掌編・父帰る

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haputea

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―ロシア発日本行きの船の中―


セルゲイ「……ふむ、後三時間で日本か……」


セルゲイは日本に残して来た一人娘の事を想っていた。

血は繋がっていないが、実の子と同様に可愛がってきた娘、ソーマ・ピーリスの事を。

日本では盆休みに入っているのを知り、セルゲイは休みを取ったのである。

一人娘の顔を見る為に―――


セルゲイ「ふっ……夜の海は不気味だな……」

女の子「おじちゃん、どうしたの?」


彼のいるフロアはタコ部屋の為、様々な人間がひしめいていた。

その中の一人、小さな女の子が窓際で座り佇むセルゲイに話しかける。


セルゲイ「ん……お嬢ちゃん、知らない人に簡単に話し掛けてはいけないぞ?
     もしおじちゃんがワルーい人だったらどうするんだい?」

女の子「おじちゃんは悪い人じゃなさそうなのー」


そう言うとにぱっと笑顔を見せた。

そこに彼は娘の面影を見た。


セルゲイ「ふっ……幼少の頃はこのような笑顔だったろうな」

女の子「?」

セルゲイ「こっちの話だよ。……それで、どうしたんだい?」

女の子「海を見てるから気になったの。真っ黒でなにもないよ?」

セルゲイ「不気味だと思っていたのだよ」

女の子「不気味?」

セルゲイ「そう。漆黒の闇……船のライトだけが頼りの航海……
     まるで闇に取り込まれ、絶望に……おっと」

女の子「??」

セルゲイ「お嬢ちゃんにはちょっと難しかったかな?」


そう言うと女の子の頭を優しく撫でた。彼女はエヘヘ、と笑うと両親らしき者達の所に走り去る。

彼らの会釈に会釈で返し、娘とどのような会話を交わそうか、どこに行こうか、何をしようか、彼は思案を巡らしながら眠りに落ちていった。



アンドレイ「父さん……実の息子のこともたまには…思い出してくれよ…」


セルゲイ「もちろん忘れていないとも、………えーっと………」

アンドレイ「ア ン ド レ イです。あなたの息子の(フルフル」



セルゲイ「そう怒るな、ジョークだよ」

小熊「ジョークにも程度があります!」

セルゲイ「やはり男親というものは娘が可愛いものなのだ。お前もいつか分かる」

小熊「それは分かります。母親はその反対らしいですね」

セルゲイ「うむ。ウォッカを買ってきてある。あの子が眠ってから飲(や)ろうではないか」

小熊「はい、楽しみにしています」

セルゲイ「所で、あの子は家にいるのかね?」

小熊「まだ休みのはずですよ。私はちょっと用があるので……夕方に会いましょう」

セルゲイ「あぁ、又後でな」



セルゲイ「あぁ、そうだ。ちょっと待ってくれ、アンドレイ」

アンドレイ「何ですか、父さん」

セルゲイ「…あの子と彼…アレルヤ君はどうなんだ?」

アンドレイ「とても仲良いように見えますけど?」

セルゲイ「う、うむ、そうか……いや、まだ安心できん。
     彼は良い青年ではあるが電波的な変態であるしな…
     そんな一緒にいると迷惑かけそうな奴にはまだまだ……」

アンドレイ「…最近はどちらかというと逆ですけどね(ボソッ」

セルゲイ「ん? 何か言ったか?」

アンドレイ「いえ、別に」

セルゲイ「そうか。時間を取らせてすまなかった……重ねてすまんが、後一ついいかね?」

アンドレイ「何でしょう?」

セルゲイ「お前もそろそろ良い人を…」

アンドレイ「劇場版に期待して下さい。では私はこれで!」



セルゲイ「んふぅ…重い……こんな時間になってしまったか」

『ソーマ・ピーリス、アレルヤ・ハプティズム』

セルゲイ「ここだったな……ポチッとな」


クマ~クマ~~ン

ソーマ「ん…こんな時間に誰だ?」

アレルヤ「マリナさんかな?」

ソーマ「私が出る」

ぱたぱたぱた

ソーマ「はい、ソー……」

セルゲイ「久しぶりだな、中尉。いや…ソーマ」

ソーマ「大……いえ、お父様……」

感激のあまり口に手を当て、涙するソーマ。
セルゲイは苦笑いしながら慰め、中に入る。

アレルヤ「た、大佐!?ご無沙汰しております!ビシッ」

セルゲイ「あぁ、かまわんよ。今日はセルゲイ大佐ではなく、セルゲイパパとして来たのだからな」

ソーマ「所で……父様、そのお荷物には一体何が……?」

セルゲイの背負っていたリュックはパンパンに膨らんでいた。
これ以上詰め込むと破れそうなぐらいに、である。

セルゲイ「あぁ…土産だ」

ソーマ「土産?お気を使われなくとも……」

セルゲイ「コミケでソーマの好きなサークルの新作を買ってきておいた。
     今日は一日家にいる、とあれ(小熊)から聞いていたのでな」

ドサッ

ソーマ「まぁ…ありがとうございます!マリーも喜びます」

セルゲイ「それは重畳。所で、新鋭のサークルが出ていたので買ってきておいた」

ソーマ「どのような作品ですか?」

セルゲイ「うむ。題材は……」

アレルヤ「な、何だか壁が出来てしまった気がするよ、マリ~~~!!!」


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