『男たちは向かう』
ダックハント【DUCK HUNT!!】
ババババババババッ、バンッ!!!──────ドサリッ
ババババババババッ、バンッ!!!──────ドサリッ
カラスが一羽撃ち落とされ。
また、一羽。カラスの死骸が道路に落ちて行く。
ババババババババッ、バンッ!!!
────カカァッッ…!!!!
そしてまた、電線に泊まっていたカラスにも弾丸が命中する。
不幸中の幸いにも、そのカラスは右脚をぶち抜かれたのみで済んだのだが、
────ジリジリと痛みを堪えながら、恨みの込もった眼光で『狙撃手』の姿を捉えていく。
マシンガンを乱れ撃ちし、トサカ頭の金髪と『殺マスク』を揺らしながら走る──その狙撃手の姿を絶対に忘れまい………と。
「ハトが豆鉄砲を食らったかのような」
そんな比喩表現があるが、カラスが『ニワトリ』に殺されるという弱肉強食の逆転現象が起こった時であった。
──いや、カラスがニワトリを襲うものかは定かでないが。
ババババババババババババババババババババババッッッ
「はははははははははっ!!!! ぁははははははははははははっっ!!」
空に向かって支給武器をとにかく撃ちまくる男──殺人ニワトリ(本名 山中藤次郎)は、雄叫びを上げながら全力疾走に嵩じていた。
彼が走る理由、とは。────すなわちダチョウが走る理由と全く同じ。
特に何か考えがあるわけでもなく、とりあえず走り→撃ちを繰り返す。
一応、ニワトリも【マーダー】に決意を固めた男。とはいえ、拡声器使用後、宛もなくドタドタ走り回っていたのだが。
考えもなしにとにかく銃を撃ちまくっていたため、とうとう彼にも『行く宛』ができてしまった。
ババババババババババババババババババババババッッッ
────カスンッ、カスン…
「あっ!!! 畜生ッ!!! 弾切れしちまったぜ!!! マジヤベェ~~~」
マシンガンを放り捨て、彼が足を踏み入れた先はダイソー渋谷店。
ワンコインの力で、色んなものを幅広く────がキャッチコピーの百均ショップは、まさしくオールジャンルに色々な物が売られている。
その店で武器の補充でもしよう、と考えたのか。
ニワトリは売ってあった刃渡り15cmを手に取ると。
「おいゴラァッ!!! 店員出てこいやッ!!!! 客に会計待たせてンじゃねェ~ぞタコッ!!!!」
しーーん…………。
「チッ!!! なんだァ誰もいねェのか?!! ……仕方ねぇ。会計は出世払いとさせてもらうぜッ!!!! あばよっ!」
明るい店内からまた再び夜道へ。刃物一つ万引きして出て行った。
センター街にて、包丁を振り回し走り続ける凶悪面。
その目は完全に据わっており、もしも自分が彼に対面したとなったら心臓が震えそうになるものだが、それ程までの『絶対に関わっちゃいけない人間』が渋谷にいた。
風を切り裂くシャープなナイフ、そして猛猪突進が如くスピードを緩めない殺人ニワトリ。
人を切りたくて倒したくて仕方ない、という狂走ぶり故に、彼の被害者となる哀れな人間が現れないよう願うばかりである。
だが不運にも、殺人ニワトリの目の前にちょうど一人の男が歩いていた。
──しかも、こちらに背を向けて。隙だらけの様子で。
(うひょ~~っ!!! 超ラッキーだぜぇっ!!!!)
