近代学校以前は、例外的に大きな学校以外は、ひとつの学校の「スタッフ」はごく少数だった。寺子屋のような、現在の「個人塾」のようなものが、近代以前の大部分の学校形態だったろう。近代的な学校になって、「学級」が作られ、教師が複数となり、校長や職員が必要となった。そして、その後、給食、養護教諭等が加わり、そして、現在はスクール・カウンセラーなどが、新たに職種として加わっている。(しかし、ヨーロッパの
小学校の多くは、一学年一学級で、校長と担任の教師だけで構成されている場合が多い。せいぜい補助の教員がいる程度である。事務職員などもいない。)
それは、社会の学校に対する要求が複雑・多様化したことの反映だろう。
学校教育法は教師の分化を前提にそれぞれの職種の任務を規定している。
第三十七条 小学校には、校長、教頭、教諭、養護教諭及び事務職員を置かなければならない。
○2 小学校には、前項に規定するもののほか、副校長、主幹教諭、指導教諭、栄養教諭その他必要な職員を置くことができる。
○3 第一項の規定にかかわらず、副校長を置くときその他特別の事情のあるときは教頭を、養護をつかさどる主幹教諭を置くときは養護教諭を、特別の事情のあるときは事務職員を、それぞれ置かないことができる。
○4 校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する。
○5 副校長は、校長を助け、命を受けて校務をつかさどる。
○6 副校長は、校長に事故があるときはその職務を代理し、校長が欠けたときはその職務を行う。この場合において、副校長が二人以上あるときは、あらかじめ校長が定めた順序で、その職務を代理し、又は行う。
○7 教頭は、校長(副校長を置く小学校にあつては、校長及び副校長)を助け、校務を整理し、及び必要に応じ児童の教育をつかさどる。
○8 教頭は、校長(副校長を置く小学校にあつては、校長及び副校長)に事故があるときは校長の職務を代理し、校長(副校長を置く小学校にあつては、校長及び副校長)が欠けたときは校長の職務を行う。この場合において、教頭が二人以上あるときは、あらかじめ校長が定めた順序で、校長の職務を代理し、又は行う。
○9 主幹教諭は、校長(副校長を置く小学校にあつては、校長及び副校長)及び教頭を助け、命を受けて校務の一部を整理し、並びに児童の教育をつかさどる。
○10 指導教諭は、児童の教育をつかさどり、並びに教諭その他の職員に対して、教育指導の改善及び充実のために必要な指導及び助言を行う。
○11 教諭は、児童の教育をつかさどる。
○12 養護教諭は、児童の養護をつかさどる。
○13 栄養教諭は、児童の栄養の指導及び管理をつかさどる。
○14 事務職員は、事務に従事する。
○15 助教諭は、教諭の職務を助ける。
○16 講師は、教諭又は助教諭に準ずる職務に従事する。
○17 養護助教諭は、養護教諭の職務を助ける。
○18 特別の事情のあるときは、第一項の規定にかかわらず、教諭に代えて助教諭又は講師を、養護教諭に代えて養護助教諭を置くことができる。
○19 学校の実情に照らし必要があると認めるときは、第九項の規定にかかわらず、校長(副校長を置く小学校にあつては、校長及び副校長)及び教頭を助け、命を受けて校務の一部を整理し、並びに児童の養護又は栄養の指導及び管理をつかさどる主幹教諭を置くことができる。
この規定は2007年に改訂されたもので、それまでは教職員の分化を規定した条文は以下のようなものだった。
[校長・教頭・教諭その他の職員〕
第二十八条 小学校には、校長、教頭、教諭、養護教諭及び事務職員を置かなければならない。ただし、特別の事情のあるときは、教頭又は事務職員を置かないことができる。
(2) 小学校には、前項のほか、必要な職員を置くことができる。
(3) 校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する。
(4) 教頭は、校長を助け、校務を整理し、及び必要に応じ児童の教育をつかさどる。
(5) 教頭は、校長に事故があるときはその職務を代理し、校長が欠けたときはその職務を行なう。この場合において教頭が二人以上あるときは、あらかじめ校長が定めた順序で、その職務を代理し、又は行う。
(6) 教諭は、児童の教育をつかさどる。
(7) 養護教諭は、児童の養護をつかさどる。
(8) 事務職員は、事務に従事する。
(9) 助教諭は、教諭の職務を助ける。
(10) 講師は、教諭又は助教諭に準ずる職務に従事する。
(11) 養護助教諭は、養護教諭の職務を助ける。
(12) 特別の事情のあるときは、第一項の規定にかかわらず、教諭に代えて助教諭又は講師を、養護教諭に代えて養護助教諭を置くことができる。
ふたつを読み比べればわかるように、旧法の6項から12項までは、新法の11項から18項(13項を除く)までと同じである。そして、副校長、主幹教諭、栄養教諭という全く新たな職種が加えられたことで、7条も増えることになった。そして、増えた部分はほとんど「管理職」に当たる規定となっている。
旧2項は、「必要な職員」となっていたのが、新法では、「副校長、主幹教諭、指導教諭、栄養教諭」と具体的な職種が規定され、4つのうち3つまでが管理職である。
