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とある昼食のラブコメ

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Festival of large star IF「途中抜き話シリーズその1:とある昼食のラブコメ」  
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喫茶店に入るとやたらと元気な声をさせて長髪のウエイトレスが飛んできた。 
「いらっしゃいませぇー。 お二人様ですねー? こちらへ―」
「いや、俺は人と待ち合わせしていて、先に来ているはずなんだけど?・・・ん?二人?」
早速席へ案内しようとするウエイトレスを手で制して店内を見渡そうとしてウエイトレスの発言になにかが引っかかる。
上条はこの喫茶店に一人で来たはずなのにウエイトレスが案内しようとしたのは2人。 疑問に思ってウエイトレスに聞いてみる。
「いま二人って言った? 俺一人で入ってきたはずなんだけど――おわぁ!白井!?いつの間に後ろにいやがる!」
「あらら、その反応は女性を対してかなり失礼ですわよ。 ナイーブなわたくしのハートは結構傷つきますの。それからいつの間に、じゃありませんわ。
番号を教えてあるのに待てど暮らせど連絡は無いですし!私が殿方に番号をお教えするなんてことは本当に珍しいのですわよ。
あんまり連絡が無くて半分諦め気味に軽く散歩でもして常盤台中学の応援にでも行こうかなー、とか思ってブラブラしてたらこの
喫茶店に入るあなたが見えたので空間移動(テレポート) して背後に移動、それで今に至るって感じですわ」
上条の背後にはスポーツ車椅子に乗ったツインテールお嬢様―白井黒子が居た。 
その顔はにこにこと笑ってるように見えるが良く見るとこめかみのあたりに青筋が見える。
連絡していなかったのを怒っているみたいだ。
上条はバツが悪そうに視線を泳がせて白井を見て
「あ゛~、その、なんだ・・・。 いまから親父達と一緒に昼メシなんだけど・・・その、よかったらお前も一緒に来るか?」
鼻の頭をカリカリと掻きながら白井に言ってみた。
「ええ、ご一緒させていただきま―――ッ!?」 
快く承諾の意を上条に伝えようとした白井が突然言葉を切って固まる。
ん?、と思って白井の視線を辿ってみるとその先にはなにやら不機嫌そうにテーブルに頬杖を突いて座る御坂美琴の姿があった。
「白井?もしかしてあの人は、アレかな?俺と会うたびに10億ボルトの電撃を撃ってくる中学生かな?」
上条のその言葉を聞いて白井は顔を蒼白にしてガタガタと震えだす。 しばらくそんな状態を続けた後に
「と、殿方さん、申し出は嬉しいのですがわたくし、い、いまはダイエット中でして、その昼食は
控えておりますの、やはり痩せてるほう魅力的ですわよね。というわけで失礼します!!」
早口でそんな事を言いながら上条の「お、おい?」という言葉もスルーして来た時と同じように空間移動(テレポート)を発動させて白井黒子は消えて
しまった。
案内を止められたままのウエイトレスが事の一部始終を見ていたが全く動かなくなってしまった上条の対応に
困っておろおろとしていたが丁度そこへ店内の一席から声を掛けられた。 
「おーい、当麻。こっちだこっち、さぁ早く来なさい。 母さんが楽しみにしてるだろう」
「あらあら刀夜さんったら。 本当は自分が一番楽しみにしている癖に」
おろおろするウエイトレスにその席を指差して「待ち合わせ相手はあそこの席みたいだ」と告げると
「はい、かしこまりましたー。 ではお席の方へご案内いたします」と言って満面の営業スマイルをくれた。
先を歩いていくウエイトレスについて店内を歩いて声の主と同じボックス席に座る。
「あんまり大声で騒ぐんじゃねぇよ。他のお客さんとか見てんだろ」
「あらあら当麻さんったら恥ずかしがり屋さんなのかしら。 刀夜さんどうしましょう?」
