ハルヒと親父 @ wiki

親父抜きの大晦日その後^3

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 おれとハルヒは、日付と年が変わるのを待つというより、むしろ迎え撃つように、お重に入り切らなかった和洋中のおせちを、互いに競い合って腹に詰め込んだ。
 箸と箸でつばぜり合いを演じているうちに、どこかこの近くの寺の鐘が108つをとっくに越えて突かれまくり、ようやく最後の鐘となったところで、主のいない涼宮家の電話が音をたてた。
「誰よ、こんな時間に?」
「当然、親父さんだろ?」
「あー、あいつなら、やりかねないわ」
 となおも箸を止めないおれたちのかわりに、ハルヒのお母さんが受話器を取った。もとい、スピーカーのスイッチを入れた。
「皆の衆、ハッピィ・ニュー・イヤー。なんだ、キョン、まだいるのか?」
「いちゃいけないっていうの? 話によっては相手になるわよ!」
年越しだ。過去の遺恨は水に流せ」
「正月早々、下水が詰まりまくりよ」
 どれだけ膨れ上がったか見当もつかない遺恨の方はさておき、
「では、改めて。あけましておめでとう。今年こそ、いい年だといいな、バカ娘」
「去年も、今年も、来年も、ずーっとあとまで、毎年がいい年よ、あたしは。 ね!」
 ハルヒ、電話の向こうとはいえ、親父さんの前で、そのアイ・コンタクトに応えろというのか。
「ね!!」
 わ、わかった。わかったから、まずフォークとナイフをテーブルに置けって。そんなもの人に向けるな。
「ああ、そうだな。……親父さん、明けましておめでとうございます」
「うむ。宇宙の命運はおまえにかかってるからな。今年は長門の映画もあるし、よろしく頼むぞ」
 いや、メタとはいえ、そのネタ振りは鬼門の上に長門で、しかも前門の虎、後門の狼では?
「有希の映画ってどういうこと!?」
 まてまて、ハルヒ。新年に入って、たった1分で暴れるな。
「キョン、前売り券は団員分、確保してあるんでしょうね?」
 そっちかよ!? この上、リアクションの取れないメタ・ネタをかぶせてくるな。収拾がつかん!
「舞台挨拶はどことどこ!?」
 だから、収拾がつかないんだって!!

「二人とも、そろそろ出なくていいの?」
 さすがは、ハルヒの母さん、ナイスなタイミングで助け舟を出してくれる。
「そうだわ。いくわよ、キョン!」
「じゃあ、親父さん、失礼します」
 電話の向こうに挨拶する。
「ああ、また、近いうちにな」
 何でもないようでいて、伏線めいた言葉を、親父さんは笑って言った。

 ハルヒとおれは、深夜の初詣をすませ(その間の出来事は、諸般の都合により割愛する)、再び涼宮家の前まで戻って来た。何故だか雪はすっかりやんでいて、星まで見える始末だ。ま、わるいことじゃないけどな。
「じゃあ、駅前に9時きっかりに集合だからね!」
 新年早々、SOS団は今年もそろって初詣ラリーである。
「わかってる」
「帰りはSOS団のみんなもうちに来てもらうわ。あたしたちだけじゃ食べ切れないもの」
「ああ、それがいいな」
 でないと食べ切れんし、もったいないお化けが出る。

 「きょんくーん、おそーい」
 妹め。年越しとはいえ、午前2時を回ってるぞ。
「遅いのはおまえだ。いつまで起きてるんだ? 明日の集合に寝坊しても、置いてくぞ」
「だって、キョン君に『おめでとう』って言わないと」
 妹よ、なんと殊勝な心がけだ。
「むにゃむにゃ……でよかったね、おめでとう、キョン君」
 何だって? 何がよかったんだ?
「だから、むにゃむにゃ……だよ! もう、新年早々、すごいふぃるたー!」
 なにしろ新年だからな。明日は早い。世間的には普通だが、あいつらに世間の常識は通用しないからな。早く寝ろよ。無論、おれも寝る。
 「うん、おやすみ、キョン君。おいてっちゃお仕置きだよ」














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