狂信者としての運命しかないならば。
狂信者として重ねた罪を背負ってでも、重ねてでも、己が意志で生き続けよう。
どんな者にも、歩くのを止めなければ、新世界は平等に見えるのだから。
☆
倒れたと思ったクッパは、むくりと起き上がった。
「これでもまだ倒せぬか……」
メルビンは再び、グランドクロスを撃とうとする。
「おもいだした……思い出したぞ……ワガハイは……。」
気づいていた。
メルビンだけではない。リンクも、ルビカンテも、キョウヤも、ローザも。
この場にいた者全員が気付いていた。
彼の瞳から、淀みが消えていたことを。
「クッパ大魔王だー―――――――――――――――――っ!!!!!!!」
その迫力に、誰もが気圧される。
見た目は全く変わっていない。
だが、先程までの生ける屍のような有様から、別人のような変貌ぶりだった。
目覚めると早速、クッパはチェーンハンマーを捨てる。
こんな重たくて仕方がないものは不要だ。
敵が武器を失ったはずなのに、全く有利になったようには思えない。
むしろクッパという罪人の、鎖を外れたように見えた。
「速い!!」
重たい鉄球を捨てたことで、突進の速さが先程までとは別人のようだった。
「リンク殿!!」
咄嗟にメルビンが、リンクを守る。
彼は無事だった。だが、老兵は空中を吹き飛んで行く。
「おい、大丈夫か?」
キョウヤとローザが、メルビンを受け止める。
彼は致命傷を負っていない。だが、今までの中で一番の強敵だと分かった。
「ウヌ……ギリギリ避けたか……だが、この勝負、ワガハイが勝つぞ!!」
今のクッパがやることはただ一つ。
この場にいる者たち全員に勝利し、主催者の下へ行き、その力を奪う。
そして、ピーチを生き返らせる。
はっきり言って、難易度は途方もなく高いはずだ。
「正気に戻ったのか…?なら、もう戦わなくても良いはずだ。」
「戦わなくていい?オマエたちを倒し、この殺し合いを開いた奴等を倒し、ピーチを生き返らせる。間違った方法では無かろう?」
そんなことは、クッパが一番わかっている。
だが、彼のライバルであるマリオはそんな難関を何度も潜り抜けて来たのだ。
それに、スクィーラに操られたからと言って、襲った者達の仲間に入れてもらう図々しさなど、彼は持ち合わせていない。
「そうか、ならば斬るしかないな。」
「ガハハ。そうでなければ張り合いが無い。」
その瞬間、一筋の閃光が走った。
「はああああああああああ!!!!!」
「ガアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
リンクの雄たけびと、クッパの慟哭がぶつかり合う。
激突するのはボイスだけではない。リンクのマスターソードと、スクィーラがクッパに渡した入れた炎の爪のパーカッションも混ざる。
リンクが右へ、左へと剣を振るう。
それをクッパが、対応する手で打ち払う。
「教えてくれないか?オマエもこの世界で失った者がいたはずだ。なぜ壊れなかった?」
勝利する前に、クッパには聞いておきたかったことがあった。
なぜお前は違うんだと駄々をこねる訳ではない。
絶対に負けない強さではなく、失っても、敗れても、決して折れない強さ。
それこそが、自分がマリオに何度も敗れた原因だと、今になって分かったからだ。
「分からない。けれどそれは俺に力があった訳じゃ無く、きっと何かの偶然でしか無かったのは確かだ。」
なぜクッパがこの殺し合いの中で壊れ、リンクがそうならなかったのか。
それは誰にも分かりはしない。
分かるのは、リンクが善行を積んだから、彼が闇を寄せ付けぬほど努力をし続けた、そんな簡単な理由ではないことだ。
「そうか。」
リンクの返答に、短い言葉で納得した。
彼らの戦いに、それ以上の言葉はいらない。
新世界を見るために必要な目と、そこへ進むための足。そして邪魔者を退かす両腕だけだ。