「こら当麻。あんまり恥ずかしがるんじゃ無い! 母さん困ってるだろ」
向かい側に座る上条の両親 上条刀夜と上条詩菜は大声などあまり気にしてない様子で話を続ける。 
それを見るとまたかよ。と言う気持ちになるがこの夫婦はいつでもこうなのだ。 
いまさら息子の注意なんて気にも留めないだろう。 際限なくラブラブぷりを発揮する上条夫妻をいい加減にしろと手で制して
「喫茶店か、食料の持ち込みとか駄目なんじゃないのか?それとも何か注文するのかよ?」と聞いてみる。
「当麻、ここの喫茶店はな、なんと大覇星祭中だけ弁当の持込がOKなんだそうだ!どうだ?すごいだろう?」
「いや全然―。でも結構穴場だな、毎年大覇星祭中はどこの公園も弁当が食べられそうな場所はみんな埋まっちまうからなぁ」
「そうなんだよ、生徒の競技終了と共に会場を締め出されるから競技場では食べれないし、公園はどこも埋まってるから困った困った」
「ふーん、でどうしたんだよ結局? 適当にぶらついてここを見つけたのか?」
上条の質問に刀夜は自分の席と通路を挟んだボックス席に座る大学生ぐらいの女性を見て
「そこの女性がな、一緒に食べないかと誘ってくれたのだよ。 いやぁ親切な人が居るもんだなぁ当麻。
あ、あとそこの席のお二人さんには礼を言っときなさい。 お前を待っていてくれたんだからな」
向かいの席の大学生風の女性と目が合う。 上条は正直かなりの美人だと思った。上条の視線に気づいて大学生風の女性がにっこりと笑顔を作る。
「はじめまして、上条当麻くんだったかな? いつも娘がお世話になっているみたいで」
大学生風のお姉さんは上条に向かって軽く頭を下げてくる。
「う、え?娘!? 娘って誰!?お世話した記憶なんてないんですけど!?」
予想外の言葉にワタワタと慌てる上条を見てお姉さんは自分の向かい側に座っていた少女を指差してこう告げる。
「御坂美鈴。ここにいる御坂美琴の母です、当麻くんよろしくね」



「「母・・・母親・・・・ッて!?えええええ!!」」



上条と刀夜が揃って絶叫する。 とても信じられないと言った感じで美鈴を見る上条親子だったがにこにことお嬢様スマイルを絶やさない詩菜を見て
「「ま、ありえないことではないわな」」と納得してしまった。
「当麻くんの事は娘からいろいろと聞いてるわぁー。あんなこととかこんなこととかぁ――っ痛!? 美琴ちゃんがぶったぁぁ!? 
娘に殴られた・・・・ショボン」
ボックス席でくねくねと腰を振って目をキラキラさせて娘の秘密を語る美鈴に向かい側からゲンコツを振り下ろし、肩で息をする美琴は
瞳をウルウルさせる美鈴を無視して上条を睨むと
「アンタ!この馬鹿母が言ったあんなこととかこんなこととかはみーんな嘘っぱちだからね!!本気にしないでよ!」ギャアギャアと一気にまくし立てる。
当の上条は「あ~コーヒーが安いなーこんなに安くていいのか喫茶店のコーヒーって」とかメニューに目を移して完全無視を決め込む。
「あ~!なんだってアンタはいつも私のことに対する優先順位がこんなに低いのよ!!店内入った時から気づいてた癖に席につくなりこれかぁ!!」
「気づいてたなら声掛けろよ」美琴の抗議をさらりと受け流して上条は現状を確認する。
(なるほど、ここからだと入り口側は立っている人間しか見えないのか・・・じゃあ白井は美琴からは見えていなかったんだな)
「いやぁ、仲が良いですなぁ。当麻がこんなに元気そうなのは初めて見ます。 お宅の娘さんのおかげですかな?」
「いえいえ、うちの美琴もこんなに熱く男の子と口論するのなんて初めてみますわ。ケンカするほど仲がいいと言いますしね」
「あらあら、当麻さんったらそんなに冷たくしたら美琴さんがかわいそうですよ」
ケンカ、というよりは一方的に文句を言う美琴を上条がさらりと受け流すという流れを見て親御さん達はすっかり意気投合していた。
「なんでもうちの美琴ちゃんってばお宅の当麻くんの事ばっかり考えていて夜も眠れないとか言うんですよぉー」
