とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

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ryuichi

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だれでも歓迎! 編集
とある魔科学の幻想創造~イマジンクリエイト~
第三章 十一月のとある日 右方と原石の聖人Ⅰ



「さあ子猫ちゃん。おしおきの時間だよ」


男たちは笑っていた。
薄汚いその笑みは今は恐怖にしか感じない。


「逃げ出すなんていけないよ?悪い子には罰を与えないと」


ああこれから酷い事をされるんだな。誰も助けてはくれない。
少女たちは諦めていた。


少女らはスラム街で生まれ貧しい生活を送ってきた。
親から捨てられ食う物も家も無い。
だから生きる為に小さい頃から盗みを繰り返してきた。
本当はしたくなかったけどそうするしか生きる道が無かった。
だから手を差し伸べられた時は本当に嬉しくて疑いもしなかった。


「アメリカにある『学芸都市』で今、働く人を探してる。子供でも働ける仕事だから働いてみないか?」


食べ物も住むところもそしてお給料…お金もくれるとスラムにやって来た大人は言った。
そして遠い国からアメリカにやって来た。世界中から同じ様な子供達が集まっていた。


……………………だげど。


体からハラワタが出でいる。顔が分からない程に潰れている。最初にそれを見た時はニンゲンだとは思わなかったしニンゲン、自分達と同じぐらいの子供だと知った時はとにかく吐いた。


大人たちはウソをついていた。自分達は実験体(モルモット)として集められたのだ。


セイジンを作ると言っていた。セイジンが何なのか分からないけど自分達があの子達みたいにされるのは解ってしまった。
そしてその場から逃げだした。
大人は焦ることもなく楽しむ様に狩りを始める。
一歩また一歩と男たちは近づく。


何でこうなったのだろう?
おいしいご飯をお腹いっぱい食べたかった。
雨に濡れることもなく暖かなベッドで寝てみたかった。
みんなと仲良く幸せに暮らしたかった。
それだけなのにどうしてだろう?



とある魔科学の幻想創造~イマジンクリエイト~
第三章 十一月のとある日 右方と原石の聖人Ⅱ



“助けて!!”


言葉にすることももう出来ない。心の中で叫ぶ。
神さますら助けてくれないのは解っている。でも…そうするしか出来なかった。


 “神さま私たちを助けて!!”


少女たちの叫びは神さまには届かなかった。しかし、一人の聖人にはきちんと届いた。


『もう大丈夫だよ』


頭の中に直接響いてきたやさしい声


『みんなと仲良く幸せに暮らすか…。その幻想(夢)を創って(叶えて)あげるよ』


幻聴だと思った。でも声は現実となって聞こえてきた。


「さあ、くだらない幻想(実験)は終わりだ。クソ野郎共」


現れたのは自分達よりも年上なお兄さんだった。
瞬く間に大人たちを倒してこっちに歩いてくる。
そしてやさしい声でこう言った。


「じゃあ、みんなと仲良く幸せに暮らせる所に行こうか」
涙が溢れてきた。
一人また一人泣き出し最後には全員が大泣きした。


とある魔術組織の壊滅の日の事だった。

とある魔科学の幻想創造~イマジンクリエイト~
第三章 十一月のとある日 右方と原石の聖人Ⅲ



とある魔科学の幻想創造
「それで学園都市にその子達を保護しろというわけだけど、いつも思うがそっち(魔術)側で保護しないのか?聖人開発の実験体なんて教会が欲しがりそうけど…」


時刻は夜の12時過ぎ。少女らを助け出したのち少年は後始末の為に学芸都市に魔術組織が建設したアジトに来ていた。少年の右耳には学園都市製の最新技術で作られたイヤー型携帯が装備されている。少年の手元には小型のモニターがありテレビ電話になっていた。


「今回も被害者の一人が『原石』だったからな…。一人だけ別の場所というのはかわいそうだろ?それに学園都市なら一億人ぐらいの孤児を余裕で賄いきれる。子供の三十人ぐらい屁でもないからな」
「おや私はてっきり『あたしもお兄さんみたいに強くなりたいの!だからお兄さんの近くでいたい』とか言われたて困ったからと思ったけど」
「…………。魔術と超能力、どちらで殺されたい?選んでいいぞ」
「魔術で殺されると外交問題が生じるけど。そして私はまだ死ぬ気も無いわけだけど」


今、少年と話しているのは学園都市に住む雲川芹亜という少女。学園都市統括委員である貝積継敏のブレインを務める天才少女だ。彼女を通じ貝積継敏に少女達の保護を依頼している。
そもそも今回の依頼は学芸都市から都市内の洗い出し(不法入国者の排除)という名目だった。都市内の不審な奴らを尾行していたら魔術組織のアジトだったのだ。周辺にルーン文字を刻み死角を作り人の目を欺いていた。


