ロンドン郊外の裏路地の一角に、一人の少女と一人の少年が腰を降ろしていた。
少女の名は綾狩 優李。『原石』の能力者にして、同時にフリーの魔術師でもある。
少年の名は上条 当麻。『幻想殺し』を保有する超能力者かどうかも分からない高校生である。
少年の名は上条 当麻。『幻想殺し』を保有する超能力者かどうかも分からない高校生である。
上条は、神裂と土御門によって半ば無理やりロンドンまで、『仕事』と称する物を果たすためにやってきた。それも『安全な仕事ですから』とか神裂に言われて多少安心して来て見れば、謎の襲撃者に襲われるわ、神裂が襲撃者とド派手に戦闘始めるわで何が安全なのか理解できない。
「不幸だ……」
「どうしました?」
綾狩は相変わらず能天気な顔で上条の顔を覗き込む。
この少女は、超能力者兼魔術師というよく解らん立ち位置にいる少女で、その通り、超能力者なのに魔術が使えてしまうという極めてイレギュラーな存在である。それが原因なのか世界中に組織(?)から追われる羽目になっているらしい。
「どうしました?」
綾狩は相変わらず能天気な顔で上条の顔を覗き込む。
この少女は、超能力者兼魔術師というよく解らん立ち位置にいる少女で、その通り、超能力者なのに魔術が使えてしまうという極めてイレギュラーな存在である。それが原因なのか世界中に組織(?)から追われる羽目になっているらしい。
「超能力者が魔術を使う時に負う傷を、自分の『肉体再生(オートリバース)』で治しちまうなんて……土御門だってそんな事できねぇよ。」
この少女は魔術を使っても副作用が無いという訳では無く、その副作用による『傷』を自身の能力『肉体再生』によって一瞬で治しているに過ぎない。それでも、傷を一瞬で完治するという事は、大能力者以上の能力なのだろうか。少なくとも土御門とは比べ物にならない。
この少女は魔術を使っても副作用が無いという訳では無く、その副作用による『傷』を自身の能力『肉体再生』によって一瞬で治しているに過ぎない。それでも、傷を一瞬で完治するという事は、大能力者以上の能力なのだろうか。少なくとも土御門とは比べ物にならない。
それでも綾狩は自身の無さそうな顔で呟き加減にこう言った。
「でも、いくら『肉体再生』を持っているとは言え、使える魔術には限界が有ります。大多数の標的を攻撃するような大魔術を使えば、傷の回復が追いつかなくて絶命しますから」
彼女の超速再生と言っても過言では無い能力でも追いつけないという事は、大魔術を使った際に体に掛かる負担がどれだけの物かを物語っている。
「……まぁ、難しい話は後にして、少しでもあの場から離れた方が無難かもな」
「でも、もう一kmは離れていると思いますから、大丈夫じゃないですか?」
「でも、いくら『肉体再生』を持っているとは言え、使える魔術には限界が有ります。大多数の標的を攻撃するような大魔術を使えば、傷の回復が追いつかなくて絶命しますから」
彼女の超速再生と言っても過言では無い能力でも追いつけないという事は、大魔術を使った際に体に掛かる負担がどれだけの物かを物語っている。
「……まぁ、難しい話は後にして、少しでもあの場から離れた方が無難かもな」
「でも、もう一kmは離れていると思いますから、大丈夫じゃないですか?」
「神裂の混じった戦闘にそんな常識は通用しないんだよ」
土御門はロンドン市内の喫茶店内の座席に座っていた。
その手には『外』で購入したノートPCと携帯電話が収まっている。
(……指令の訂正文がきたと思ったら…なんだこれは?)
学園都市製と比べて圧倒的に機能性の低いノートPCの画面には、学園都市から送られた『指令』の文章が映っている。
その手には『外』で購入したノートPCと携帯電話が収まっている。
(……指令の訂正文がきたと思ったら…なんだこれは?)
