ここは【A-9】の市街地。
ゴロン族の族長、ダルボスは苛立っていた。

「フン!!」
巨体の彼が放ったパンチが、頑丈そうな街灯をへし折る。
「あいつら……絶対に許さねえ。」


最初の会場で、命を弄ばれ、殺された少女のことを思い出す。
遠くにいたため、イマイチ姿ははっきりしなかったが、あの少女は間違いなく、自分の知っている者だ。
かつての恩人であるリンクの同郷であり、失った記憶を取り戻すために自分も協力した少女。
ようやく記憶が戻った果てに、あのような扱いを受けるとは。


ダルボスは戦いが好きだ。
特にゴロン同士でその肉体の強さのみを競い合う、相撲をしている時は、この上なくワクワクする。
土俵際の争いと、駆け引きはたまらない。
最近の若いゴロンは相撲好きが減ったと嘆くこともあるくらいだ。
だが、このような首輪をつけられて、挙句の果てに女性や子供らしき者とも戦いたいかと言われると、答えはノーだ。


「とりあえず、何が入っているのか確認しねえと。」
乱暴に支給品をひっくり返す。
名簿は、めくるのが面倒だし、自分の知り合いが二人も参加させられていた時点で、見る必要はなかった。


「目ぼしいものはこの布切れくらいか。しゃあねえ。とりあえず悪いやつをとっちめて、武器を調達するか。」
時計のマークがついた、赤と紫の布切れを適当に揺らして、腕に巻いてみようとするも、向こうから声が聞こえた。

「あーーーっ!!それ、巻いちゃダメだよ!!」
「おわっ!ニンゲン、あんたこいつを知っているのか?」
「うん。ぼくの友達が持っている道具なんだ。」


声の主である、野比のび太は、その布切れや、ドラえもんの説明をした。
「ふーん。『タイムふろしき』ねえ。信じがたい話だが……。」
「包んだものの時間を巻き戻して、逆向きに巻くと、時間が過ぎちゃうんだ。」
「てか、スゲエじゃねえか!!これでこの首輪、クズ鉄に戻してやろうぜ!!」


ただの布切れだと思っていたタイムふろしきの、予想外なまでの使い道に驚き、早速首に巻こうとするダルボス。

「でも、本当にこれで上手くいくのかなあ。」
予想外のラッキーアイテムを引いたことにより、興奮するダルボスは急に首に巻くのをやめる。
「どういうことだ!?」
「これで首輪を外せたら、簡単にこの殺し合い、終わっちゃうんじゃない?」

上手い話にはウラがある。
もしもボックスで魔法の世界へ行き、楽が出来ると思っていたら、魔法が使えないわ、魔界が迫ってくるわと、大変な目に遭ったばかりののび太だからこそ思うことだ。


「ふむ、確かにそうだな。」
ダルボスはタイムふろしきに同封された説明書を今さらながら読んでみる。
「あんたの言う通りだ。コイツ、1度しか使えねえらしい。しかもコイツで死者を復活させることが出来ねえとよ。」
「じゃあ、一人しか首輪を外せないんだ。」


ひみつ道具の力は、この殺し合いでも発揮することが出来ると期待していたのび太も落胆する。



「悪いが、コイツはオレが預かってていいか?」
「うん。いいけど。」
「恐らく、コイツのことを知る奴が増えれば、ひでえ奪い合いが起こるはずだ。その時はオレが守るしかねえ。」
「ダルボスさん、優しいんだね。」
「おう、ありがとうよ。」


自分が率先して危険な役割を請け負おうとする巨人に、のび太は感心する。
それに対し、照れくさそうにするダルボス。

「ところでよ、ノビタと言ったな、今さらながらゴロン族のオレが怖くねえのか?」
ダルボスにとって、のび太はニンゲンの中でも小柄に見えた。

「うん。今まで色んな人と友達になったしね。」
最初はダルボスの巨体よりも、彼が腕にタイムふろしきを巻こうとする所に驚いて、勢いのまま話しかけてしまった。
だが、恐竜や宇宙人、人の言葉を話す2足歩行の犬や海底人とも仲良くなってきたのび太にとって、ダルボスの巨体もさして恐ろしいものではなかった。