「別に俺は教会所属というわけではないから学園都市内部の内輪もめという言い訳ができなくもないぜ?」
「まぁ、原石がいるなら貝積も文句はないだろう。しかし、これで六件目か。最近多い気がするけど」


見事にスルーされた。
確かに芹亜の言うとおりここ数年、似たケースが多い。フランス最大の魔術結社だった『オルレアン騎士団』が行っていた『ダルクの力を持つ者の人工的な量産』など昔から『人ならぬモノ』にたどり着くことを目的にした集団は多い。それを言い出せば公然と超能力開発を行っている学園都市などがいい例になるだろう。しかし最近の事件には幾つかの共通項がある。


一つはどの事件も被害者の中に『原石』がいる事
一つはどの事件も犯人である魔術結社の規模が実験を行うには小さい事
一つはどの事件も同じ理論…方法が使われている事


「黒幕がいるのは確かだ。が、尻尾をつかめない。一番気になるのはなぜ黒幕は原石を見つけ出せるのか?学園都市でさえ世界で50人ぐらいしか把握してないのに」
「ふむ。ぜひその方法を知りたいけど。まあここで話していても答えは出せないと思うけど?」
「…だな。今から準備すれば明日の昼には飛行機を学芸都市に着かせられるだろう?俺もその飛行機で学園都市に向かうから」
「珍しいな。やはり泣きつかれたか?ロリコン趣味とはいたたけないけど」
「本気で殺すぞ?そういうアンタはどうなんだ?相変わらずの様だが」
「ああ、相も変わらず私は今の生活を愛しているよ。今日も面白い事があって退屈してないけど」
「そうかい。それは良かったな」


芹亜は含みのある笑みをしながら言う。
「今日は学校見学があってな、中学生がきていたけど、君の友人も相変わらずの様だ。階段からこけて私の胸に飛び込んできたけど」


 その友人を知る者なら…特に男子なら「またかあの野郎!」と殺意を抱くだろうがこの少年は違った。まるでどうしようもない絶望に浸っているような顔をしていた。一言でいえば悲しそうな顔だった。


「君もなかなか分かり易いな。…前から聞こうと思っていたのだけど」
「何だ?」



とある魔科学の幻想創造~イマジンクリエイト~
第三章 十一月のとある日 右方と原石の聖人Ⅳ



 満足そうな顔で芹亜はゆっくりと尋ねる。


「『幻想殺し』とは何なのだ?その名付け親なら解るだろう?」


 幾分かの静寂の後、少年は答える。


「一言でいえば『幻想殺し』だ。アンタにアレの説明をしても理解できる・できないと言う以前に無意味だ。理解できてもそれは答えではないし理解できなくとも答えに意味など無い。ただ、アレはジョーカーという事だけは覚えておいた方がいい。俺が人工的なジョーカーならアレは本物の天然のジョーカーだ。両者の間にはあまりに深い溝があるというだけだよ」
「こう見えて私は天才少女で知られているのだけど」
「いずれ時が来れば嫌というほど解るさ。アレイスターの『プラン』はもうすぐ本格的に始まる。止めたいのは山々だけどそれは、今はできない。ならば被害を少なくするだけだ。それに本当は見当はついているだろう?」
「さてな。あと私にはわざと見逃しているようにみえるけど」
「それもそのうち分かるさ。じゃ手配は任せた。学園都市についたらお土産を持って行くよ」


 どうにもあの天才少女は苦手だ。こちらの心の中まで知ろうとするのは気のせいだろうか。用事は済んだ。通話ボタンを切る。
通話を終えると直ぐに着信が入る。おそらく今の会話を盗聴して(聞いて)たのだろう。このタイミングはヤツしかない。


「私だ」


先ほどの会話も国際電話にしてはクリアだったがそれ以上のクリアな声が聞こえてくる。


「お前は知っていたのか?学芸都市に魔術結社がいることを」
「だとしたらどうなんだ?君が処理するのは変わらないと思うが?」
「お前も相変わらずフザケタ奴だ。アレイスター、まさか学芸都市を捨てるのか?」


 学芸都市は学園都市傘下ではない。が科学側であることには違わない。しかし、学芸都市の上層部は魔術のまの字も知らない。現在も学芸都市には別組織の数人の魔術師たちが潜伏しているのは確認している。彼らが動けば学芸都市は陥落するだろう。戦争の火種として十分だ。


