魔性 ◆aWSXUOcrjU
――どうか、僕の話を聞いていただきたい。
僕の名前は龍崎駈音。心理カウンセラーの仕事をしている。
自慢するようで恐縮だが、テレビや雑誌などで、僕の名を聞いたことがある方もいるだろう。
僕は、皆にお願いしたいことがあって、こうして話をしているんだ。
僕はこのゲームとやらから、脱出するための方法を探っている。
……ああ、心配しなくていい。それは、人殺しによる優勝を意味しているわけじゃないんだ。
僕は、皆が殺し合うことなく、全員で脱出する術を探している。
僕もカウンセラーだ。人を助けることを願ってこの仕事に就いた。
いたずらに皆の不安を煽り、命を損なうこのゲームを、僕は絶対に許せないと思う。
だから、誰も死なせずに、全員そろって、ここから脱出できないかと考えているんだ。
そして君達にも、もしよければ、力を貸してもらいたい。
僕と一緒に殺し合いを止め、ここから出る術を探してほしいんだ。
僕の力になってくれるという方は、この声のする方へ集まってほしい。
……大丈夫だ。僕が約束する。
僕が必ず、責任持って、皆を元の日常へと帰そう。
1人でも多くの人が、僕の考えに、賛同してくれることを願う。
◆
暗闇を走る影が2つ。
ネオンも窓の明かりもない、無明の街中を走るのは、いずれも年若き少女達だった。
1人は紺色のショートヘアを揺らす、スポーティーな出で立ちの娘。
1人はベージュのロングヘアをたなびかせる、清楚な装束の娘だった。
「ラッキーだったよね、あたし達」
スポーティーな少女――
アイシス・イーグレットが、後方の少女に向けて言った。
「お互い最初に知り合いに会えて、こうやって、味方になってくれそうな人も見つけたわけだし」
《うん……そうだね》
清楚な少女は話さない。
言葉を知らない長髪の娘は、口を開かず、思念で語る。
リリィ・シュトロゼックにとっては、魔力を用いたテレパシーが、唯一の会話の手段だった。
「できればもう、こっから先は、厄介なことにならないといいけど」
《トーマのことも、見つけないとね……》
2人は殺し合いが始まる前から、行動を共にしてきた仲間同士だ。
彼女らと少年がもう1人――
トーマ・アヴェニールの3人で、逃亡の旅を続けていた。
その後、フッケバインを名乗る犯罪組織に捕まり、拘束されていたところを、この殺し合いに招かれたわけだ。
残る1人であるトーマが、あの場にいたことは確認している。
このゲームに巻き込まれた全員を救う――そこまでのことができる自信はない。
それでも、せめて3人で再会し、元の世界へ帰りたい。それだけは偽るべくもない本心だった。
《……あ。ひょっとして、あの人じゃないかな?》
不意にリリィが何かに気づき、進行方向を指差す。
遠目に見えるその影は、黒いコートを羽織った男性だった。
左手には、クラシカルな電気式メガホンを持っている。恐らくはあの拡声器で、先の声を届けたのだろう。
「ホントだ……おーい! 龍崎さんですかー!?」
であれば確かに、彼こそが、声の主と見て間違いなさそうだ。
大きく手を振りながら、アイシスは男の元へと駆け寄った。
「やぁ、来てくれたんだね」
声に気づいたコートの男は、振り返るや、笑顔でそう応えた。
「おお、物凄い美人……!」
果たして、心理カウンセラー龍崎駈音は、想像よりも遥かに美形だった。
口元に小皺が浮かんでこそいるが、白く艶のある肌に、光を放つかのような切れ長の瞳は、年齢をまるで感じさせない。
いい意味で、年齢不詳というわけだ。異性であるはずのアイシスですら、思わずたじろぐほどの美貌だった。
「はは……美人か。そう言われると、さすがに照れるな」
《えっと……貴方が、さっきの声の人ですよね?》
「ほう……これは驚いた。まるで漫画みたいじゃないか」
やや遅れて、リリィが龍崎へと問いかける。
一方の龍崎はというと、脳内に直接発するテレパシーに、大層驚いた様子だった。