「な、なんだと!!当麻!お前その子に何をしたんだ!はっ!?そういえば負けたら罰ゲームとかその子と話してたな・・・まさか!?罰ゲーム
であんなことやこんなことを!?むむむ。いかんぞぉ当麻!?」
「「やめんかぁぁ!!この馬鹿親がぁぁ!!」」
暴走する親御さんsにそれぞれゲンコツを炸裂させて上条と美琴は同じように荒い息をつく。
店内の他のお客さん達はなんだか痛い物でも見るような目でその一角を見ていた。 ありていに言えば上条達はひどく目立っていた。
上条と美琴は顔を赤くしてお互いを見るとお客さん達の冷たい視線から逃げるようにそれぞれテーブルに戻り小声で
「(ちょっと・・・あんたの親御さんもなかなか特殊ね。あんたそっくりだわ。特に私の話をちっとも聞かないところ)」
「(それをいうならお前の母さんだって、相当お前にそっくりだぞ。 特に俺の都合を考慮しないところ)」
なんだとなによ、というやり取りを通路を挟んで展開する二人を見た詩菜は閃いた、といった具合に手をポンと叩いて言った。
「あらあらやっぱり仲良しさんなのね。当麻さんたら好きな子に悪戯して泣かせちゃうタイプなのかしらー。」
「ち、ちがうっての!?なぁ父さん、母さんが暴走してるから何とかしてくれよ」
「当麻・・・正直に答えて欲しい。父さんからのお願いだ」
なんだよ、とぶっきらぼうに答える上条に刀夜は向かい側のテーブルから身を乗り出したままの美琴を指差して言う。
「孫はいつごろ見れる?っ痛!? 当麻いきなり何をする?父さんは真剣にだな!それとも何か?
まだまだ新婚気分だからしばらく子供は要らない、とそういうオチなのか!?」
「お・ま・えもか!この馬鹿親がぁぁ!!」
店内に上条の叫びが木霊する。
向かい側の席で美鈴が「最初は女の子がほしいわぁ、美琴ちゃん」と顔を真っ赤にする美琴をからかって遊んでいた。



2



「お客様・・・通路を挟んでの会話は他のお客様のご迷惑になりますので・・・」
そんな喫茶店の要望で上条一家と御坂ファミリーは同じ席に着くことになった。 
右から刀夜、詩菜、美鈴と並んでその向かいに当麻、美琴という座り方になり、やたらとニヤニヤする親御さんとは逆に隣同士に
なってしまったせいか美琴はこちらの顔をまともに見ないでソワソワしている。 
上条がたまに美琴の顔を覗き込んで風邪か?顔赤いぞ?とか聞いてみると
「な、なんでもないわよ!顔も赤くなんてなってないから!あ、あっち向いてなさいよ!」
上条の顔を見ないようにあさっての方向を見ながら怒鳴ってくる始末、美鈴はそんな美琴を見てより一層顔をにやけさせる。
詩菜は嬉しそうにニコニコと笑顔を振りまいてるし刀夜は刀夜であんなこと・・・こんなこと・・・とブツブツと言って悩んでいて誰一人として
上条の味方は居なかった。



(なにこの状況・・・お見合いかよ。もしくはどっかのTV番組の企画みたい)



困った顔をする上条を見てニヤリとあんまり品のよくない笑みを浮かべて美鈴が話を切り出す。
「ね~当麻くん、携帯電話って今持ってる? あ、それそれ貸して頂戴? うん、ありがとね」
何を唐突に言い出すんだろうこの人は、と思いつつも短パンから携帯電話を取り出して美鈴に手渡す。
「なにすんのよ、こいつの電話なんて借りて・・・使うなら私の使えばいいじゃないの」
「ん~これは当麻くんの携帯じゃないと意味ないのよー、美琴ちゃん。 可愛い娘の為、お母さんが一肌脱ごうってのよ」
娘の文句を軽くあしらいながら上条の携帯電話をカチャカチャと操作する。
『―~♪―~♪』
喫茶店の店内に携帯電話の着信メロディが鳴り響き、隣に居た美琴がビクッと反応し短パンのポケットを探って自分の携帯電話を取り出す。
携帯の画面を開いて電話番号を確認してる美琴の肩ごしにその画面が見えるが相手の名前は表示されてないようで番号だけが点滅していた。
(ん?なんか見覚えがある番号な気がするんですが、はて?)
