とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

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匿名ユーザー

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 夕暮れの茜色に染まる学園都市某所の路地裏で、一方通行が通りの様子を頻繁に確認している。
(この道で待ち伏せしてりゃ上条当麻に逢える筈だ。つっても、アイツが嘘吐いてなければの話なンだがな……。まァ、あの状況で嘘を吐けるンなら尊敬すンだがな)
 時間は昼ごろまで遡る。

「此処に置いといた筈なのに、なんでねェンだ?」
 昨夜、大量の紙を消費し完成させたはずの想いの結晶(ラブレター)が、机の上に無い。
 もしかしたら風で机の下に落ちてしまったのかも知れないと思い、探してみるが無い。
「なになにどうしたの?ってミサカはミサカはニヤニヤしながら尋ねてみる」
 どうして無いのかを考えていると、背後からニヤニヤしている打ち止めが、嬉しそうに声を掛けてきた。
 消えたラブレター。ニヤニヤしているなんだか嬉しそうな打ち止め。 
 打ち止めは、一方通行の事を好いている。さらにその好きはLikeではなくLoveだ。
 この状況が示すのは?
「なァ、一つ訊きてェ事があるんだがよォ……」
「なになに? 何でも訊いてってミサカはミサカは頼られた事に対して素直に喜んでみたり」
「此処に何か置いてあったか?」
 そう言って一方通行は机を指さす。
「何かって、もちろん貴方が一生懸命書いてたラブレターってミサカはミサカは自信満々に答えてみる」
「正解してくれてありがとよォ。だがよ、どうしてテメェがその事知ってやがンだ?」
「……あ、あれ? も、もしかしてミサカ嵌められて、かなり危険な状況?ってミサカはミサカは後ずさりしながら言ってみたり」
 後ずさりする打ち止めに、異様な雰囲気を背負った一方通行が問いかける。
 「どうして、知ってやがンだってンだろうがよォ!」
「ひっ」
 一方通行の怒声に、打ち止めは竦み上がる。
「答えろ。此処にあった物を何処にやった?」
「や、破いて」
「で?」
「捨てましたってミサカはミサカは……」
 そう答える打ち止めの声は震え、今にも泣きそうだ。
「よォし、よく答えられました。そンな、偉い事をしやがった打ち止めちゃんには、ご褒美をくれてやがりましょう」
「ご、ご褒美いらない!いらないってば!ってミサカはミサカは必死に拒否して」
「人の好意は素直に受け取っておくもンだぜ?」
「ギャーーーーー!」

 と、そんなことがあった為、彼の手には必死で書いたラブレターは無い。その代わりにその頭の中には告白の文章が入っている。
 彼は何度もその文章を復唱する。絶対に間違えないように。
 ブツブツと何かを呟く彼を、何も知らない一般人が見れば、明らかにヤバイ人だと思うだろう(そもそも彼が一方通行、と言う時点で大体の人間は避けるのだが)。
 と、その時足下に何か飛んできた。
「ァンだコレ? 財布?」
 いつもならば放っておくところだが今は拾っておく。コレをどうするかは、彼に想いを伝えた後にでも考えればいいだろう。
「……はぁ。不幸だー!」
 道の向こう側から此方に向かってきている彼は、なんだか聞き覚えのあるフレーズを叫んでいる。
 だが、そんなことは関係ない。今は、この気持ちを伝えるのみ!