違いを整理してみよう。
1 校長の下に教頭より上位の「副校長」という職種を設定したこと。しかも、これまでの教育法においては、極めて珍しい「命を受けて」という言葉が示されている。教育法においては、「命令」そのものが、極めて重要な意味をもっており、論争的な対象となっており、そのためもあって、実際上「職務命令」が存在したが、教育を行なう教諭に対して、命令を出すという規定は、学校教育法には、存在しなかったし、またこの新法においても存在しない。行政命令(
文部科学省および
教育委員会が学校に対して行なうものや、教育委員会が出席停止を生徒に行なう場合)だけが、「命令」とされていたのであるが、ここに管理職の関係で、命令をすることが法的に規定されることになった。
2 主幹教諭という新しい職種を設置し、ここでも「命を受け」という表現が使用されている。しかも、命令を出せる者が、明確には規定されていない。
3 栄養教諭という「食育」に関わる新たな教諭の職種が設定された。しかし、影響教諭の行なう仕事は、主幹教諭が代行することもできることになっている。
さて、以上の改訂によって浮き彫りにされる事態は、明確に「管理職の強化」に他ならない。このことがもつ意味は、あとで考察する。
第2項における「必要な職員を置くことができる」という事例について、代表的なものは以下の通りである。
(学校給食栄養管理者)
第五条の三
義務教育諸学校又は共同調理場において学校給食の栄養に関する専門的事項をつかさどる職員は、教育職員免許法 (昭和二十四年法律第百四十七号)第四条第二項 に規定する栄養教諭の免許状を有する者又は栄養士法 (昭和二十二年法律第二百四十五号)第二条第一項 の規定による栄養士の免許を有する者で学校給食の実施に必要な知識若しくは経験を有するものでなければならない。(学校給食法)
第六十五条 学校用務員は、学校の環境の整備その他の用務に従事する。 (学校教育法施行規則65条)
また高等学校独自の職員として以下のようなものがある。
第六十条 高等学校には、校長、教頭、教諭及び事務職員を置かなければならない。
○2 高等学校には、前項に規定するもののほか、副校長、主幹教諭、指導教諭、養護教諭、栄養教諭、養護助教諭、実習助手、技術職員その他必要な職員を置くことができる。
○3 第一項の規定にかかわらず、副校長を置くときは、教頭を置かないことができる。
○4 実習助手は、実験又は実習について、教諭の職務を助ける。
○5 特別の事情のあるときは、第一項の規定にかかわらず、教諭に代えて助教諭又は講師を置くことができる。
○6 技術職員は、技術に従事する。(学校教育法)
特別支援学校で寄宿舎を設けるときには、寄宿舎指導員が必要である。
第七十八条 特別支援学校には、寄宿舎を設けなければならない。ただし、特別の事情のあるときは、これを設けないことができる。
第七十九条 寄宿舎を設ける特別支援学校には、寄宿舎指導員を置かなければならない。
○2 寄宿舎指導員は、寄宿舎における幼児、児童又は生徒の日常生活上の世話及び生活指導に従事する。(学校教育法)
また学校には学校医を置くことが学校保健法によって規定されている。
(学校医、学校歯科医及び学校薬剤師)
第十六条 学校には、学校医を置くものとする。
2 大学以外の学校には、学校歯科医及び学校薬剤師を置くものとする。
3 学校医、学校歯科医及び学校薬剤師は、それぞれ医師、歯科医師又は薬剤師のうちから、任命し、又は委嘱する。
4 学校医、学校歯科医及び学校薬剤師は、学校における保健管理に関する専門的事項に関し、技術及び指導に従事する。
5 学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の職務執行の準則は、文部科学省令で定める。
(学校保健法)
更に学校の中で中核である教諭については、更に分化があり、教諭から管理職が選抜されることになっている。(近年外部から校長を受け入れる体制が導入され、必ずしも教諭からなるわけではないが、外部からの管理職導入はまだ例外的といえる。)
小学校に関する主任等については学校教育法施行規則によって規定されている。
第二十二条の二 小学校においては、調和のとれた
学校運営が行われるためにふさわしい校務分掌の仕組みを整えるものとする。
第二十二条の三 小学校には、教務主任及び学年主任を置くものとする。ただし、特別の事情のあるときは、教務主任又は学年主任を置かないことができる。
○2 教務主任及び学年主任は、教諭をもつて、これに充てる。
○3 教務主任は、校長の監督を受け、教育計画の立案その他の教務に関する事項について連絡調整及び指導、助言に当たる。
○4 学年主任は、校長の監督を受け、当該学年の教育活動に関する事項について連絡調整及び指導、助言に当たる。
第二十二条の四 小学校においては、保健主事を置くものとする。ただし、特別の事情のあるときは、これを置かないことができる。
○2 保健主事は、教諭又は養護教諭をもつて、これに充てる。
○3 保健主事は、校長の監督を受け、小学校における保健に関する事項の管理に当る。
第二十二条の五 小学校には、事務主任を置くことができる。
○2 事務主任は、事務職員をもつて、これに充てる。