「遊園地(あそびば)など重要ではない。それに自ら虎の尾を踏む(世界の理に踏み込む)モノなどほっとけばいい」


 現在、学芸都市はとあるアステカの魔術組織と対立関係にある。今は学芸都市が有利に見えるがそれは間違いだ。魔術も知らず戦力差のみで戦うなど愚行だ。このままでは後一、二年持つかどうかだろう。


「『プラン』に関係ないモノは関心なしか…。で何の用だ?まさか子供たちを受け入れないなんて言わないよな?」
「君に依頼がある。とあるモノを創ってほしい」
「何をだ?」
「『エリュシオン』だ」
「英霊の住まう島。まさか学芸都市を……」
「どうせなら有効利用するべきだとおもわないか?」


 なるほど。この人間は心底フザケている。現世に死者の島など馬鹿馬鹿しいにも程がある。


「何を考えているか知らんがそんなことしたら魔術側、科学側共に黙ってないだろう。いくらお前が科学の大将だとしても反発はあるぞ。昔と同じ過ちをする気か?そして今度はどこに行く気だ?魔術側に戻るわけじゃないだろう?」
「私の目的はただ一つ。君は数少ない私の望みを知っている人間のはずだと思ったが?」
「知っているだけだ。理解も同感もしてない。まぁ、俺自身も他人のことはいえないからな。…俺の答えはNOだ。メンドくさい。他を当たれ」
「『幻想殺し』を制御できるとしてもか?」



とある魔科学の幻想創造~イマジンクリエイト~
第三章 十一月のとある日 右方と原石の聖人Ⅴ



何の表情もなくレイスターは…モニター越しの人間は尋ねる。対して少年もどうでもよさそうに答える。


「出来る・出来ないじゃない。アレイスター、解っているだろう?そんな事に意味など無いことを」
「それでも私は進まなくてはいけない。君こそ分かっているだろう?止まれるラインは過ぎたことを」


 もしかしたら自分と似ているのかもしれない。だからこそこの人間と繋がりを持ち続けているのかもしれない。そういった意味ではローラの事以上にこの人間に惹かれている自分がいる。


「分かった。もし学芸都市が堕ちるのなら創ってやろう。だたし余計な仲介を入れるなよ。そしてもう一つ条件だ」
「何だね?」


 少年は条件を言う。アレイスターにしか出来ない事を。


「分かった。いいだろう。恐らく学芸都市はあと一年のうちに終わるだろう。おそらくと言っても『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』が出した回答だ。間違いないだろう。学芸都市が堕ちたのち暫くの様子見をしてから取り掛かってほしい」
「『樹形図の設計者』ねぇ…それは宇宙とビル(どっち)のヤツだ?まあ、他人には知られたくないだろうからビルの方か?どっちでもいいけど。いい身分だな?世界一のスパコンを二台も持っているなんて」


『樹形図の設計者』学園都市が独自に打ち上げた三機の人工衛星の一つに組み込まれている世界一賢いパソコン。データさえあればどんな事でも完全な未来予測(シュミレーション)が可能という代物だ。その価値は安全保持の為に宇宙に飛ばした程で当然現存するのは一台のはずだ。


「約束は守ろう。ではな」


 肯定も否定もせず会話を終わらせた。いや、気にも留めずに。


「『プラン』か…・。本当にそれがお前の望みなのか?アレイスター」


 通信が切れ真黒な画面に向かい呟く。答えは当然ない。さて、先ほどから待っているお客さんの相手をしなくてはいけないだろう。


「さて長々と待たせか何処のどちらさんだ?出来れば黒幕だとありがたいだが…」
 やれやれといった顔で後ろを向く。そこに一人の人物がいた。


「やっと終わったか。何だよその顔は?つれないなー。俺様が出向いて来てやったのに」


 性別は男。赤を基調にした服装。あまり鍛えてはなさそうな身体。髪はセミロング。少なくとも知り合いではない。それに自分の記憶からもそんな特徴をもつ人物はいなかった。なのでシンプルに聞いてみた。


「お前なんて知らん。誰だ?」
「フィアンマ。ローマ正教『神の右席』の右方のフィアンマだ。魔神さん」


『神の右席』ローマ正教禁断の組織で世界を動かすために存在する。十字教社会に存在しない教皇の影の相談役。存在を知る者は正教内でも限られる最高機密。確かその目的は『神上』、文字通り神の上を目指す組織。


「なるほど本当に黒幕か…。探す手間が省けたが、まさかローマ正教が黒幕とは驚いた。教皇は知らないだろうな。あの人がこんな事許すはずない。神上だったか?そんなつまらん事の為に子供たちを巻き込んだのか?潰すぞテメィ」
「計画実行したのはテッラなんだげど。こちらこそ驚いたよ、まさか魔神が邪魔してたとは。暇つぶしに来たら大当たりってか?それにそこまで学園都市とのパイプを持ってるとは最大司教のババァの切り札じゃなかっのか?俺様達の存在、目的もわかっているし」
「そんな事はどうだっていいだよ!!このクズヤロウっっっっがぁぁ!!!」


