スーパーヒーロー対戦H
<シーン1:
駆紋戒斗(バロン)>
アーマードライダーバロン・メロンベアームズこと、駆紋戒斗は走っていた。
時空間移動の機能さえ持つ彼のバイク、ローズアタッカーは支給されていなかったため徒歩だったが、
その走力、100mを6.1秒。時速換算でおよそ60kmである。
この会場にいる者の中にはそんなものを遥かに超える能力を持ったものもいるし、
そもそも「普通のヒグマ」が時速50km程度で走る事を考えればそれほどの速度ではないのだが、
それでも一般人からすれば相当のスピードである。
それに熊や乗り物でないため、その速度であっても目立たない。
そのためか地図の中央部に向けて走っていた彼はいまだに誰とも出会っていなかった。
「くっ、臆したか。何故誰もいない……それとも、強者などいなかったか……」
息も切らせずに走りながら駆紋戒斗は毒づく。
彼の目的自体は闘争ではない。しかし、彼には許せないものがいくつかある。
「力の使い方をわきまえない事」がその一つだ。
戦極ドライバーやロックシードはもちろんのこと、この会場にいるであろう異能力者が、自分にかかってこないことが許せなかった。
「空飛ぶ剣、火山の噴火、爆発音、大音声の名乗り上げ……いるはずだ、俺の前に立つべき者……」
力を持つものは他を押しのける権利がある。いや、戒斗はそれを義務だとさえ考える。
ただ守るのは力ではない。他人を、分を弁えないものを虐げることは、強者の義務であると。
そして強者は強者と戦い、どちらがより強者であるかをはっきりさせるべきだと考える。
だからこそ、強者である自分の前に誰も立ちはだからないことが不満でならなかった。
だからこそ、敵を求めただ走った。
その先に何が待ち受けるかなど考えもせずに走った。
胸についたヒグマの顔が、小さくうなるのが聞こえた。
<シーン2:
鷹取迅(デモン)>
迅は歩いていた。
彼は身体的にはごくごく普通の一般人である。
なにせ電車に乗るくらいだ。飛んだりワープしたりできないのだ。
歩く速度は人並みだし、屈強な警備員に捕らえられれば素直に諦める。
そんな彼を逸脱者たらしめているもの。
それは痴漢であること。
精神を、肉体を、矜持を、技術を、ただ痴漢のために磨き上げたその全てをこの会場に解き放つ。
それは生きるためでも、殺すためでもない。
彼はいつだってその一点のために生きている。
自分と同じ逸脱者、輪の中で生きられないものを見つけ出し、高みへと誘う。
本来それは、社会的に行き辛い、鬱屈した思いや性癖、ストレスを抱えた人間を指すものだったが、
この会場に来てその意識は変わりつつあった。
「
HIGUMA」
その存在。生物として根本的に逸脱している者たち。
歩みを進めるうちに、彼はその存在に魅了されていく自分に気づいていた。
「この俺も、道を違えばHIGUMAだったかもしれない……」
悪魔の手とさえ呼ばれるその異端の男は、そんな思いを抱いたままただ歩く。
ぴくんと、彼は股間が小さく弾むのを感じた。
<シーン3:開放(リリース)>
二人は出会った。
そこは廃墟となった工場跡。
激突にはおあつらえ向きの場所であった。
「おい貴様、名前は」
メロンと熊をあつらえた鎧の男、駆紋戒斗は問いかける。
「鷹取迅だ」
ファーのついたジャケットを割れたガラスの隙間から入り込む風に揺らし、鷹取迅は応える。
「俺は駆紋戒斗、チームバロンのリーダーだ。鷹取迅、貴様は何者だ」
「俺は、ただの痴漢だ」
「ん?」
駆紋戒斗は聞き間違えたのかと首をかしげた。
なんかかっこつけてるから多分違うんじゃないかと思ったし、そもそも読者諸兄もこれ別にかっこいい台詞じゃないって思い出した頃だろう。
普通に考えて出会い頭に名前の次に言う言葉で「痴漢」はないだろー。そりゃそうだよな、うん。
