男と少女とオカマ 珍道中 ◆LuuKRM2PEg



「タカヤちゃんって言ったわよね……でも、Dボゥイってあだ名も素敵だわ~! ねえ、どっちで呼ぶのが良いかしら?」
「どっちでもいいが、ちゃん付けはやめろ」
「何よその態度! ……あ、もしかしてあなた照れてるでしょ!」
「何を言っている」
「うふふ、図星かしら! これが今流行のツンデレって奴ね……私、そういうの嫌いじゃないわ!」
「変なことを言うな!」

 鈴虫の鳴き声が周りに響く『E-9』エリアの道路にて、東せつなは思わず溜息を吐いた。もう何度目になるのか分からないコントみたいな男二人の交流にうんざりして。
 彼女はこの孤島に放り込まれてから幸か不幸か、すぐに他の男達二人と巡り合うことが出来た。
 赤いジャンパーを纏った無愛想な相羽タカヤ――いつもはDボゥイと呼ばれていたらしいが――という男と、黒い生地で出来た戦闘服に身を包んだ泉京水という男。彼らは無駄な戦いをするつもりはないらしく、問題なく行動を共に出来るかと思った。
 だが、それは間違い。京水は眩い笑みを浮かべながら、同性であるはずのタカヤに猛烈な恋のアタックを行っているのだ。
 泉京水とは、厳つくて屈強な外見とは裏腹にその喋り方は女性のそれで、所謂オカマと呼ぶべき人種であるとせつなは一瞬で気づく。

「やだあもう! そうやってマジメになってる顔もス・テ・キ!」
「いい加減にしろ、あんたは今の状況が分かってるのか!」
「こんな状況だからこそよ」

 うんざりしたような表情のタカヤの前で、京水は鮮やかなウインクをする。

「リラックス出来る時はきちんとリラックスしなくちゃ生き残れない! 想いを告げたいのなら告げられる時にきちんと告げる! これ、生きるための鉄則よ!」
「まあ、確かにそうかもしれないが……」
「そんな訳で、私はタカヤちゃんのことを好きになりマース!」
「何でそうなるんだ!?」
「DボゥイのDが意味するデンジャラスみたいに、私もデンジャラスになるわ!」
「人の話を聞け!」

 現状にはまるでそぐわない謎のハイテンションを発揮する京水に、タカヤはツッコミを入れた。京水の独特な理論にいまいちせつなはついて行けない。
 プリキュアになってから知り合ったカオルちゃんも掴み所がなかったが、ここまで無茶苦茶ではなかった気がする。
 もしも京水が本当に女だったら応援していたかもしれないが、彼は男。そういう趣味じゃないタカヤからすれば、男が男に求愛されても迷惑なだけだ。
 アカルンの力を使ってタカヤと一緒に逃げる方法もあるが、京水を一人にさせるわけにもいかない。今はプリキュアとして困ってる人を困った人から助ける。
 腹を括ったせつなは前に出た。

「えっと二人とも……ちょっと良いですか?」

 彼女は柔らかい笑顔を浮かべると、他の二人が振り向く。
 ここで無理に止めようとしても火に油を注ぐ結果になりかねないので、この場を空気を変えるには出来るだけ温和に進めなければならない。
 そう思ったせつなは道の向こう側から発せられる街の光に人差し指を向ける。

「とりあえず向こうにある街に行きませんか? こんな所よりもゆっくり出来そうな場所を見つけてから、話をした方がいいかもしれませんし」
「……そうだな、こんな所にずっといても何にもならない。早いところ移動しなければな」
「じゃあ、行きましょうか!」

 タカヤが頷くのを見たせつなは表情を明るくした。
 良かった、これで何とか喧嘩に繋がらなくなるかもしれない。少なくとも一箇所に留まって何もしないよりかは遥かにマシだった。
 友達との合流や殺し合いを阻止して誰も犠牲を出さず、みんながいつもの生活に戻れる第一歩目になる。
 と、せつなが思ったのもつかの間。

「ちょっとあなた、待ちなさいよ!」
「えっ?」
「なんで勝手に抜け駆けしようとしてるのよ!」
「……はい?」

 京水がいきなり鬼のような顔で迫りながら怒鳴ってきたので、せつなは面食らってしまう。

「タカヤちゃんは私が口説いてたのにそれを横から割り込んでくるなんて、なんて非常識なの!?」
「何の話ですか!?」
「何の話ですかじゃないわよ! 私の青春を邪魔しようとして、よくもそんな白々しい態度が取れるわね!」
「だから何を言って……」
「ムッキイイィィィィィィィィィッ! しらばっくれるとはいい度胸ね、この泥棒猫!」
「ど、泥棒猫!?」

 突然ヒステリックになった京水にせつなは反論することが出来なかった。
 一方的に攻め立てられただけでなくここまで言いがかりに近いレッテルまで貼られては、どう答えればいいのかまるで分からない。
 困惑しそうになった瞬間、二人の間にタカヤが割り込む。