「待て。」
ルビカンテが制止をする。
「回復してやろう。」
クッパの瞳を見ただけで、彼は分かった。
目の前にいる男こそ、ルビカンテが求めていた戦うべき相手なのだと。
かつて戦った、エブラーナのエッジと同じ、自分の炎より燃える闘志を感じる。
そんな相手には、彼は必ず万全の状態で戦えるよう、回復魔法を唱える。
さすがに回復魔法が制限されている中、ここまで負った傷全てを回復させることは叶わなかった。
それでも風前の灯火だった命の火に、油を注ぎ込んだ。
「感謝はせんぞ。オマエがしたことだからな。」
そんなルビカンテを、咎める者は誰もいない。
この場にいるのは、ただ己を貫き通そうとする者のみ。
ルビカンテがしたこともまた、その一環でしかない。
「行くぞ!!」
クッパに包まれた光が消えるとすぐに、リンクは斬りかかる。
メルビンが気絶し、キョウヤは直接の戦闘には参加出来ず、ローザは魔力が切れている。
よって今正面から戦えるのは、リンクとルビカンテしかいない。
高く跳躍し、唐竹の一撃をクッパの額に見舞おうとする。
だが、それをクッパの爪が止める。
そしてがら空きになったリンクの腹を、もう片方の手で引き裂こうとする。
「ファイガ!!」
「流石は赤色といった所か。
だが、リンクに生まれた隙をカバーするのが、ルビカンテの役目だ。
彼が放った火球が、迫り来るクッパを押し返す。
クッパの爪がリンクに入る距離から遠ざかった。
「ウガーーーーーーーッ!!」
だが、それでも油断は出来ない。
近付けば爪と噛みつき。そして遠ざかれば、ファイヤーブレスが襲い来る。
「てえやああああああ!!!!」
当たれば、リンクもルビカンテもただでは済まない。
リンクはぐるりと体を回転させ、白銀の円を象った斬撃を繰り出す。
アイスナグーリの力も相まって、氷の竜巻のように見えた。
氷の加護を受けた聖剣の力により、炎は瞬く間に水蒸気へと帰す。
それはただの氷に非ず。炎にも溶けず、炎をも打ち払う魔法の氷だ。
「ミドリのくせにやるではないか。」
目の前にいた二人を、かつて自分に何度も煮え湯を飲ませた赤と緑の兄弟に重ねる。
そして、クッパは再び突進してくる。
「火焔流!!」
炎の竜巻が、クッパを襲う。
だが、両手に付けた炎の爪が、炎の竜巻を切り裂いた。
「なんと!!私の炎を破るとは……」
今のクッパを縛る枷は無い。ただ悪の大王の矜持を貫き通すために、直進あるのみだ。
それをたかが竜巻ごときで止められるわけがない。
手始めに狙うのは、最前線に立っていたリンクだ。
だが、それこそがリンクの待っていた瞬間。
クッパの斬撃が彼を切り裂く瞬間、トルナードの盾を構える。
――弐の奥義 盾アタック
風の精霊の力を込めた盾を押し出し、クッパのバランスを崩す。
守りに身を固めていない相手でも、盾アタックは敵の拳をタイミングよく受け流せば、バランスを崩せる。
――肆の奥義、兜割り
続けざまに、高く跳躍してのジャンプ斬り。
だが、クッパは頭を傾け、その斬撃を角で弾き返す。
その合間を縫って、ルビカンテが火球を打ち込もうと、ローザが矢で射ろうとする。
だが、どちらもクッパの火球で吹き飛ばされてしまう。
「ならば……」
クッパが爪で攻撃してきた瞬間、リンクは身を低くする。
そのまま敵の懐に潜り込み、ゴロンと身を翻し、そして背後へと回り込む。
ー-参の奥義 背面斬り
狙いは敵の甲羅が守り切れぬ場所。すなわち尻尾とコウラの間。
先の戦いで、一度成功させた攻撃だ。
勿論その技だけで倒せるとは思わないが、とにかく一発技を入れ、それを反撃の糸口にしていくつもりだ。
「甘い!!所詮ミドリはミドリよ!!」
しかし、一度聞いた技がもう一度通用するほど、クッパは甘い相手ではない。
身をよじり、その反動で大きく振られたトゲトゲの尻尾が、リンクを弾き飛ばす。
「リンク!!」
