燃え上がれ、凍てつけ
ウォーズマンは走らなければならない気がした。
なので走った、走った、セリヌンさんとかが領主に捕まっているわけではないけど。
この男、紛れも無く正義を礎に戦う正義超人。
そしてウォーズマンは運命の出会いを果たした。
それは、柔和な顔立ちの少年、
ロビンマスクがアリサと学生結婚でもしていたらこれくらいの子供がいただろう。
互いにわかった。
この男とは会うべくして会ったのだと。
時間とか自己紹介のやりとりとか、
そんなんすっ飛ばして二人は真にわかりあえた。
「そういうあなたはウォーズマン」
まあ、首輪をよーーーーく目を凝らせばふっつうに名前が書かれてたりするんだけど
そんなことはどうでもいい。
会ったばかりの二人は固い握手を交わした。
「さて、お前はこれからどうするつもりだ」
「えっ」
たが意思疎通は途端に暗礁に乗り上げた。
考えてみれば至極当然。
この少年はまだ年の頃、10にも満たない幼きトップアスリート。
「僕の魔球を完成させます」
「コーホー」
だがウォーズマンはロビンの意思をすぐさま汲み取り
満足気に頷いた。
この少年、只者ではない求道者。
その心に”アイジョウ”も”オモイヤリ”も”ヤサシサ”も希薄かもしれないが。
胸に滾ってやまない熱い情熱がある。
それは、時に暴走を招くこともあるだろうが。
その時、唐突にだがヒグマが現れた。
そのヒグマが纏っていたのはウォーズマンの師匠、
ロビンマスクの家宝であるアノアロの杖のような炎。
物質世界を創造せしセイファートの力を駆使する
リッド・ハーシェルの炎。
それを喰らい、我がものとするヒグマの焔はまさに脅威。
会って数秒で強固な絆で結ばれた二人に互いを見捨てるという選択肢など存在しない。
だが、見いだせぬはこの場を切り抜ける勝機。
元残虐超人と残虐ピッチャーと正義ピッチャーの間を彷徨うロビンには
このヒグマの隠す気のない狡猾さが奇妙な魅力にも見えていた。
「ぐ、ぐむ~~……!!」
気迫に負けかけたロビンがボールを握りしめ苦痛の音を漏らす。
その眼にはキング・跡部が遺した気高さが宿っていたと思うのだが
今はドス黒い残虐ピッチャーの卑劣さに汚され始めていた。
そんなロビンの前に進み出たのはウォーズマン。
「ウォーズ……」
機械超人のファイティングコンピュータが相手の隙を探さんと
フル稼働を始める! 普段はちょっと足りないんじゃねえかと思われることすらあるあるな
純朴な超人ウォーズマン。しかして、こと、戦いに関してはいかにもよく回る。
ファイティングポーズをとったウォーズマン。
紅い残影が彼の頭部へ唸りを上げて襲いかかった。
戦いの火蓋がヒグマの炎腕によって切って落とされた。
ロビンの心に巣食う邪悪な畜生染みた闘争心を見ぬいたウォーズ。
率先して戦うことでロビンを一時戦場から遠ざけようとしたのだ。
ストレート、フック、ヒグマより繰り出される豪腕の攻撃をウォーズは巧みに避ける。
紙一重にも見えた。だがその紙は厚いクレバーな差だ。
かすめるだけで首から上が根こそぎ持って行かれそうな攻撃をウォーズマンは
すれすれの距離で躱していく。
その動きはロビンや跡部のような球技者独特の。
技を全て受け止めんとするスタンダードな超人ファイトとは違う冷静なスタイル。
「凄い……」
貪欲、あるいはどの面下げてと形容されるロビンの特徴は
相手の長所を貪欲に吸収することだ。
だがそんな彼をして見惚れさせるのが、このウォーズマン。
超人オリンピックのV2を果たしたキン肉マンを最も追い詰めたひとり。
ヒグマの首に両足を絡めて強く捻って倒れさせる。
腕を即座に獲れば腕ひしぎ。
「そのまま折るんだ、ウォーズマン!!」
指示とも声援ともつかぬロビンの声を無視し、
ウォーズマンは相手のタップを待ってギリギリまで締め上げる。
けれどヒグマ、ネバーギブアップ。
ウォーズマンごと立ち上がったヒグマはそのまま腕にしがみつく形の彼を地面に叩きつけようとした。
だがすんでのところでウォーズは腕から離れ、直撃を避けた。
「どうして折らないの、ウォーズマン!?」
批難めいた疑問を他所にウォーズマンは冷静に相手の出方を伺う。
ヒグマがタックルを仕掛けてきた。
ほぼ同時、だが少し遅れてウォーズマンがヒグマよりさらに低い姿勢でタックルをした。
「やったあ!」
相手の力を受け流し、ヒグマを軽々と持ち上げたウォーズマンは
ヒグマにボディスラムを仕掛ける体勢にはいる。
「いけーーーっ! ウォーズマン!!