「なら良かった。ところであんたは、何を支給されたんだ?」
「あっ、忘れてた!」

あわてて鞄の中を調べると、チョーカーのようなものが出てきた。
「ん~?なんだその変な形の入れ物は?」

それは、☣の形をした入れ物だった。
知っている人が見れば、感染症の類をもたらす危険な何かが、入っていると伺うだろう。

「オレはこんなマーク見たことねえよ。」
「うーん。ニュースで見たような気がするけど、何だったかなあ。」
しかし、のび太の世界はバイオハザードマークそのものがアメリカから開発されたばかりの時代(1966年)であり、ダルボスの世界はそのマークと全く関係がなかった。


「未来の道具かもしれないな。」
自分の時代から、ドラえもんのいる時代までに開発された何かかもしれない、と推測するのび太。


「君たち、ちょっといいか?さっき、時間がどうとか、未来がどうとか言ってなかったかい?」
のび太とダルボスの会話に入ってきたのは、20代後半ぐらいの青年だった。


「俺は朝比奈覚。カード名簿の、♧5の奴だ。君たちに、ちょっと聞きたいことがあってな。」
「答えてやってもいいけど、あんたに答えた所で、オレ達が不利にならねえ保証はあるのか?」
「ちょっ……。」
のび太の静止も振り切り、ダルボスが覚に詰め寄る。
目の前の男が何を考えているか分からない以上、安易に情報を漏らすわけにはいかない。


「待ってくれ!!それ、サイコ・バスターじゃないか!!」
ダルボスとのやり取りも無視して、のび太が左手に持っている道具を見て、大声を出す覚。
それは、覚にとって思い出深い道具だった。
自分たちが持っている呪力で殺せない悪鬼を唯一殺害するウィルスカプセルとして、廃墟で早季が手に入れた道具。
結局、早季は自分をウィルスから守るため、それを燃やしてしまったが、どうしてここにあるのだろうか。


「俺は見たことがある。そいつは恐ろしい細菌兵器だ。迂闊に割ったり誰かに渡したりするんじゃない。」
のび太は慌てながら、ザックにしまい込む。

「待てよ。あんた、それが本当だって保証は、どこにあるんだ?」
ダルボスはなおも覚を疑わし気に見つめる。

「名前も力もその人が言っている通りだ。多分ウソはないと思うよ。」
サイコ・バスターの代わりに、説明書を取り出し読むのび太。

「そうか。疑ってすまねえな。」
「いいさ。こんな戦いで、疑り深い方が自然なくらいだ。」
その注意深さを、かつてのバケネズミの仲間、奇狼丸を思いだす。


「まあ、俺が聞きたいのはこういうことだ。君たちは、未来や過去の人間と関係はあったのか?」
突飛な質問に、ダルボスは戸惑う。
しかし、のび太は普通に答えた。
「うん。ぼくの友達の、ドラえもんのことだけどね。」

自分の未来を変えるために、100年以上先の未来からお助けロボットが送られてきたことを話した。
その話を、興味深そうに聞く。

「なるほどな。」
「朝比奈さんは、何か知っているの?」

「気になるのは、この2枚だ。」
トランプのケースから、器用に♧の5と、♡の10を取り出す。
一人は覚自身。もう1枚は渡辺早紀と書かれた、一人の少女だ。
年はのび太の少し上なくらい。
最初に見せしめにされた少女と同じくらいの年齢だ。


「早季は、俺の幼馴染だ。」
「「え!?」」
あまりに二人の年齢が違うのに、幼馴染呼ばわりする覚に二人は驚く。


「嘘じゃない。確かに俺と早季は同じ26歳だ。これはどういうことだ?」
「渡辺さんは、過去から呼ばれたとか?」
「あるいは、俺が未来から呼ばれた、と解釈するべきかもしれない。」

続いて出したのは、♧3と、♢10のカードだ。
さっきから手を使わずに、狙ったカードばかりを出しているので、マジシャンか何かのような錯覚を覚える。
片方は早季より少し上ぐらいのくせ毛の少年。もう片方はとても人間とは思えない姿の生き物だった。


「この二人は、既に死んでいるんだ。しかも守の方は、何年か前に。」
「??」
「死人も参加させられているってことか?」

死者が参加させられているという、驚きの事実に二人も開いた口が塞がらない。

「それだけじゃない。敵は、過去も未来も、原因も結果も無視してこの殺し合いを開いたのかもしれないんだ。」
覚の話から、敵の恐ろしさに背筋が寒くなる二人。


「なるほどな。それが、わしのここにいる理由か。」
のび太の方から、低い男の声が聞こえた。
「ん?ノビタ、何か言ったか?」
「いや、ダルボスさんが言ったんじゃない?」
「君の鞄から何かいるんじゃないか?」

