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オープニング ◆w4Pq5j/FG.


 暗闇の中で彼等は目覚めた。
 重い体を起こし、靄がかかった様な思考のまま周囲を見回す。そして徐々に、自分がどれほど異様な状況に置かれているのかを理解していった。
 視界の隅々にまで広がるのは、何処とも知れぬ漆黒の世界。天も地も墨で塗り潰した様に真っ暗で、広さを窺い知ることも出来ない。ただ足の裏に当たる硬質な感覚が、“床”だけは存在すると示している。
 そんな光も差さぬ暗黒の中、不自然に浮かび上がるのは数十人の男女の姿。年齢や容貌は幅広く、少なくとも外見上の個性には殆ど統一性が無い。多くの者は戸惑いながらしきりに首を巡らし、脳裏に共通の疑問を浮かべる。

 ここは一体どこなのか? 
 自分は何故こんな所にいるのか?
 そして、身に覚えの無いこの首輪は何なのか?

 暫し困惑のざわめきが広がったが、答えは程無く明かされることとなった。
 もっとも、多くの者にとってそれは死神の宣告と同義ではあったが。

 突如としてスポットライトの様な一筋の光が走り、集団から離れた場所を照らし出した。数十人の視線が集まる中、白い詰襟のスーツを纏った男が現れる。

「皆様、お目覚めの様ですね」

 抑揚の無い声で話しだす男の顔には、うっすらと笑みが浮かんでいた。ただ筋肉を動かして表面を取り繕っただけの、感情を伴わない仮面の様な微笑。

「私の名は加頭順と申します。この度の企画にあたりまして、皆様をご案内する様に申し付けられた者です」

 その一礼に敬意や誠意を感じる者はいただろうか。

「本日、皆様にお集まり頂いたのは他でもありません。我々の提示するルールに従い、最後の一人になるまで殺し合いをして頂く為です」

 殺し合い。加頭はやはり何の感情の変化も見せないまま、淡々とその言葉を口にした。
 反応は様々だった。緊張に息を飲む者、己の耳を信じられず呆然とする者。戸惑うことなく彼の言葉を受け入れ、冷静に状況を見極めようとする者もいる。

「優勝された方にはどんな報酬でもお渡しする用意がございます。金銭や物品、名声や社会的地位、或いは人の命を……」
「ちょ、ちょっと待った!」

 そこで加頭の言葉を遮り、声があがった。学び舎の生徒の様に挙手しながら一人の青年が進み出る。

「何かご質問ですか、涼村さん」
「あのー、これってドッキリか何か? どっかにカメラあんの? 出来れば俺はひっかける側で、ちょちょっとお手伝い料とか貰えると嬉しいんだけど……」
「お、おい待て暁!」

 常と変わらぬヘラヘラした態度で加頭に話しかける暁を、背後から掴みかかる様にして速水克彦が止める。

「ドッキリにしちゃ手が込み過ぎてないか? この空間も何か妙だし、ダークザイドの仕業かも……!」
「大丈夫だって、ほらそこ、コスプレみたいなインチキ臭い奴らいるじゃん! それによく見りゃカワイイ女の子多いじゃないの、こりゃお色気系のドッキリかも……」
「なに考えてんだ、お前って奴は!」
「涼村さん」

 勝手にあれこれ言い合う二人に笑うでも怒るでもなく、それまでと変わらぬ顔で加頭は暁の名を呼んだ。

「これはドッキリやイタズラの企画ではありません。先ほど申し上げた通り、皆様には殺し合いをして頂きます。その内容に虚偽はありません」

 真正面から暁の顔を見据え、嘘や真実と言うよりも、ただ告げるべきことだけを告げる。ひどく硬質で無機的な威圧感に、暁も「……あ、そう?」とだけ言葉を返すしかなかった。

「どうやらその様だな」

 次に口を開いたのは、本郷猛だった。長く人類の自由と平和を守ってきた歴戦の英雄は、微塵の油断も無く加頭を見据えている。それは、彼が今まで戦ってきた巨悪に対するものと全く同じだった。
 そして本郷の隣りに並び立つのは、言うまでも無く一文字隼人。

「少なくとも俺の知ってる数人は、ただのテレビ局が集められる様な面子じゃないぜ。俺達が誰か知らないってことはないよな、加頭さん?」

 二人の改造人間から放たれる、射抜かんばかりの鋭い視線。だが加頭はそよ風でも受けているかの如く動じなかった。

「ええ、勿論存じております。仮面ライダー一号、本郷猛さん。仮面ライダー二号、一文字隼人さん」
「なら、俺達が黙って言いなりになると思うのか?」

 二人が上着の前を開くと、その腰に在るのは変身ベルト・タイフーン。加頭が何者であるにせよ、そしてこの場で何が起こるにせよ、彼等は即座に“仮面ライダー”としての姿を現し対応する構えだった。
 しかし伝説のダブルライダーを前に、加頭は落ち着き払って口を開く。

「皆様に着けさせて頂いた首輪にはお気付きですか?」

 何人かがハッと思い出した様に自身の喉に手を当てた。目覚めた時から嵌められていた、飾り気の無い無機質な首輪。

「これが何だってんだ? 俺達はペットだとでも言うつもりかよ」

 早乙女乱馬の嘲る口調に、しかし加頭はただ微笑を浮かべて答えた。

「それは、この様に使用するものです」

 ボン

 短い爆発音。直後に集団の中から真っ赤な噴水が吹き上がり、誰かの悲鳴が響き渡った。
 舞い散る鮮血の出所は、ぱっくりと抉られた三人の男の喉元。
 NEVERの一員、堂本剛三。テッカマンダガーことフリッツ。砂漠の使徒クモジャキー。
 一瞬で命を断たれた彼等は、重い音をたててその場に崩れ落ちた。死人兵士である堂本剛三の肉体は細胞分解により跡形もなく消え去り、クモジャキーの仮初の身体もまた“こころの花”と共に暗闇の中に消滅した。後には物言わぬフリッツの亡骸だけが残される。

