「良い寺だな、ここは。」
ドクロのネクタイの上に、白いスーツを身に着けた男が、畳の一室の座布団に座る。
その隣には、どこにでもありそうな制服の上に、クリーム色のカーディガンを羽織った、くせ毛の少女。

「それよりも、最初に出会えたのが吉良しゃんみたいな大人で良かったです!!」
少女、犬飼ミチルは、孤島での寮生活であった以上、近年頼れる大人というものにあまり出会えていなかった。
だから、こんな状況でも落ち着きを払った大人を見れば、頼れる大人だと思うのは当然だった。

「私はそれほど良い人間ではないよ。ただ、戦いや争いとか元々好まないだけだ。
人と人が争うなど、限りなく空しい行為だ。
血なまぐさい争いと関わることなく、この腐った競技から脱出できれば、それでいい。」
「でも、わたしはわたしだけじゃなく、友達も助けたいです。」
「友達?」


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


厄介な状況に巻き込まれた。
この世界に飛ばされて、吉良吉影が発した最初の心の言葉はそれだった。
彼は、殺人鬼であれど決して争い、ましてや殺し合いを好む気質ではない。
殺人は暴力的衝動の先にあるものでは無く、性的な欲望を満たすための行為だった。
決して、誰彼構わず殺したいわけではない。
例えば深夜にカップラーメンを食べることのように、生活でふと何か心が空しくなった際の、穴埋め代わりの行為だ。
にも関わらず、しつこく追いかけてきた者達がいた。


整形エステで、顔を川尻耕作のものに変えてもらい、新たな生活を手に入れ、ようやく振り切ったと思った矢先に、この殺し合いだ。
森林地帯を抜けた先に寺を見つけ、落ち着けそうな場所であったため、とりあえず自分の拠点にしようとする。

しかし、残念なことに先客がいた。
おまけに、小うるさそうな女だ。
さっさと殺してやろうかとも思ったが、この近くに誰かがいれば、自分に疑いが深まる。

ひとまず、自分は殺し合いに乗っている者では無いことと、杜王町という場所でしがないサラリーマンをしていることだけ話したら、どういうわけか盛んに話しかけてきた。
お仕事大変ですかとか、自分は孤島の学校暮らしだからあまり会社員には会ってないとか、あれこれ話してきた。
そして、彼は一つのことが分かった。
この女は、小うるさい女ではなく、うるさい女であることに。


それからも、大半の話を聞き流していたが、うるさい女、犬飼ミチルの話の内容に、一つだけ引っかかることがあった。
「人類の敵!?」
「ええ。わたし達能力者は、人類の敵と戦うための訓練をしているのです。あの二人は、きっとそれに違いありません。」

孤島の学校に能力者だけで集められ、人類の敵と戦うための訓練をしている。
にわかには信じがたい話だが、現にこうして人類に害を及ぼす存在を目の当たりにしたからこそ、否定するのも難しい。

だが、まだ引っかかる話がある。
「だから今こそ、わたし達の出番というわけです!!死んだクラスの人たちの仇も取ってあげますよ!!」

ミチルの話によると、既に人類の敵は何度かその孤島に襲来していたというらしい。
人類の敵の目的とやらが、ミチル達能力者なら、こんな回りくどい事をせずとも、孤島に潜入して一人ずつ間引いていけばいい。
彼女が「仇」と言っていたから、少なくとも何人かは殺せているのだろう。
その途中、突然このようなゲームに河岸替えした理由が、全くもって分からない。
上司の急な交代による、方針の転換など関係あるかもしれないが。



「ちょっと吉良しゃん、聞いてますか?」
目を合わせずに、ミチルの話のおかしな点を考えていたことから、話が上の空だと思われていた。
「ああ、すまない。良い寺だと思ってね。」
「そうなんですか?わたしはこういうの、良く分からなくて……。」

即興のウソでごまかすことにする。
「良い寺だな、ここは。」


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


しかし、即席のウソなどで誤魔化すことなど、とても出来ない存在が、彼の下に迫っていた。


(あれは……どうして!?)
同じように森林地帯に飛ばされていた小学生、川尻早人が見つけたのは、衝撃の後ろ姿だった。
吉良吉影。
パパを殺し、パパに入れ替わっていた殺人鬼だ。


仗助くん達に追い詰められ、救急車に撥ねられて最期を迎えたはずなのに。
何にせよ、あの男はあの時と同様、恐ろしいことを企むはずだ。
小学生特有の小柄な体格を活かして、木の影に隠れながら、後を付けていた。

その先で、寺へと入る吉良。
隼人自身も辺りの様子をうかがいながら、ひっそりと中へ入る。
廊下を少し渡った先の部屋から、声が聞こえてきた。
一人は吉良、もう一人は知らない女性。
どうするのか聞き耳を立てながら、支給された鞄の中身を探った。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

場所は部屋の中。
「友達も助けたいとは……誰かいたのかな?」
トランプを散らかして、見せてきたのは桃色の髪にヒスイ色の瞳の少女だった。

「このナナしゃんって人は、わたし達のリーダーで……。」
他にも、3人ほど同じ学校から呼ばれているらしかった。
だが、吉良の目に付いたのは、自分の名簿、それに、4人の男の名前だった。
姿を変える前の自分をあと一歩の所まで追い詰めた、東方仗助に広瀬康一。
自分が大事にしていた美奈子さんの手を持って行ったがために、殺したガキに、移り変わった先の家にいた子供。


