気が付いた時には、完全に手遅れだった。
場所は会場内を走る列車の中。
無駄だと分かっていても、慌てて列車内の後方に走り、ドアを何度も叩く。
ここで自分が戦いの場から離脱してはどうなる?
自分の力に自惚れているわけではないが、ギガスラッシュを受けてさえ倒れることのなかったあの怪物を、康一と由花子の二人だけで倒すのは難しい。
しかし、こうしている間にも列車はあの戦場から遠ざかっていく。
どうにかして列車に穴を空け、脱出しようとする。
今からでも急げば間に合うかもしれない。
だが、現実は非情だった。
窓を破って脱出しようとするが、いたずらに拳や足を痛めるだけだった。
ならばと支給品の水中爆弾をいくつか使ってみるも、車内を僅かながら焦げ付かせただけ。
結局何をしても駄目だということが分かると、座席に腰掛けて身体を休めることにした。
まだ殺し合いは始まったばかりでしかない。
到着先でも敵が襲ってくる可能性があるし、休んでおいて損はないはずだ。
だが、それがまずかった。
何もしていないと、次々と嫌なことが頭に浮かんでくる。
(こんなことになってしまったのは、僕のせいなのか?
二度もオルゴ・デミーラを倒したから、今回の殺し合いも止められるし、コーイチくんともユカコさんともきっと上手く行くと期待していた自惚れが原因なのか?)
そんなことはない、あれは不運な事故だ、と無理やり自分に言い聞かせる。
(けれどもし、ギガスラッシュをあの怪物に撃った後も、油断しなかったら?
それ以前に戦わず、三人で逃げることを選択していたら?)
とても休めた気はしなかったが、それからすぐに列車はハイラル駅にたどり着いた
「ハイラル駅〜。ハイラル駅〜。ご乗車ありがとうございました〜。引き続き、殺し合いをお楽しみください〜
なお、5分以内に下車しなければ、首輪を爆破しますので、ご注意ください〜。」
無機質な機械音、だが、苛立ちを誘うメッセージと共に、列車の扉は誰が操作せずとも開いた。
どこかフォロッド大陸のからくり兵団拠点で見たような仕組みだと思いながら、ハイラル駅に降り立つ。
『諸君。今いる世界を楽しんでいるか?』
その時のことだった。
魔空間の神殿にダークパレスと、聞いた回数こそ少ないがすっかり聞きなれてしまったオルゴ・デミーラの声が駅内に響き渡った。
報告内容は極めて単純だったが、アルスの心を深く抉った。
康一や由花子が呼ばれることは覚悟していたが、その前にマリベルとガボの名前が呼ばれることは、予想さえ出来ていなかった。
例えオルゴ・デミーラ達を倒し、帰れたとしても、大切な幼馴染はもういない。
死者の名前が呼び終わると、入ったら死ぬことになるというエリアが発表された。
無言で地図にメモを取る。
したくてやったとか、禁止エリアに入ってしまわないように注意する目的でやった訳ではない。
ただ、何かやっておかないと、頭がどうにかなってしまいそうだったからだ。
――ようやく目が覚めたのね、アルス。あんたっていつまでたっても寝坊助ね
(あれが最後に聞いた言葉って……ウソだろ?)
地図をしまった後、カードの束になっている名簿を覗く。
最初に見た時より、幾分か薄くなってしまっていた。
聞き間違いだったと思いこみ、隙を作ることも厭わず、カードを1枚ずつめくった。
マリベルのカードも、ガボのカードも、康一のカードも、由花子のカードも無かった。
もう一度めくってみても、何も変わっていなかった。
こうしていると、自分はよく口数の多い彼女の言葉を聞き流していたんだなと思った。
不思議と、色んな言葉を彼女は投げかけていたはずなのに、印象に残った言葉は、思い出はと聞かれると、何か今一つ選べない。
あるとするならーーーーー
(いや、やめておこう。)
まだやらなければならないことは大量にある。
康一君の友達だという仗助を、メルビンを、アイラを、もう一人の父を探す。
今もなお暴れているはずのあの怪物を今度こそ倒す
そうだ、1つ忘れていた。
レブレサックで倒したけど、復活して何処かにいるはずのあいつも……
(!!)