「殺し合いをしろ」と言われたからやりました。………と。
ただそれだけの理由で、スーツを着た背中に猛接近していく殺人ニワトリ。
彼に道徳心や倫理観、または少しでも頭が働かせる力があればこのような凶行はしなかったのだが、そこは伊達に偏差値最下層『帝辺高校』在学生ではなかった。
ナイフの先を肉目掛けて突き立てると、──ザクリッ────。
「──ぐわっ…?!!!! がぁっ!!!」
被害者の悲痛かつ、スタッカートな叫びが響く。
が、そんなことなんか気にも留めず、包丁を引き抜いては再び──ザクリッ────。
更に攻撃を緩めることなく、今度は馬乗りになってザシュッ、ザシュッ────。
「うおおおおおおおぉおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおっ!!!!!!!!!!」
ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ、
ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ、
顔いっぱいに返り血を浴びても、服が生暖かくぐしょ濡れになっても、──男が力なく倒れ、滅多刺しの背中をピクつかせるのみになっても。
ニワトリは命一杯包丁を振るい続けていき…。
────唐突に動きを止める。
「思い知ったかッ!!! ヤンキー舐めンじゃねェぞゴラァッ!!!!」
アスファルトに血溜まりが伸びていき、生気を失った眼で地面を見続ける男……。
惨劇があまりにも唐突に一瞬で、始まり、そして終わった中。
ニワトリは勝利宣言が如く死体にガンを飛ばし。
「…まっ、てめぇの分も俺が責任取って長生きするから安心してくれ!!! じゃあなッ!!!!」
死体から刃物を抜き取って、その場を後にするのだった。
血塗れの狂人(バカ)が、次の獲物を求めて練り歩く………。
ギョロリ、ギョロリッ…と周囲を見渡しながら……………。
【残り65人────────────────……?】
…
……
………
立つ鳥跡を濁さず。
残された死体は無念のままただ風に吹かれるのみだった。
紹介しよう。
滅多刺しにされた男の名前は──堂下浩次。
利根川グループ屈指の熱血漢で、かつてはラグビー部キャプテンとして、魂をひたすら輝き続けた男……。
そんな堂下の顔を、背中を刺し続けた殺人ニワトリは見たこともない。
堂下がサングラスをかけていて、鍛え磨き上げられた肉体を持つことも知る由もない。
情報を全く知らない、恨みも何もない人間を、ニワトリは殺して亡き者にしてしまったのだ。
「母ちゃん…!! 待ってろよッ!!! 俺が願い事で100兆円お願いすっから……、今まで迷惑かけた分恩返しするからなっ!!!!」
死体に背を向け、真っ赤な刃物を振り回すニワトリ。
その隙だらけの背中ゆえに、彼は気づく由もなかった。
────死体の男がゆらりっ……と立ち上がることに。
────とどめを差し切った筈の、死体の男が。
「いいか………? 歯を…………っ、食いしばれっ………………!!!」
「…へ??」
スチャッ、とサングラスを直す音が背後から響く。
何ぞの音だ、とニワトリがふと後ろを振り返った時。
その時にはもう遅かった。
「俺は…………っ! 今から……、────お前を殴るっ…………………!!!!」
「えっ────」
ズッパアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァッッッッ────────────
えっ、
なにこの男……?!
なんでさっき殺したはずなのに生きてんだ……?!
いつの間にどうやって距離を縮めたんだ………?!
…との、疑問三連符が思いついた時は、既に殴られた直後のことだった。
振り向きざま襲ってきた男の拳。
砲丸投げを直に食らったようなその衝撃が猛スピードで走り、顔を歪まされる。
頬に拳がめり込み始めたコンマ一瞬。その瞬時にして、痛みを通り越した熱さが沸きたち、(あぁこれ内出血しただろなぁ)と殴打の度合いを把握してしまう。
「ぐっぎゃぎゃあぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」
──とはいえ、普段部活にて新田妹の酷すぎるシゴキを耐えてきたニワトリ。
首をグイッと衝撃のまま横に動かされたぐらいで、倒れたり転ぶことはなかったのだが。
血に足をしっかり二つ直立した上で、彼は目の前の『殴り者』に改めて驚愕の声をあげるのだった。
「あっ…??!! あァっ??!! て、てめぇ????!」
「…はぁ、はぁはぁ…………。ぐっ…………………!! はぁはぁ………」
赤い吐息を漏らしつつも、握り拳を固く作るその男──堂下浩次。
これは亡霊か、それとも幻なのか。
────答えは、現実。頬の痛みが、信じられない目の前を現実と教えてくれる。
なんで生きてんだコイツは…??
死者蘇生…??
それとも、心臓を刺し損ねたから…?? いや、人間じゃないのか……??
