「うーん…どうしようかな」

広瀬康一は、迷っていた。
動くべきか、動かざるべきか。

彼がいるのは杜王駅。
ここに呼ばれた知り合いは皆杜王町に住む人達なので、ここで待っていれば知り合いと合流できるかもしれない。
しかし、自分みたいに近くに配置されていなければたどり着くとしても時間がかかるだろうし、時間を無為に浪費する結果に終わるかもしれない。
その間に殺し合いの犠牲になっている人が増えるかもしれないと思うと、動いた方がいいのではという気もしてくる。

そんなことを考えていると、やがて偵察に出していたエコーズがこちらに人が近づいていることを知らせてくる。
ほどなくして、その人物は現れた。
それは緑の帽子をかぶった小柄な少年だった。
そういえば、最初の場所で殺された少女の近くに、緑の帽子の二人組がいたような気がする。
3人目とかじゃあなければ、彼はその片割れだろうか。
向こうもこちらに気が付いたのか、足を止め…

「破邪の光よ、全てを零に導きたまえ…」
「なっ!?」

突然こちらに向けてなにかを唱え始める。

「エコーズ3FREE…」

康一は、決して油断していたわけではない。
だからこそ、相手の不審な動きに対してすぐに接近してエコーズを仕掛けるという動作を取れた。
しかし、先手を取られてしまったのは変えられない事実であり、結果として相手の行動を許してしまう。

「マジャスティス!」

少年から放たれた光を浴びる康一は、

「ええ!?」

再び驚きの声をあげることとなった。
今まさに相手に仕掛けようとしていたエコーズが…消えたのだ。

「くっ!?お前、何をした!?」
「…えっと、今の術、君に当たったよね?何故か隣の人形が消えたけど。てことは杞憂だったかあ」
「何を言ってるんだ!質問に答えろ!」
「そんなに怒らないでってば。僕の名はアルス。この殺し合いには乗っていないよ」


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

「じゃあアルス君は、あのオルゴ・デミーラを知ってるんだ」
「まあね」

康一の言葉を肯定したアルスは、申し訳なさそうな表情を見せる。

「ごめんね、僕たちがちゃんとあいつを倒してれば、こんなことに巻き込まれずに済んだかもしれないのに」
「い、いやそんな。あいつを倒したっていう君がいるのは、心強いよ」
「ああ、任せておいてよ。何度蘇ろうと…倒して見せるさ」

強い決意を乗せた瞳に、康一は彼の強さを感じ取る。
肉体的な強さではなく、精神的な強さを。
いきなり攻撃をしかけてきたこともあり疑っていたのだが、彼の言葉に嘘はないと、康一は感じていた。

「でも、それならなんでいきなり戦いを仕掛けてきたのさ。というかあれ、なんだったの?」
「いや、戦う気はなかったんだ。ただ、確認したかっただけで…」
「確認?」
「うん…実はこの殺し合いに、オルゴ・デミーラの配下が参加させられててさ」

そういってアルスは一枚のトランプカードを見せる。
そのトランプに書かれた名は、『ボトク』。

「こいつ、自分や他人の姿を自在に変えられる能力を持っててさ…」
「へえ、間田くんのサーフィスや彩さんのシンデレラみたいだな。間田くんのは変身っていうよりコピーだけど」

ちなみに杜王町には他に変身能力を持った参加者がおり、しかもこの殺し合いにも参加しているのだが、康一は面識がなかったので知らない。
まあ彼の場合、「地球人の顔は見分けがつきにくい」らしく、ボトクのような変装みたいな芸当はできないが。

「だから一応、出会った参加者に化けてないか確かめようと思って」
「それがさっきの光?なんかエコーズが消えたんだけど」
「うん、あの術は、相手の状態変化を全て無効化する能力があるから。魔力消費が勿体ないけど、命がかかってるし背に腹は代えられないしさ」
「なるほど…それでエコーズが消えたのか」
「そうそう!聞きたいんだけど、さっきのあの人形、なんなの?」

アルスは、先ほどのエコーズについて疑問があった。
あの時アルスは、康一本体に向けてマジャスティスを放ったはずなのに、エコーズが消えた。
マジャスティスは単体相手の術なのに、どういうことなのか不思議だった。

「なにって…スタンドだよ。見えるってことは、アルス君も似たような能力を持ってるんじゃないの?」
「いや、あんなの知らないよ」
「え~?じゃあ、スタンド使いじゃないのにスタンドが見えるの!?」