ローザが彼のことを心配する。
今こそがチャンスだと、キョウヤがバズーカの照準を合わせて発砲する。
だが、クッパは咄嗟に殻に籠り、攻撃をシャットアウト。
一人で戦い抜くと決めたからには、時として防御をする判断力も供えている。
だが、すぐに戦線復帰したリンクが、クッパへと突きを見舞う。
心臓を貫かれれば流石に分が悪いと感じたクッパは、甲羅から出て、炎の爪で斬撃を止める。
そしてもう片方の手で、ルビカンテを殴り飛ばす。
炎の力を込めた爪と、氷の力を込めた剣がぶつかり合い、ドライアイスのような煙が火花と共に散る。
爪は人間の世界でも売られているありふれた武器なのに対し、剣は伝説の名を冠する逸品だ。
だが、クッパが持つ力は、その差を補って余りある。
「なんて力だ……!」
ガノンドロフ以上の力をその腕に感じる。
つばぜり合いの最中に、クッパの手にも氷が纏わりつくが、炎の爪の影響か、すぐに融解してしまう。
さらに、リンク達目掛けて炎が吐き散らされる。
つばぜり合いをキャンセルし、姿勢を低くして辛くも躱した。
今のクッパは、まさに大王の名を冠するにふさわしい存在だ。
生半可な攻撃では、どんな偶然が起ころうと倒せる相手ではない。
それが分かったリンクは、すぐさまアイスナグーリを捨てた。
確かに氷の力を付与するバッジがあれば、敵の炎攻撃からその身を守ることが出来る。
だが、リンクはそのバッジの欠点に気付いていた。
氷を込めた斬撃は、明らかに体力を消費することに。
魔力の限界などあってないようなものだったガノンドロフと異なり、リンクの体力は人間の域を出ない。
従って、このバッジは敵との戦いを有利に進められても、勝利に貢献することは無いと考えた。
そして、クッパを倒せるとしたらあの技しかないと。
ガノンドロフを結界ごと破り、その心の臓を鎧ごと斬り裂いたあの技だ。
この場に、あの時の戦友はいない。
だが、そんなことで尻込みするわけにはいかない。
目の前の敵は、覚悟を決めているということが言葉ではなく、心で分かる。
戦う前から失敗を恐れていては、勝ち負け以前に、目の前の敵に対し礼を欠く行為であろう。
「ルビカンテ。」
「あの技を使うつもりか。良いだろう。」
リンクは技を手の力を抜き、ゆっくりと肺に空気をため込んでいく。
最初は両脚の力を徐々に入れていき、一気に地面を蹴りだす。
防御を捨てて、攻撃のみに力を注ぐ捨て身の一撃。
おおよそ安全とは思えないやり方だが、クッパを倒せるとしたらこの技しかない。
リンクが走り出した瞬間、ルビカンテが魔法で、マスターソードに炎を纏わせようとする。
だが、その瞬間だった。
クッパが吐いた火球が、ルビカンテのファイガを弾き飛ばしたのだ。
「その技は使わせん!!」
「!?」
かつて似たような技を、リンクに似た服装の少年から受けたことがある。
剣に炎を纏わせ、自分を斬りつけようとすると踏んだクッパは、先にその出所を撃ち飛ばした。
連携を崩すと、すぐにクッパはリンク目掛けて突進する。
今度は彼を守る老兵は気絶している。トルナードの盾でのガードも、間に合わない。
「ぬうううううううう!!!」
しかし、前線に出たルビカンテが、クッパの突進を止めた。
2つの炎の爪がぶつかり合う。
だが、炎の術を中心とするルビカンテでは、腕力の差は歴戦。
すぐに守りは崩されそうになる。
「退けええええええ!!!!」
「そうはさせぬぞ。その緑帽子を倒すのは私の役目だ。それとも先に倒されるのはお前か?」
「温いわ!!」
鋭い爪が、ルビカンテの胸をマントごと切り裂く。
「ルビカンテ!!」
出血量から、深刻なダメージだとはリンクにも分かった。
そして、肉弾戦を止められても、クッパには炎がある。
口を大きく開け、ルビカンテとリンクを丸ごと焼こうとした。その瞬間、ルビカンテの身体が、真っ白な光に包まれた。
(これは……まさか?)