やがて美琴がピッと通話ボタンを押して「もしもし?御坂ですが」と丁寧に電話に出たのを確認すると美鈴は突然上条の携帯電話を投げよこした。
「当麻くんパース!そのまま電話に出て!!」
美鈴から投げつけられた携帯電話を受け取って上条が開きっぱなしの液晶画面に目を落とせばそこには『通話中 御坂美琴』と表示されていた。
(まじかよ・・・まさか、な・・・)
と思い恐る恐る「あーもしもし、上条だけど―」と喋ってみた。
ビクゥ!と美琴の肩が震えてなにやら上条に背を向けて通路に向かってボックス席のシートに正座で座り始める。
上条が持つ携帯電話の受話器からは特に目立った音は聞こえない。 
「なんでこっち向かないんだお前?おい、もーしもーし、聞こえてるか?美琴ー?」
「き、聞こえてるわよ、ば、ばか。な、なんで、この、番号知ってるの?」
上条の受話器からは自分の隣で正座する少女の上ずった声が流れてきた。
「美琴ちゃんったら照れてかーわいいー。 可愛い娘のためにお母さんからの愛の手よー」
赤くなって挙動不審な娘の姿を満足そうに見つめて美鈴は更に続けて言う。
「当麻くーん、この子はもうすこーししたらきっと美人になるわよー。なんたって私の血が流れてるんだから。
胸だっていまはちょっと控えめだけど今に私みたいになるわー。お買い得の先物買いってやつねー。どうする?どうする?」
美鈴の言葉より強調するようにその存在を主張する美鈴の胸の辺りに目を奪われて思わずゴクリと生唾を飲み込む当麻と刀夜だが
それを見た詩菜の機嫌が悪くなる。
「あらあら、当麻さんはともかく刀夜さんまで。これはどういうことかしら?本当に刀夜さんったらあらあら私を怒らせて楽しいのかしら」
「い、や、母さん深い意味は無くてだね。その喉が渇いて突然生唾を飲み込みたくなっただけなんだよ!きっとそうだ!そうに違いない!!」
突然険悪なムードになる上条夫妻を気にせずにいまだに通話中の携帯に集中する美琴を指差して美鈴が続ける。
「ほらあの子を良く見て?あの子の胸と腰、それにお尻のライン、あれが成長すると――っちょ痛!!美琴ちゃんやめて!
携帯電話で殴るのはやめてぇ・・・ヨヨヨ」
「娘をいやらしい目で見させるなぁぁ!!それにアンタも!ちょっと!?そんな!?何ジロジロと・・・」
指を刺しながら美琴の胸やらお尻を上条に示す美鈴を撃沈し振り返ったところで上条の視線に気づいて慌てて胸を隠すように手で覆う。
「あわわ!見てません見てません!!美琴センセーの胸やお尻とかなんてちっとも見てません!!」
睨むような美琴の視線に思わず嘘をつく
「ほーら当麻君だってまんざらじゃないみたいだし、もっとアピールアピール!!」
「なにをアピールしろってのよぉー!!」
美鈴が頭を押さえながら真っ赤になって俯く美琴に向かってやたらとガッツポーズを連発する
上条は自分の手にある携帯電話の通話終了ボタンを押して美琴との通話を切ると俯いていた美琴の肩がビクっと震えて
上条を見て悲しそうな瞳を向けてくる。
なんで切るのよ。 瞳がそう語っていた。
「隣に居るんだから話したければ普通に話せばいいんじゃないかなーと上条さんは思ったりするんですが、なんで美琴さんがバチバチいってるのかが
理解できません!!」
一応一般論で対抗してみるが乙女心は複雑なようで少女の前髪がバチィと発光すると10億ボルトの雷撃の槍が飛んできた。
咄嗟に前に出した雷撃の槍が避雷針に呼ばれた雷のように集中し一瞬で消え去る。
「もー!普通にご飯タイムにしようよー。上条さんは朝から走り回っておなかぺっこぺっこなんですよおおおお!!とりあえずギブミー弁当!!」
と上条は叫ぶがウワーンとか言いながら電撃を撃ってくる美琴の攻撃はそれからしばらく続いた。 
周囲のお客さんもオオー、これが大覇星祭かとか勝手に盛り上がってる。