そこで、疑問という名のジグソーパズルが綺麗に合わさってしまった。
悔しさのあまり、力いっぱいそこにあるフクロウの像を叩いた。
あの女性だ。
あの女性はボトクが化けた姿で、奴があの怪物を唆した。
なぜ警戒して、相手から疑われることを覚悟でマジャスティスを使っていたのに、肝心な時に気付かなかったのだろう。
自分の間抜けさに、今度は腹立たしさしか覚えなかった。
改札口を抜けるのに切符を使うと、『不慮の事故故に切符手続きは不問にする』と書いてあるのに気づいた。
丁寧なものだ、と呆れながら改札を通り、階段を降りると、構内は惨憺たる状態だった。
血と煙の臭いが充満し、ただでさえ不快な気分が一層悪くなる。
石造りの柱のほとんどは欠けていて、倒壊する余地さえ見せないのが不思議なくらいだ。
あまり歩いていて落ち着ける場所ではない構内を歩くと、見てしまった。
何かを守るようにして黒焦げになって動かなくなっている獣人。
同じく黒焦げになって、物か何かのように転がっている男。
既に戦いは多くの場所で始まっているのは、嫌でも分かった。
そして、駅の入り口で、血だまりの中心に、一人の女性が倒れていた。
綺麗だったはずの金髪もピンクのドレスも、大量の血や体液を吸ってまだらに染まっている。
片足は離れた場所に転がっており、しかも内臓が至る所に散乱している。
それを見ると、突然悪寒が走り、胸がムカムカし思いっ切り吐いてしまった。
別に死人に見慣れていないわけではない。
例えばフォロッドでは、昨日まで必死で戦おうとしていた町人が、次の日には町の外で動かなくなっていたことなんてざらにあった。
けれど一人で、しかも精神が不安定な状態でこんな惨状を見せつけられ、思いっ切り吐いてしまった。
(この人にもきっと好きな人がいたはずだ。僕が上手くやっていれば、この女性も助けられたんじゃないか?)
考えまいとしても、思考は悪い方向に傾く一方だった。
広瀬康一はまだ立派だったかもしれない。
だって、大切な人と一緒に死んだから。
(少なくとも大切な人の死に目に会えず、だからと言って何も出来ずに生きている自分よりかは立派だったんじゃないか?)
駄目だ。
こんなところにいたら、きっとろくでもないことしか頭に浮かばない。
とにかく、どこかへ行こう。
【A-3/ハイラル駅/一日目 朝】
【アルス@ドラゴンクエスト7】
[状態]HP3/5、MP1/2 疲労(中) 憂鬱
[装備] 幸運と勇気の剣@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]基本支給品(切符使用済み パン、水マイナス1)、水中バクダン×8@ゼルダの伝説トワイライトプリンセス ランダム支給品0〜2(確認済み、武器ではない)
[思考・状況]
基本行動方針:オルゴ・デミーラやザントを倒す
1.仲間(メルビン、アイラ、シャーク、仗助)を探す
2.ローザ(に変身しているボトク)、クッパを今度こそ倒す
3.マリベル……
※参戦時期は本編終了後
※広瀬康一からヌ・ミキタカゾ・ンシ以外のジョジョ勢について聞きました。
※広瀬康一からスタンドについて聞き、ヌ・ミキタカゾ・ンシと重ちー以外のスタンド能力も把握しました
※少なくとも武闘家・僧侶・戦士・バトルマスター・パラディン・ゴッドハンドをマスターしています
※一部の強力な呪文・剣技等に制限(威力の低下)がかかっています。
最終更新:2021年12月31日 09:38