奇跡が起こったのは、クッパだけではない。
この場で現実に膝を屈し、思考も誇りも捨て、悪の傀儡になった苦い思い出があるのも、クッパだけではない。
試練の山でのパラディンになる試練は失敗に終わったが、初めて仲間を守ったことで、闇に墜ちた自身に打ち勝ったことで。
かつて黒魔導士だった彼は覚醒したのだ。
――そのまさかだよ。きみも自分に勝ったようだね。
自分と戦ったパラディンの声が聞こえる。
彼の意志は、たとえ死しても消えることは無かった。
「うおおおおおおおおおおおおお!!!」
「何いいいいいいいいい!?」
急に増した敵の力に、クッパは押し返される。
肉弾戦のみでは勝てぬと判断したクッパは、激しく燃え盛る炎をルビカンテに吐きかける。
「吹雪よ来るがよい、ブリザガ!!」
激しい氷の嵐が、クッパの炎を消し飛ばす。
自分が壊れる原因になった、父親が得意としていた魔法だ。
だが、過去を乗り切った彼は、そんなしがらみなどで止められない。
その力は、かつて彼が憎んでいた氷使いの父親をも超えていた。
「雷鳴よ轟け響け、サンダガ!!」
「ガアアアアアアアアアア!!!」
続けざまに、激しい雷鳴がクッパを焼く。ルビカンテは出来なかったはずの技だ。
光がクッパを焼いた後、間の抜けたかのようなタイミングで、ゼウスのドラムが辺りに響いた。
ルビカンテは神など信じない。
信じるものは己より強き者だけだ。
けれどそれはまさに天恵。そしてクッパに下るは天罰の雷。
試練に打ち勝った彼は、新たな世界へと足を踏み入れることに成功した。
その名も聖魔導士(ホーリーメイジ)。
マントは赤いものから、白銀のものに。
今までの赤覆面が消え、精悍な顔付きを辺りに見せた。
彼のことを元の世界にいた時から知っていたローザは勿論のこと、他の仲間も驚きを隠せなかった。
「助かったよ。しかし、その姿は?何が起こったんだ?」
リンクは戦友の咄嗟の変貌に、少し慌てている様子だった。
朗報か悲報かと言われれば、間違いなく前者の方だが、試練の山のことなど知らぬ彼には、さっぱり分からぬ状況だった。
「おまえには知らなくても良い事だ。それよりもう一度、先の技を使うぞ。」
「姿が変わっても素直じゃないのは変わらないか…。」
まずはリンクが、クッパ目掛けて爆弾を投げる。
そんな物では到底相手を倒すのには至らない。
だが、ルビカンテが剣に炎を纏わせる時間を、確かに稼いだ。
「今のはさすがに驚いたぞ。だが、ワガハイの勝ちは変わらん!!」
それを迎え討とうとするクッパ。
最早遠い昔、リンクに似たような帽子の少年から受けた斬撃を思い出す。
だがあの時とは違い、彼の心に恐れはない。
逃げも隠れもせず、むしろ逃げ場を自分から捨てるかのように、どっしりと踏み込んだ。
「ヘイスト!!」
ルビカンテの魔法が、リンクを加速させる。
元々彼は白魔法にも長けていたが、聖魔導士になったことで、魔法の範囲がさらに増えた。
「受け取れ!!ファイガ!!」
炎を帯び、ルビーのごとき紅蓮の光を放つ剣が、クッパに迫る。
両手をクロスし、その剣が身に届く前に、敵を切り裂こうとするクッパ。
「ヌ!?」
だがその瞬間、キョウヤが発砲したバズーカが、クッパの隙を作った。
直撃はしなかったが、爆発が敵を怯ませる。
「行くぞ!!」
満を持して、リンクの魔法剣が目の前の壁を切り裂こうとする。
だが、クッパは彼の技の元になったギガスラッシュでさえ、耐え抜いたほどだ。
聖なる雷を受けているわけでもなく、その真似でしかない一撃では、クッパを倒すのは難しい。
だが、その壁を乗り越えるのが仲間の力だ。
――大丈夫だよ。リンク。そのまま行って!