 少年は右手で殴りつける。聖人の力で殴られ…いや拳から発生した風圧でフィアンマは壁を突き破り外に放り出される。もしこの光景を他の聖人が観ても驚愕するだろう。フィアンマは軽く1キロは吹き飛ばされた。
周辺2キロ四方を人払いしていても直径十キロ程の学芸都市で大規模な戦闘をするわけにはいかない。なるべく被害を出さぬようにビーチの方向に飛ばした。たいしたダメージはないだろう。本番はこれからだ。



とある魔科学の幻想創造~イマジンクリエイト~
第三章 十一月のとある日 右方と原石の聖人Ⅴ



何の表情もなくレイスターは…モニター越しの人間は尋ねる。対して少年もどうでもよさそうに答える。


「出来る・出来ないじゃない。アレイスター、解っているだろう?そんな事に意味など無いことを」
「それでも私は進まなくてはいけない。君こそ分かっているだろう?止まれるラインは過ぎたことを」


 もしかしたら自分と似ているのかもしれない。だからこそこの人間と繋がりを持ち続けているのかもしれない。そういった意味ではローラの事以上にこの人間に惹かれている自分がいる。


「分かった。もし学芸都市が堕ちるのなら創ってやろう。だたし余計な仲介を入れるなよ。そしてもう一つ条件だ」
「何だね?」


 少年は条件を言う。アレイスターにしか出来ない事を。


「分かった。いいだろう。恐らく学芸都市はあと一年のうちに終わるだろう。おそらくと言っても『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』が出した回答だ。間違いないだろう。学芸都市が堕ちたのち暫くの様子見をしてから取り掛かってほしい」
「『樹形図の設計者』ねぇ…それは宇宙とビル(どっち)のヤツだ?まあ、他人には知られたくないだろうからビルの方か?どっちでもいいけど。いい身分だな?世界一のスパコンを二台も持っているなんて」


『樹形図の設計者』学園都市が独自に打ち上げた三機の人工衛星の一つに組み込まれている世界一賢いパソコン。データさえあればどんな事でも完全な未来予測(シュミレーション)が可能という代物だ。その価値は安全保持の為に宇宙に飛ばした程で当然現存するのは一台のはずだ。


「約束は守ろう。ではな」


 肯定も否定もせず会話を終わらせた。いや、気にも留めずに。


「『プラン』か…・。本当にそれがお前の望みなのか?アレイスター」


 通信が切れ真黒な画面に向かい呟く。答えは当然ない。さて、先ほどから待っているお客さんの相手をしなくてはいけないだろう。


「さて長々と待たせか何処のどちらさんだ?出来れば黒幕だとありがたいだが…」
 やれやれといった顔で後ろを向く。そこに一人の人物がいた。


「やっと終わったか。何だよその顔は?つれないなー。俺様が出向いて来てやったのに」


 性別は男。赤を基調にした服装。あまり鍛えてはなさそうな身体。髪はセミロング。少なくとも知り合いではない。それに自分の記憶からもそんな特徴をもつ人物はいなかった。なのでシンプルに聞いてみた。


「お前なんて知らん。誰だ?」
「フィアンマ。ローマ正教『神の右席』の右方のフィアンマだ。魔神さん」


『神の右席』ローマ正教禁断の組織で世界を動かすために存在する。十字教社会に存在しない教皇の影の相談役。存在を知る者は正教内でも限られる最高機密。確かその目的は『神上』、文字通り神の上を目指す組織。


「なるほど本当に黒幕か…。探す手間が省けたが、まさかローマ正教が黒幕とは驚いた。教皇は知らないだろうな。あの人がこんな事許すはずない。神上だったか?そんなつまらん事の為に子供たちを巻き込んだのか?潰すぞテメィ」
「計画実行したのはテッラなんだげど。こちらこそ驚いたよ、まさか魔神が邪魔してたとは。暇つぶしに来たら大当たりってか?それにそこまで学園都市とのパイプを持ってるとは最大司教のババァの切り札じゃなかっのか?俺様達の存在、目的もわかっているし」
「そんな事はどうだっていいだよ!!このクズヤロウっっっっがぁぁ!!!」


 少年は右手で殴りつける。聖人の力で殴られ…いや拳から発生した風圧でフィアンマは壁を突き破り外に放り出される。もしこの光景を他の聖人が観ても驚愕するだろう。フィアンマは軽く1キロは吹き飛ばされた。
周辺2キロ四方を人払いしていても直径十キロ程の学芸都市で大規模な戦闘をするわけにはいかない。なるべく被害を出さぬようにビーチの方向に飛ばした。たいしたダメージはないだろう。本番はこれからだ。