そう思った駆紋戒斗はもう一度問いかける。
「士官か?それともチタン?」
「痴漢だ」
やっぱり言っている。完全に痴漢って言ってる。
痴れ者の漢で痴漢。蔑称なら分かるけど堂々と言うってどういうことだと駆紋戒斗は苦悶する。
もしかしてアレだろうか。海賊の汚名をあえて誇りとして名乗る豪快な奴らとかそういう感じで、
本当は痴漢じゃないけど誰かからレッテル貼られてそれをあえて名乗ってるっていうやつではないだろうかと駆紋戒斗はなんとか自分の中に
納得できそうな仮説を立ててもう一回だけ聞いてみる。
「痴漢という、汚名を着せられた男なのか」
「いや、痴漢をしている。電車などで」
もうだめだこれ、話にならない。
強者を探して走っていたら痴漢にぶつかったその心痛いかばかりか。
駆紋戒斗は会話を断念し、一方的に告げる。
「ち……鷹取迅、お前が俺の道を阻むなら退ける。さもなくば、島の隅で震えているがいい」
「断る。俺はお前に用がある」
え、ちょっと待てよ、と駆紋戒斗は思う。
痴漢というのが彼の知っている痴漢なら、ただのずるく卑劣な犯罪者だ。
それが明らかに武器を持って強そうな男に絡まれて、逃げ出すチャンスを与えられて断る。
この行為に全く理解が追いつかない。
「何故だ」
一度は諦めた会話を再度試みる駆紋戒斗。
「お前を、解放したい。俺と同じ逸脱者。
ルールの外でしか生きられないお前と、共に高めあうことで解き放ちたい」
「え……」
ヤバい。と思った。
痴漢が自分を同じ穴の狢呼ばわりしてきている。しかも共に高めあって解き放つとか言っている。
いくらチームバロンにちょっとアレっぽい人がいくらか所属していたとしても、駆紋戒斗はバリバリのノンケだ。
まさか男女見境ない痴漢だとは思わなかったとばかりに、半歩後ずさる。
「おまえ、バイというヤツか」
「バイか……違うとは言い切れないな」
鷹取迅は以前男女の双子を同時に痴漢していたことを思い出してそう呟く。
彼も本来は女性をターゲットとする痴漢ではあるが、あの時の双子の男は女装していたとはいえ、生物学上完全に男性だった。
あれをガッツリと攻略した以上、完全にノンケであるとは言いがたい思いが彼の中にはあった。
そもそも、悪魔の手には男女の差など大した問題ではない。
経験値として女性の堕とし方に長けている部分はあるものの、自分が男性ゆえに狙うべきポイントはむしろ把握している。
やろうと思えば駆紋戒斗のバナナアームズをシャバドゥビタッチしてバナナスパーキングさせることなど造作も無いはずである。
だが、鷹取迅の目的は目の前の自信過剰な男をスティメーロにしてトバスピノーさせることでは決して無い。
「だが、今俺が狙った獲物はお前ではない。れっきとしたメスだ」
「メスだと……一体どこに」
「自分の胸に聞いてみるんだな……デッドマンズビジョン……」
「なっ」
駆紋戒斗は困惑した。
襲われまいと視界に留めていた鷹取迅の姿が一瞬にして掻き消えたのだ。
「ここだ」
そして、間をおかず自分の後ろにぴったりと張り付いている。
処理落ちした映像を見ているような違和感だったが、時間停止に極端に近いその能力の正体など知るはずも無い駆紋戒斗はただ焦る。
「なん……だと……」
腰の無双セイバーに咄嗟に手を伸ばす。
「遅い。その速度では俺の指を超えることはできない…ライトニングチャージ!」
紫電一閃。
「グオッ……」
たおやかな指が稲妻を帯びて走り、小さな呻き声が漏れる。
それは――――メロンベアームズの胸部についた、ヒグマの口から。
「駅員室に囚われた痴漢の如き哀れなヒグマよ。俺がお前を高みに連れて行く」
「なっ、何をする!?何をしている!?」
鷹取迅の手が動いた直後から、体の自由が利かなくなった駆紋戒斗は、ただ詰問の声を上げる他無い。