(そうか、アンタもいるんだな。)
共に力の魔王を倒した時の戦友の声が、聞こえたような気がした。
アルスとセシル。
この殺し合いで命を失ったはずの2つの英雄の命が、今生きている者達の未来を拓く。
なぜ今友の声が聞こえたのかは分からない。それでも、足をさらに早め、腕の力をさらに入れる。
一人じゃないということはこんなにも安心出来る事なんだと、今さらながら実感できる。
リンクは敵目掛けて疾走。最低限の動きで、炎の爪の斬撃を躱す。
「てえやあああああああああああ!!!!」
満を持して、袈裟懸けの一撃を敵に見舞う。
炎を纏ったマスターソードが、クッパを斬りつけた瞬間。
その斬撃と対になっていたかのような、彼の古傷が光り出した。
忘れるなかれ。それはかつてクッパがアルスからもらい受けた、聖なる光の一撃の痕。
黄昏の勇者の一撃により、そのダメージが共鳴したのだ。
魔王を滅した奥義、ギガ・クロススラッシュが、今ここに再誕する。
影に覆われた世界を、勇者の光が照らす。
その十字の光は、先程メルビンが撃ったグランドクロス以上に、カゲの世界に美しく映えた。
「グアアアアアアアアアアアアア!!!」
全員の鼓膜をつんざくような悲鳴を上げ、クッパが吹っ飛んだ。
ドスンと、受け身も取らずに地面に墜ちる。
「やったか!?」
遠くからであったが、それでも聞こえるほどの強い光。凄まじい衝撃と、それよりも大きい慟哭。
小野寺キョウヤは、確かに勝利を確信した。
勝利を確信しても悪くは無い。
「ガハハハハハハ……今のは死ぬかと思ったぞ……。」
どくどくどくとその腹から大量の血が流れている。
背中の甲羅のトゲや牙は折れ、一歩進むごとに鱗の一部が剥がれ落ちる。
全身が炎に包まれ、おおよそ生きることを許されているようには思えなかった。
だというのに、この場でその様子を哀れと思うものは誰もいなかった。
なぜなら、鋭い瞳はリンク達を見据えていた。血で汚れている中でも、その瞳はギラギラと輝き続けていた。
「あのネズ公に感謝せねばな……操り人形にされた痛みが無ければ、今の一撃でワガハイは負けていたはずだ。」
さらに力を増したクッパが、突進してくる。
「ブリザ……。」
「遅いわ!!」
クッパの蹴りが、ルビカンテの腹に入る。
その一撃が、一分一秒が勝敗を分けるこの死闘で、確かに功を奏した。
「ヘイスト……くそ、魔法が出ん!!」
クッパのボディーアタックは、『コマンド封じ』の追加効果を持つ。
直撃してしまえば、特技か殴打か、はたまた呪文か道具か。何かが使えなくなるのだ。
今度はリンクが聖剣でクッパに斬りかかる。
しかし、クッパも負けじと拳で応戦。
彼の強肩から放たれるのは、シンプルな右ストレート。
だが、それを剛力の修羅が行うことで、破壊の一撃を生む。
慌ててリンクは身を護るも、盾を握る右手に鈍痛が走る。
今のクッパは、修羅を通り越して戦神。
戦いにおいて、あらゆる勇者や戦士を前に、戦い抜ける力を身に着けた。
リンクにも分かっていた。
先の一撃は、この怪物にはもう通用しない。
先程のギガ・クロススラッシュと同じくらいの技か、はたまたそれ以上の技でなければ、間違いなく倒せない。
手はある。
古の勇者から教わった、終の奥義、大回転斬り。
タートナックの強靭な鎧さえ破壊し、リザルナーグの鱗を粉砕する最強にして最後の一撃だ。
クッパでさえも当たれば倒すことが出来るはずだろう。
(けれど……使えない……!!使えるだけの体力がもう無い……!!)
大回転斬りは、体力・気力共に万全な状態でなければ撃てない技だ。
既に幽体だった古の勇者が使えなかったのも、それが原因である。
リンクの身体は、ユウカとの連戦で、既に悲鳴を上げていた。
戦えない訳ではないにしても、万全というには程遠い。
勝つ手段を失った。絶望と共にリンクは、一瞬思考停止に陥った。
その瞬間は、確かにクッパにとって板金にも勝る一瞬だった。
彼の鋭い爪が、リンクを貫こうとする瞬間。
ルビカンテが、その間に立ちはだかった。
「馬鹿者が!!殺し合いの最中に考えるな!!」
パラディンの仕事は、仲間を守ることだ。その守りは要塞のごとし。
炎の爪が、聖魔導士の身体に深々と刺さっている。
だが、クッパの太い腕をその状態で掴んだ。
「ガアアアアアアアアアアアア!!」
「やめろ!!」
リンクはルビカンテに対して制止を懇願する。
もう仲間は失いたくない。
そんな自分の弱さに付き合った結果、死んでしまう人が出るのはもう沢山だった。
そしてクッパは、炎の爪の力で、彼の体内から炎を流し込む。
「見事……ぐううううううあああああああ!!!!」
いくら炎の使い手と言え度、パラディンになることを許された身であれ度、身体の中から業火で焼かれれば命は無い。
どさりとルビカンテは地面に倒れる。
「手こずらせおる……ようやく1人か……。」
荒い呼吸をしながらも、クッパは倒れることを見せない。
彼もまた、失った者の為に、大切な人のために戦い続けている。
そこに裏も表もあったりはしない。
「ルビカンテ!!」
――バカかよ、考えるのもアリだけどさ、思いっきりぶつかってみるのもいいかもしれないぜ。
影に墜ちたリンクに、影の世界の女王の言葉が聞こえる。
だが、その言葉に耳を傾ける間もなく、クッパの凶刃がリンクに襲い掛かる。
しかし、炎の爪は、またも別の者に弾かれた。
「メルビンさん!」
「お待たせしたでござる。」
先ほどは手ごわい相手だと思ったが、味方になると頼もしいことこの上ない相手だ。
だが、リンクの手は震えが止まらない。
先ほどは自分のせいで、戦友を死なせてしまった。
今まで勇気を奮って戦い抜いてきたが、その反動がここへ来てやってきた。
(俺は……どうすればいい?)