極めつけは、自分の名簿だ。
姿は川尻耕作の姿が映りこんでおり、それでいて吉良吉影の名前になっている。
何の嫌がらせだ、と伸びた爪を立てて掌を握りしめる。
それと、さっきから興奮を誘うのは、ミチルと言う少女が、カードを動かすたびにチラチラ見え隠れする、白くて綺麗な手だ。
自分が頼れる大人だということを信じて疑わない、純粋な心を表すかのような、宗教画の天使のような手だ。


もっと顔を近づけたくてたまらない。
今にも頬ずりしたくてたまらない。
あの手と共に街を歩きたくてたまらない。
手だけ持ち帰りたくてたまらない。
愛撫したくてたまらない。


「吉良しゃん、大丈夫ですか?何か呼吸が荒いですよ?」
「いや、関係ない。こうした非日常に慣れないからだと思う。」

とりあえず無事を装う。

「あっ、怪我してますよ!」
ミチルは慌てて、爪を立てたために出血した吉良の掌を舐める。

「!?」
突然の対応に、吉良も言葉を出せなかった。
自分は先ほどまでミチルの綺麗な手を舐めまわしたいと思っていた。
だが、逆に舐めまわされるとは予想の斜め上を行くものだった。

しかし、さらに驚いたことは、自分の爪の痕が、消えていたことだった。


「小さなキズでも、バイ菌が入ったら大変ですよ!!」
「それが、君の能力という奴か。」

あの厄介者の東方仗助に似た能力とは何の因果か分からない。
だが、これでますます、ミチルをどうするか悩む。
文字通り飼い犬として、自分の怪我を癒す役、あるいは自分のことを知っている仗助達に会った際に、仲介役として使う。
しかし、ミチルを使うことにすると、必然的にミチルの仲間探しをする、ひいては血気盛んな輩に鉢合わせする可能性が高い。


ならば即殺害するか?
相手の手の内が分かった以上は、問題なく相手を制圧出来る。
否。
スタンドは一人一体までと言われるが、相手の能力はスタンドではない。
だから、2つの能力を持っていることも否定できない。


どうするか?


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


緊張する手で、早人はザックを開けた。
最初に目に入ったのは銃。

これがあれば、あの男をも殺せる。
だが、吉良はただの殺人鬼ではない。
スタンドという謎の力を使う。

不意を突かねば、倒すことはできない。
そもそも、銃など打ったことのない自分に、奴の心臓を打ち抜けるのか?



そもそも、身の保全のためにはここは一度逃げるべきじゃないのか?
だが、彼は目の前の敵と、銃に集中しすぎるあまり、名簿を見忘れていた。
彼がもし、名簿の存在を知っていれば、葛藤など起こさずとも、仗助達を探しに行くことにするだろう。
だが、今の所、戦うか逃げるかのフィフティフィフティで思考を巡らせている。
冷静な思考とはしようと思ってもそう簡単にできるものでは無い。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



(さて、どうしたものかな。)
清浄寺にいるのは、3人だけではない。


天井裏にいたのは、海賊船マール・デ・ドラゴーンの船長、シャーク・アイだ。

彼が海賊になるまでに培った魔法、トヘロスの力だ。

これでよほど敏感な相手出ない限り、気配を消すことが出来る。
気配消去の魔法と、海賊のリーダーになるだけの身体能力で、廊下の天井付近に隠れていた。
清浄寺に来るまで、用心深い早人に見つからなかったのもそれだ。


(あのガキ、何をしている?ただならぬ様子だから付けていたが、あの扉の向こうに誰かいるのか?)

ここには、長い時を経て再会した、アルスやその仲間もいる。
なるべくなら人殺しなどしたくはないが、ガキか、扉の向こうにいる相手が殺人鬼なら、手を打つことも考えねばならない。
普通に考えれば、ガキが追いかけているのが悪人で、そちらに加勢すべきだが、見た目で判断するなということもある。

さて、どちらかに加勢すべきか。



【C-3/清浄寺室内/一日目 深夜】

【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品 ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:ミチルに協力するべきか?殺すべきか?
1.名簿に載っていた、仗助、康一、重ちー、隼人に警戒
※参戦時期は川尻耕作に姿を変えてから、カップルを殺害した直後です


【犬飼ミチル@無能なナナ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:人類の敵と戦う
1:吉良と共に、同じ学校の能力者を探す(柊ナナ中心)
※参戦時期は柊ナナがリーダーになり、クラスの能力をまとめるように頼まれた直後です(アニメ4話後)。
※主催者は「人類の敵」だと思い込んでいます。


【C-3/清浄寺廊下/一日目 深夜】

【川尻早人@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康
[装備]:ベレッタm92@現実
[道具]:基本支給品 ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本行動方針:戦うか?逃げるか?
※本編終了後です

【シャーク・アイ@ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち】
[状態]:健康 トヘロス状態
[装備]:鶴見川のナイフ@無能なナナ
[道具]:基本支給品 ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本行動方針:アルスを探す、その過程で危なっかしい人物を倒す。殺し合いに乗る気はないが、最悪殺害も辞さない。
※少なくとも4精霊復活後です
※少なくとも船乗り、盗賊、海賊の技は使えます。


支給品紹介
ベレッタm92@現実
川尻早人に支給された小型銃。
誰でも打つことが出来るが、反動もバカにならない。
なお、何発弾が入っているか不明

鶴見川レンタロウのナイフ@無能なナナ
シャーク・アイに支給されたナイフ。
元々レンタロウが、美しい存在を見にくく傷つけることを目的に使っていた。
切れ味はそれなりである。



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NEW GAME 吉良吉影 041:パパは僕のパパじゃない
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NEW GAME 川尻早人
NEW GAME シャーク・アイ
最終更新:2021年05月24日 10:12