ようこそ、“観測都市”へ。並行世界より招かれた諸君。私の名は、ルイ・サイファー。とある手法を用いて、今君たちの脳内に語りかけている。私にも時間がないものでね、早速で悪いが本題に入らせてもらおうか。君たちをこの世界に招いた理由はたったの一つでね──────
君たちを見たい、そうだね、言うなれば“観測”したいのだよ。元の世界に戻りたいのか、それともこの世界で自らの欲を満たすのか、それとも……といった具合にね。
どちらにせよ、この世界で生き延びることができるのならば、何れ私達は顔を合わせるかもしれない。その時を、私は楽しみにしているよ。では、また。
【接続が中断されました】
◇◇◇◇◇◇◇
「もう、いいの?」
「ああ。彼らへの宣告はこのくらいで大丈夫だろう。手伝って貰ってすまないね」
“観測都市”、正式名称を並行世界観測都市。壁に包まれた都市部と壁のそとのスラム街で構成された、貧富の格差が激しい、そんな都市。
その都市全体を唯一、臨むことのできるランドマークタワー。その展望デッキに一組の男女が立っていた。本来であれば客で賑わうはずのそこは、今や閑散としていて、ただ静かだった。それも、その筈。時計の針は既に深夜0時を回っていて、展望デッキに備え付けれた窓ガラスから見える景色も既に暗闇に包まれている。ランドマークタワーが一般に開放されるのは午前6時から午後の9時まで。それ以降は従業員達も明日への準備を済ませ次第、直ぐに帰宅する。故に、その九時から大幅に時間の経った深夜の今は人が存在しないはずだ。ならば、彼らは不法侵入を犯したのだろうか、と言えば、それも考えがたい。展望デッキへと続く道のりは非常階段、及びエレベーターだけである。非常階段から潜入しようにもそこには監視カメラがあり、エレベーターも、電力が切られて使うことができない。
その都市全体を唯一、臨むことのできるランドマークタワー。その展望デッキに一組の男女が立っていた。本来であれば客で賑わうはずのそこは、今や閑散としていて、ただ静かだった。それも、その筈。時計の針は既に深夜0時を回っていて、展望デッキに備え付けれた窓ガラスから見える景色も既に暗闇に包まれている。ランドマークタワーが一般に開放されるのは午前6時から午後の9時まで。それ以降は従業員達も明日への準備を済ませ次第、直ぐに帰宅する。故に、その九時から大幅に時間の経った深夜の今は人が存在しないはずだ。ならば、彼らは不法侵入を犯したのだろうか、と言えば、それも考えがたい。展望デッキへと続く道のりは非常階段、及びエレベーターだけである。非常階段から潜入しようにもそこには監視カメラがあり、エレベーターも、電力が切られて使うことができない。
で、あるならば、この場で悠々と窓を眺めるこの、二人とは?心底愉しそうに窓の景色を堪能しているこの男は?そこから一歩後ろで、男の様子を観察するように見ている、少女とは?
「実に、面白い」
男が、口を開いた。青みかがった黒スーツに黄色いネクタイを締めた、金髪の紳士。その声音からは、滲み出る愉悦が十分に感じ取れる、浮ついたものだ。事実、男は深い笑みを湛えながら、眼下に広がる夜景を満喫していた。これだけならば、どこぞの外国人旅行者ともとれる佇まいを、しかしその笑顔が否定している。悪魔的な、笑みだった。どこが異常か、と問われると、その説明は難しいところだ。なにせ、表情は普通の人間のそれなのだから。薄っすらと持ち上げられた口角も、細められた目も。しかし、対峙した者にこそ伝わる人外の気、有り体に言えば、オーラ、雰囲気、凄味………といった言葉が当てはまるのではあるまいか。そういったものが、往来の只人と一線を画していた。
「え?何が面白いの?」
そう、悪魔じみた笑みを浮かべる男に問うのは、少女だ。まるで、アイドルのような、可憐で美しいその身体を際立たせるような装いをしている。もしも今の時刻が昼頃であるならば、すわテレビの撮影か、ライブでもあるのか、と万人が期待するほど、ウェディングドレスとも見紛う白色で統一された華やかな衣装が似合っていた。そんな少女の声は、透き通るような真水の如き清廉さを伴って音を乗せている。彼女が来ているその衣装とも相まって、歌姫、という印象が色濃い。
「μ。君は、この世界を見て、どう思う」
まるで、十歳にも満たない幼子のような、無垢な瞳を宿した少女に男は問う。『μ』とその名を呼ばれた少女は、とてとて、と可愛らしい足音と共に窓際へ歩み寄る。
「ここにいられて、私はすごく嬉しいよ。だってここには、みんながいるから。みんなを、幸せにできるから……」
目を輝かせながら、μは言った。男は、その言葉を咀嚼するように、一人で何度も頷く。相も変わらず、悪魔じみた笑みを絶やさない。
μは、知らないのだ。眼下に映るスラム街の存在を。壁に包まれたこの都市部の外側は、灯りすらない暗闇に包まれた不幸と死の温床であるということを。
「ねえ、ルイ」
「なんだい?μ」
「私はルイを、幸せにできてる?」
「ああ。もちろんだとも」
「みんなも、幸せにできる?」
「当然。しかしそれには、君のその創世の女神たる能力だけではなく、君の優しさが必要だ。だが、それがもし弱さだとしても僕はそれを受け入れよう。安心したまえ」
悪魔じみた──────いや。正真正銘の悪魔である男、『ルイ・サイファー』、またの名を、大魔王『ルシファー』は、そんなμを見て、笑ったのだった。
未だ、夜は明けない。
未だ、夜は明けない。
【E─2・ランドマークタワー展望テラス/ルイ・サイファー(真・女神転生)/一日目・午前0:00】
【E─2・ランドマークタワー展望テラス/μ(Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-)/一日目・午前0:00】
【E─2・ランドマークタワー展望テラス/μ(Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-)/一日目・午前0:00】
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