『新田さんに憧れて~マジヤベーぜ!!』
鶏冠頭のツンツン金髪。
常にメンチを切り続けるその目はギョロギョロと。
何よりも特徴的なのは彼の口を覆い隠すマスク。
そのマスクにはでかでかと『殺』の文字が刻印されており、町中で出逢うものなら絶対目を合わせちゃいけない、そんな凶暴さの格好であった。
その男、凶暴につき────。
殺人ニワトリ(本名:山中 藤次郎)は、怖いもの知らずのヤンキー。
例え、相手がスジ者だろうとおまわりだろうと、気に食わない相手には容赦なく鉄拳を突きつける男。それが彼だ。
停学三回、補導歴無数……、後先考えず喧嘩に明け暮れる殺人ニワトリは狂犬と評すべきか、バカと評すべきか。
どちらにせよ、関わるべきでない人間であることは間違いない。
ただ、そんな彼にも一人。
心の底から畏怖する『男』が存在する。
「やっべー……。やべぇーぜ……、まじやべぇって………。マジ…!!!」
──毒蛇、鷹を前にして肉と化す。
圧倒的力の序列ゆえに、不良の殺人ニワトリでも臆することしかできないそんな男が、今。
「やべぇ……。何がやべぇって……、…とにかくやばすぎるんだよっ!!! ゴラァッ!!!」
この殺し合いに参加していることを、手元の紙でニワトリは確認した。
その『名前』を見た瞬間、全身を襲う寒気と震え。そして、殺気…。
ニワトリが顔中汗びっしょりに濡れ果てるのは、決して夏夜の熱さからではない。
理由づけとして、彼は今震えて震えて全身ガタガタと身震いしている。
名前──たった四文字のみだが、そいつが出す絶望的パワー、死のエナジーに屈して、恐怖に包まれたのだ。
「やべえ…………」
「な……、なぜあなた様が…………。ここに………」
「────新田義史……さんっ…………………っっ!!!」
異名『血と金と暴力に飢えた男』。新田義史。
人を殺すことなど耳糞を掘り出す感覚でしかなく、大金と女をゴミのように扱い、そして数々の『外道伝説』を噂される…──もはやカリスマの域に達した……闇の帝王。
名前を呼ぶことすら恐れ入る悪魔に、殺し合いをさせるとは。
どんな惨劇になるかなんて殺人ニワトリには、想像もできない。
「…まじやべえ。やばすぎるぜ……。こいつぁアよおっ!!!!」
従って、殺人ニワトリは注意喚起をすることとした。
渋谷の街にいる全参加者に向かって、注意を。
彼の右手に握られるは、支給品である拡声器────…。
ニワトリは恐かった。
「………新田さん……。許してくだせい…………」
行動に移したくなかった。
「……でも、このまま犠せい者が増える様を黙って見ることなんか………。俺のポリシーに反する………ッ!!!」
だが、自分がやらなきゃいけなかった。
「…俺はやるぞ…………。俺は、やるんだッ……………!!」
新田の魔の手から、参加者たちを逃がすために。
風吹き荒れるビルの屋上。
ふとバランスを崩せばそのまま転落死するくらいの風圧だったが、殺人ニワトリの『正義燃ゆる炎』はそれくらいじゃ消えなかった。
カチッ、と起動させた彼は、見上げりゃ広がるドーム状のバリアーへ、──いや、突き抜けて更に遥か上空の星空へ飛ばす勢いで。
拡声器の元、ニワトリの咆哮をあげるのだった────。
「みんなアァァァ────────!!!!!! 俺は殺人ニワトリだッ、聞いてくれエェェェェ────────ッッッ!!!!!!」
「『新田義史』って男に気をつけろ──────────────────ッッッッ!!!!!!!!!!!!」
「ヤツは間違いなくころしあいに乗っているッッ────……、いやそれどころか、殺人よりももっとやべぇことをするぞオオォ────────!!!!!!??」
「何をしでかすかは俺もわかんねぇー……。ただ、外患誘致罪以外のすべての犯罪をコンプリートした伝説のヤローだアァァァ────────!!!!!! 絶対に出くわすなアァァァ────────!!!!!!」
「今新田さんに会ってるやつは逃げろッッ!!!! 逃げろって!! マジで逃げろ、逃げろォ────────ッッ!!!!!!」
「ヤツと出くわしても闘うなッ!!! 家族ともども酷ぇ目に遭うぞッ??!!! …自分のためじゃねェー……、親や大切な仲間のために絶対に逃げろ!!!!!!!」
「…に、にに、新田さん……。無礼な真似を許してください…………。ただ……──、」
「この俺、山中藤次郎は……、絶対にアンタの好き勝手にはさせねェーぜ!!!!!! 分かったかァアアアアア───────ッッッ!!!!!!!!」
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
…カチンッ。
「よし……っ! これで安心だぜ!!」
「さーて、俺もボチボチころしあいするとすっかぁ!!! 優勝して母ちゃんに1000兆円プレゼントするぜ!!!! 超やべぇぜ!!!」
「ラリホオオォ────────!!!!!!」
ズダダダダダダダダダダダダダダダダ、ダダダダダダダダダダダンッ
…と。
サブマシンガンを無駄撃ちしながら、殺人ニワトリは屋上から飛び出ていく。
馬鹿の戯言とはいえ。
疑心暗鬼…、末には裏切りまでもある殺し合いにて、一ミリでも信用性の欠ける印象の人間は、捨牌を切るように簡単に追放される。
自分がいかに善人であるかを信用させ、仲間と強い結束を組み、そして理不尽を打破する。
それが、『バトル・ロワイアル』生還の鍵だ─────────。
【1日目/F2/雑居ビル/屋上/AM.01:36】
【殺人ニワトリ(山中藤次郎)@ヒナまつり】
【状態】健康
【装備】サブマシンガン
【道具】拡声器
【思考】基本:【マーダー】
1:優勝する
2:新田さん…すみませんん……!!
最終更新:2025年03月04日 23:11