とある魔科学の幻想創造~イマジンクリエイト~
第三章 十一月のとある日 右方と原石の聖人Ⅶ


「空を飛ぶとは良い体験したよ。風圧で人を飛ばすなんてやっぱし聖人、魔神ってモンはすごいな。俺様実に羨ましいぜ」
「どこで俺の事を知ったのか知らんが聖人で魔神と知っていながら挑む気か?」
「魔神と戦ったことはないな。が、こう見えても俺様も強いんだせ?不完全だけどな」


(不完全?どういう意味だ?)


「さてと、さっさとアレを出してもらいますか」
「アレだと?何のことだ?」
「もったいぶるなよ。お前が魔神たる由縁だよ」


 意味は分からないがさっさと片を付けよう。
 少年は右手を砂浜に着ける。左手は炎に包まれる。右手を挙げると大量の砂鉄が付いていた。この光景を魔術師、能力者が見たら双方とも困惑するだろう。魔術師からすれば魔術の発動動作が地面に着けるだけ、能力者からしたら実現不可能とされる多重能力者(デュアルスキル)に見て取れるからだ。実際に目の前のフィアンマは珍しい物を見ているようだった。少年は砂鉄を炎に塗す様にし徐々に形を整える。砂鉄を溶かす程の高温にも関わらず左手には火傷一つ無い。完全に能力制御されている発火能力(パイロキネシス)だ。そして砂鉄は矛へとなる。


「なーるほど。その場で霊装を創るか。トンデモナイなお前」


 少年はフィアンマに世間話をするように言う。


「日本神話を知ってるか?その中に“国産み”ってのがあるがこれはその時使われた『天沼矛(あまのぬぼこ)』をモチーフにしたものだ。簡単に言うと国を創る矛だ」


 伝説に因ればイザナギ、イザナミの二人の神が混沌とした大地を矛でかき混ぜ矛から滴り落ちたのが島となり日本を創ったという。その矛を少年は知識で…正確に言うならば10万3千冊以上の魔道書と230万以上の能力(チカラ)で創る。


鉄を使い物を創るというのは実は日本の考古学上重要な事で様々な神話の基礎になっていたりする。またここは学芸都市、人口で創られた島だ。そういった一つ一つの要素、条件を知識で纏め形創る(行使する)。それが少年のチカラの一部。


「もちろん矛を振るえば大地が降ってくるわけじゃない。フィアンマ、島を創るにはどうすればいいと思う?」


 少年は矛を振り上げフィアンマに襲いかかる。その速さは言葉よりも早い。


「簡単に言えば海底のマグマを爆発させればいい。この矛はマグマを爆発させるぐらいの衝撃を生み出すんだよ」


 伝説、伝承、神話を自らの解釈で再現する。それも少年のチカラの一部。
その衝撃は軽く2キロ四方を軽く超え学芸都市全体を駆け抜けた。学芸都市に設置されている震度計でここからもっとも離れているものでも震度3を記録した。


「そうそう。俺のチカラの名前知ってるか?『幻想創造(イマジンクリエイト)』だ。覚えとけ」


 ありとあらゆる異能を生み出す力だ。
 その少年の言葉だけが辺りに響いている。

とある魔科学の幻想創造~イマジンクリエイト~
第三章 十一月のとある日 右方と原石の聖人Ⅷ



「おいおい俺様を舐め過ぎていないか?」


 その少年の声に続くようにフィアンマの声が聞こえてきた。


「『幻想創造』?そんなもんどうでもいいだよ。確かにそのチカラは素晴らしいが俺様が欲しいのは禁書目録の錠前なんだよ。『王室派』、『清教派』のトップだけが持っているヤツだよ。だがお前なら例外的に持っているんじゃないのか?禁書目録を創りあげた禁書目録の編集者であるお前なら。だからこそ『魔神』でいられるんだろ?」
「テメィ一体何者だ?さっきから普通なら知りえるはずのない情報をどうしてテメィが知っていやがる!?」


 少年は攻撃が効いていないことよりもフィアンマが持つ情報に心底驚いている。世界で数人しか知らない情報ばかりなのだ。当然その情報は漏れるはずのないモノで外部に知りえる者は皆無のはずだ。