目の前の男が生きている理由を、ショートした頭で必死に考えるニワトリ。
考えることに神経を使ったためか、ポロリと右手からナイフが溢れてしまう。
訳がわからなかった。
何故だか泣きそうな気分になりそうだった。
ポロ、ポロポロ…
「ぐっ……………………!!」
「あぁっ??!!!」
────先に涙を溢したのは、何故だか目の前の男。堂下からだった。
「いいか。勘違いするなよっ………!!! 俺は別にっ…! お前が殺し合いに乗ったことを怒ってるんじゃないっ……………!!!」
「え、え、えっ、あぁ???」
「むしろ尊敬………っ!!! 褒め称えたいくらいっ………!! 夢に向かって行動に移したお前は……………、立派だっ…………!!」
「な、ナナナなななナナナ、なにが言いてェんだよッ??!! オヤジィ!!!」
堂下は泣いていた。
誇張とか比喩抜きで、湯気が沸き立つその熱い涙をポロポロ流していた。
耐えきれず、か。時折涙を袖で拭う堂下。
涙なんかよりも先に止めるべき体液…出血があるだろうとさすがのニワトリも思ったが、口にできなかった。
堂下の熱くて、暑くて、アツ過ぎるその眼差し。
そんなものをマンツーマンの対面でたっぷり浴びさせられているのだから、金縛りに似た直立不動しかできなくなっていたのだ。
「…ただ。俺がっ……。俺が怒ったのは、そのナイフ……………っ!!」
「え?」
「どうしてお前は武器に頼った…ッ!!! 答えろッ!!! 武器を使わなきゃいけない状況だったか────ッ!!? お前は武器を使わなきゃいけない程度の人間だったか────ッ?!! 違うだろっ、違うだろうがっ…………!!!!」
「え?? あ???」
「なぁ…違うだろうがっ………。お前は自分の肉体だけで闘える『勇漢』。…そうだろ、そうだろうがっ………。なんで諦めるんだよ、そこで……………っ────」
“…いいか。”
“殴られた痛みなど三日で消えるっ。”
“だがな、武器なんかを使い、俺に殴られた…。その悔しさだけは絶対に忘れるなよ。”
…とかなんとか。恐らくそんなことを堂下は続けて言ったのだろうが、このときニワトリはあまり聞き取れなかった。
なぜ、俺はこいつに怒られているんだろう。
…そんな思いの中、半ば放心に刈られていたニワトリが最後に目にした光景は────…、
「もう一回殴るぞっ…………!! これは体罰じゃない………っ。お前のためだっ…………!!」
「……えっ?!」
「…いくぞっ………!! 歯を、食いしばれっ…………!!!」
涙ながらにもう一発。
頬へ向かってストレートを向ける……──熱血教師のようなサングラス男の拳だった。
ッ、パァァァァァァァァンッッッッ
◆
…
……
………
思えば、これまでの人生たくさん拳を浴びたものだった。
視界は真っ暗。
あのグラサン野郎に殴られて気絶しちまったのか……と、闇の中ニワトリは一人思考を続けた。
(一番古い記憶だと、酒臭ェ父ちゃんからぶん殴られて………)
(あとは顧問による体罰、体罰、体罰、体罰、体罰、体罰、体罰、体罰、体罰、体罰、体罰、体罰、体罰、体罰。痛みの絶えない毎日だったぜ………………)
(そんだけ毎日ぶん殴られた、俺なんだが…………。なんなんだ、このっ…────)
(────『暖かみ』のあった……拳はっ…………? こんなに熱い拳を食らったのは、…初めてだぜ……………………)
(……畜生っ。何言ってんだよ俺…………)
(自分でも何言ってんのかさっぱりだぜっ…………。畜生、糞っ………………)
(…だけどもよぉ……………)
(さっき俺をぶん殴った──俺が殺したはずのアイツの拳は…それだけ…………)
(それだけっ…………!! 『魂』が籠もった……、温かみのある殴打………だったんだ………………っ)
(例えるなら、新田さんの作った弁当みてぇな、愛情感じる温かさ…っつうか)
(…例えるなら、小さい頃、俺が風邪を引いた時「ウイルスが死にますように…」と『殺マスク』を書いて作ってくれた母ちゃん……みてぇな)
(………そんな熱意を思い出させる、拳だったんだ………………………)
(そんな拳を今まで、一回も貰ったことなんかなかった………)
(なんでなんだっ………。なんでそう感じちゃうんだ……っ? 俺は……。俺は………………)
不意に、頬から冷たい感触が包みこまれる。
真っ暗な意識不明の洞窟から抜け出した先には──雪原。
雪のように白く明るい、眩しい『現実』が訪れて行き。
ニワトリはゆっくりと目を覚ました。
◆
………
……
…
「…あ?」
ハチ公公園のベンチにて、缶コーヒーを頬に当てられ意識を取り戻す殺人ニワトリ。
当然、隣にはコーヒーを当ててきた張本人が座っていることになるのだが。
そこには、自分をぶん殴ったあのサングラス男が、当然の如くいた。
──拡声器からガーガーッと叫び通しながら。
「三嶋瞳先生ェ──────ッ!!! 三嶋大先生ェ──────ッッ!!! 貴方様の書いた本、俺は…猛烈にっ感動しました!!!! 貴方様をお守りしまぁ──────すッ!!!」
「いやうっせぇぞオッサン!!!!」
「…あっ。…起きたか少年。悪いな、お前の拡声器…。勝手に使っちまってな……!!」
ニコリっとこちらに顔を向けるサングラス男──堂下。
気絶前までは怒りと涙で混ざりきった表情の奴だったが、打って変わって今は爽やかな笑顔。
太陽みたいに笑う、温かさのスマイルだった。
「………………………」
何故に、奴は笑っている。
いやそもそも、何故に奴はわざわざ自分をここまで運んできた。
いや更に深掘るなら、何故に奴は自分と席を共にしている………?