10分程ビリビリ→『幻想殺し(イマジンブレイカー)』の流れを続けているといい加減疲れてきたのか美琴が電撃を止めてくれたので
チャンスとばかりに上条は美琴を呼び寄せて
「あー、もうメシにしようぜメシ!!このままじゃ胃袋のジダンが審判の頭突きして退場喰らっちまう。ほら!美琴も
いつまでもバチバチしてないでこっち来い」
美琴の肩に手を掛けて強引に隣に引き寄せる。 右手から伝わる感触にちょっとドキっとするが構わずにそのまま肩を抱く。
「ちょ!?ちょっとぉ!」 肩を抱かれて上条の胸辺りに押し付けられた美琴が顔を真っ赤になって抗議するがその全てを無視する。
「は、はなして、よ、は、恥ずかしいから」
(放すと電撃飛んでくるから離しません・・・あんなの喰らったら上条さんはこんがりといい感じに焼きあがってしまいます。)
上条の真意はどうあれ、弱弱しく上条の体を押す美琴の手には言葉ほど拒絶の意は感じられない。 
形だけ嫌がってるといった感じに見える美琴と上条を見て親御さん達は口々に騒ぎ立てる。
「あらあら当麻さんったら積極的ねぇ、誰に似たのかしら学生時代を思い出すわぁ」
「こら当麻!母さん喜んでるだろ」
「みことちゃーん!その表情すてきー!こっち視線ちょうだーい!はいシャッターチャンス!」
いちゃつく上条夫妻と娘の衝撃映像をデジカメでしきりに映す美鈴。昼時の喫茶店のその一席は当の上条の思いとは別の方向に会話が弾んでいた。



3



事態が一旦安定したので念願の昼食にありつけることになり上条、御坂ファミリーはそれぞれテーブルにお弁当を出していた。
「今日は当麻さんがいっぱい食べると思って母さんいっぱい作ってきたの、しっかり食べてね」
「こら当麻!シーチキンマヨは父さんのだ。 お前は梅干おかかでも食べてなさい」
「私だってキチンと用意してきたわよ、いっぱい食べてね美琴ちゃん。ほらどーんとね!」
どーん、どーん、どーん・・・どすん
喫茶店のボックス席のテーブルに所狭しと並べられた弁当郡。
綺麗に三角形に握られて海苔を張られたおにぎり、タコ、カニなどの形のウインナー(魚肉)、眩いばかりに黄色い玉子焼き
プラスチックのフォークが刺さったミートボール、千切りにされたキャベツの上に盛り付けられた大量のから揚げ、ウサギさんカットされたリンゴ
絵に描いたような運動会風のお弁当、その中に異様な存在感を放ついくつかの物体があった。
「どーんって・・・丸ごとのチーズ?」
「それに寸胴鍋・・・どうやって持ってきたのよ」
「ちゃんとガスボンベとコンロも持ってきてるわーッ痛!
せっかく美琴ちゃんの為にチーズフォンディを作ろうと思って持ち込んだのに!?ねぇねぇ当麻くん、娘が反抗期なのー助けてちょうだい」
学園都市に持ち込めないはずの危険物―ガスボンベを大きいドラムバックから取り出したところで美琴の突っ込みが美鈴を襲う。
上条に対するような電撃は使用せず純粋に鉄拳制裁なのだが見た目にはすごく痛そうだ。
少しも懲りずに美琴はしつこく大量の乳製品を摂取させようとする美鈴を無言でシバキ倒すと当然のように上条の右手の元に戻ってくる。
「ふん、乳製品を取っても別に変化は無いわよ!!」
「いや・・背は伸びるんじゃないか?アレぐらい大量に取れば。」
美琴の肩をぽんぽんと叩きながら言う上条に美琴が火に掛けられた寸胴鍋で溶けるチーズをプラスチックの器に取ってこれまた
プラスチックのスプーンで上条の口へと運ぶ。 湯気が立ち昇るチーズはとっても熱そうだ、っていうかこのまま口に突っ込まれたら
絶対火傷する、そんな次元の熱さだった。
「ほほう・・・じゃあいっつもいっつも大怪我して病院通いなあんたにはピッタシねぇ・・・さぞ骨も丈夫になるんでしょう!!ほら!!ほら!!