「さっき名乗っただろ?フィアンマ。右方のフィアンマだ」


 少年は矛を握りなおしフィアンマに再度襲いかかる。


「悪いが鍵は持ってない。鍵に頼らなくとも俺の頭にはきちんと10万3千冊以上の魔道書は記憶されているんでな!テメィは今ここで倒す!!」


 矛から繰り出される衝撃にフィアンマは大した動作もせず衝撃を受け止めた。右肩から突如あらわれた第三の腕で防いだのだ。爪の様な翼の様な腕だ。そう不完全な腕だ。


「な!?まさかその腕は!?」


 フィアンマはニヤリと笑い第三の腕で薙ぐ。今度は少年が吹き飛ばされる。百メートルぐらいで矛を地面に刺し踏みとどまったのは流石は聖人といったところだろう。


「それは残念だ。それにしてもつまらんな~。お前魔神だろ?もう少し楽しませてくれ」


 少年は不完全な腕を見上げる。その腕の正体は…恐らく禁書目録では正体をつかめないだろう。だが少年には解ってしまう。過去に見たことがあるからだ。少年の親友が持つ同じく不完全な右手を。


「対応しているは『神の如き者(ミカエル)』。お前は本当に十字教徒か!?」
「人様の事は言えんだろ。魔術、科学両方の世界にいるのだから」


 フィアンマの不完全な腕を中心にして爆発が起きる。
 少年は矛を不完全な腕にぶつける。


 爆発と爆発。二つの爆発は合わさることなくぶつかり合う。少年の爆発が力負けしまたしても少年が吹き飛ばされる。


「おいおい何なんだよお前は。魔神ってのはこんなんに弱いのかよ?不完全な腕にすら劣るのか?イヤ、おかしいな。さっきから魔術を使おうとしてないよな?そんなチンケな矛を創ったぐらいで何故魔術を使わん?うん?もしかして使えないのか?俺様達みたくなんかの制約があるのか」


 爆発の中心から約二百メートル離れた場所から少年は駆け出す。わずか数秒でフィアンマの元に近づき矛で攻撃する。


「…ちょと違うな。ニアンスとしては『使わない』が近いが『使えない』わけじゃない…。俺の魔術は威力が強すぎるんだよ。こんな風にな!!」


 矛を振り上げ不完全な腕めがけ爆発させる。先ほどとは違いただの爆発ではない。


「『天沼矛(あまのぬぼこ)』は混沌とした大地をかき混ぜることが出来た。つまり異空間を切り裂いたとも言えるだろ?」


 空間を切り裂き爆発させる。それは大規模な爆発ではなく小規模すぎる爆発。そうでなくてはすぐさま空間全てを無くすことになるからだ。
 その爆発は例えるなら一閃の煌き。斬り、光り、爆発。その一連の光景はまさしく煌きだった。しかし、爆発は無に還っていく。


「だから、俺様を舐めてるのか?本気だせよ!!聖人の魔神さまよ!!!」


 不完全な腕。それが一閃の煌きを握り潰す。矛まで握りつぶす。



とある魔科学の幻想創造~イマジンクリエイト~
第三章 十一月のとある日 右方と原石の聖人Ⅸ



「ああああああああっあああああああああああああっっっああああああああああああっっっっあああ!!!!!!」



 そして少年に腕が巻きつき握り潰し始める。


「ふん。つまらんなお前。なぜ本気を出さないのか知らんが俺様の邪魔になる前に潰しとく。ハァー暇だったからアメリカまで来たら魔神さまがいて錠前を手に入れられるかと思えば持っていないし。ああそうだ。ついでに聞いとくか。おい、右手を知らないか?俺様の腕とよく似てるヤツだ。俺様の腕の正体が解るって事は何所かで似たヤツ見たことあるんだろ?」


 腕に力が更にこもる。すでに普通の人間なら死んでいる程の圧力がかかっている。


「し…らんな…」
「ふん」
「ぐ‥あっっあああ!!」


 心底つまらなそうに少年を放り投げる。ざっと五百メートルは飛んだだろうか?やっぱり聖人並には飛ばせないかとつまらん感想を抱き止めを刺しにいく。


「さてと、この後は学園都市に向かうか。面倒だが回収された『原石』のガキ共を回収しなきゃな。せっかく集めた『原石』だし。そういえばお前も『原石』だっけ?まぁ、お前はいいやここで死んどけ」
「なん‥だと…?また子供たちを犠牲にする気か!!?」
「ついでに学園都市に元々いる『原石』も貰っていくか。もしかしたら当たりがいるかもしれんしな」
「ふざけるな!!」
「う~んそうかも。あんまし表立った行動はすべきじゃないか。アレイスターの野郎もいることだし。でも『魔神』がこの程度だし問題ないか」