ふと視点を変えれば、粉々に大破したハチ公像も気になるところだが、寝起きということもありニワトリは思考することを難としていた。
痛む頬がアンパンマンのように腫れ上がる………。
「…お前、夢は…なんだ…………っ?」
「…あ? ……なんだよ…………」
背もたれに両手をかけ、グラサン男が不意に話しかけてくる。
夢…。夢……。
自分の、夢。
なんと返せばいいのか鳥頭故に熟考に費やしたが、ニワトリはとりあえず『殺し合いの褒美──願い事の内容』で答えることにした。
「100兆円手に入れて母ちゃんを楽にすんだよっ」
「……くくっ。はははっ…!! …いい目標だなっ」
「笑ってんじゃねェーー!!! 真剣なんだぞ俺はよォッ!!!」
「…いや勘違いするな! 別に馬鹿にしたつもりは………ないっ……………!!」
「あぁ?!」
二人並んで座ったベンチにて、グラサン男側の背もたれが真っ赤にペイントしていく。
痛みや出血による体調の変化…。それらを一切気にしない様子なのか、男はカシュ、とコーヒーを開け、天を見上げた。
「俺の夢はな……っ、ラグビー日本代表になることだったんだ。熱く体をぶつけ合い、魂を込めてトライする………っ。そんなスポーツに俺は憧れを持っていた…………」
「…あ?」
「…全てはお袋を喜ばせるために──なっ…………! 俺、母子家庭だったからお袋に人一倍愛情込められて育ち、…俺も人一倍お袋を愛していたんだ…………………っ。お前みたいに…な」
明かり乏しい真っ黒な公園
ブラックコーヒーが、黒ずくめの男の喉を流れていく。
一瞬(それ、俺の為のコーヒーじゃねーんだ…)と思うニワトリであったが、そんなツッコミは瞬時に頭から流れ去る。
「………………………」
堂下の『母の思い』から始まる語りは、どうやらニワトリの心内で何かが動いた様子。
淡々と語る男の話を、気付けば親身になって傍聴していた。
「ラグビーの名門T京大学にさ………。お袋は身を粉にして俺を入れてくれて──」
「──俺は嬉しさを感じると同時に…………っ。絶対恩返ししようっ、絶対頑張ろうっ、って決意したんだ……………っ!」
「……………おう」
「絶対に、絶対にっ…………って………──」
「──ただ、あの頃の俺は甘かったんだ………っ」
「あ? …なにがだよっ、おい」
「大学のラグビー部ときたら、なんというか…激流………っ! 高校の頃と比べものにならないくらい…キツさがあってな…………っ。苦しくて………っ。耐えるのもやっとな日々だった………………」
「…おう」
「だから、心的余裕が無かったんだろう………。ある日、お袋の弁当が異様にしょっぱくて、不味すぎて………。帰宅後、思わず俺は言いたい放題しちまったんだ……………っ。捌け口に…な………………っ」
「あ?? …おい自分の母ちゃんに何言いやがったんだてめえっ!?」
「……あの時の俺は、最低だった。言っちゃいけないことも吐いて、弁当作るな…つって。……「ごめんごめん」、と謝るお袋を無視して部屋に閉じこもった…………」
グラサン男は、瞼をゆっくり閉じて。
力なく、缶コーヒーを地面に落とした…。
「翌日家に帰ったら────お袋は倒れていて。脳梗塞でそのままいなくなったんだ…………………。永遠にな……………っ」
「…………………あぁっ……?!」
「あぁ、天国に。永遠に………なっ」
「…じゃ、じゃあ弁当が異様な不味さだった理由っつうのは……──…、」
「…ああ。無理して、作ってくれたんだよ。………無理して、俺の為に…………………っ」
「………………………………」
コーヒー缶が風に吹かれて、カラカラカラ……と道路へはみ出ていく。
「だからな。お前を見てるとな、そんな昔の俺を思い出して気が気でなくなったんだよ…………っ」
「…あ?」
「あの頃の俺を見てるようで………。どうにかしてやらねぇと…ってな………! だから、さっきは感情のままぶん殴ったんだ………っ! ──…悪いな。まだ頬痛むか?」
「…………………」
頬は確かに未だ痛かった。
殴られたダメージで奥歯が何本か逝った為、口内もヒリヒリする。
だが、そんな痛覚よりも………っ。
いや痛覚なんか気にさえしない………、今は………っ。
ニワトリは、頬の痛みよりも何よりも。
──目からこみ上げる熱い感覚の方に意識がいって、強く…熱く…震えざるを得なかった。
「…ぐううっ!! がぁっ……!! ひぐっ、ひぐ!!」
(────なんて、なんて切ない話なんだっ………。畜生っ……!!)