康一は驚き、そして腕を組んで考える。
康一が知る限りでは、スタンドはスタンド使いにしか見えない。
しかしアルスはスタンド使いでもないのにスタンドが見えるらしい。
アルスが特別なのか、それともこの場ではスタンド使いでなくともスタンドが見えるのだろうか。
とりあえず考えても分からないので、ひとまず康一はアルスにスタンドについて簡単に説明することにした。

「…とまあ、こんな感じかな」
「なるほどね、自分の身体の一部…一心同体みたいなものなんだ。だから君にかけたマジャスティスが、あの人形に効いたのかな」
「スタンドが受けた攻撃は、本体にもフィードバックするしね。今回は逆だったけど」


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疑問が解決したところで、二人は改めて情報交換をすることとなった。
お互い、トランプの名簿を取り出す。

「僕の知り合いは、さっき言ったボトク以外に、5人。ボトク以外は信用できるよ」
「僕も、5人かな。仗助君に由香子さん、重ちー君に早人君に…吉良吉影」

「仗助君は強いし頼りになる。早人君は僕たちみたいな能力を持ってない子供だから、早く保護してあげたいな」

「由香子さん…僕の彼女なんだけど、ちょっと気性が激しいとこがあって、最悪僕を守るために殺し合いに乗ってるかもしれない」

「重ちー…矢安宮重清君。この子は直接面識がないから、よくは知らない。吉良に殺されたはずなんだけど。お金への執着が強い欲深いところはあるけど、根は悪い奴じゃないって仗助君が言ってた」

「吉良…こいつは危険な殺人鬼だ。もしかしたら殺し合いに乗ってない可能性もあるかもしれないけど…そうだとしても心を許しちゃいけない」

その後康一は、早人と重ちー以外のスタンド能力について説明をした。
説明を聞いていたアルスは、吉良のスタンド能力の「バイツァ・ダスト」の説明を聞くと、「へえ…時を巻き戻す、か」と、少し興味深そうな反応を見せていた。
そして、康一が説明を終えると、今度はアルスが説明を始めた。
この殺し合いの主催者の一人…オルゴ・デミーラについて。

「僕たちの世界はさ、一つの島しかなかったんだよ」

アルスは語る。
オルゴ・デミーラによって封印された大陸。
それを取り戻す時をかける冒険。
各世界で巻き起こった異変。
二度にわたって戦うこととなったオルゴ・デミーラ。

「簡単に説明したけど…まあ、こんな感じかな」
「は、はあ…」

説明を聞いた康一の反応は、曖昧なものだった。
まあ、無理もないだろう。
一つの街で戦いを繰り広げてきた康一にとっては、あまりにもスケールのでかすぎる話だった。
あっさりと受け止められる話ではなかった。

「さて、これで話せることは話したと思うけど…コーイチ、どうする?僕は仲間やボトクを探すために動こうと思うんだけど、一緒に行く?」
「うーん…いや、もう少しここにいるよ。知り合いがここを目指してるかもしれないし…そうでなくとも、移動手段のこの場所には君みたいに他にも誰か来そうだし」
「そっか。じゃあ、ここでお別れだ。くれぐれも、ボトクには気をつけてくれよ」

こうして彼らは別れ、それぞれの道を進むことになった。


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「変身能力かあ。厄介なのがいるんだなあ」

アルスがいなくなると、エコーズを再び索敵に出しながら、康一はつぶやく。
もしも化けているのが知り合いなら確かめる方法などいくらでもあるが、初対面相手だと判断材料がない。
とりあえず康一は、せめてボトクが参加者以外に化けた時に対応できるようにと、トランプ名簿を眺めることにした。

【E-2/杜王駅周辺/一日目 深夜】

【アルス@ドラゴンクエスト7】
[状態]健康、MP微消費
[装備]不明
[道具]基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:オルゴ・デミーラやザントを倒す
1.ボトクの変身に警戒しながら仲間を探す
※参戦時期は本編終了後
※広瀬康一からヌ・ミキタカゾ・ンシ以外のジョジョ勢について聞きました。
※広瀬康一からスタンドについて聞き、ヌ・ミキタカゾ・ンシと重ちー以外のスタンド能力も把握しました

【E-2/杜王駅/一日目 深夜】

【広瀬康一@ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:オルゴ・デミーラやザントを倒す
1.しばらく杜王駅で待ってみる
2.ボトクに警戒
※参戦時期は4部終了後
※アルスからDQ7勢やオルゴ・デミーラについて、簡単な旅の概要と共に聞きました
※ヌ・ミキタカゾ・ンシのことは知りません



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投下順
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NEW GAME 広瀬康一 037:再会、対策、火種
最終更新:2021年04月26日 09:12