魔法文化が存在しない、管理外世界の人間なのかもしれない。
「確かに、僕が龍崎だ。こうして来てくれたということは、僕の話を、分かってくれたということかな?」
「そうですね。あたし達も、ここから生きて帰りたいですし……できる限りですが、協力させてもらいます」
「十分だよ。ありがとう」
感謝の言葉と共に、龍崎が手のひらを差し出す。
アイシスが、そしてリリィもまた、順番に握手でそれに応じた。
◆
荒涼とした深夜の風が、不気味な妖気へと変わる。
視線を合わせているだけで、まるで身震いがするかのようだ。
女物の日傘を差した、全身黒ずくめの男の顔は、傘のデザインとは裏腹に、そんな不気味さを孕んでいた。
「ヘェヘヘヘ……」
青白い頬がぐにゃりと歪む。口元が細い三日月を作る。
おおよそ人のものとは思えぬ、蛇か何かのような声で、傘の男は邪悪に笑った。
(声が聞こえたのは、こっちの方だ)
目の前に広がる町を見ながら、先ほど聞こえたものを回想する。
恐らくはゲームの邪魔のために、仲間を求めていたのであろう。
群れることでしか戦えない、臆病なリントの発した声は、この町の方から聞こえてきた。
(探す手間が省けたぜ)
しかし、その声はリスキーな賭けだ。
己のように、殺害のターゲットを求める者にまで、居場所を知らせることになる。
そう――コウモリ怪人
ズ・ゴオマ・グは、龍崎の仲間になるために、ここまで来たわけではなかった。
むしろ逆に、1人でも多くのリントを殺すために、ここまで足を運んできたのだ。
(きっとここで大勢殺せば、バルバも俺を認めてくれる)
同族であるはずのバルバが、何故自分に黙って、このようなゲームを始めたのかは知らない。
ベルトが未完成であるはずのダグバが、何故完全な姿を取り戻しているのかも知らない。
それでもゴオマは、このゲームに巻き込まれたことを、好機ではないかと考えた。
ここで実力を見せれば、バルバも自分を認めざるを得まい。
そうなれば、再びゲゲルの参加権を取り戻し、殺人ゲームを楽しむことができる。
退屈な雑用仕事とも、これでおさらばというわけだ。
「ジャデデ、ジャスゼ」
にやり、と残忍に笑いながら。
月下に牙を研ぎながら。
凶暴な吸血蝙蝠は、灰色の闇へと足を踏み入れた。
【1日目・深夜/B-3 市街地手前の平野】
【ズ・ゴオマ・グ@仮面ライダークウガ】
【状態】健康
【装備】冥の仕込み長刀(日傘形態)@喰霊-零-
【道具】支給品一式、ランダム支給品0~2
【思考】
基本:このゲームの優勝者になる
1:声の主(=龍崎)を殺しに行く
2:なるべく多く殺して優勝する。力を見せれば、バルバもゲゲル参加を認めてくれるに違いない
【備考】
※EPISODE25「彷徨」終了直後からの参戦です
【冥の仕込み長刀@喰霊-零-】
諫山冥の使用する武器。
普段はピンク色の日傘の形をしているが、戦闘時には傘の部分が引っ込み、内部から刃がせり出してくる構造になっている。
◆
(気紛れで始めたカウンセラーの仕事が、こんな風に役立つとはな)
傍らの少女達を見やり、龍崎駈音は冷笑する。
心理カウンセラーという肩書きは、善人の振りをするに当たって、非常に有用なものになった。
まさか人の心を癒すべき人間が、裏で人殺しのことを考えているなど、誰も考えもしないだろう。
(ま、今はまだ堪えどころだ。皆殺しにするには、ちと早い)
心理カウンセラー、龍崎駈音。
しかして、その本名はバラゴと言う。
悪霊・ホラーを切り殺し、その邪気を喰らって力を求める、最強最悪の暗黒騎士だ。
殺し合いから人々を救うなど、全くの嘘八百だった。
暗黒騎士たるバラゴの目的は、最初からブレることなく決まっている。
すなわち、己1人による優勝。
手っ取り早く全てを殺し、ゲームを終わらせて帰還する、悪鬼羅刹の畜生道だ。
支給された拡声器を使い、あのような演説を打ったのも、全ては他の参加者を誘き寄せるためだ。
いちいち探しに行くよりも、向こうからこちらに集まるよう仕向ける。そして労せずそろえた獲物を、一網打尽に始末する。