学園都市製と比べて圧倒的に機能性の低いノートPCの画面には、学園都市から送られた『指令』の文章が映っている。
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『グループ』 指令書 (訂正)
目的人物 『綾狩 優李』
簡易情報 『原石』の能力者 兼 魔術師
特徴 黒髪蒼眼の少女
特徴 黒髪蒼眼の少女
本文 目的人物に接触した後、学園都市の正式な『生徒』になるよう説得。
説得に応じない場合は、他組織に加入、協力する恐れがあるため、速やかに抹殺。
説得に応じない場合は、他組織に加入、協力する恐れがあるため、速やかに抹殺。
尚、今回指令を実行するのは、『一方通行』『土御門 元春』のみ。この二人は原則別行動とする。
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こんな短い指令ぐらい電話で言えよ、と呟いてから、喫茶店の戸を引き店外にでる。
「説得に応じなければ抹殺……か」
彼は喧しい通りで、静かに空を仰ぐ。
(綾狩 優李は、恐らく説得には応じない)
土御門がそう思うのには確証があったからかもしれない。また、その逆なのかもしれない。
「説得に応じなければ抹殺……か」
彼は喧しい通りで、静かに空を仰ぐ。
(綾狩 優李は、恐らく説得には応じない)
土御門がそう思うのには確証があったからかもしれない。また、その逆なのかもしれない。
(と、いう事は、また殺し合いか。それも殺す対象がカミやんと一緒に逃げ延びてる女の子ときたもんだ)
上条には綾狩は『調査するだけ』と伝えてある。つまり、綾狩を手に掛けるという事は上条を裏切るという事になる。
上条には綾狩は『調査するだけ』と伝えてある。つまり、綾狩を手に掛けるという事は上条を裏切るという事になる。
(でも、まぁ……)
土御門は少し、笑った。
「Fallene825(背中刺す刃)…この名が伊達じゃない事を、あの裏世界の素人に教えてやらんとな」
土御門は少し、笑った。
「Fallene825(背中刺す刃)…この名が伊達じゃない事を、あの裏世界の素人に教えてやらんとな」
つんつん頭の少年は険しい顔をしていた。
黒髪蒼眼の少女はそれを不思議そうに眺めていた。
それを見ながらサングラスの少年は少し笑った。
「それは……本当か…?」
「ああ、本当だ。俺も気づいてからは驚いたがな」
二人の少年はロンドン郊外の裏通りから少し出た場所にある。噴水がど真ん中に聳え立つ無駄に広い公園の片隅で対峙していた。
一人だけの少女は蚊屋の外感満載なので若干おろおろしていた。
黒髪蒼眼の少女はそれを不思議そうに眺めていた。
それを見ながらサングラスの少年は少し笑った。
「それは……本当か…?」
「ああ、本当だ。俺も気づいてからは驚いたがな」
二人の少年はロンドン郊外の裏通りから少し出た場所にある。噴水がど真ん中に聳え立つ無駄に広い公園の片隅で対峙していた。
一人だけの少女は蚊屋の外感満載なので若干おろおろしていた。
「もう一度言う。そいつを学園都市に引き渡す。どうやら『クソッたれのお偉いさん』から『綾狩優李を連れて来い。抵抗する場合は説得。応じない場合は抹殺』っていうよく分からん命令がでててな。俺も仕事をする立場としてそれに従わななきゃならん」
上条の言葉が詰まる。学園都市に引き渡せ? それはどうゆう意味だろうか?
「おい、おれらの仕事は『護衛』じゃなかったのか」
「だから、命令が変わったんだ。それに『護衛』っていうのは対象の安全を守ることだ。そいつは今、世界中の組織、団体から追われる羽目になってる。それなら学園都市に匿ってもらった方が『安全』じゃないのか?」
「おい、おれらの仕事は『護衛』じゃなかったのか」
「だから、命令が変わったんだ。それに『護衛』っていうのは対象の安全を守ることだ。そいつは今、世界中の組織、団体から追われる羽目になってる。それなら学園都市に匿ってもらった方が『安全』じゃないのか?」
上条は瞬間的に言い返すことが出来なかった。やはり、その道の玄人の言葉には異様な説得力が含まれている。それに、学園都市も彼女を蔑ろにするとは言っていない。やはり、それが一番得策なのかと思い始めてしまった所で、
「……私は、嫌です。『あんな場所』には、もう……」
綾狩本人という一番大切な人物の意見が聞こえた。
上条はその言葉で固まった。彼女を学園都市にすんなり渡さないようにしよう、いくら土御門でもいいなりになるのはやめようとか『そんな事ではなく』、
上条はその言葉で固まった。彼女を学園都市にすんなり渡さないようにしよう、いくら土御門でもいいなりになるのはやめようとか『そんな事ではなく』、