「おいあんた、子ども相手に訳のわからない事を言うな!」
「むっ……」
「大体、あんたは仲間をあの男に殺されたんじゃないのか……それなのに、どうしてそんなヘラヘラ笑っていられる!?」

 不満げな態度を取る京水の胸倉をタカヤは勢いよく掴んで、刃物のような鋭い視線で睨み付けた。

「ちょっとタカヤさん、落ち着いて!」
「答えろ!」

 せつなの制止も空しく、タカヤの怒りは止まる気配を見せない。
 彼が怒る理由は見せしめにされた男達にあった。あの中の二人はタカヤと京水の知る人物で、フリッツ・フォン・ブラウンと堂本剛三という名らしい。
 フリッツはかつてタカヤと敵対関係にあって、タカヤは何故奴が生きているのか理解出来ないと語る。恐らく加頭の言う『死者をも蘇らせる』という言葉が真実であると証明する手段ではないかと京水は言うが、それでタカヤが行動を変えることはない。
 もう一人の犠牲者である堂本剛三は泉京水が所属する部隊の一員で、何度も共に死線を潜り抜けたという。だが京水は犠牲を悔やむ素振りを全く見せないのが、タカヤにとっては何よりも腹立たしかった。
 剣呑な態度で詰め寄るタカヤの手を京水は無言で払う。その顔は先程までの戯けたような雰囲気は一切感じられず、真剣そのものだった。

「彼の事は私だって悔しいわ。むかつく財団Xの連中をぶっ潰して、克己ちゃんと一緒に彼の事を仲間のみんなに言うつもりよ」
「なら、何故だ……」
「ここでいくら悲しんでたって、剛三ちゃんがいなくなった事実が変わる訳じゃないでしょ? あの子だって、もしも私がメソメソしてたら向こうで怒ってるはずだし……だから私は戦うのよ」

 京水の声は何処か寂しげな雰囲気も感じられる。
 もしかしたらタカヤへの態度は感傷を隠すための強がりなのかもしれない。死んでしまった人達がもう戻ってこないのは、誰だって知っている。彼らを思う事も大事だろうが、それよりも悲しみを乗り越えて明日を生きる事がもっと大事だ。
 私は京水の事を誤解していたのかもしれない。もしかしたら分かり合えるかもしれないと、せつなはそんな事を不意に考えた。

「京水さん……」
「それとあなた、もしかしたら勘違いしてるかもしれないから言っておくわ!」

 言葉をかけようとした矢先、京水はせつなに振り向く。

「言っておくけど、あなたからビンッビンッに感じられるのよ! ハチミツをぶっかけたケーキ以上の甘さがね!」
「え?」
「もしもあなたが邪魔になったり甘っちょろい事をちょっとでも言ったら、私はあなたの事を許さないからね! あとタカヤちゃんにちょっとでも色目を使ってごらんなさい、あなたを爆発させるから!」
「はぁ……」

 前言撤回、やはり京水の思考は理解出来なかった。言っている事自体は分かるがそれは少しだけで、ほとんどがどう答えればいいのか判断出来ず頷くしか出来ない。
 せつなが萎縮する一方で、タカヤは再び怒鳴りながら京水の前に出た。

「おいあんた、いい加減にしろ!」
「なによタカヤちゃん! 私はこの甘っちょろそうな子に厳しさを叩き込んでるのよ!」
「お前が言える立場か! それと、ちゃん付けはやめろと言ったはずだ!」
「もうやめてくださいー!」

 今にも殴り合いに発展しそうなタカヤと京水をせつなは落ち着かせようとするが、空気は悪くなる一方。
 まるで気が合いそうにない二人を見て、この先一体どうなるだろうと彼女は不安が芽生えた。


【1日目/未明】
【E-9/道路】
【東せつな@フレッシュプリキュア!】
[状態]:健康、困惑
[装備]:リンクルン@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3
基本:殺し合いには乗らない。
1:……どうしよう?
2:友達みんなを捜したい。
3:すぐ近くにある街に行きたいけど……
[備考]
※ラッキークローバーグランドフィナーレ習得後の参戦です。


【相羽タカヤ@宇宙の騎士テッカマンブレード】
[状態]:健康
[装備]:テッククリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:主催者を倒す。
1:何なんだこの男(京水)は……
2:京水を何とかしたい。
[備考]
※本編中盤以降からの参戦です。
※ブラスター化しているかどうかは後続の書き手さんにお任せします。


【泉京水@仮面ライダーW】
[状態]:健康
[装備]:T-2ルナメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:剛三ちゃんの仇を取るために財団Xの連中を潰す。
1:タカヤちゃんが気になる! 東せつなはどうでもいい。
2:克己ちゃんと合流したい。
[備考]
※具体的な参戦時期に関しては後続の書き手さんにお任せします。

【共通事項】
※三人ともまずは市街地に向かおうと考えています。


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東せつな Next:UNDER THE SKY
相羽タカヤ Next:UNDER THE SKY
泉京水 Next:UNDER THE SKY


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最終更新:2012年01月22日 13:09