(……………しかもっ…………。いや、それよりもっ……………)
(すごくかっこいい………、凄すぎるぜ……………)
(何がかっこいいって…このグラサン男…………。俺があんだけ滅多刺しにしたっつうのにピンピンしてやがる………! いや、それどころか俺のことをこう親身に触れてきてくれるっ…………!!)
(その器量の大きさ……。そして、奴とシンパシーが感じた『母への愛』が……………深すぎて………………)
「ぐっ!!」
(あぁそうか……。俺が奴から殴られたとき感じた『温かみ』って、このことだったんだな…………っ!!)
「うっ、うっ、うぅっ……!!! があっ…………!!!」
(────漢の魂……………!!! すごい、すごすぎるぜっ!! おいっ!!!!!)
男泣き────っ。
グラサン男の語った内容は短く端的だった。
それも淡々と。話し終えるのに五分も掛からないものだった。
だが、その短い時間に込められた『母への愛』──。
そして『真の漢』としての熱い感情がニワトリの心を揺さぶって止まりを見せない。
男の熱意に負かされ、もはや頭が痛くなるくらいに…呼吸がし辛くなるくらいに…ニワトリは泣き晴らした。
地面に捨てられたコーヒー缶からもポロ、ポロと液が、零れ落ちる。
夏場だというのに、そのコーヒーはつめた~いではなく『あったか~い』。
熱い。あまりにも熱い温度だった。
「だからな…。…One team────っ!!」
「…うっ、うっ……!! えっ、な、なんだ……?」
「────俺に付いて来いっ………!! 少年めがっ…………!! …~だなんて、利根川先生風に言ってみたが………。いいよな?」
「………うっうっ…! あぁ…あぁっ!!」
ニコリッ、と肩を組んでくるグラサンの熱血漢。
もう一度だけ振り返ろう。
ニワトリを男として熱く接し、血濡れの彼を更生に導いた………この男の名前は────…、
「───俺は堂下浩次………!! よろしくなっ……………!!!」
「俺は殺人ニワトリ…っ!!!! 兄貴って呼ばせてください!! 兄さん…!!!!」
「あぁ!!! 弟よ、殺人ニワトリよっ………!!!」
────以上の通り、だ。
ニワトリと初対面時、握りしめられていた怒りの拳も、今や手のひら。
相手とその手のひらを合わせれば『掌〈たなごころ〉』となる。
ラグビー日本代表が南アフリカを打ち破った、あの年の男達の汗と涙と絆…。
それに匹敵するぐらいの大番狂わせが、このバトル・ロワイヤルにて引き起こせるのか、否か。
男たちは、向かう────。
カチッ
「三嶋大先生ェッ────!!!! 貴方様のことは、私堂下浩次と、殺人ニワトリが絶対に救いますッ────!!!! ノックオッ────ンッ!!!!」
「それと新田さん…、いや新田義史ッ────!!!! 俺と兄貴がお前なんかけちょんけちょんのやべぇ~ことにしてやるから覚悟しろやゴラァッ────!!!!」
「そうだッ────!!!! 新田ァッ────!!!! ニワトリから聞いたぞっ…!! 金髪にオールバックでヤクザみたいな風貌のお前ッ────!!!! お前には絶対負けない、負けないからなぁッ────!!!!」
「「うおっ…うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」」
「「三嶋瞳大先生、バンザァァァァァァァァァァァイイイイイイイッ!!!!!!! バンザァァァァァァァァァァァイ!!!!!!!」」
【1日目/A4/公園/AM.03:41】
【殺人ニワトリ(山中藤次郎)@ヒナまつり】
【状態】頬の腫れ(軽)
【装備】サブマシンガン
【道具】拡声器
【思考】基本:【対主催】
1:堂下アニキに一生ついていく!!
2:新田…ぶっ殺すぞっ!!
3:みしまひとみって誰だ?
【堂下浩次@中間管理禄トネガワ】
【状態】背中出血(大)
【装備】なし
【道具】本『私だから伝えたい ビジネスの極意』
【思考】基本:【対主催】
1:三嶋瞳大先生にお会いして、忠誠を誓う。
2:殺し合いを終わらせる。
3:never give up。ニワトリと共に最後まで諦めない……っ!
最終更新:2025年06月11日 20:06