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がんばれエルルゥさん ◆Ok1sMSayUQ




「なんじゃオノレはー! ケンカ売っとんのかああー!? あたしの尻に三点バーストブチかました感想はぁ!?」

 ずい、と機関銃を鼻先に押し付けるユイ。
 強行インタヴューのような映像だったが、突きつけているのはマイクではなく銃である。
 とっても危ない光景だったが、銃の存在など知識の中にないエルルゥはひたすら困惑するばかりだった。

「あー、えーと」

 というより、どうしてこうなっているのか分かっていなかった。
 とにかく落ち着かせなければならない。そう考えた犯人エルルゥはにこやかに笑顔を浮かべた。

「ま、まあまあ。少し落ち着いて」
「落ち着けだー!? 乙女の尻にグサリと元気一発やらかしといて落ち着いていられるかー!」
「診てあげましょうか? わたしこう見えても薬師なんです」

 刺すまでの記憶がないエルルゥは自らのやったことについてとことん自覚がなかった。

「医者で済めば警察はいらんわぁ!」

 エルルゥは困り果てた顔をした。
 全くもって落ち着きのない患者である。
 ぐるるる、と殺気だった目を向けるユイ。
 悪魔のしっぽもピンピン動いている。
 エルルゥは閃いた。

「ほーらほらほら、こわくないよー」
「あたしゃケモノか何かかー! つーかあんたの方がケダモノだー!」
「な、な! わたしのどこがケダモノなんですか!」
「その耳と尻尾に決まってんだろうがぁ!」
「普通です!」
「普通じゃねー!」

 キー! とヤマザルもかくやの奇声をあげてユイが飛び掛っていた。
 悲鳴をあげるも遅く、わしゃわしゃと耳と尻尾をなでなでさわさわされる。

「あ、やだ、ちょ、ひゃんっ!」
「ほら、ええのんか? ここがえーのんかー?」
「ふぁぁ、く、くすぐった……やっ」

 一昔前のエロ親父を彷彿とさせる仕草でテクニカルに攻め立てるテクニシャンユイ。
 耳をぱたぱたと動かし、逃れようと尻尾を振るも執拗に撫で回すユイの指テクから逃れられない。
 顔を紅潮させ、腰を艶美にくねらせるエルルゥの姿は世の中の男性諸君を総立ちにさせること請け合いの光景であった。

「お前、何やってる!」

 そんなサービスシーンは突如閉幕と相成った。
 ユイとエルルゥの後ろ。森の切れ目、道となっている場所に、三人の男女が並んでいる。
 水戸黄門を彷彿とさせる彼らの正体は、千堂和樹と姫百合瑠璃と西園美魚である。
 道を歩いていた彼らの耳に嬌声が聞こえていたのだ。
 女性二名はあらぬ光景を想像し赤面し、男性一名は生唾を飲み込みつつ現場に向かった。
 すると、何やら小悪魔を思わせる風情の女子が銃を片手に女性を襲っているではないか。
 不埒な想像を吹き飛ばし、和樹は正義の鉄槌である槍を掲げたのである。
 呆然としたのは、ユイとエルルゥの二人である。
 顔を見合わせ、なんでこんなことをしていたのか視線で会話する。

 アンタぁ、なんでセクハラしとんねん。
 ノリと勢いや。

 そんなことが説明できるはずがなかった。
 とにもかくにも思ったのは、ユイが悪者扱いされているという事実である。
 エルルゥはこの窮地を救わねばならないと思った。
 何が悪かったのかは全く持って不明だが、とにかくなんとかしなければ。

「あわわわわどどどどどうしようお姉さんあたしヴィラン大悪党になってる!」
「落ち着いて。同じ人の子です。まずはわたしから離れて、状況の説明を」
「やばいやばいあーあたしの人生オワター! 真っ逆さまー! ごめんよばっちゃんー!」
「あの、少し黙っ……」
「ああさようなら人生こんにちは天国いやもうあたしゃ人生にサヨウナラしてるけどさぁ」