 振り上げられる不完全な腕。しかし、少年は…行動しない。ただ、魔神たる証を見る。魔法名の宣言。少年の想いの全てがこめられたその真名(な)を…今、ここに。


「Intimus119!!」


 聖人である証である聖痕(ステグマ)を開放。その反動でフィアンマが吹き飛ばされる。
 さあ、反撃の開始だ。少年は魔神へとなる。


「ようやく魔神のお目覚めですか?じゃ見せてみろよ」


吹き飛ばされたフィアンマは空中で方向転換。魔神へと向かう。


「サービスだ」


 魔神は言う。


「よく覚えておけ。俺はな魔法名を名乗る条件を決めている。だから滅多に聞けるもんじゃない」


 魔神はもう一度名乗る。己の想いを


「Intimus119(我が力は我が友の為に)!!」



とある魔科学の幻想創造~イマジンクリエイト~
第三章 十一月のとある日 右方と原石の聖人Ⅹ



 それはただの蹴り。速度は音速を軽く超えるただの蹴り。
 それはただの拳。速度は音速を軽く超えるただの拳。
 それはただの炎。少量の魔力だけで出来た地獄の炎。
 それはただの雷。少量の魔力だけで出来た地獄の雷。
 それはそれはそれはそれはそれはそれはそれはそれらはただの魔神の攻撃に過ぎない。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっおお!!!」


 魔神の攻撃にフィアンマは何も出来ずにいた。そこに追い打ちが入る。


「超電磁砲(レールガン)って知ってるか?こうゆうのを言うだが」


 先ほど潰された矛を核にして音速の三倍の速度にて放出。
 何とか腕でガードするがすでに後ろに魔神が回り込んでいた。
 その背には天使の翼らしきものが生えている。


「そら気をつけろ?この光線は殺人光線だ」


 透けているその翼から太陽の光が差し込む。
 ぎりぎりで避けるがすぐさま魔神の攻撃が入る。
 避けた所が爆発する。
フィアンマは理解した。自分は遊ばれているのだと。


「クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 フィアンマは地面に堕ちる。堕天使が落日したように。そして堕ちた堕天使はその不完全な腕を振りかざす。悪あがきをするように。
 対して魔神は最強の攻撃で迎え撃つ。


「IT IS A SAGE, AND Ⅰ AM A FOOL
(自分はちっぽけな人間でしかない)
THE DEVIL IN THE RIGHT SIDE AN ANGEL IN THE LEFT
(力は弱く 力は小さい)
AN ANGEL AND THE DEVIL BECOME SUBORDINATES
(そんなちっぽけな力)
MY LAW OF NATURE THAT IT IS IMPOSSIBLE TO USE
(どうする事も出来ないちっぽけな自分のチカラ)
THOU BECOME THE END!!
(そんな力を受け止めてみろ!!)
THE STRONGEST BLOW!!!
(ドラゴン・ブレス!!!)」


魔神の周りの空間に亀裂が入る。その隙間から這い出るように魔方陣が現れる。
そして白い光線が放たれた。不完全な腕と完全たる光。
 衝撃が学芸都市を襲う。辺りは衝撃の中心地はクレイターができその威力を表していた。
 結果は言うまでもないだろう。魔神の一撃は不完全な腕を消し去った。


「これが魔神だフィアンマ」


 魔神の周りに光の欠片が降り注ぐ。魔神の勝利を祝うように。

とある魔科学の幻想創造~イマジンクリエイト~
第三章 十一月のとある日 右方と原石の聖人ⅩⅠ




 フィアンマは地面に倒れていた。なぜ自分が負けたのか?魔神を舐めていたから?それも敗因の一つには違いないだろう。だがそれだけではないはずだ。『ローマ正教神の右席の右方のフィアンマ』その名はそこまで甘くはない。


「俺様の力はこんなはずではない!!何故だ!?」
「それはテメィが偽物だからだ」


 見上げると魔神が見つめている。憐れむように。


「何だと!?俺様が偽物だと!?フザケルナ!!!」
「さっきテメィがした質問をしてやる。なぜ魔術を使わなかった?お前こそただ手を振り回していただけじゃないか」
「なに?」


 そうだ。何故使わなかった?