戦おうにも、この戦神を破る方法が見当たらない。
ちょっとやそっとの小細工で、どうにかなる相手でもない。
――何ガタガタ震えてるんだよ。前見ろ、前。
どこか小憎らしい、けれど懐かしい声が耳元で響く。
そう言われて、仕方なしに目の前を向いた瞬間。
リンクの身体を、炎の竜が飲み込んだ。
ゴワッという爆炎の音を聞き、メルビンも驚く。
「リンク殿!!?」
そして、炎の竜は次第に小さくなり、聖なる剣の先に集まって行く。
それだけではない。リンクの全身を、力が駆け巡る。
死す寸前に遺した、聖魔導士の力だ。そして、この場にはいないミドナの力だ。
何故その力が黄昏の勇者に宿ったのかは分からない。
「分かったよ……怖くて怖くて仕方ないけど……思いっ切り前向いて、戦ってやろうじゃないか。」
今なら、あの技を確実に出せる。
その確信がリンクにあった。
「行くぞ!!!!」
リンクは走り出す。
メルビンは攻撃をしない。ただ若き勇者を守るため、防御魔法をかける。
その瞬間、ローザの矢と、キョウヤのバズーカがクッパの目をくらませる。
つまらない小細工をするなとクッパは腕を振るう。
「ガアアアアアアアアアアア!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
クッパが炎を吐く。
それがリンクを飲み込もうとする。
だが、彼が放った一撃は。
「大・火焔流・斬り!!!」
クッパの炎さえも呑み込む、全てを擲った一撃だった。
渦を巻く真紅の龍を彷彿とさせる一撃が、クッパを爪ごと切り裂いた。
「マリオよ、ピーチよ!!ミドリのヒゲ!!そして我がクッパ軍団よ!!」
凄まじい龍の一撃に切り裂かれながらも、大王は叫ぶ。
「ワガハイは、最後まで戦い抜いたぞ!!!!!!」
太陽と見紛うほどの炎が、クッパを包み込んだ。
今度こそ、今度こそ、クッパは倒れた。
黄昏の勇者は、聖なる剣くるくると回した後、鞘に収める。
先ほど聞こえた声は、確かにミドナだと分かった。
(ありがとう。ルビカンテ。そしてミドナ。君たちのおかげで勝てたよ。)
だが、それでも。
奇跡には代償がある。
(それでも、もう一度、君に生きて会いたかった。)
リンクの目に、涙は無かった。
あるのは、この殺し合いを開いた者を絶対に倒し、生きて帰るという意志だけだった。
オルゴ・デミーラが開いた殺し合いが始まって、ちょうど18時間。
この時点で生存者が10人となった。
メルビン
小野寺キョウヤ
カイン・ハイウインド
ローザ・ファレル
ヌ・ミキタカゾ・ンシ
野比のび太
朝比奈覚
大魔王デマオン
クリスチーヌ
そしてリンク。
この10名の中で、殺し合いに乗ろうとする者は、もう残されていなかった。
[川尻早人@ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 死亡]
[スクィーラ@新世界より 死亡]
[吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 死亡]
[ルビカンテ@Final Fantasy IV 死亡]
[クッパ@ペーパーマリオRPG 死亡]
[残り 10人]
【D-5/一日目 夕方】
【リンク@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス】
[状態]:ハート1/15服に裂け目 所々に火傷(大) 凍傷(治療済み) 疲労(特大)
[装備]:マスターソード@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス トルナードの盾@DQ7 アイスナグーリ@ペーパーマリオRPG チェーンハンマー@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス
[道具]:基本支給品 ランダム支給品0~2 水中爆弾×1@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス アルスのランダム支給品1~2 (武器ではない) 正宗@Final Fantasy IV 柊ナナのスマホ@無能なナナ 火縄銃@新世界より 美夜子の剣@ドラえもん POWブロック@ペーパーマリオRPG