 side 上条

(あー、そう言えば、冷蔵庫の中からなんだっけ。どうすっかなぁ、一旦帰ってからインデックスと来るか? でも、それだと他の物も要求されて金が……)
 思案しつつもごそごそとポケットを探る。
(お、財布がある。む、でもこの流れはなんだか、いつもの流れに繋がる予感がひしひしと……)
 財布はあるが中身が入っていない、と言ういつもの流れだと思いつつも、上条は財布の中身を確認する。
(あ、アレ? おかしいなお金が入ってる。 な、なんだか珍しくついてて嫌な予感が)
 例えばビリビリが襲ってくるとか、インデックスが攫われてるとか、明らかに結婚適齢期を過ぎているようにしか見えない、自称十八歳のねーちんが堕天使メイド服を着て現れるとかとか挙げていったらキリがない。
「ま、まぁ束の間の幸福を味わっても、いいよネ?」
 誰に問いかけるでもなく上条はつぶやく。
 だが、その幸せは本当に束の間のものであったようで、通行人の肩が上条に当たり、財布が転げ落ちる。
 すると財布はまるで操られているかの如く通行人たちの足に当たって何処かに蹴り飛ばされる。
「ああ! 俺の財布!」
 叫んだところで財布は止まらず、まるでピンボールの様に様々な通行人の足に当たってすぐ見えなくなった。
「……はぁ。不幸だー!」
 と、その時見覚えのある顔の人物が此方に近づいてきた。。
 真っ白な髪に白い肌に赤い瞳。一瞬、色素欠乏症(アルビノ)かと思うその人物は学園都市最強と謳われ、あの日上条自身が殴り倒した。
「い、一方通行! てめぇ、なんのようだ」
 神妙な面持ちの一方通行に、上条は思わず身構える。
「上条当麻。俺についてきてくれねェか。話てェ事がある……。大切な話なンだ」 
「え? は? 別に良いけど……。ってそれ俺の財布!」
「あ? あァ、これお前の財布だったのか。…………返す」
 一方通行は何度か財布と上条の顔を見た後、もの凄く嫌そうな顔で財布を渡す。
「いや、何でそんな嫌そうなの!?」
「……お前の物だから、持って居たいって思ったなンて言えるワケねェじゃねェか」
 上条がそう尋ねると、一方通行は顔を赤くして何かを小さな声で呟くが、その声は上条の耳には届かない。
(あれ……なんか、一方通行が可愛く見えるぞ? お、おかしいな。上条さんにそっちの趣味は存在しないですよー!?)
「ほ、ほら、行くぞ!」
 そう叫ぶと一方通行は上条の手を掴み、走り出す。
「ちょ、転ぶ転ぶ! 行くから、行くから手を離して!」
 ぎゃあぎゃあと騒ぎながら、一方通行と上条は公園へと向かって行った。

 黄昏時の公園には見渡す限りのカップル達。 
 その中に、とても肩身狭そうにベンチに座った上条当麻と一方通行が居た。
 一方通行は、ゆっくりとベンチから立ち上がり上条の前に立つ。
「お、お前に伝えたい事が……ある」
 異様な雰囲気の一方通行に、上条は何が来るのかと身構える。
 病気なのではないのかと錯覚するほどに顔を赤くした一方通行が、ゆっくりと口を開いた。
「……お、俺と……つ、付き合ってくれないか!」
「えと、その、俺男の人に興味ないから……」
 上条の返答に一方通行はやっぱりか、と言った顔をする。
「俺は……男じゃねェ」
「は? いや、何処からどう見ても男……」
「なァ。これでも信じられねェか?」
 一方通行は上条の右手を取り、自身の胸に触らせる。
 上条は右手に違和感を感じとる。
「……? あ、れ? 男にはないはずの感触が」
 何度も、何度も右手を動かし感触を確かめる。
「くっ……これで、わかったかよ。俺は女だ」
 未だに一方通行の胸を右手で触り続けながら、上条は何が何だかわからないと云った様子だ。
(え、は? コレはなんなんでせう? コレが女の子の胸? ってか、一方通行が女の子? もう何が何だか)
「いいから、早く胸から手ェ離せよ。……別に触られるのは嫌じゃねェけど、そんなに強く掴んだら痛ェだろ」
「うわっ。ごめん」
 上条が一方通行の胸から手を離し謝罪したとき、彼等は周囲からの強烈な視線に気づく。
 辺りを見れば公園にいる人全てがこちらを見ている。
 そして、その中にはとても面白い玩具を見つけた悪ガキのような顔をした青髪ピアスと土御門の姿がある。
(コレは……なんだか、とても嫌な予感が)
「逃げるぞ!」
「はァ? っておい!」
 一方通行を抱えて走り出す。
 すぐさま後方から追い掛けてくる2つの足音。
 もちろん上条はその道のプロである土御門から逃げ切れるとは微塵も思っていない。
 だが、男には捕まると解っていても、逃げなければならないときがあるのだ。