ほらあ~ん、ってしなさいよぉぉぉ!!」
「ちょ・・・もがぁぁ熱々のチーズを無理やり食わせようとするなぁぁ」
口を閉じて断固拒否の構えを取る上条と湯気の出るチーズフォンディを無理やり流し込もうとする美琴。
すでにその体勢は先ほどまでのラブラブ体勢から向かい合う獲物と狩人と言った感じの戦闘体勢へと移行している。
「いいからさっさと口あけなさいよ!!冷めちゃうでしょうが!冷めたらおいしくないでしょう!!」
「嫌です!!断固拒否します!そんな熱々のチーズ流し込まれたら上条さんのデリケートなお口の中が大惨事ですけどね!!女の子なら
普通フーとか言って熱いものは冷ましてから食べさせるだろ普通!?そういう優しさは微塵もなしですか!?」
美琴は自分の手に持ったスプーンを少し眺めてしばらくブルブルと震えた後、おもむろにそのスプーンを自分の口の前に持ってきて。吹く。
「ふー・・・ふー・・・ふー・・・」
美鈴と美琴以外の時間がピタリと止まった。上条もマジデスカ、と呻く。周囲の雑音は全て止まり美琴がスプーンをフーフー吹く音だけが支配する。
湯気が立ち昇る熱々のチーズフォンディは美琴の息を吹きかけられてお口に入れても大丈夫な温度に変化しなお一層おいしそうな香りを漂わせる。
「こ、これでいいんでしょ!さ、さっさと口開けなさいよ。」
人目で分かるぐらいに顔を真っ赤に染めて美琴がスプーンを上条の口の前まで持ってくる。 
流石にここまでやられては、と観念したように上条が
「あ~ん」と大口を開けてみると途端に口の中いっぱいのチーズの風味が広がる。トローリと舌で程よい熱さのチーズが上条の味覚を激しく刺激する。
ほんのりとして柔らかいそれでいてまったくしつこくない後味。上条はしばらくそのチーズの味を楽しむと一言
「うまい」と言った。 
その最高の言葉を聞いた全員が笑顔を浮かべて喜ぶ。美鈴はわーい、と両手を上げてわざとらしくバンザイをし
上条夫妻は二人でアーン、はいアーン、と食べさせあいをしている。当の美琴に到っては
「ま、まだおかわりあるわよ、ほ、ほらあ~ん」
とか言って器になみなみに盛られたチーズフォンディを再びスプーンで掬って上条に更なる乳製品の摂取を強要する。
美琴は喫茶店のベンチシートに膝立ちになって前かがみで更に上条の方へと距離を詰めて
上条と美琴の周りだけがピンク色の空気を纏わせて喫茶店の店内の他の空間と強烈な温度差を生み出す。
「(うう、周囲の視線が痛い・・・おいしいけどなんか恥ずかしい)・・・パクリ」
早く食べなさいよ、と物語る美琴の視線に負けて上条が再び口を開くとすかさずスプーンが捻じ込まれる。
もはや上条とチーズフォンディしか目に見えてないのか美琴は執拗に上条の口にチーズを運び、上条は上条で差し出されたチーズをパクパクと食べる。
食べる→捻じ込む→食べる→捻じ込む、もはや一種の職人芸のようなタイミングで二人の動きが高速化する。
まるでわんこそばの早食い大会のような風景にギャラリーもおもわず感嘆の声を上げる。
(げぷ・・・もうお腹いっぱいですよコンチクショー)
何回かの美琴のおかわり攻撃を繰り返し器どころか寸胴鍋の中身が底を尽きはじめた頃上条の胃袋の空きスペースも底を尽いた。
「あらあら、当麻さんったら全部食べちゃったのかしら、これでは御坂さん達が食べるものが無いじゃないのかしら?」
「あーいえいえ、こんなにたくさん食べてもらっちゃてかえって嬉しいぐらいです。やっぱり男の子は食べっぷりが違うわねー」
「あの、もしよろしければウチの弁当でもいかがですか、そちらのは息子が全部平らげてしまったようですので。困ったものですなー全く」
お腹がパンパンになって苦しそうな上条なんて露知らず、ほのぼのとした親達も喫茶店に来た時よりも打ち解けて見える。
「美琴ちゃーん、当麻くんはもうお腹いっぱいみたいだからー、そんなに悲しそうな目をしても多分無理。やめときなさいー」