彼の身体は迅の指に反応し、身体を硬直させたメロンベアームズによって、逆に拘束されたようになっていた。
本来、
メロン熊の、大本のヒグマの意識はメロンロックシードに、そしてメロンアームズに飲み込まれて存在しえないはずである。
それでもなお、本能に訴える迅の指使いはその鎖をも断ち切って「牝の悦び」をメロン熊に与えていた。
「期待しているのか……次にどこを……触られるのか」
腰、太もも、そのままゆっくりと下腹部へと思いきや首筋。
胸からヒグマの顎を撫でて、弾くように下腹部、取って返して背中。
緩急をつけたその指は鎧の上から触られてるので何をされてるかも分からない駆紋戒斗を置いてけぼりにし、メロン熊の感覚を犯して行く。
「迷宮(ラビリンス)へようこそ」
「何を言っている!おい!貴様!!」
駆紋戒斗の怒号を余所に、メロンベアームズの胸部からは荒い息遣いが聞こえ始める。
せっかく意識を取り戻したメロン熊だったが、もうその意識は快楽を待ちわびる焦らしの迷宮に囚われ、ぐるんぐるんと回るのみ。
まるでサーカスの曲芸をする熊のように、ただご褒美を待って廻り続ける。
「仕上げだ、上り詰めろ……デモンズハンド!」
十分に焦らされた肢体を駆け巡る悪魔の旋律。
感じたい場所に感じたい時、感じたい以上の快感を連鎖的に与えられる。
悪魔に魂を吸い出されるように、メロン熊はその意識の全てを悦楽に支配され
「グオオオオオオオオッッッ……ッッ!!」
絶頂へと達した。
と、同時に光の粒子となって消え去るメロン型の鎧。
「な、何事だッ!?」
「開放されたのさ。あの逸脱者(ヒグマ)は」
「まさか……ロックシードの力ごと消し去ったとでも言うのか……」
メロンと深く融合していたメロン熊は、もはや鎧ではいられなくなっていた。
牝の悦びを知ってしまったがゆえに、その性質はメロンでもヒグマでもなくなり、アーマードライダーとしての変身自体が解除されてしまったのだ。
「さて、俺は行く」
駆紋戒斗からスッと身体を離し、鷹取迅は背を向ける。
「ま、待て!鷹取迅!いや、痴漢!!」
「なんだ」
「俺を……いや、俺と戦わないのか!」
「お前は逸脱者ではない。無理に逸脱しようとしなくても、社会のルールの中で生きられるだろう?」
「~~~~ッッ!?」
見透かされるような言葉に、駆紋戒斗は拳を握り締める。
見逃されること、戦いを相手の都合で拒否されること、己の心を勝手に慮れること。
許せないことばかりだった。
廃工場を去ろうとする鷹取を、唇から血を流しながら見つめる駆紋戒斗。
「クソッ!!!」
苛立ちを拳に乗せて、汚れた床に叩きつける。
コンクリがむき出しになったそこに、砕けた破片と、打ち付けた拳から散った血のほかに、何かが見えた。
「……ロック……シード!?」
足元に落ちていたそれは、紛れも無く、禁断の果実(ロックシード)だった。
<シーン4:再会(リターナー)>
キョウリュウシアンこと
ウィルソン・フィリップス上院議員はしゃがみこんでいた。
勇気と力を手に入れた彼だったが、次の目的を決めあぐねていたのだ。
目に付く人間は守る。ヒグマに逢えば倒す。
そういった基本的な方針はあっても、どこに向かうかという指針はなかった。
「火山の爆発は気になるが……むしろあんな場所にいるのは恐竜かヒグマくらいだろうな」
普通の世界ならどっちもいないだろうが、キョウリュウジャーになったことで火山から飛び出してくるプテラゴードンとかを知ったウィルソンにとっては
それほど不思議な台詞ではなかった。
先ほどのブレイブスラッシュで切り倒してしまった木の切り株に腰掛けて、しばらく考え込む。
変身前のパニックでデイバッグの中をぶちまけてしまったことは今思えば大変な失敗だった。