「……『あんな場所』……?」
その一言が、一番引っ掛かった。
その発言はつまり、『彼女が学園都市に行った事がある』……否『彼女が学園都市に住んでいたという事』になる。しかも、あんな場所と表現するという事は……、
その発言はつまり、『彼女が学園都市に行った事がある』……否『彼女が学園都市に住んでいたという事』になる。しかも、あんな場所と表現するという事は……、
「そうゆう事だ、カミやん。」
土御門は今までの『説明』を根底から覆す言葉を放った。
「綾狩優李は、もともと学園都市の住人だ。つまり、『原石』ではない」
「綾狩優李は、もともと学園都市の住人だ。つまり、『原石』ではない」
二年前 二月二十二日
学園都市から、一人の『超能力者《レベル5》』が脱走した。
その能力者の在籍する学校は『長点上機学園』。その中でも貴重な《レベル5》だったのだが、旅行と称して学園都市のゲート付近まで車で乗着、外出者用のナノデバイスの注入する寸前に、『彼女』の乗っていた車が半径五〇前後を巻き込み爆発、炎上し行方がわからなくなった。
その能力者の在籍する学校は『長点上機学園』。その中でも貴重な《レベル5》だったのだが、旅行と称して学園都市のゲート付近まで車で乗着、外出者用のナノデバイスの注入する寸前に、『彼女』の乗っていた車が半径五〇前後を巻き込み爆発、炎上し行方がわからなくなった。
だが、『彼女』の能力は『肉体再生』であり、恐らく『あの程度の爆発』では生存している確率が高いとして学園都市総出で捜索活動を続けたが、学園都市周辺及び日本国内にはすでに居ないとの判断がでたために捜索は打ち切り。(海外での無断の捜索は国際問題になりかねないため)
この事実は統括理事会及び学園都市上層部以外には知られていない。
綾狩優李は、地獄から抜け出した。
味方など、情を懸けてくれる人間など一人も居ない地獄から。
表向きはエリート学校。しかし、裏向きは人体実験となんら変わらない『検査』を真顔で行う狂学者達の巣窟だった。その中でも綾狩がもっとも苦として、その日が来る前日には自らが『死ねない体』なのがなにより憎いと感じたものが、
表向きはエリート学校。しかし、裏向きは人体実験となんら変わらない『検査』を真顔で行う狂学者達の巣窟だった。その中でも綾狩がもっとも苦として、その日が来る前日には自らが『死ねない体』なのがなにより憎いと感じたものが、
身体検査《システムスキャン》
綾狩の能力は『肉体再生』。その能力の強度を測る方法など一つしかない。
そう、綾狩の体を傷つけることだ。
それも彼女は超能力者《レベル5》である。多少に傷なら一瞬で回復してしまうため、『どこまで傷つけても大丈夫なのか』を測らなければならない。いくら『肉体再生』だといっても彼女は人間であり、痛覚は存在する。限界を測るために、腕を切られて治って、足をもがれて治って、両足を引きちぎって治って、下半身と上半身を二つに切り離して、これは少し時間が掛かったが治った。
それも彼女は超能力者《レベル5》である。多少に傷なら一瞬で回復してしまうため、『どこまで傷つけても大丈夫なのか』を測らなければならない。いくら『肉体再生』だといっても彼女は人間であり、痛覚は存在する。限界を測るために、腕を切られて治って、足をもがれて治って、両足を引きちぎって治って、下半身と上半身を二つに切り離して、これは少し時間が掛かったが治った。
窓も無い実験部屋で痛みでもがき苦しむ彼女をみても、
『すごい!! どこまで耐えることができるんだ!?』
『ここまで耐えられた肉体再生は始めてだ』
『しかし、腕を切っても生えてくるとなると、切った腕が残って邪魔だな……』
『体を上半身と下半身に割ったら、上半身の方から下の部分が生えてきたから、残った下半身も邪魔で邪魔で』
『妹達《シスターズ》の実験もこんな感じなんですかね? もうすぐ始まるらしいですけど』
『ここまで残酷じゃないだろ』
『そうですよね』
『そりゃそうだよ、はっはっはっは』
『ここまで耐えられた肉体再生は始めてだ』
『しかし、腕を切っても生えてくるとなると、切った腕が残って邪魔だな……』
『体を上半身と下半身に割ったら、上半身の方から下の部分が生えてきたから、残った下半身も邪魔で邪魔で』
『妹達《シスターズ》の実験もこんな感じなんですかね? もうすぐ始まるらしいですけど』
『ここまで残酷じゃないだろ』
『そうですよね』
『そりゃそうだよ、はっはっはっは』
などと、楽しそうな声しか聞こえてこない。
(もう……いや……だ…)
そして、彼女は脱走を決意した。
そして、その彼女の脱走を影から支援し、成功に導いた人物を知る者は彼女以外に存在しない