覚がのび太の鞄を開けると、そこから出たのは、写真だった。


「安易に鞄など開けるものじゃないぞ!!」
「うわあ!!」
大きな声と、それとともに出てきた老人の写真に、腰を抜かすのび太。


「なんだ!!おらぁ!!」

ダルボスが掴もうとするも、するりと写真は抜ける。
「お前らに捕まるものか!!」


既に写真はダルボスの手の届かない高さまで飛んでいた。しかも、その手にはサイコ・バスターを持って。
「待て!」
覚が呪力で、写真を引き下ろそうとする。

「待てと呼ばれて待つバカなど、誠実な政治家くらいおらんぞ!!」
(呪力が効かない?いや、トランプは普通に動かせた。範囲が狭まっているのか!?)

それから写真が、三人の目から消えるのは、そこまで時間がかからなかった。
ただでさえこの辺りは障害物の多い市街地で、空を飛べる者をそうでない者が追いかけるのは至難の業である。


「とりあえず二人とも、奴を追いかけよう!!あいつが誰の差し金か分からないけど、このままだと厄介なことになる!!」
「うん!!」
覚とのび太は追いかけようとする。
それに続けてダルボスも走る。






【A-8/市街地/一日目 深夜】

【ダルボス@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、タイムふろしき@ドラえもん のび太の魔界大冒険
[思考・状況]
基本行動方針:リンクと合流し、主催を倒す
1.写真の男(吉良吉廣)を追いかける
2.サトルの奴、さっき何をしたんだ?
※参戦時期は少なくともイリアの記憶が戻った後です。
※名簿の確認はしてません。

【野比のび太@ドラえもん のび太の魔界大冒険】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本行動方針:ダルボス、覚と共に脱出する
1.写真の男(吉良吉廣)を追いかける
2.朝比奈さん、エスパーなの?
※参戦時期は本編終了後です
※名簿の確認はしてません。


【朝比奈覚@新世界より】
[状態]:健康 焦り 早季への疑問
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:写真の男からサイコ・バスターを奪い返す
1.その過程でもし出来たら、早季や真理亜、奇狼丸を探す
2. のび太は呪力を持ってるのか?
※参戦時期はスクィーラを捕獲し、神栖66町に帰る途中です。









「ふふ、愚か者共め。いつからわしが、空にばかりいると思っていた?」
のび太たちが走り去った後、空き家の引き出しの中に隠れていた、男はほくそ笑む。

男はずっとのび太の鞄に隠れ、サイコ・バスターと共にチャンスを手ぐすね引いて待っていた。
そして怪しげなチョーカーが何なのか分かるや否や、隙を見て生物兵器を盗み出そうとしていた。


「なぜわしまで、しかもこの姿で蘇らせたのか知らないが、感謝しておるぞ。
これでまた、わしの吉影の世話が出来るのだからな!!」


男は笑いながら、窓からひゅるりと出て行った。



【写真のおやじ@ジョジョの奇妙な冒険】
のび太に支給された、ぶっちゃけハズレ支給品。
杜王町の殺人鬼、吉良吉影の父親が写真となって現れた姿。
元々息子の殺人の隠蔽を手伝っていた。
このロワでは原作とは違い、スタンド発現の矢を持っていないが、他の道具を持ち運ぶことが出来る。
どれほどのサイズまで持てるかは不明。

※現在はサイコ・バスター@新世界より を持っています
※まずは吉影との合流を考えています。


【サイコ・バスター@新世界より】
のび太に支給された、バイオハザードマークのカプセル。
呪力の持ち主が倒せない敵が現れた際の対処法として、中に猛毒の細菌兵器が入っている。
ただし、後始末を容易にするために、空気中に出されてから数時間で死滅するようになる。
本ロワでは、毒性が原作でも強くなる(人間より強い相手でも死亡or大ダメージ)反面、ウィルス死滅の速さも出てから数分ほどになっている。


【タイムふろしき@ドラえもん のび太の魔界大冒険】
ダルボスに支給された秘密道具
時計のマークがちりばめられたふろしきで、表に被せると古い人・物の時間を巻き戻すことが出来る。
逆に、裏にかぶせると新しい物を古くすることが出来る。
本ロワでは、1度しか使えない。



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最終更新:2021年04月17日 11:17