リリィとアイシスの2人はおろか、まだ見ぬゴオマの存在すらも、バラゴの思惑通りというわけだった。
「それにしても、カウンセラーで黒服ってのも変わってますよね」
「これは普段着だよ。仕事の時は、さすがにこういうのは着ないんだけどね」
アイシスの問いに答えるのは、あくまで龍崎駈音としてだ。
柔和な笑顔の仮面を被り、コートの裾を摘んで言った。
カウンセラーとしての、普段の仕事着の色は白い。人の心を癒すには、黒はいささか厳つすぎる。
《カウンセラーっていうのは、どんなお仕事をする人なんですか?》
今度はリリィの問いかけだ。
頭の中に直接語りかけてくる感触は、何も初体験というわけではない。
それでも、あくまで龍崎駈音は、超常現象とは無縁の一般人だ。故に最初に聞いた時には、それに似つかわしいように驚いてみせた。
「ああ、すいません。リリィはその……記憶をなくしてて」
「いや、それなら気にすることはないよ。……カウンセラーというのは、人の心を癒す仕事さ。
迷いがある人の悩みを聞いたり、心に病を抱えた人の、手助けをしてあげる人のことを言うんだ」
我ながら白々しいものだ、と。
真剣に聞き入るリリィを前に、バラゴは内心で冷ややかに笑う。
人を癒すなどとんでもない。闇に魅入られた本質とは、あまりにもかけ離れた隠れ蓑だ。
だからこそ、役に立つ。
龍崎駈音を演じきることで、来たるべき決定的な瞬間まで、本心を完全に隠すことができる。
(それまでは、せいぜい安心してるがいいさ)
どうせこの手を振り下ろせば、刹那に消える儚い命だ。ならばその一瞬までは、せいぜい楽しませておいてやろうじゃないか。
それでも、時が来た時には、遠慮なく始末させてもらう。
この場から速やかに脱出し、最強の邪念・メシア降臨の儀式の準備に、再び取り掛かるために。
もう少しここで待っていれば、もう何人かやって来てもおかしくないはずだ。
その瞬間に、全てが終わる。全ては暗黒魔戒騎士の、最強の刃の前に倒れる。
決定的な瞬間の訪れを、今はただ、バラゴは静かに待った。
【1日目・深夜/B-3 市街地】
【
龍崎駈音(バラゴ)@牙狼-GARO-】
【状態】健康
【装備】拡声器@現実
【道具】支給品一式、ランダム支給品0~2
【思考】
基本:このゲームの優勝者になる
1:平時は龍崎駈音として振る舞い、「殺し合いの打倒を目指す」ふりをする
2:拡声器につられてやって来た参加者を待つ。数が出揃った瞬間に皆殺し
【備考】
※第23話「心滅」終了直後からの参戦です
【アイシス・イーグレット@魔法戦記リリカルなのはForce】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、ランダム支給品1~3
【思考】
基本:ここから生きて脱出する
1:ひとまず龍崎と協力する
2:リリィを守る
3:トーマを探して合流する
【備考】
※Record 08:「Huckebein Ⅱ」終了直後からの参戦です。服は拘束直前のものを着ています
※トーマ・アヴェニールが参加していることに気付いています
【リリィ・シュトロゼック@魔法戦記リリカルなのはForce】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、ランダム支給品1~3
【思考】
基本:ここから生きて脱出する
1:龍崎と協力する
2:アイシスと一緒にいる
3:トーマを探して合流する
【備考】
※Record 08:「Huckebein Ⅱ」終了直後からの参戦です。服は拘束直前のものを着ています
※トーマ・アヴェニールが参加していることに気付いています
※B-3を中心に、周囲1マス以内に龍崎の声が響きました
【拡声器@現実】
乾電池で機能する、電気式のメガホン。文字通り、使用者の声を大きくすることができる
最終更新:2013年03月18日 01:20