「大変残念なことですが、今亡くなられた方々をご覧になって頂ければ、皆様の立場をご理解して頂けるかと思います」

 今しがたの惨劇は、恐らく彼の意思によって起こったものだろう。しかしそれが何ら感情を動かす出来事でも無いかの様に、加頭は淡々と述べた。

「この首輪には特別な爆弾が内臓されており、起爆すると確実に皆様を死に至らしめることが可能です。NEVERであろうと、砂漠の使徒であろうと、テッカマンであろうと。もちろん外道衆の方々も同様ですし、ソウルジェムにも同様の爆弾が取り付けられています。加えて申し上げますと、時間を止めている間に取り外すことも不可能です。時間操作の影響を受けずに作動するよう出来ていますから」

 その言葉を全て理解できた者はいないだろう。
 だが義憤に燃える男も、取り乱し涙を流す少女も、平然と惨劇を見据える魔人たちも、等しくある一つの事実を受け入れざるを得なかった。

 少なくとも今は、この男に逆らうことは出来ない。

「それでは改めて、今回の企画…… バトルロワイアルの説明をさせて頂きます」

 加頭は何事も無かったかの様に、事務的に説明を進めていった。

 “ゲーム”の舞台となる孤島。三日という制限時間。六時間毎の放送による死者と禁止エリアの発表。首輪の爆発条件。
 そして参加者に支給されるデイバックとその中身。この時、加頭はガイアメモリの力を自ら実演して見せた。

「……ご覧の通り、ガイアメモリを肉体に挿入することでドーパントと呼ばれる超人へと“変身”することが可能です」

 風都に関る者以外の多くが、ユートピア・ドーパントへと変じた加頭を驚愕の顔で見詰めていた。

「ただしメモリの能力は極めて多彩ですので、この場で一概に説明することは出来ませんが。手に入れた際は、ぜひ有効に活用して下さい」

 そこまで言うとすぐにメモリを排出し、今までと変わらぬ能面の如き微笑が現れる。

「そしてこれは先程、申し上げたことですが……」

 そこで僅かな間があった。機械さながらに喋り続けていた加頭が、この時は勿体ぶる様に一拍を置きながら、黙して聞き入るしかない六十余名をざっと見回した。

「優勝された方にはどんな報酬でもお渡しする用意がございます。金銭や物品、名声や社会的地位、或いは人の命を蘇らすことなども可能です。奇跡も魔法も、我々が実現して差し上げます」

 ごくりと、誰かが息を呑んだ。
 つい先刻、同じことを告げられた時には誰しもがまともに話を聞いていなかった。「殺し合い」という唐突な台詞の方に気を取られ、その後に加頭が語りかけた内容を脳裏に留めた者は少ない。
 だが今再び聞けば、その内容はまるで違って聞こえる様だった。加頭が「我々」と称する者達は、果たしてどれ程の力を持っているのだろうか。

「説明は以上となります。何かご質問のある方は……」
「聞かせてくれ!」

 加頭が言い終わるのを待たず、一人の青年が声をあげた。

「何でしょうか、孤門一輝さん」
「どうして僕達が選ばれた? 僕達が殺し合うことに何の意味があるんだ」

 強い眼差しで睨みつつも、孤門の声には震えがあった。その顔には怒りも悲しみも戸惑いも、様々な感情が宿っている様に見える。
 そして相対する加頭は無機物の如く感情を表さず、しかしきっぱりと答えた。

「それに関しては、お答えすることは出来ません」
「な……」
「ではこれより、皆様を会場の各所にお送り致します。健闘をお祈りします」

 孤門も、誰も口を挟む間は無かった。加頭がそこまで言い終えた直後、六十余名の参加者達は──フリッツの亡骸も含め──まるで始めからいなかったかの様に、一瞬で漆黒の世界から消え失せた。

「な、なんだ……!?」

 ただ一人、周りを見回しながら驚き戸惑う左翔太郎だけを除いて。

「それと、あなたには伝えておくことがあります」

 言いながら、加頭は足音も無くゆっくりと翔太郎に歩み寄る。状況を掴めぬまま咄嗟に身構える翔太郎に、彼は──それが極めて僅かであっても──初めて声に感情らしきものを宿し、告げた。

「あなたの相棒、園咲来人…… フィリップの身柄は我々が預かっています。あなたの“変身”に支障はありませんので、ご安心下さい」

 慇懃無礼な微笑の裏に見え隠れするのは、嘲笑。

「な…… 貴様、フィリップに何を……!」

 激高した翔太郎は加頭に詰め寄ろうとするが、伸ばした手が白い詰襟に触れることはなかった。一瞬の後には彼もまた他の参加者と同じ様に、忽然と姿を消していた。

 そして暗闇は静寂で満たされる。死する運命の者達は戦場に送り出され、加頭ただ一人が置物の様にぽつんと佇み、漆黒の世界を見据えていた。


【堂本剛三@仮面ライダーW  死亡】
【フリッツ@宇宙の騎士テッカマンブレード  死亡】
【クモジャキー@ハートキャッチプリキュア!  死亡】

【バトルロワイアル スタート  残り66人】


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最終更新:2012年10月31日 00:42