「それとあの手だ。不完全なあの手がなぜ俺と戦っている間保ち続けることができたと思う?」


 確かに本来なら1~2発で分解してしまうはずだ。


「テメィはただのテレズマの塊だ。良くできたな。自分の体を見てみろよ。もう消えかかってきてる」


 自分の手を見ると徐々に消えてきている。


「俺様は!俺…様は!!お…れ………


 そのまま偽のフィアンマの声は消えていく。ラジオのチャンネルが切り替わるように新たな声が聞こえてきた。


 ……あ~あここまでか。あっけない最後だな」


「ホンモノのフィアンマか」
「よう魔神。こいつが偽物っていつ気づいた?」


 消えていく体を通信機代わりに使っているのだろう。おそらくはバチカンから通信しているはずだ。


「最初にぶん殴った時だ。見ただけじゃ解らなかった」
「それはお褒めの言葉をありがとう。わざわざアメリカまで行くのが面倒でな。こいつで事足りると思ったんだが…。相手が魔神じゃ無理もないか」
「フィアンマ。それでどうするつもりだ?何ならこちらから出向いてテメィを潰してやろうか?」
「遠慮しとこう。錠前を持ってなきゃ魔神に興味ないしな。ああ『原石』のガキどもなら好きにしろ。本命の居場所なら実は目星がついている。だがまだ時期ではない。準備を整えてからだ」
「それを見過ごすとでも?」


 消えいく身体のままフィアンマは笑う。


「見過ごすだろうな。俺様達を潰すということはローマ正教を潰すということだ。魔神は馬鹿ではないどろうからな」
「さあ?意外に大バカ野郎かもしれないぞ?」
「……一つ聞いておこう。なぜ魔法名を名乗った?名乗らなくとも勝てただろうに」


 魔神は当たり前のことを言うように答える。


「条件を満たしたからだ。俺は条件を満たさなければ魔法名を名乗らない。逆に条件がそろうなら必ず名乗る。そう誓っただけだ」
「不自由なこった。聖人の力に魔神の知識。加えて原石の超能力者。そのチカラを振るえばいいだろうに」
「聖人、原石か……。なぜ世界に聖人が20人弱しかいないか分かるか?」
「知らんし興味もない。俺様の目的には関係ないしな」
「あながちそうでもないがな。そう珍しいモノではないというだげの話さ」


 そろそろ時間切れだろう。偽フィアンマの身体はほぼ消えている。


「そうかい。次会う時にでも講釈願おうか」
「その時はブチノメした後だと思っておけ」
「魔神か…。そのチカラを超えるチカラを俺様は手にいれる。その時までこの借りは借りておこう」


 そう言って偽フィアンマは消滅した。



とある魔科学の幻想創造~イマジンクリエイト~
第三章 十一月のとある日 右方と原石の聖人ⅩⅡ



「見過ごすわけなかろうに。Intimus119(我が力は我が友の為に)俺の刻む魔法名(名)はその為にあるのだから……」


 さてとホテルに戻るか。そして魔神は少年にもどる。後片付けは後に回そう


 ポケットから一枚の紙を取り出しルーンを記す。離すとひらひらと舞い近くのヤシの木に張り付く。


「右方のフィアンマか。アレが本当に存在していたとはな」


 覚悟はしていた。親友が持つあの右手を見た時から。


「当麻…。もしかしたらお前を殺すかもしれないな俺……」


 そうならなければいい。神様がいるかどうかは興味無いがそう願う。
 少年の祈りは空に消えていった。




 魔神とフィアンマの戦いによって学芸都市の機能は大きなダメージを受けた。いくら魔神とフィアンマが手加減していたとしても防犯システムはショートし戦いの記録など残るはずもなかった。一部を除いて…。


「面白いショーだったな…」


 ここは学園都市の窓のないビル。
 魔神の攻撃も今回は宇宙にある人工衛星までは被害は無かった。学園都市が打ち上げた人工衛星の一つである『ひこぼしⅡ号』気象用と言いつつ実態はスパイ衛星だ。宇宙より先の戦いを観測、分析し学園都市の窓のないビルに送信していた。それを人間は観ていた。


「魔神のチカラの一端が観ることなどそうそうない。そしてあの腕。右方のフィアンマか…。ローマ正教の暗部か…」


男にも女にも大人にも子供にも聖人にも囚人にもどんな人間にも見えてしまう人間、アレイスターはビーカーの中で逆さで浮かんでいた。その表情は笑っているのか悲しんでいるのか、喜んでいるのかはたまた怒っているのか誰にも分からない。


思考一つで観ていたモニター画面を切り替えると裏の『プラン』の進行状況が表示される。


プランEX 『創造殺し(アンノーン)』稼働率3パーセント


そしてまた思考を切り替えると先ほどまで戦っていた魔神の少年が秘密裏に作成していたレポートが表示される。その一ページ目にタイトルが書かれている。


『安価な人口的身体部位複製法(イージー・クローン・パーツ)』


そのレポートをとある研究施設に勤める研究者に送信する。送り主は記さず宛名には天井亜雄と記す。こうして少年の知らぬところで少年の想いとは裏腹に表の『プラン』が進められていく。


「もう止まることは出来ないのだ。____、君も知っているだろう?」


その問もまた空に消えいく。



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