基本支給品×2(ユウカ、ピーチ)、遺体収納用のエニグマの紙×2@ジョジョの奇妙な冒険 陶器の馬笛@ゼルダの伝説トワイライトプリンセス、虹村家の写真@ジョジョの奇妙な冒険、ランダム支給品×1(佐々木ユウカでも使える類)、愛のフライパン@FF4 ディフェンダー@ FINAL FANTASY IV 魔法の盾@ドラゴンクエストVII まだら蜘蛛糸×2@ドラゴンクエストVII
[思考・状況]
基本行動方針:主催を倒す
1.仲間と共に戦う。最後まで。
【メルビン@ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち】
[状態]:HP1/2 喪失感(中)
[装備]:勇気と幸運の剣@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~5(一部ノコタロウの物)
[思考・状況]
基本行動方針:魔王オルゴ・デミーラの打倒
※職業はゴッドハンドの、少なくともランク4以上です。
※ジョジョ、無能なナナ、FF4、ペーパーマリオの参戦者に関する情報を得ました。
【小野寺キョウヤ@無能なナナ】
[状態]:健康
[装備]:モイのバズーカ@ゼルダの伝説トワイライトプリンセス (残弾0/5)
[道具]:基本支給品(切符消費)、替えの砲弾×5 ランダム支給品(×0~1 確認済) 鬼は外ビーンズ×8@ドラえもん のび太の魔界大冒険 セシルの首輪 首輪に関するメモを書いた本@現地調達
[思考・状況]
基本行動方針:主催者が何を考えてるのか。少なくとも乗る気はない。
1.首輪や主催に関する更なる情報を得る
2.あの扉は何だったんだ?脱出経路だといいが…。
※参戦時期は少なくとも犬飼ミチルの死亡を知った時期より後です。
※不老不死の再生速度が落ちています。少なくともすぐには治りません。
※死亡した場合一度死ぬと暫くは復活できません。
※別の世界の存在があると理解しました。
※この殺し合いが強力なスタンド使いを作るため、と言う仮説を立ててます。
※ジョジョ4部、DQ7、FF4、ペーパーマリオの情報を得ました。
【ローザ・ファレル@Final Fantasy IV】
[状態]:HP 1/10 MP:0 決意
[装備]:勇者の弓@ゼルダの伝説+矢10本 トワイライトプリンセス ふしぎなぼうし@ドラゴンクエストVII
[道具]:基本支給品、 カチカチこうら@ペーパーマリオRPG×2ランダム支給品0~1 偽クリスタル@現地調達、その他首輪の素材
[思考・状況]
基本行動方針:クリスチーヌと共に、リンク、およびマスターソードを探す。
1:どうして首輪の素材に、クリスタルのようなものがあるの?
※参戦時期は本編終了後です。
※この殺し合いにゼムスが関わっていると考えています。
※ジョジョ、無能なナナ、DQ7、ペーパーマリオの参戦者に関する情報を得ました。
地上での決着が終わった後のこと。
激しい戦いの衝撃により目覚めた朝比奈覚が、地下で見たのは幻覚だった。
「お前は……瞬!?」
記憶ごと消されていた旧友の顔が、はっきり映っていた。
東京でもその顔を見たと早季が言っていたが、こうして覚の前に現れるのは初めてだ。
「助けて……僕達の未来が、思い出が……消え……。」
ノイズのように、言葉が途切れ途切れになる。
一体何を彼が伝えたかったのか。主催者たちは何を思ってこの殺し合いを開いたのか。
それを聞く前に、少年の姿は消えてしまった。
「分かったよ。もう少し頑張ってやるしかないな。」
覚は立ち上がり、地上へと進んだ。
[D-5 地下 一日目 夕方
【朝比奈覚@新世界より】
[状態]:精神的疲労(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、北風のテーブルかけ(使用回数残り17/20)@ドラえもん のび太の魔界大冒険 ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本行動方針:仲間を探し、脱出する
1.瞬?お前、どうして?
※参戦時期は26歳編でスクィーラを捕獲し、神栖66町に帰る途中です。
最終更新:2023年02月19日 15:02