ヒグマ型巨人に、服を破られたついでに足元に落しっぱなしだった地図もビリビリにされ、コンパスも紛失。
目印はそれこそ今自分で否定した火山くらいしかない状況で、せっかく手に入れたブレイブを持て余している、そのときだった。
「グオォォォォォッ!!」
「何ッ!?」
何の前触れも無く、数メートル先に現れたのは、しばらく前にウィルソンを襲おうとしていた、あの緑と茶色の球体、メロン熊だった。
鷹取迅によりメロンベアームズの責から開放され、一匹の牝になった彼女が召喚される前の場所に戻ったのだが、そんなことは
思案を重ねていたキョウリュウシアンにはわかるはずもない。
「クッ!!」
すぐさまガブリボルバーを取り出して構え、放つ。
続けざまに発射される光弾だったが、メロン熊の厚い体毛はそれを弾いてしまう。
メロン熊の元となったヒグマの性質。それは「吸収」だった。
食べたものの性質を取り込む能力。ピンク色の丸い悪魔と違うのは、それが累積されていくことだ。
現在の彼が溜め込んでいる性質は「メロン」そして「鎧」。
意図せずに防御力が格段に上がってしまっているメロン熊には、最早必殺技でもない攻撃は届かないだろう。
ブルブルと身を震わせるメロン熊。その姿を、攻撃の予兆か何かと判断したウィルソンは、武器をガブリカリバーに持ち替えて一気に間合いを詰める。
体重を乗せた全力の斬撃。
しかしそれすら、鎧の性質を持ったメロン熊には通じなかった。
ただ、硬さはあってもその勢いを殺せるわけではない。
突進の勢いそのままに、もつれ合うようにウィルソンとメロン熊は温泉へと落下した。
ウィルソン・フィリップスも、そして当のメロン熊も知らないことがあった。
それは、メロン熊が吸収していた性質がもう一つあったということ。
<シーン5:
北岡秀一(ライアー)>
北岡秀一は走っていた。
変身は解除していたので、人並みの走力だったが、病人にしてはなかなか早い。
目的地は決まっていた。温泉だ。
浅倉を欺くために使った血のりを落としたい。
市街地という選択肢もあったが、水道が機能しているかは分からない。
ならば地図に明記されている水場である温泉というのが妥当だと思えた。
ただしE-1はなしだ。いつ浅倉がやってくるかわからない。湯治ということもないだろうが、自分同様水場として考える可能性はある。
泥水をすするような男だ。温泉くらいがぶ飲みミルクティーくらい飲むだろう。
となれば、C-3の温泉あたりがいいだろうと考えた。先ほどの戦闘場所から適度に離れ、遠すぎない。
血のり塗れの姿を見られても、なんとか誤魔化す自信はあったが面倒は面倒だった。
できるだけ人に会う前に落としておくのがいいだろうと思えた。
何せ一度落とせば「もう一度騙すことができる」のだ。
「でもまぁ、見られたら仕方ないよね」
呟く独り言には、見られても「誤魔化せる/消せる」の両方のニュアンスを含ませて、
自分のスタンスをわざと定めないように努めている。
「何……をするにしても、水は大事だし」
彼が水場を目的地に選ぶもう一つの理由が、鏡だ。
浅倉や彼のようなミラーモンスターと契約することで変身する
ライダーは、鏡のように自分の姿を映すものが無ければ変身ができない。
血のりを洗える場所、もし戦闘になっても変身できる場所。先ほど飲料水をぶちまけてしまったこともあり、泉質によっては飲み水の確保もできる。
安住とまでは行かないが、拠点として温泉という場所は比較的ましだと思えた。
その希望の地が視界に入る。湯気が立ち上る一角が木々の間に見えた。
「ッ、はぁ、はぁ。いや、割と距離あったけど……まあ浅倉も撒いただろうし……」
安心のためか、歩調は緩みゆっくりと湯気の発生源へと近づいていく。
ざっぱあああああああああん!!!