それでヒグマは廃人だーーーーーっ!」
大地に渾身の力で脳天から叩きつければ確かにヒグマは脳をやられただろう。
だがウォーズマン、あくまで胴体を大地に叩きつける恩情を見せた。
「また!?」
ロビン、ここに来る前の、
100エーカーの森にて幾多の野球の味を知ってしまった畜生どもと鎬を削る日々のままだったなら、
「ちっ、ウォーズマンのうすのろ野郎。もう奴との共闘関係はご破産だ」くらいは吐き捨て、この戦いに背を向けただろう。
しかし、今のロビンは知っているのだ、キング跡部の優しき子守唄(ララバイ)を!
怒りと闘争心に支配されることなく、
ロビンはこの戦いを凝視した。
すると、立ち上がったヒグマ、邪悪なる野生の炎を纏いし瞳に確かな安らぎに似たものがよぎる!
「げ、げぇーーーっ!?
ヒグマが戦いの場にいながら、
まるで母親と語らう息子のような安らいだ目をーーーーー!!」
これこそがクリーンファイトの力!
ベアクローを封印し、相手の傷を最低限に押しとどめながらも、
熱き魂の炎にて凍てついた野生のハートを溶かそうとするウォーズの気高きファイト!!
ロビンは悟った。
ウォーズは、この数十分前に出会ったばかりの心優しき機械超人は、
火グマのみならず、野球に狂った少年の心にも正しき光の道を示さんとしていたのだ。
抑えられない熱き滾りが喉元までこみ上げる。
ボクも混ざりたい、あの闘争に、クリーンで清々しく、
それでいて互いの力を限界にまで高め合う超人レスリング空間に!!
ウォーズマン、天高く飛び上がり片手より鋭いベアクローを突き出し、
何度も回転しながらの、フェイバリット、”スクリュードライバー”を放つ!
真っ向から応えるは同じく火グマの炎と一体化した爪!!
ロビンの眼球を灼き尽くす程の光量が辺り一面を埋め尽くす。
思わず腕で顔を覆ったロビンが光に慣れたところ、目の前で戦いを繰り広げるは
空中すら飛び交う火グマとウォーズマン。
ウォーズマンは両手にベアクローを装着し、
ヒグマはリッドより物にした鳳凰の火炎を用いて天から地上に直進する!
「ダブル・スクリュードライバー!」
「緋凰絶炎衝!」
互いの秘奥義が交差した!
敗北したのはウォーズマン、
体の大部分を損壊した彼の頭からは無数の湯気が立っている!!
だが立ち直りが早かったのもウォーズマン!
指先が火グマの体毛に引っかかるとそこを基点に
相手の両足、両腕を雁字搦めにする奇妙な極め技を仕掛けた!
ウォーズマンの隠し秘奥義、パロスペシャル。
相手の力を鑑のように跳ね返すことで難攻不落の要塞、
かのモンテ・クリスト伯が捉えられたというシャトー・ディフさながらの堅固な牢獄となった。
もうじきウォーズマンのタイムリミット、三十分が来るのだろう。
頭どころか全身から湯気を出し、オーバーヒートし始めた彼の体。
「あ、あれは――!」
ロビンは自分の目を疑った。
彼の目に映るのはパロスペシャルではない。
よく思い出してほしい、パロスペシャルのシルエットを――!!
「キャッチャー!?」
そこにいるのはロビンに最も足りない物であったキャッチャーだった!
ロビンの胸にわだかまっていた不安、
それは先の死の競技にて高さを操る術を修得しても
応えるキャッチャーがいなければ力を十全に振るえんのではないのかというもの!
いるのだ! 眼の前にいるのだ!
どんな魔球も豪速球も受けてやろうという気構えと技術を備えた
冷静にして情熱のキャッチャー、ウォーズマンが。
「見えたよ、ウォーズマン……!!」
ロビンは手元の球を握りしめて咆哮した!!