○3 事務主任は、校長の監督を受け、事務をつかさどる。
第二十二条の六 小学校においては、前三条に規定する教務主任、学年主任、保健主事及び事務主任のほか、必要に応じ、校務を分担する主任等を置くことができる。
第二十二条の四 小学校においては、保健主事を置くものとする。ただし、特別の事情のあるときは、これを置かないことができる。
○2 保健主事は、教諭又は養護教諭をもつて、これに充てる。
○3 保健主事は、校長の監督を受け、小学校における保健に関する事項の管理に当る。
第二十二条の五 小学校には、事務主任を置くことができる。
○2 事務主任は、事務職員をもつて、これに充てる。
○3 事務主任は、校長の監督を受け、事務をつかさどる。
第二十二条の六 小学校においては、前三条に規定する教務主任、学年主任、保健主事及び事務主任のほか、必要に応じ、校務を分担する主任等を置くことができる。
中学は以下の通りである。小学校の規定をすべて準用した上で次の項目が付加される。
第五十二条の二 中学校には、生徒指導主事を置くものとする。ただし、特別の事情のあるときは、これを置かないことができる。
○2 生徒指導主事は、教諭をもつて、これに充てる。
○3 生徒指導主事は、校長の監督を受け、生徒指導に関する事項をつかさどり、当該事項について連絡調整及び指導、助言に当たる。
第五十二条の三 中学校には、進路指導主事を置くものとする。
○2 進路指導主事は、教諭をもつて、これにあてる。校長の監督を受け、生徒の職業選択の指導その他の進路の指導に関する事項をつかさどり、当該事項について連絡調整及び指導、助言に当たる。
高校は以下の通りである。小学校の規定は5項、中学校規定の1項を除いて、高校にも準用される。
第五十六条の二 二以上の学科を置く高等学校には、専門教育を主とする学科ごとに学科主任を置き、農業に関する専門教育を主とする学科を置く高等学校には、農場長を置くものとする。ただし、特別の事情のあるときは、学科主任又は農場長を置かないことができる。
○2 学科主任及び農場長は、教諭をもつて、これに充てる。
○3 学科主任は、校長の監督を受け、当該学科の教育活動に関する事項について連絡調整及び指導、助言に当たる。
○4 農場長は、校長の監督を受け、農業に関する実習地及び実習施設の運営に関する事項をつかさどる。
第五十六条の三 高等学校には、事務長を置くものとする。
○2 事務長は、事務職員をもつて、これに充てる。
○3 事務長は、校長の監督を受け、事務をつかさどる。
結局条文を読む限り、校務分掌のための主任・主事等を置くことができるが、必ず置かねばならないのは、中学・高校の進路指導主事、高校の事務長くらいである。
Q 条文だけでは理解しがたいので、各自勉強のつもりで一覧表にまとめてみよう。
このように、現在の学校では、校長・教頭・教諭・養護教諭、事務職員等に分化し、さらに教諭には、いくつかの主任が設定されている。教諭が充てられる職務においては、指導助言をすることが明記されており、命令等の権限は付与されていない。
では学校の教師は相互にどのような関係をもつことが、教育的に好ましいのだろうか。これにはふたつの論理が対立してきた。そして基本的には今でも論理的な対立は残っているといえる。
第一は「単層構造論」と呼ばれる議論である。
宗像誠也は次のように書いている。
学校では、簡単にいって、校長一人を除いて他の教諭は全部50人の子どもをかかえて授業をしている。「主任」も、工場の職制のように、作業層と異なった仕事をしているのでは決してない。もちろん学校でも、副次的に校務分掌上の便宜のために教務主任も学科主任も設けられるだろう。しかし、教師の一番大切な仕事は、子どもを教えること--授業--であり、そして授業に関してはみんな全く一様の仕事をしているのである。(略)その意味で学校は、伊藤さんのことばを借りれば、本質的に単層組織なのである。46)宗像誠也 著作集4 p234
これに対して、重層構造論というのは、教師集団が校長を頂点として平の教諭までのピラミッド構成をしており、階層があるとする論理である。これはここに引用されている伊藤和衛氏の唱えたもので、政府側はずっとこの論で一貫している。
しかし、現実的には、必ずしも法令の規定が重層構造となっているわけではなく、先述したように、教諭をもって充てるとする職務については、命令権はなく、指導助言をするというように明確に規定されているが、これはある面で教師は、たとえ主任やそれ以外も基本的に平等で同質の仕事をしており、授業以外の仕事の分担として主任や主事の仕事を行い、それは専門的な助言を行うのだということであるから、宗像の主張する単層構造の考えに近いとも言えるのである。
実際に国際的には単層構造的な考えは決して少数ではなく、極端な例でいうと、シュタイナー学校は校長すらも、教師たちの互選による任期付きの校務分掌のひとつであり、明確な単層構造説をとっている。ちなみに文教大学の教員組織は、教授や助教授、講師という区分はあるが、給与や職務上の制約はまったくなく、権利も責任もまったく平等である。
Q 校長と教諭は、まったく異なる職種なのだろうか、あるいは、厳密に分けることは望ましくないのだろうか。
最終更新:2008年07月26日 07:22