「なっ、何?え、ちょっと何?」
あと数メートルで湯船というところで、凄まじい水柱、この場合は温泉柱が上がり、何かが湯の中に現れた。
「あー、もしかしてミラーワールドから今戻ってきた的なやつかな……マズったなー……」
自分の知る知識の中で最もありそうな「突然湯船に現れる」原因を呟いて、ため息を一つ。
緑色の球体と、水色の全身バトルスーツの人間?が波紋の中心に落ちていた。
<シーン6:覚醒、追撃(ブレイクバースト)>
駆紋戒斗は手にしたロックシードを迷わず開錠する。
ガチン!と小気味いい音がして、ロックシードが己がなんであるかを高らかに叫ぶ。
<<ナシ!!>>
それは錠前ディーラーのシドからは見せられたこともない、クラスも不明のフルーツだった。
「変身!!」
それでも駆紋戒斗は躊躇することなく戦極ドライバーに装着し、ロックを錠を閉じる。
ブレードでロックシードを斬ると、ファンファーレと変身音が鳴り響いた。
<<ナシ・アームズ! 梨汁ブッシャーーーー!!>>
頭上に召喚される梨型のアーマー。
頭からそれをかぶされ、まず兜が装着される。
一般的なアームズであれば残りパーツは肩と胸、そして背中を覆うことが多いがそれは(まだ本編未登場だが)スイカアームズ
のような大型鎧らしくバロンの全身をくまなく包むように展開していく。
やがて変身を終えたバロンの身体は、黄色い全身鎧、胸元のリボンめいた赤色、そして胸部に不安になる感じの目がついたアーマーに覆われていた。
「これは……」
<<これはフナッシー・アームズなっしー!!!>>
「くっ!?誰だ!」
突然近距離から甲高い声をかけられ、思わず問う。
<<
ふなっしーは1000年に一度の梨の妖精なっしー!それが鎧になったのがフナッシー・アームズなっしー!!>>
「つまり、また意思を持った鎧ということか……」
<<よろしくなっしー!ヒャッハァーーー!!!!>>
「やかましい!だが、この力……」
メロン熊が吸収していたふなっしーの性質が何らかの形で分離し、ロックシードの性質と合わさって出来たナシロックシードにより、
仮面ライダーバロンはこの時、フナッシーアームズ状態へと変身した。
その能力は大型鎧に似合わぬ高速戦闘と、物理法則を無視した二段ジャンプ。
駆紋戒斗はメロンベアームズの時以上に己の身に溢れる梨汁と凄まじいまでの力を、一人の敵へと向けることを決意する。
「俺は、貴様を許さない……鷹取迅!!」
自分に屈辱を与えた男。
力を持ちながら、それを正しく振るわない男。
屈辱は怒りに、怒りは執念に。
強者だった男は、今挑戦者として一つの覚醒を迎えていた。
<<ふなっしーはあのメロン野郎をぶっ潰したいなっしーーー!!!!>>
「俺の目的を果たしたら、付き合ってやるさ」
<<ありがとなっしー!!梨汁ブシャー!!>>
はじける梨の香りが、殺し合いの場に爽やかな旋風を巻き起こす。
<シーン7:混乱、共有(パニック)>
「くっ、先ほどの光は……」
「グォゥ……」
温泉に飛び込んで温泉で気づいたので、ウィルソンもメロン熊もまだ気づいてはいなかった。
この場所は彼らが飛び込んだH-8の温泉ではない。
メロンアームズの召喚によって「ワープ」の性質を取り込んだメロン熊により、温泉から温泉へと二人は「跳んだ」のだ。
「む……そこの市民!逃げろ!!」
だがウィルソン・フィリップスはそんなことを考えるよりも先に、持ち前の上院議員ブレイブによって、目の前で困惑する市民の安全を優先した。