「ワリィ、本当に満腹です。これ以上はいくらなんでも食べれません・・・・」
美琴はそうなの?、といった視線を向けてくるが上条はその視線に全力で肯定する。
結局、胃袋の全容量を大量の乳製品だけで埋めて上条はそのままゴロンとシートに横になった。 
ポフ
(お、やわらかい・・・って何ィィィィ)
寝転んだまま視線を上に向ければキョトンとした顔でこちらを見下ろす美琴の顔が見える。 
その顔はもはや赤くないところを探すのが困難なくらいに紅潮している。
「まぁまぁ、当麻さんったら。新婚時代を思い出すわぁ、ねぇ刀夜さん?」
「こら当麻!!母さんが喜んでるじゃないか、もっとやりなさい」
「美琴ちゃんここがチャンスよ!膝枕作戦で一気に畳み掛けるのよー」
迫り来る電撃の恐怖に上条がガタガタと美琴の膝枕の上で震えていると上条の頭をぽんぽんと優しく叩いて美琴が言う。
「あんた食べすぎなのよ。食べれないならそういえばいいじゃない。」
「お前が食べさせたんだろうが・・・うっ・・・動くとチーズが・・・」
美琴ははいはい、と言うと上条を自分の膝の上で寝かせたまま詩菜からよそってもらった上条家の弁当を食べ始めた。
その顔はいまだに赤いが大分来た時より柔らかそうな表情だった。
途端に上条に強烈な眠気が襲ってきた。 胃袋から脳みそへ超満腹、もう食べれません信号が送られ脳みそからはかわりに全身に
お昼寝せよの指令が送られる。 
実際頬に当たる美琴の膝枕は大層気持ちよくてこのまま身を任せればきっとスヤスヤと夢の国へ旅立てる事は間違いない。
「前にも一回あったけど・・・お前の膝枕ってすっげーねむた・・ゴファァああ」
「人の膝の上で恥ずかしい台詞言うな! ほら!?そこの馬鹿親が前の一回って何なのとか聞きたそうにしてるじゃないの!このばか!」
上条の素直な感想は羞恥心で顔を真っ赤にした美琴の腹部への強打によって中断され、上条の眠気は一気に吹っ飛んでしまった。
「美琴ちゃん~、お母さんすっごく気になるわー。教えて教えて?前の美琴ちゃんの膝枕って一体なんなのかしら?」
「関係ないッ!!きっとコイツの記憶違いでしょッ!!だからニヤニヤしながらにじり寄らない!」
苦しむ上条はどうでもいいのか、御坂親子は再びドタバタしながら暴れだす。 それでも美琴は一応自分の膝枕で横になっている
上条を気遣っているようで下半身はほとんど動かさず上半身のみを駆使して美鈴の魔手から身を守っていた。
とても安眠できるような状況ではないのだがどうせ昼御飯の時間が過ぎれば再び土御門やステイルと合流してオリアナを追わなければならなくなる。
ならせめて今だけでも休んでもいいかな、と静かに目を閉じて吹っ飛んだ眠気を再び呼び起こす。
「美琴、少し寝るけどいいか?移動するようになったら起こしてくれ」
ピタリ、と上条の言葉を聞いた御坂親子の動きが止まる。 上条夫婦も合わせて8つの視線が上条に集まる。
というより実は店内の視線が全て美琴の膝枕で目を閉じる上条に注がれていたのだが当然上条は気づかない。
軽く寝息を立てて自分の膝枕を占領する少年に向かって
「あ、そう。じゃあ今回だけだからね、移動するようになったら叩き起こすわよ」
美琴はスヤスヤと眠る上条の顔を撫でて少し困った顔でそう呟いた。




END


[解説]
  • インデックスが登場しないIF世界での出来事
  • 本編であるFestival of large star IFは打ち切りになったが作者は書き直すらしい。
この短編はもしその設定で進んでたらこういうシーンもあったということらしい。
  • 原作と違いインデックスが登場しないためか上条と美琴の関係が少し良好
  • 白井黒子ともフラグが立ってるようだがあくまでもヒロインは美琴との事


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