 混乱のあまりか、銃をぶんぶんと突きつけるユイだったが、エルルゥは眉間を険しくしていた。
 意味が分からない。そしてうるさい。
 黙らせるしかないと判断したエルルゥは再び伝家の宝刀を手に持った。

「えいっ」

 ぷすっ。

「みぎゃーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」

 悲鳴が森を震わせた。
 三叉の鋭いフォークがユイの尻をストライク。
 ビビったのは三人の方である。

「なななななな何すんじゃゴラァーーーーーーッ!!!」
「うるさい」
「はい」

 ドスの利かせた声で一喝してやると、ユイは涙目で頷いた。
 なんでこんなことになってるんだろうという疑問がユイの中を駆け巡っていた。

「コホン。それで、ええと」

 三人の方に向き直るエルルゥ。
 だが、三人は警戒の度合いを強めていた。
 それもそうだろう。銃を突きつけていたかと思えば今度はフォークで尻を刺されたのである。
 その上ワケの分からない会話の応酬である。
 ひょっとしたら、恐怖のあまり気がおかしくなってしまった二人組ではないかという疑いさえ抱いていたのだ。
 最初のころの和樹ならともかく、今は守るべき二人がいた。加えての銃の存在。それが警戒心を煽り立て、敵対心へと変えたのだった。
 ユイとエルルゥにしてみればノリ会話と突っ込みに過ぎなかったのだが、そんな心情を理解できる者などいないだろう。
 そして一度抱いた敵対心は、消えることはない。

「来るな……」

 そういうわけで、和樹は女性二人を庇いつつ槍の先をエルルゥに向けていた。
 ギラリと光る金属の刃が危険なきらめきを放っている。
 エルルゥはとっても困った。というか、なんで誤解されているのかすら分からなかった。
 一歩近づく。三人が下がる。もう一歩。下がられる。
 にこっと笑った。ひっと女性陣が悲鳴を上げた。

「なんでー!?」
「っ、このっ、近づかんといて!」

 お団子頭の女の子、珊瑚が懐から何かを取り出して投げた。
 それは衝撃によって作動する発煙筒である。
 一瞬のうちにモクモクと煙が立ち上り、エルルゥの目を刺激した。

「あっ!? うっ、ゴホッ!」

 煙が沁み、目を開けていられなくなる。
 若干の催涙成分を含んだ煙に、動物的な敏感さを誇るエルルゥは耐えられなかった。
 たまらず、その場に崩れ落ちる。

「ゲホゲホ! ちょ、アンタ、しっかりしろー!」

 同じように咳き込みつつも、ユイが駆け寄ってエルルゥを引っ張り上げ、煙の外へと誘導する。
 和樹ら三人は既に逃げ去っていたようだった。
 何が、どうして、こうなってしまったのか。

「うぅ……ど、どうして……」
「……ごめん、あたしがセクハラしたから」
「ああ、いえ、わたしがぷすっとやっちゃったから……」

 そして、二人は思った。
 ノリと勢いで行動するのはやめよう、と。
 ようやく冷静になり、教訓を得るのに払った犠牲は、誤解という火種だった。




 【時間:1日目午後2時30分ごろ】
 【場所:G-5】

エルルゥ
 【持ち物:銀のフォーク、水・食料一日分】
 【状況:健康】

ユイ
 【持ち物:UZI、予備マガジン*5、水・食料一日分】
 【状況:尻にフォーク】 

千堂和樹
 【持ち物:槍(サンライトハート)水・食料一日分】
 【状況:健康】

姫百合珊瑚
 【持ち物:発炎筒×2、水・食料一日分】
 【状況:健康】

西園美魚
 【持ち物:不明支給品、水・食料一日分】
 【状況:健康】



059:少年と狐のポルカ 時系列順 063:この身の全ては亡き友のために
060:アンダードッグ 投下順 062:森の出会い
018:みなぎれエルルゥさん エルルゥ 107:ガン×ソード GUN SWORD
ユイ
036:小さなブリリアント 千堂和樹 102:真っ直ぐに駆け抜けて/温かい思いで導いて
姫百合珊瑚
西園美魚


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最終更新:2011年09月03日 11:17