彼の目から見れば血に汚れた服を着たその男は、一刻も早く助けなければならないか弱き市民に見えたことだろう。
「うおぉぉぉ!アンキドンハンマァァァァ!!」
その手に相棒の獣電竜アンキドンのブレイブを乗せた必殺パンチでメロン熊の鼻っ柱を殴りつける。
さすがに鎧の性質を持ったメロン熊であってもその攻撃には怯みを隠せない。
鼻を押さえて温泉から飛び出すと、まだ湯船に立つキョウリュウシアンを睨みつける。
鷹取迅によって開発された牝としての心は、強烈な痛みによって一時的に鳴りを潜め、凶暴なヒグマの本性が今一度蘇った証拠である。
「グオォォォォォォ!!!!」
湯船が波立つほどの咆哮に、ファイティングポーズで応えるウィルソン。
「これはちょっと……手伝おうかな……暑苦しいオジサンのほうを」
「何をしている市民!逃げろ!怪我をしているのだろう!」
ウィルソンの呼びかけを聞いてか聞かずか、すたすたと湯船に歩み寄る北岡。
「ああこれ?気にしないで、大丈夫だから……変身!!」
カードデッキを取り出し、まだ少し揺れる湯船に己の身と共に映す。
鏡像に現れた戦士はくるくると回転するように北岡の姿に重なり、次の瞬間、そこには一人のライダーがいた。
「話はさ、あれを片付けてからにしよう」
「ふ……ブレイブだ!!」
構える銃は二丁。
狙う先は一つ。
今、番組も時代もそもそもの元キャラ設定やらなんやら全部超えて、ヒーローがヒグマに立ち向かう。
【G-3:廃墟エリア 朝】
【鷹取迅@最終痴漢電車3】
状態:健康
装備:デモンズハンド(痴漢を極めた男の手の通称)
道具:基本
支給品、ランダム支給品×0~1、「HIGUMA計画ファイル」
基本思考:己と共に高みへと上ることの出来る、社会、生物などの枠組みから外れた「逸脱者」を見つけ、そのものに痴漢を働く。
【駆紋戒斗@仮面ライダー鎧武】
状態:仮面ライダーバロン・フナッシーアームズ
装備:戦極ドライバー、ナシ(ふなっしー)ロックシード
道具:基本支給品一式。ランダム支給品なし。
基本思考:鷹取迅に復讐する。力なきものは退ける。
【C-3:温泉 朝】
【ウィルソン・フィリップス上院議員@ジョジョの奇妙な冒険】
状態:キョウリュウシアン
装備:ガブリボルバー、ガブリカリバー
道具:アンキドンの獣電池(3本)
基本思考:生き延びて市民を導く、ブレイブに!北岡と共闘してメロン熊を倒す
備考:
服はヒグマがビリビリにしてしまったので変身を解除すると全裸です。
獣電池は使いすぎるとチャージに時間を要します。エンプティの際は変身不可です。チャージ時間は後続の方にお任せします。
ガブリボルバーは他の獣電池が会場にあれば装填可能です。
【北岡秀一@仮面ライダー龍騎】
状態:仮面ライダーゾルダ、健康、変身解除するとスーツ腹部に血糊が染み付いている
装備:カードデッキ@仮面ライダー龍騎
道具:血糊(残り二袋)、ランダム支給品0~1、基本支給品
基本思考:殺し合いから脱出する
キョウリュウシアンと共闘してメロン熊を倒す
備考:参戦時期は浅倉がライダーになるより以前。
鏡及び姿を写せるものがないと変身できない制限あり。
【メロン熊】
状態:激昂
備考:鷹取迅に開発されたので、冷静になると牝としての悦びを思い出して無力化します
「メロン」「鎧」「ワープ」の性質を吸収している
何かを食べたり融合すると、その性質を吸収する
最終更新:2015年02月06日 18:12