「ハァ……ハァ。ここまで、くれば大丈夫、だろ」
 土御門は見逃してくれたのか、それともどうせ隣の部屋だからいつでも弄れると思ったのかは解らないが、撒くことに成功したらしい。
 結構な時間走り回っていたのか、いつの間にか日が沈んでいる。
「い、いいから降ろしてくれねェか……。恥ずかしい」
 未だに上条に抱えられた一方通行が囁く。
「あ、悪い。いきなり抱きかかえたりしちゃって、困るよな」
「……別に。ただ、恥ずかしいだけだ。それで、告白の返事……聞かせてくれねェか。もう一度、俺が女だってことを考えて」
「う……」
(ど、どうする!? なんだか、断ったら怖いし……いや、そういう事じゃない。一方通行は、俺のことが真剣に好きになって告白してくれたんだ。だったら、俺も真剣に考えて返事をしないと)
 上条は考える。自分の気持ちを。自分が一方通行をどう思っているのかを。
 そして、上条の答えは。

「……ゴメン。俺はお前のことをそういう対象として見れない」
「やっぱり、かァ。まァ当たり前の返答だよなァ。今の今まで男だと思ってたヤツを、好きになれるはずねェもンな。クク、能力だけじゃなく想いも一方通行かよ……」
「でも、もう少しお互いのことを知れば、俺はお前のことを好きになれるかもしれない。なんか、最悪の答えだけどな」
 上条のその言葉に一方通行は歓び故か涙を流す。
「それって、つまり……」
「友達の状態から始めようって事。まぁ、なんか特殊な友達だけどさ」
 笑みを浮かべ、照れ隠しか頭を掻きながら上条は言う。
「友達……友達か。何年ぶりだろうなァ。そんなヤツが出来るのは。俺は、諦めが悪くてしつこいぜ?」
 一方通行は涙を拭いながら言う。
「ああ、変な友達には慣れてる。ホントはなれてちゃダメなんだろうけど……」
 友人達の顔を思い浮かべながら、上条は溜め息を吐く。
「それじゃあ、自己紹介……か? っても、俺はテメェ……じゃねェ、と、当麻の事なら大体知ってるンだがよォ」
「あははははは……」
 一体何処まで知っているのだろう、と上条は冷や汗をかきながら、力無く笑う。
「え、とそれじゃあ俺の名前、からか? フゥ……」
 一方通行は一度深呼吸をして緊張を抑える。
「俺の名前は鈴科百合子。鈴科でも百合子でも好きな方で呼ンでくれ。……できるなら、百合子って呼ンでくれると嬉しいんだがなァ」
 一方通行=鈴科百合子は顔を赤く染めながら言う。
「恥ずかしい、つーか、女を名前で呼ぶのは慣れてないんだ。鈴科って呼ばせて貰う。俺の名前は知ってると思うけど、上条当麻だ。よろしくな、鈴科」
 そう言って上条は右手を差し出す。
「あ、握手か……よろしくな。と、当麻」
 鈴科は顔を赤くしながら握手に応えた。


 上条と鈴科が友達になっている間に、学園都市中に一方通行が女である、という話が広まった。
 ある男性に告白していたと言う話も。
 その男性の詳細は広まっていないが、青髪ピアスと土御門元春が居たことを考えると上条が学校で弄られることは必至である。

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