を見せてくれ。」
「……ああ、これのこと?」
話の筋が分からないまま、工具箱を出す。
ピカチュウはそれを手に取り、箱を開けるかと思いきや、側面に注目する。
「二人共ここに描いてある絵、見覚えないか?」
「それは……!!」
ドーム型の頭に、そこから二つ見えるアイセンサー。
顔だけしか描かれてないが、紛れもなくつい先程悠達が戦ったロボの絵だった。
「それと、この横に書いてある『L』って文字、恐らく持ち主のイニシャルだな。」
「そういうことか!!」
「この持ち主の『L』って人物を見つけたら、あのロボットをどうにか出来るんじゃないか?」
ピカチュウもロボのおかしな様子や支離滅裂な言動を観察して、結論を出していた。
あのロボも、凶暴化させられたポケモンのように、誰かに何らかの手段でおかしくされている。
「名簿から見ると、『L』の人物はこの辺りにいるわ。苗字か名前か分からないけど……。」
ティファが名簿に線を引いていく。
「リーバル、リボルバー・オセロット、リンク、ルッカ、レオナール、レオン・S・ケネディ、……こんなところね。」
「でもこの工具箱の持ち主が偽名だったり、既に死んでいたらどうするんだ?」
実際に先程ティファが引いた線の中で、レオン・S・ケネディとレオナールは放送で呼ばれていた。
それに、ハンター、魔王と、称号らしき名前もある。
悠の世界での直斗やクマ、りせのように参加していない可能性も加味しなければならない。
「その時はその時だ。この工具箱の持ち主を探すことは、他のヤツを探すのと一緒に出来るだろ。」
確かに、悠にとっても、ピカチュウにとっても、情報が少なすぎる。
首輪を解除するにも、ロボを助けるにも、強力なマーダーを退治するにも、他の参加者との接触が必要だろう。
「さて、そうと決まったら出発だな。悠、その杖を貸してくれ。」
「いいけど、何に使うんだ?」
ピカチュウは工具箱を悠に返し、代わりに女神の杖を借りる。
杖を垂直に立て、わくわくした顔でピカチュウはこう言った。
「これが倒れた方向…「この近くにある学校へ行きたいな。」
「知っている場所があるなら、先に言ってくれよ……。」
ピカチュウは少しシワっとした、落ち込んだ顔を見せた。
少し悠は悪いことをしたかな、と感じた。
「ポカ!!ポカブー!!」
「そうだな。ポカブの主人も見つけてやらねえと。」
ピカチュウに分けてもらったサンドウィッチを食べて、やる気を見せるポカブだが、一度モンスターボールに戻った。
「それじゃ、改めてよろしくね。」
ティファもそこに同行する。
■
我は汝……、汝は我……
汝、新たなる絆を見出したり……
絆は即ち、まことを知る一歩なり
汝、”戦車”のペルソナを生み出せし時、
我ら、更なる力の祝福を与えん……
【D-5/市街地 (空き家)/一日目 朝】
【鳴上悠@ペルソナ4】
[状態]:ダメージ(小) SP消費(中)
[装備]:女神の杖@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて
[道具]:基本支給品、ルッカの工具箱@クロノ・トリガー
[思考・状況]
基本行動方針:リーダーとして相応しい行動をする。
1.八十神高校へ行く。
2.自分とティファの仲間、そして工具箱に書かれた『L』を探す。
3.完二の意志を継ぐ。
※事件解決後、バスに乗り込んだ直後からの参戦です。
※ピカチュウと絆を深めたことで"星"のペルソナを発現しました。『ネコショウグン』以外の星のペルソナを扱えるかどうかは以降の書き手さんにお任せします。
※誰とも特別な関係(恋人)ではありません。
※全ステータスMAXの状態です。
※ティファからマテリアのことを聞きました。
【ピカチュウ@名探偵ピカチュウ】
[状態]:健康
[装備]:モンスターボール(ポカブ)@ポケットモンスター ブラック・ホワイト
[道具]:基本支給品、ランダム支給品(確認済み、1~3個)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを止める。
1.八十神高校へ行く。
2.悠とティファの仲間、そして工具箱に書かれた『L』、ポカブのパートナーを探す。
※本編終了後からの参戦です。
※電気技は基本使えません。
※ティファからマテリアのこと、悠からペルソナのことを聞きました。
【ティファ・ロックハート@FF7】
[状態]:ダメージ(小) 脚に怪我(走るのにやや難あり)
[装備]: パワー手袋@クロノトリガー+マテリア・スピード(マテリアレベル3)@FF7
[道具]:基本支給品、ランダム支給品(0~1個)
[思考・状況]
基本行動方針:マーダーから参加者を救う
1.八十神高校へ向かう。
2.自分と鳴上悠の仲間、そして工具箱に書かれた『L』を探す。
3.仲間を集めて、セフィロスを倒す。
※ED後からの参戦です。
※ティファ・ロックハートのコミュニティ属性は"戦車"です。
※悠からペルソナのことを聞きました。
【支給モンスター状態表】
【ポカポカ(ポカブ ♂)@ポケットモンスター ブラック・ホワイト】
[状態]:健康 満腹
[特性]:もうか
[持ち物]:なし
[わざ]:たいあたり、しっぽをふる、ひのこ
[思考・状況]
基本行動方針:ベルを探す
1.ピカチュウ達について行き、ベルを探す。
2.強くなってベルを喜ばせたい。
最終更新:2025年01月04日 06:39