「勝利の道筋が見えてきたっっ!!!!!!」
捕手、ウォーズマン。
キャッチャーミットは火グマ。
どちらも求めるのはロビカスの気高き飛翔!
ならばとロビンは大地を強く蹴って跳びあがる。
「いつもの二倍の握力で握りしめて160km×2の320km!
そして三倍の高さから放たれる豪速球は即ち960km!!
加えて――――」
ロビンの指が神業のように繊細な動きをした!
これは上下左右と最高速度に到達するまでに途方も無い距離がかかるこの魔球を完成するためのもの。
「上下に5倍! 左右に10倍の回転をやることで――おまえを上回る豪速球だ―――!!」
無名の魔球。幼い彼には複雑な計算など出来ないが
きっとこの球はー自由ーにー空をーとべーるはず―と確信した!
ロビンの技を受ける覚悟はとうに終了しても
逃れることを諦めない火グマへと縦横無尽に飛び回る速球が迫り来る。
ウォーズの熱暴走がついに限界を超えて、わずかだが技の極めが甘くなった。
だがニヤリと揃って禍々しく嗤うのはウォーズマン、ロビン。
そしてここにいずとも魂として見守る誰か。
それは古舘伊知郎、
跡部景吾、阿部宗則という敵味方の違いはあれど強敵(とも)になった者たち!!
技から逃れること叶わずとも大きく右に倒れる火グマ。
読んでいたかのように、火グマへと追尾する魔球。
最高速度に到達した魔球は摩擦熱によって炎を帯び、
さながらアイスロックジャイロのように冷気も帯びた未知なる球へと昇華された!
「「「「「スケスケだぜ!!!!!!」」」」」
炎と冷気の夢の合体を果たした魔球は火グマの胴体へと――
打ち倒れるは戦いに生命を賭した勝者と敗れたふたり。
天高く拳突き上げるは受け継いだ勝者。
死した者たちのあれこれを掻き集め。
かつての《球鬼》ロビン。
その心にあったのは
冷血――やあ、”野球”って知ってるかい?
冷酷――邪魔しないでくれオウル、これが僕らの大願成就の時なんだ。
冷徹――やっと会えたね、プー、さあ、殺し合おう。
という《氷の精神》に相応しい炎上ピッチャーの魂。
今の《野球超人》クリストファー・ロビンの心にあるのは
オモイヤリ――君も畜生な野球おもんねーわな出来事ばかりで悲しいよね、でもやめられないんだよね
ヤサシサ――だから、僕と一緒に野球をしようよ!
アイジョウ――さあ、君の修羅の野球道への未練を砕いてやろう。
という《ユウジョウ》の名に相応しいスピリッツ。
ロビンは朝日を浴びて無名のマウンドにて再誕を叫んだ。
【ウォーズマン 死亡】
【火グマ 死亡】
だがその心、死してなお殺しあったはずのロビンとともに。
クリストファー・ロビンの野球魂に魅入られた初めてのヒグマが、ここにひとり――
【C-5 街/早朝】
【クリストファー・ロビン@プーさんのホームランダービー】
状態:右手に軽度の痺れ、全身打撲、悟り、《ユウジョウ》INPUT、魔球修得(まだ名付けていない)
装備:手榴弾×3、砲丸、野球ボール×1 ベア・クロー@キン肉マン、ロビンマスクの鎧@キン肉マン、ヒグマッキー(穴持たずドリーマー)
道具:基本
支給品×2、不明支給品0~1 、マイケルのオーバーボディ@キン肉マンⅡ世、ベルモンドのオーバーボディ@キン肉マンⅡ世、
基本思考:成長しプーや穴持たず9を打ち倒し、ロビン王朝を打ち立てる
1:投手はボールを投げて勝利を導く。
2:苦しんでいるクマさん達はこの魔球にて救済してやりたい
※プニキにホームランされた手榴弾がどっかに飛んでいきました
※プーさんのホームランダービーでプーさんに敗北した後からの出典であり、その敗北により原作の性格からやや捻じ曲がってしまいました
※ロビンの足もとに伊知郎のスマホ@現実が落ちており、ロワ外にいる最近解説に
目覚めた川﨑宗則@現実と通話が繋がっています。
※ロビンはまだ魔球を修得する可能性もあります
最終更新:2015年02月06日 18:41